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悪魔の贈り物
②くちづけ
しおりを挟む私は障害者である。
目も見えないし、足も悪い。
二十歳の頃だろうか。
車に轢かれ、気付かないままにあらゆるモノを失った。
あの綺麗な景色はもう、見れない。
小鳥の囀りが頬を伝ったって、本体を見ることは出来ない。
苦しみしかない。
働くことは無理だし、生きてて辛いだけ。
私は歩道を歩いていた。
以前から私は、絶望していた。
この社会に。
以前の私は、目や足があったから、この世界を見渡せた。
けれどその時は若かった。
本当の社会の闇を、垣間見たことはなかった。
失ってからだ。
耳に聞こえてくるのが罵声だって、迷惑がる声だって。
全ては私に、向けられていた。
ただ私が点字ブロックの上を杖を使って歩いているだけで、言われる。
やれ障害者だの、邪魔だの。
私はそう言う人間の声しか、最近聞いていない。
言葉はトゲなのだ。
私のような障害者は、なりたくてこうなってるわけじゃない。
君たちの様に、全てを五体満足で与えられて幸せなわけじゃない。
だが彼らは、私の様な人間の声を、聞きたいと思っていない。
聞く仕草を見せたって、本当に心に届いていない。
嫌いだ。
全ての人間が。
そう言う奴らこそ、こうなればいいのだ。
でも。
私も、彼らの気持ちを理解できない。
ただただ被害妄想を繰り広げているだけだ。
良い人はいるし、その分悪い人だっている。
一概に批判するのも、ダメなことだろう。
ラジオをつける。
すると、こんな声が流れ込んできた。
「ペンネーム、私は。さん。えー、
『障害者が嫌いです。』
うわっ酷い。
『以前はそう思っていました。けれど、ある人を見かけました』
……ん?
『どうしようもない程に、蔑まされている障害者。
侮蔑している友人を見て、私は戰慄を覚えました。
だから私は思い切って、組織を立ち上げようと思います。
非障害者による、障害者の為の非営利組織を。
それに当たる意見を聞きたいです』
と。うーん、僕が思うに──────」
私はそこでラジオを止めた。
あの局は、障害者などの弱い人に寄り添う放送をしていたらしい。
だからあんな質問が出てきたと。
事実。
質問に出てきた障害者が私でないにしろ、そういう人間もいる。
そう、悟った。知った。
そこから私は、人の目も、侮蔑も、気にせずに。
今を歩く。
例え目が目えなくとも、足が朧いでも。
確かに私達を思ってくれる人がいる。
そう思うと、少し、この世界が綺麗にも見えてきた。
侮蔑しない。異常者でない人もいる。
では。
君は、どちら側でしょうか。
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