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6日目:会議に必須
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本日は寮監が集まる会議の日。
夜にやってしまったおねしょを二度と起こさないため、急な尿意に襲われた時のため、魔法便で取り寄せた『それ』を身につけて、僕は会議に臨んでいた。
進行もつつがなく進んでいるし、これといったトラブルもない。
「──と、いうわけですので、植物園で育てられている、毒を持つ植物の管理を更に徹底するべきだという意見が出ています。現に、調子こいた……失礼、好奇心旺盛な一年生がうっかり顔を腫らす事例も出ていますからね」
「そうだね。今のままでも充分だとボクは思うけど、厳しくするに越したことはない」
「変に触られて毒に不純が混じるのも避けたいし、いいんじゃない?」
各々の意見が述べられていくのを聞きながら、最後の議題もこれで終わりそうだと息を吐く。
「それでは、全会一致ということで、本日の会議はこれまで! いやぁ、毎回このようにスムーズに進んでくれると有難いんですがねぇ。おっと、この後私は所用がありますので失礼しますよ」
おざなりな閉会の言葉と共にその場から姿を消した先生は、きっと酒でも飲みに行ったんだろう。まあ、そんなのは関係ないことだ。僕もさっさと帰ってしまおう、と。
そうする、はずだったのに。
「シフォン。ちょっといいかな?」
「……何か用か? ベロア」
座ったまま椅子ごと身体をずらせば、小人族のベロアが腕を組んだままじとりとした視線を向けてきていた。そんな視線を向けられる理由は、今のところ僕にはない。
僕にはないが、あるとするなら。
「キミのところの編入生の件だ。ボクが何を言いたいか、分かるだろう?」
「……まあ、予想はついた」
これはどうも長くなりそうだ。数ヶ月前に編入してきた寮生が、ベロアに一目惚れして両手両足の指でも数え切れない程の迷惑をかけている。十中八九、この件だろう。
ここは先にトイレに行っておいた方が……。
「……っ…………」
「シフォン?」
「……いや、何でもない。それで、今度はあの編入生に何をされたんだ?」
来た。
来やがった。
相変わらず空気の読めない尿意に、表情筋が引き攣ったのをすぐに誤魔化した。
ベロアも不思議そうにしていたものの、すぐに切り替えて編入生への苦言を並べ立て始める。
このまま、ベロアや、まだ残っている寮監達の前ではしたなく漏らしてしまう──ようなことには、ならない。いや、漏らすは漏らすものの、外には出ない。
何故なら今の僕は、大人用のおむつとやらを穿いているからだ。
スリムタイプ、というやつでそこまでごわごわしないものの違和感は酷い。それでも、漏らしたとしてもこれが受け止めてくれるという安心感の方が強かった。
穿くのが恥ずかしいなんて言っていられない、ぼたぼた漏らして汚すより、何億倍もマシだ。
「(……あ、もう、出そう……)」
バレないよう、表情だけはビジネススマイルに固定して。太腿を引き締めて音を最小限にするよう心がける。
そして。
……呆気なく決壊した堤防から、しょろしょろと尿が漏れ出していった。心臓がどくどくしているのが嫌でも分かる。
人前で、おむつの中に、放尿しているのだから。
まるでそういうプレイみたいだ。……いや、自分が望んでいるわけじゃないけど。
「(あったかくて気持ちい……い、なんて、思うわけがない。こんなの冷えてしまったら気持ち悪くなるだけだし。ああもう、早く終われ……!)」
「うわっ、ちょっ、ごめんシフォくん!」
「え?」
突然。
ぽーん、と飛んできたブロードの魔法具が、僕の膝の上に着地した。長方形で平べったいそれは、ブロードがよく使っている携帯端末だ。
「あぁっ! ごめんブロード! 手に当たってうっかり弾いちまった!」
テーブルの向こうからタフタの大きな謝罪が聞こえてくる。なるほど、理解はした。理解は、出来たが。
「ごめんねシフォくん、痛くなかった? すぐどかすから……、……あれ、なんか水の音しない?」
「~~~~っっ!!!」
膝の上、それも股間近く。
そこではいまだに、くぐもった放尿が、続いていて。
近寄ってきたとはいえ、これが聞こえるとか地獄耳か?
