12 / 15
双子の霹靂
①曇天
しおりを挟む
陽キャな兄と陰キャな弟のおはなし
*****
僕には双子の兄がいる。二卵性で、顔は全く似ていないし、性格だって正反対。
兄のアサヒは明るくて雄弁で、弟の僕……ハルヒは暗くて話し下手。それでも昔は仲が良くて、どこに行くにも二人一緒だった。隣のお家に住む凛くんと仲良くなってからは、三人で日が暮れるまで遊んでいた。
……ただ、今は。
「ア、アサヒ。何で、佐田くんと一緒にいたの……?しかも、キ……っ、キスまで、して」
「何でって……、付き合ってるからに決まってんじゃん。そこまで見ておいて分かんなかった?」
「っ、どうして……!どうせ、僕が佐田くんと付き合いだしたって知ってたんだよね?この前も、その前だって……、何で僕の恋人を奪っていくんだよ……っ!」
「ああ、その調子だともう別れ話された感じ?何でも何も、ハルヒより俺の方がよかったからでしょ。あの後の話、聞く?すっごく激しく抱かれてさぁ~」
「っ、聞きたくない……!」
悪びれずにそんな最低なことを言ってくるアサヒには、……人のモノを欲しがる悪癖がある。
それが分かったのは高校に入ってから。初めて出来た恋人との初デートの日、待ち合わせ場所でアサヒと彼がキスをしていた。
それからずっと……、同じ大学に入ってからも、アサヒの悪癖は止まらなかった。一体どこから聞きつけるのか、僕が誰かと付き合いだすと必ず横入りしてくる。
……それで結局フラれるわけだから、僕に魅力がないのも原因なのかもしれないけど。
でも、もういい加減にしてほしい。
親からの進言に逆らえないまま一緒に住んでいたけど、これ以上一緒に居られない。無数の赤い痕を見せつけるようにして笑うアサヒに踵を返す。
……こんな時、結局頼ってしまうのは『彼』だ。一駅離れた所に住んでいる、大切な幼馴染み。迷惑をかけてばかりだけど、彼はいつも優しいから、その優しさに甘えてしまう。
空には暗雲が立ち込めて、雷がゴロゴロと鳴り出した。そんな悪天候の中、彼は……凛くんは笑顔で僕を迎えてくれた。
「お茶しかないけど、いい?」
「うん。……突然来ちゃって、ごめんね」
「あはは、気にするなよ。オレとハルヒの仲じゃん」
「凛くん……」
「それで、何か用があって来たんでしょ?」
「……ん」
冷たいお茶を一口飲んで、カラカラだった喉を潤す。垂れ目を優しく細める凛くんにドキドキしながら、言葉を選びつつ口を開いた。
「恋人が出来た、って。一昨日話したばかりなんだけど。また、アサヒの方を好きになったみたいで……。もう、ずっと、こんなことばかりでさ。ぼ、僕よりアサヒの方が明るくて可愛くてかっこいいのは、分かってるんだけど……」
ああ、言い訳じみてダサくなってくる。心の奥ではちゃんと分かってるのに。みんな、僕のことをアサヒに繋がる橋としか思ってないって。橋渡しが終わったらおしまい。僕はもう用済みだ。泣きたくなんてないのにじわりと滲む目尻を、凛くんがそっと拭ってくれる。
「オレだったら、ハルヒにそんな顔させない。ねえ、ハルヒ。抱きしめてもいい?」
「凛くん……」
僕は、凛くんの優しさに甘えている。
下心ありきの優しさだからと照れながら伝えてくれたのは、いつだったっけ。凛くんのことは大切で大事な友達として見ていたから、恋愛対象としてなんて、考えたことなかったけど。
ボロボロになった心に注がれる愛を拒否出来る程、僕は強くなかった。
*****
僕には双子の兄がいる。二卵性で、顔は全く似ていないし、性格だって正反対。
兄のアサヒは明るくて雄弁で、弟の僕……ハルヒは暗くて話し下手。それでも昔は仲が良くて、どこに行くにも二人一緒だった。隣のお家に住む凛くんと仲良くなってからは、三人で日が暮れるまで遊んでいた。
……ただ、今は。
「ア、アサヒ。何で、佐田くんと一緒にいたの……?しかも、キ……っ、キスまで、して」
「何でって……、付き合ってるからに決まってんじゃん。そこまで見ておいて分かんなかった?」
「っ、どうして……!どうせ、僕が佐田くんと付き合いだしたって知ってたんだよね?この前も、その前だって……、何で僕の恋人を奪っていくんだよ……っ!」
「ああ、その調子だともう別れ話された感じ?何でも何も、ハルヒより俺の方がよかったからでしょ。あの後の話、聞く?すっごく激しく抱かれてさぁ~」
「っ、聞きたくない……!」
悪びれずにそんな最低なことを言ってくるアサヒには、……人のモノを欲しがる悪癖がある。
それが分かったのは高校に入ってから。初めて出来た恋人との初デートの日、待ち合わせ場所でアサヒと彼がキスをしていた。
それからずっと……、同じ大学に入ってからも、アサヒの悪癖は止まらなかった。一体どこから聞きつけるのか、僕が誰かと付き合いだすと必ず横入りしてくる。
……それで結局フラれるわけだから、僕に魅力がないのも原因なのかもしれないけど。
でも、もういい加減にしてほしい。
親からの進言に逆らえないまま一緒に住んでいたけど、これ以上一緒に居られない。無数の赤い痕を見せつけるようにして笑うアサヒに踵を返す。
……こんな時、結局頼ってしまうのは『彼』だ。一駅離れた所に住んでいる、大切な幼馴染み。迷惑をかけてばかりだけど、彼はいつも優しいから、その優しさに甘えてしまう。
空には暗雲が立ち込めて、雷がゴロゴロと鳴り出した。そんな悪天候の中、彼は……凛くんは笑顔で僕を迎えてくれた。
「お茶しかないけど、いい?」
「うん。……突然来ちゃって、ごめんね」
「あはは、気にするなよ。オレとハルヒの仲じゃん」
「凛くん……」
「それで、何か用があって来たんでしょ?」
「……ん」
冷たいお茶を一口飲んで、カラカラだった喉を潤す。垂れ目を優しく細める凛くんにドキドキしながら、言葉を選びつつ口を開いた。
「恋人が出来た、って。一昨日話したばかりなんだけど。また、アサヒの方を好きになったみたいで……。もう、ずっと、こんなことばかりでさ。ぼ、僕よりアサヒの方が明るくて可愛くてかっこいいのは、分かってるんだけど……」
ああ、言い訳じみてダサくなってくる。心の奥ではちゃんと分かってるのに。みんな、僕のことをアサヒに繋がる橋としか思ってないって。橋渡しが終わったらおしまい。僕はもう用済みだ。泣きたくなんてないのにじわりと滲む目尻を、凛くんがそっと拭ってくれる。
「オレだったら、ハルヒにそんな顔させない。ねえ、ハルヒ。抱きしめてもいい?」
「凛くん……」
僕は、凛くんの優しさに甘えている。
下心ありきの優しさだからと照れながら伝えてくれたのは、いつだったっけ。凛くんのことは大切で大事な友達として見ていたから、恋愛対象としてなんて、考えたことなかったけど。
ボロボロになった心に注がれる愛を拒否出来る程、僕は強くなかった。
28
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる