アンハッピーエンド短編集

桜羽根ねね

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キューピッド様の言う通り!

②秘中之秘の胸中

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*****


「会うのは久しぶりだよな、風斗。……大丈夫か?随分痩せたみたいだけど」
「大丈夫だよ。久しぶり、天音くん。天音くんは……、すごく大きくなったね」
「まあ、成長期だったからな」

 口元を緩めて微笑む天音くんに、昔の面影が重なる。随分背が伸びて、色気が増して、かっこよくなった姿に心臓が煩くなっていく。まあるい耳朶には小さなピアス。ファッションもおしゃれで、モデルみたいだ。

「恋占いなんて必要ない気もするんだけど……」
「いや、……あー、正直に言うけどさ。…………男なんだよ、俺が好きな相手」
「え……」
「だから、占いにも頼っておきたいというか……。風斗の占い、当たるって評判だからさ。どう行動したらプラスになるのか分かったらなって」

 天音くんが、男を好きに。
 心臓がもっと煩くなっていく。

 男同士だからと諦めていた気持ちが、図々しく外側に出ようとする。相手は僕じゃないんだから、自重しないといけないのに。……でも、もしかしたら。毎日取り留めもないメッセージを送ってくれるのは、僕のことが好き……だから?……ああ、駄目だ、期待なんてしたら。きっと天音くんは友達思いなだけで、僕が特別ってわけじゃない。

 驕りそうになった心を抑えて、一呼吸。

 僕がするべきことは、キューピッド様にお願いして占いをすること。そこに僕の不埒な気持ちを混ぜたら駄目だ。

「……分かった。占ってみるね」

 意識を集中して、頭のてっぺん、天井、空の上、宇宙の彼方、どこか遠い空間にいらっしゃるキューピッド様に呼びかける。
 ほわりとした感覚が身体に入ってきて……、僕のナカに入ったキューピッド様が、内側からそっと教えてくれた。

『ウラナウマデモナイ、スデニタガイノオモイガツナガッテイル』

 それはつまり、両想いってことだ。

 キューピッド様がふっと消えていくのを感じながら、僕は笑った。笑えているはずだ。

「天音くん。占いなんて必要ないよ。もう天音くんとその相手の彼は……、お互いに、想いあっているから」
「え……、本当か?」
「本当だよ。僕の占いは百発百中だから」
「そっか……。うん、ありがとう、風斗」
「……告白、頑張ってね」

 嬉しそうにはにかむ天音くんは、きっとその相手と幸せになるんだろう。

 ……いいなぁ。

「まあ、流石にすぐに……ってのはムードも何もないし、準備をしてから告白するよ」

 ああ。
 凄く久しぶりに……口の中が、苦く感じる。
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