魔法具をひっぺがして叩きつけたくなる衝動をどうにか抑えて、震えそうになる手で薄い板を持ち上げる。それをブロードの手に渡すと、必死に表情を作った。
「……気のせいじゃないか? それよりベロア、話の前に少し席を外させてくれ。すぐ戻るから」
「ああ、構わないよ」
「あっ、シフォくん」
何か言いたげなブロードに呼び止められたものの、急いでその場を後にする。どうせ彼とは部活が同じだから、何かあるならそこで話すだろう。
……トイレで外した、大量の尿を吸ったおむつは、ずっしりと重くなっていた。助かったけど、終わった後が何とも虚しい。
けれど、これがあるなら、あと数日どうにか乗り切れそうだ。
*****
「シフォくん、お疲れ~。さっきはぶつかってごめんね」
「お疲れ。……? 何を聞いているんだ?」
「ああ、これ? やっぱあの後気になってさ~、そしたら偶然録音出来てたんだよね」
二人しかいない部室で、ブロードから片方のイヤホンを渡される。音楽か何かだろうか、そう思ってイヤホンを耳にさしてみると。
しゃあああああああぁ……
「………………水の、音?」
「そうそう。やっぱあの時水の音してたの、勘違いじゃなかったっぽいんだよね。ほら、我ってオカルト系とか好きだし? ゴーストの悪戯か何かかな~って思ってるんだけど……、え、なになになになにシフォくん顔めっちゃ怖い!!!」
「ブロード」
「ひゃいっ!」
「これ、今すぐ消せ。人間の間では有名な呪いの音だから」
「うっそ、ほんと!? それなら尚更大事に保存……、ひっ、ごめん嘘です! だからそんな怖い顔で睨みながら火魔法放とうとしないで……!!」
夜にやってしまったおねしょを二度と起こさないため、急な尿意に襲われた時のため、魔法便で取り寄せた『それ』を身につけて、僕は会議に臨んでいた。
進行もつつがなく進んでいるし、これといったトラブルもない。
「──と、いうわけですので、植物園で育てられている、毒を持つ植物の管理を更に徹底するべきだという意見が出ています。現に、調子こいた……失礼、好奇心旺盛な一年生がうっかり顔を腫らす事例も出ていますからね」
「そうだね。今のままでも充分だとボクは思うけど、厳しくするに越したことはない」
「変に触られて毒に不純が混じるのも避けたいし、いいんじゃない?」
各々の意見が述べられていくのを聞きながら、最後の議題もこれで終わりそうだと息を吐く。
「それでは、全会一致ということで、本日の会議はこれまで! いやぁ、毎回このようにスムーズに進んでくれると有難いんですがねぇ。おっと、この後私は所用がありますので失礼しますよ」
おざなりな閉会の言葉と共にその場から姿を消した先生は、きっと酒でも飲みに行ったんだろう。まあ、そんなのは関係ないことだ。僕もさっさと帰ってしまおう、と。
そうする、はずだったのに。
「シフォン。ちょっといいかな?」
「……何か用か? ベロア」
座ったまま椅子ごと身体をずらせば、小人族のベロアが腕を組んだままじとりとした視線を向けてきていた。そんな視線を向けられる理由は、今のところ僕にはない。
僕にはないが、あるとするなら。
「キミのところの編入生の件だ。ボクが何を言いたいか、分かるだろう?」
「……まあ、予想はついた」
これはどうも長くなりそうだ。数ヶ月前に編入してきた寮生が、ベロアに一目惚れして両手両足の指でも数え切れない程の迷惑をかけている。十中八九、この件だろう。
ここは先にトイレに行っておいた方が……。
「……っ…………」
「シフォン?」
「……いや、何でもない。それで、今度はあの編入生に何をされたんだ?」
来た。
来やがった。
相変わらず空気の読めない尿意に、表情筋が引き攣ったのをすぐに誤魔化した。
ベロアも不思議そうにしていたものの、すぐに切り替えて編入生への苦言を並べ立て始める。
このまま、ベロアや、まだ残っている寮監達の前ではしたなく漏らしてしまう──ようなことには、ならない。いや、漏らすは漏らすものの、外には出ない。
何故なら今の僕は、大人用のおむつとやらを穿いているからだ。
スリムタイプ、というやつでそこまでごわごわしないものの違和感は酷い。それでも、漏らしたとしてもこれが受け止めてくれるという安心感の方が強かった。
穿くのが恥ずかしいなんて言っていられない、ぼたぼた漏らして汚すより、何億倍もマシだ。
「(……あ、もう、出そう……)」
バレないよう、表情だけはビジネススマイルに固定して。太腿を引き締めて音を最小限にするよう心がける。
そして。
……呆気なく決壊した堤防から、しょろしょろと尿が漏れ出していった。心臓がどくどくしているのが嫌でも分かる。
人前で、おむつの中に、放尿しているのだから。
まるでそういうプレイみたいだ。……いや、自分が望んでいるわけじゃないけど。
「(あったかくて気持ちい……い、なんて、思うわけがない。こんなの冷えてしまったら気持ち悪くなるだけだし。ああもう、早く終われ……!)」
「うわっ、ちょっ、ごめんシフォくん!」
「え?」
突然。
ぽーん、と飛んできたブロードの魔法具が、僕の膝の上に着地した。長方形で平べったいそれは、ブロードがよく使っている携帯端末だ。
「あぁっ! ごめんブロード! 手に当たってうっかり弾いちまった!」
テーブルの向こうからタフタの大きな謝罪が聞こえてくる。なるほど、理解はした。理解は、出来たが。
「ごめんねシフォくん、痛くなかった? すぐどかすから……、……あれ、なんか水の音しない?」
「~~~~っっ!!!」
膝の上、それも股間近く。
そこではいまだに、くぐもった放尿が、続いていて。
近寄ってきたとはいえ、これが聞こえるとか地獄耳か?
魔法具をひっぺがして叩きつけたくなる衝動をどうにか抑えて、震えそうになる手で薄い板を持ち上げる。それをブロードの手に渡すと、必死に表情を作った。
「……気のせいじゃないか? それよりベロア、話の前に少し席を外させてくれ。すぐ戻るから」
「ああ、構わないよ」
「あっ、シフォくん」
何か言いたげなブロードに呼び止められたものの、急いでその場を後にする。どうせ彼とは部活が同じだから、何かあるならそこで話すだろう。
……トイレで外した、大量の尿を吸ったおむつは、ずっしりと重くなっていた。助かったけど、終わった後が何とも虚しい。
けれど、これがあるなら、あと数日どうにか乗り切れそうだ。
*****
「シフォくん、お疲れ~。さっきはぶつかってごめんね」
「お疲れ。……? 何を聞いているんだ?」
「ああ、これ? やっぱあの後気になってさ~、そしたら偶然録音出来てたんだよね」
二人しかいない部室で、ブロードから片方のイヤホンを渡される。音楽か何かだろうか、そう思ってイヤホンを耳にさしてみると。
しゃあああああああぁ……
「………………水の、音?」
「そうそう。やっぱあの時水の音してたの、勘違いじゃなかったっぽいんだよね。ほら、我ってオカルト系とか好きだし? ゴーストの悪戯か何かかな~って思ってるんだけど……、え、なになになになにシフォくん顔めっちゃ怖い!!!」
「ブロード」
「ひゃいっ!」
「これ、今すぐ消せ。人間の間では有名な呪いの音だから」
「うっそ、ほんと!? それなら尚更大事に保存……、ひっ、ごめん嘘です! だからそんな怖い顔で睨みながら火魔法放とうとしないで……!!」
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