アンハッピーエンド短編集

双子の霹靂

③荒天

　俺には双子の弟がいる。二卵性で、顔は全く似ていないし、性格だって正反対。

　お気楽な俺と、慎重派なハルヒ。ハルヒは内向的だけどとにかく可愛くて、昔も今も自慢の弟だ。隣に住んでた凛と一緒に三人で遊ぶのが日常だった。

　俺は大人びてかっこいい凛のことが好きで、自分の可愛さをアピールしまくってた。だけどまあ、現実ってそんなに甘くないんだよな。

　高校の時、凛が忘れていった服をオカズにして抜いていたら、よりにもよって当人に見つかって……。

　何て言われたんだっけ。
　……ああ、『気持ち悪い』だ。『男同士で何考えてんだ』とも。まあ、そりゃそうだって話だよな。ドン引かれて幼馴染みとしての関係もおしまい……とはならなかった。

　惚れっぽくて惚れられやすいハルヒを悪い虫から守る代わりに、不問にしてくれることになったんだ。そのくらいでなかったことにしてくれるのなら万々歳だ。

　それに、元からハルヒのことは守るつもりでいた。あいつ、何故か変な輩に好かれることが多いんだよな。一も二もなく了承すれば、凛はいつものように笑ってくれた。さっきのゴミを見るような目じゃなくなって、ホッとしたのを覚えてる。

　ハルヒには付き合う相手は選べって言ってきたけど、惚れやすくて盲目なとこがあるから上手くいかなかった。俺の言葉より、他の奴の言葉を信じたのはちょっと悲しかったな。
　そうなると、取れる行動は一つ。

　寝取ってしまえばいい。

　ハルヒはそういう触れ合いはしてないみたいだったから、ニュアンスは違うけど。要はそういうことだ。

「ハルヒより俺にしない？」

　あざとく可愛こぶってそう言えば、悪い虫はホイホイ引っかかってきた。可愛いハルヒに群がるのは、碌でもない奴ばかり。

　最初の奴からやばかったもんなぁ。俺のことオナホ扱いしてきたし。後ろは凛のために慣らしまくってたけど、痛いだけで全然気持ちよくなくて最悪だったっけ。もしハルヒがこんな目にあってたかと思うとぞっとするわ。俺が痛がるばかりで可愛くないってフラれたけど、こっちから願い下げだっての。

　ハルヒにも最低の奴だったって伝えはしたけど、寝取った兄の言葉なんて聞いてくれはしないよな。
　仕方ないから、それからもハルヒに群がる虫は俺が誘蛾灯になって奪っていった。首を絞められたこともあったし、泣いても泣いても責められ続けたこともあったけど、これも全部ハルヒと凛のためだ。

　今回の佐田って奴もちょっといやらしく誘えば簡単にノってきた。ハルヒにキスシーンを目撃させたから、その日の夜は案の定恋人の話を持ち出してきた。