淫魔の呪いで女体化した僕がおもらしなんてするわけがない!

桜羽根ねね

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地下2階:魔物と包帯のカプリチオ

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◆グレイの装備『旅人の服』
◆状態異常『なし』


 そう長くない階段を下りれば、地下2階に辿り着いた。ごつごつした地面は歩きにくそうで、奥からはモンスターの鳴き声も聞こえてくる。

「グレイちゃん、平気?」
「……大丈、夫」

 一度出してすっきりしたはずの膀胱は、歩く度にちゃぷちゃぷ重くなっていく。今はまだ我慢出来る範囲内だが、この階層でも一度トイレに行っておかないと、道半ばで決壊してしまうだろう。

「このフロアはだいぶ道が分かれているようですね。なんでも、入る度に形が変わるとか。ダンジョンに入る前に、商人の方から快く専用の地図を譲ってもらえて助かりました」
「ふふっ、涙目になって渡してくれたもんね~」

 相手の商人があくどい商売をしていたとはいえ、二人のお願い(脅迫)はなかなかに酷いものであった。まあ、そこを言及するのも今更な話である。

「ただこれ、トイレの場所までは書いてないんだよねぇ。なんかそれっぽい空間があるとこ通ってみる?」
「そんな、運に任せるようなことはしたくないけど……、やむを得ないな。コルクの勘に任せる」
「オッケ~。邪魔する魔物が出てきたら俺がぜーんぶ斬ってあげるね」

 自分のラック値が底辺に近いことを自覚しているグレイは、何かと野生の勘が働くコルクに一任することにした。果たして吉と出るか凶と出るか。
 すらりとした長剣を無造作にぶらつかせる彼を先頭に、3階に続く階段を目指して、ついでにトイレも探すため、彼らは歩き始めた。

*****

「──さいあく、だ……!」

 思わず唸ってしまったグレイは、危険な状態まで溜まりつつある尿意を我慢するべくきゅっと内腿に力を込めた。半開きの唇から悶えるように吐息を零し、辛そうに身を捩らせる。
 トイレには無事に辿り着くことが出来たのだが、そこはペーパーマミーの棲み処と化していた。大量のトイレットペーパーがふわふわと宙を舞い、肝心のトイレへの道はマミーによって塞がれている。

「うっわ、すげぇさくさく斬れそーじゃん」
「そうでもありませんよ。ペーパーマミーはその名の通り紙を媒体にしていますが、強度は普通のマミーの数倍はあると言われています。剣で斬るのは効率的ではないでしょう」
「え~、別にコーリツとか気にしないけど」
「時間がかかってしまうと、グレイがここでお漏らししてしまうかもしれませんし」
「っ、誰が、するか……! メイズ、とっくに対応策は浮かんでるんだろ……っ、う!」

 早く倒せ、と急かすグレイは、本来ならば彼等よりも強い魔力と腕力を持っている。女体化の影響でそれが半分以下になり、襲い来る尿意に耐えなければいけないため、今は二人を頼ることしか出来ないのだ。

「ええ、勿論。貸しひとつ、ということで」

 ちゃっかり対価を要求されたが、情けなく漏らすよりかはマシだ。もじもじと足踏みをするグレイが頷いたのを見て、メイズはにこりと微笑んでその呪文を唱えた。

 刹那、ペーパーマミー達の頭上から、滝のような水が降り注ぐ。応戦しようとした浮遊ペーパーはあえなく水に濡れ、力なく地面に落ちていく。バタバタと戦闘不能になっていくペーパーマミーを中心に、池のように大きな水溜まりが出来上がった。

「やった……、ありがと、メイズ。っふ、これなら……っ」
「っ、グレイ! まだです!」
「え?」

 やっと放尿が出来るのだと、安心してしまうがままに踏み出した足に、水から逃れていたペーパーが絡みつく。油断した、と思った時には、ぐるんと逆さ吊りにされていた。大きな胸がたゆみ、衝撃で漏れそうになるのを必死に耐える。
 空中で逆さになった視界には、驚いた表情の二人が映る。いくら気持ちが逸っていたとはいえ、満身創痍状態の魔物に捕まってしまった自分が恥ずかしい。

「グレイちゃん!」

 キッと眦をきつくしたコルクが、迷うことなく剣を振るう。重さを感じさせない、素早い一閃。湿っていたところに鋭く刃を通せば、風前の灯火だったマミーの力が事切れた。それと同時に、吊られていたグレイの身体が宙に放られる。

「っわ……」
「メイズ、風の魔法!」
「分かっています!」

 コンマ1秒で放たれた風の魔法が、クッションのようにグレイをふわりと包み込む。そよ風に押されるがまま空中で元の体勢に戻ったグレイは、股間を押さえたまま細く息を吐く。

「(乗り切った……!)」

 抜群のコンビネーションで助けてくれた彼等には感謝しかない。けれど、今はそれより、一刻も早くトイレに行きたいという思いが強い。
 大量の水の跡が残る地面に、ゆっくりと降り立とうとした、その瞬間。足首に残ったままだったペーパーの切れ端が突如として発光し、そして。

「…………は?」

 着ていた服が、下着すらも全てバラバラの糸になり、靴を残して一糸纏わぬ姿になったのだ。股間こそ隠してはいるが、プルンと揺れる胸や先端で色づく突起は正面の彼等には丸見えで。
 男だった時にはほぼなかった羞恥心が、ぶわりと湧き上がる。

「なんっ……!?」

 零れる胸を片手で押さえようとした矢先、今度は再生を始めたペーパーが紙製の包帯となってぐるぐると身体に巻き付いてきた。まるで魔法少女に変身するかのようだが、その巻き方は甘く、包帯の隙間からチラチラと肌や乳首が見えてしまっている。

 そんな緩い巻き方が嘘のように、股間に通された包帯はぴっちりときつく食い込んできた。きゅう、と切なくひくついたそこを、いたぶるように。

「……え。グレイちゃん、なに、どーなってんの……?」

 呆然としながらも欲を孕んだ視線を逸らすことなく呟いたコルクに、刺激を受けすぎて真顔になったメイズから答えが返ってくる。

「繊維を操ることが出来る、とは聞いたことがあります。……が、こんないやらしい……ではなく、こんな突飛な効果が現れるなんて、初耳です」

 ようやくパシャンと地面に足をつけることができ、元凶のマミーは薄く溶けていく。だが、変わってしまった服は戻らない。緩くてズレてしまうそれからは、乳輪が露出していた。そして、緩んでしまったのが、もう一つ。

「あ……、や、だ……っ、我慢、した……のに……っ」

 トイレを目前にした、巨大な水溜まりの上で。限界を迎えた膀胱からチョロチョロと尿が零れ始めた。押さえている指の間からプシュッと飛び出していくそれは、波紋を作りながら足元の水をじんわりと染めていく。

「ふ……あ、ぁ……♡」

 次第に太く激しくなっていく水流が、ジョロロロと大きな音を立てて反響する。たっぷり溜め込んだだけあって、その勢いはなかなか収まらない。ほかっとした湯気が立ち昇り、羞恥を擽って肌をなぞる。

「んっ、ふー……、っあ……!」

 ぷるん、と揺れた両胸から完全に乳首が覗き、咄嗟に両手で包帯を掴んだグレイは。排尿の勢いがなくなってきた恥部が、剥き出しになっていることに気付けないでいた。綺麗に股間の包帯部分だけ溶けてなくなったそこは、ひくつきながらもシャアアアと小さな放物線を描く。

「うわ、えっろ……」
「……少し、これは……、目に毒ですね……」

 ごくりと喉を鳴らして最後の一滴まで見守ったメイズとコルクは、二人して前が窮屈になっていた。気持ちよさそうに、恥ずかしそうに、砂糖を煮詰めたようにとろける彼……もとい彼女の放尿シーンに、完全に興奮していた。紙コップの時とは、また違う良さがある。

「あ……。うぁ……っ、でちゃっ……、……え゛?」

 自分の露出狂じみた痴態に気が付いたグレイが、真っ赤になって悲鳴をあげるまで、あと少し。
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