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第一部:婚姻編

③紫色ラブコール

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「そやつはエルフではなくドリアードだ……と言ったところで聞こえておらんだな。……さて、ワシも嫁を見繕うとするか」

 触手による蹂躙が始まったというのに、鷹の鳥人はあまりにもニュートラルだ。そんな彼に近付く、小柄な影。

「ピーちゃん……?ねぇ、ピーちゃんだよね?」
「ぴー……?ワシはそのような名ではないぞ」
「でも、ピーちゃんの鳴き声にそっくり。顔も可愛いまんま……、会えて嬉しい、ピーちゃん……っ!」
「おわっ!……意外と力が強いんだな」

 タックルするかのように抱きついた彼は、紫堂くん。オカルト好きで、よく一人でUFOを呼んだりしている不思議くんだ。背丈は僕と同じくらいだけど、突発クラス内腕相撲大会で灰島くんをも倒して1位になったらしい。僕はその時非常階段でぼっち飯だったかな。

 そんな紫堂くんは、どうやらデカい鳥人をピーちゃんとやらと勘違いしているようだ。嬉しそうに抱きついて胸元に頬擦りをしている。
 鳥人は困ったように頬を掻いた後、紫堂くんのことを背中の羽で覆ってしまった。

「ふむ……、試してみるのも一興か」
「ピーちゃん……?んうっ」

 羽で隠れた紫堂くんに鳥人が顔を寄せる。多分だけど、嘴を唇に当てているみたいだ。羽で覆われて見えないものの、契りとやらが緩やかに始まっていくのが分かった。

「に゛ゃあっ♡は、ぁっ♡♡触手、やばい……っ、きもち、い……っんに゛ゃ♡♡」
「ははっ、赤森、猫みたいっスね♡ん゛っ♡お゛ぉ♡♡そこっ、捏ねられんの、やばぁ……♡♡」
「ひんっ♡触手ちんちんっ、おっきい♡♡ごわれるっ♡♡壊れちゃいまずぅ♡♡♡」

 鳥人と紫堂くんの後ろで、触手に犯されている三人は凄いことになっていた。三人で向かい合って舌を絡めながら、お尻に太い触手を挿れられて喘いでいる。触手で密着するように拘束されているとはいえ、おちんちんを擦り付けあって兜合わせしているのは明らかに彼等の意思だ。
 エルフ改めドリアードは、触手と化した下半身を蠢かせて嬉しそうに笑っていた。

「ふふ♡みんな可愛くて素敵です♡私の触手は全部おちんぽなので、これからも平等に際限なく愛してあげますね♡お嫁さん同士のいちゃいちゃも大好きなので、皆で一緒に幸せになりましょうね♡」
「ほに゛ゃっ♡♡ああ、ぐるっ♡♡♡ながっ♡♡ぎてるうううぅぅっっ♡♡」
「ん゛うぅっ♡♡は、ぁ……、すご……♡どくどく、いっぱい注がれてるっス……♡♡」
「あ、あ゛ぁ……、や、ごんなの、おかしくな゛るっ♡♡ちんちん、だめですぅ♡♡んむっ♡」

 ゴプゴプと勢いよく射精(?)された三人は、とろとろに蕩けながらキスをしていた。そんな彼等を満足そうに眺めて、ドリアードは三人の嫁と共に姿を消した。
 気づかない内に、鳥人と紫堂くんの姿も消えている。

 ……あれ、そういえばもう一人、悪魔っぽい人もいたような気がするけど……。

「あいつらも物好きだよな」
「っひ……!?」
「んな驚くなよ。オレはただやり過ごしたいだけ。好き好んでこんな場所に来てるわけじゃねぇからな。はぁ……、マジでダルい……」

 いつの間に、隣に。
 いや、隣とはいっても人二人分くらいは離れてるけど。

 角と翼を持つその人は、長い前髪で目が隠れているから表情が読めない。一つに結われた金髪は、一度綺麗にセットしたものをわざと崩したような感じだ。他の魔族と違って影がないのは……種族の特性か何かだろうか。
 そしてどうやら、嫁を取りたいとは思っていないらしい。

 なるほど、だから僕がぽつんと座り込んでいる、部屋の隅っこに来たのか。

「え~、ちょっと、あの魔族ってばオタク君狙ってんの?あんな暗い奴やめた方がいいと思うけど~?」
「ほんとですよねぇ。魔族といっても見る目がないんですね」
「それにしても、見てくださいよアレ。いつにも増して不細工すぎませんか?」

 わざと聞こえるようにそんなことを言ってきたのは、金見くん。名は体を表すといったようなお金持ちで、モデルもやっている美形だ。いつも取り巻きと一緒にいて、気が向いた時、気まぐれに僕や他のクラスメイトのことを罵ってくる。取り巻きの銀くんと銅鐘くんも顔が整っているから、灰島くんとは別ベクトルでカーストトップのような存在だ。

 この程度の悪口は言われ慣れているとはいえ、こんなことに初対面の人……魔族を巻き込むのも忍びない。

 逃げるような形にはなるけど、立ち上がって距離を取ろうとしたところで足に何かが巻きついてきた。

「え?」
「都合がいいからこのまま近くに居ろよ」

 見ると、巻きついていたのは彼の長い尻尾だった。そのまま引っ張られて、転けそうになりながら座ると、空いていた距離がなくなっていた。
 その上、離れられないように、尻尾が身体にぐるりと回ってきた。

「あ、あの……?」
「オレがお前を狙ってるって思われてんなら丁度いいわ。時間になるまでこのまま虫除けになってろよ」
「時間……?せ、制限時間が、あるんですか」
「あ?あー……、面倒くせぇことにな。はあぁ……、クソ兄貴め、帰ったら覚えてろ」

 そう毒づく悪魔は、やっぱり自分から進んでこの場に来ているわけではないようだった。
 金見くん達が「物好き」「あんな奴のどこがいいんだか」なんてトゲトゲした言葉を吐いても、全く気にしていない……というより、お兄さんに対して苛ついてるみたいだ。

「……そ、その、制限時間って、僕達にも有効なんですか?誰にも選ばれなかったら、元の世界に戻れる、みたいな……」
「はぁ?んなの知るかよ。何でも食う魔獣がいるからそいつらの餌になるんじゃね?」
「餌……」

 陰キャなりに勇気を出して聞いてみたら、とても物騒な答えが帰ってきた。確定事項ではないとはいえ……、死ぬのは、怖いな。
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