アンハッピーエンド短編集

桜羽根ねね

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双子の霹靂

④天雷【終】

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「ア、アサヒ。何で、佐田くんと一緒にいたの……?しかも、キ……っ、キスまで、して」

 ハルヒから睨まれるのはいつも辛い。でも、こうでもしないとハルヒを守れないからさ。

「何でって、付き合ってるからに決まってんじゃん。そこまで見ておいて分かんなかった?」
「っ、どうして……!どうせ、僕が佐田くんと付き合いだしたって知ってたんだよね?この前も、その前だって、何で僕の恋人を奪っていくんだよ……っ!」

 泣きそうになっているハルヒは、きっとこれまでの恋人全員のことが好きだったんだろう。どうしようもないクズでダメな男ばかりだったけど。

「ああ、その調子だともう別れ話された感じ?何でも何も、ハルヒより俺の方がよかったからでしょ。あの後の話、聞く?すっごく激しく抱かれてさぁ~」

 背中には鞭の痕が残っている。たいした知識もないくせに叩いてくるもんだから、気持ちよさの欠片もなかったっけ。

「っ、聞きたくない……!」

 身を翻して出て行ってしまったハルヒは、きっと凛の所に行ったんだと思う。

 いつもの流れだ。俺が寝取った後は傷心のハルヒを凛が慰める、そんなルーティーン。

 アサヒは凛のことを友達以上に見ていないし、凛だって男同士を気持ち悪いって言ってたからハルヒのことを好きになることもない。

 凛のためにと慣らした身体はすっかり汚れきってボロボロだけど、ここまでハルヒを守ってきたんだからちょっとは褒めてもらいたい。あわよくば抱いてほしいけど……、流石にそれは無理か。自分がオナってたのを見られたのが始まりとはいえ、せめて言葉だけでいいから、よくやったって言ってほしいな。

 そんな勝手な妄想に浸りながら、揺られていた電車から降りる。だって、珍しく凛の方から連絡が来たんだ。

 『オレ達についての話があるから来てくれ』『直接会いたい』って。
 こんなこと、初めてだ。いつもは素っ気ない文章ばかりだったから、余計に頬が緩んでしまう。

 ハルヒは行き違いで帰ったのかな?凛の慰めはハルヒに効果覿面だから、きっと立ち直ってくれているはずだ。

「(はぁ……、緊張するけど、わざわざ家に呼ぶってことは……、ちょっとは期待してもいいのかな)」

 どんどん軽くなっていく足取りで、初めて凛の家を訪れる。雨も風も酷くなってきたけど、俺の心は晴れ晴れとしていた。

 確か、鍵は開いているから勝手に入っていいんだっけ。……ああ、ドキドキする。

 拗らせ続けてきた初恋を胸に、俺はその扉を開いた。

 つんざくような、雷鳴と一緒に。
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