アンハッピーエンド短編集

桜羽根ねね

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双子の霹靂

②晴天

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「うん。お願い。……ぎゅって、してほしい」
「ふふ、嬉しい。好きだよ、ハルヒ」
「っ、い、今、そんなこと、言われたら。だめ、流されるから……っ」
「流されちゃいなよ。オレはアサヒに靡かないくらい、ずーっとハルヒ一筋だったんだから。昔からハルヒのことしか見てないよ」

 甘くて、とけそうで、身体が熱くなってくる。

 本当に?
 本当に、僕だけを好きでいてくれる?

 嬉しい、という気持ちが湧き上がってきたのが、答えだった。自分からも抱きしめ返すと、凛くんの力も強くなる。

「……凛くんのこと、信じてもいい?」
「もちろん。寧ろハルヒが嫌って言っても別れてあげないから。はー……、うれし。ずっとこうしていたいな」

 ああ、僕もだいぶ現金だな。恋人を奪われて怒っていたはずなのに、全部凛くんで塗り替えられていく。感じる体温が心地よくて、僕もずっとこのままでいたいなんて思ってしまう。首筋に軽く唇を押し当てられたのは、そんな時だった。

「わひゃ!?り、凛くんっ」
「ごめん、美味しそうだったから」
「理由になってないよ!」
「口にはしないからさ。ハルヒ、そういう触れ合いは苦手って言ってたからね」
「あ」

 確かに、凛くんに愚痴を聞いてもらっている時に何度か零したことがあるけど。苦手なのはもっと深い繋がりであって、凛くんとキスするのは……。

「……や、じゃ、ない」
「え?」
「嫌じゃないよ。く、くちに、キスされるの。凛くんになら……」
「うわ、可愛すぎ。その顔、オレ以外に見せちゃ駄目だからね。え、本当にするけど、……いいの?」
「うん。嫌だったら、言わないよ」

 そっと腕を解かれて、顎と後頭部に手が添えられる。凛くんの睫毛、長いなぁなんて。恥ずかしさを誤魔化すように視線をさ迷わせて、結局閉じてしまった。

 ふっ、と軽く息が当たって、そのすぐ後に柔らかい熱が重なってきた。何度も、何度も。形を確かめるように、触れ合うだけの優しいキス。

 うっとりと蕩けていく僕の耳に、一際大きな雷の音が届いてきた。
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