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8.王子に恋した魔法使い
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「ホークから、お前の様子がおかしかったと聞いた」
「……ホークから?」
「正確には、ロビンという近衛兵からだ。俺があの女性の所へ向かった時、お前がひどく悲しそうな顔をしていたと」
「ほう、そのロビンという奴はなかなかの観察眼だな。……そうか、見られていたか」
お互いにすっきりして後始末をした後、抱き合いながら小さなベッドに横になった。目は完全に冴えてしまっている。眠れそうにもないので、レイヴンはいい機会だとばかりに、ここに至るまでのアウルの話を聞き出すことにした。
魔法で消されていたはずの記憶が、どうして今になって蘇ったのか。それが一番の疑問であったからだ。
「茫然自失な表情をしていたと、言っていた。その時俺はシロロメクサと答えた彼女より、お前の方を優先した。言葉には出さなかったが、お前の傍にいなければと、……そう思ったんだ」
「……あ、相変わらず、お前は……こっ恥ずかしいことを……っ。というか、そうだ、そのシロロメクサの女性はどうしたのだ!?まさかそのまま放置してきたわけではないだろうな!?」
「……安心しろ。そもそも彼女自身がシロロメクサだったのだから」
「は……?」
「お前の所に向かおうとした俺に、彼女が真実を教えてくれた。『私を生み出してくれたあなた達には幸せになってほしい』……と、そう前置きして、俺の消えていた記憶を全て戻してくれたんだ」
「……まさか、彼女は、妖精だったのか……?」
想いがこもったモノには妖精が宿る。東洋の付喪神に似た言い伝えだ。あの時の花冠に宿った妖精が成長して、自分達の前に現れたのだとすれば。それはもう妖精というよりキューピッドに近い存在である。妙に回りくどいことをしてきたのは、悪戯好きな妖精だからだろうか。
「…………ふふ、何が起きるか分からないものだな、人生というやつは。……こうして、王子であるお前と一緒に寝るなんて、想像もしていなかったぞ」
「フ……、そうだな」
「同性で、魔法使いと王子の番だなんて茨の道だぞ?……それでも、俺で……いいのか?」
「愚問だな。お前が、いいんだ」
額をこつりと合わせて幸せそうに微笑む魔法使いと、そんな彼を見つめ眩しそうに目を細める王子。
遠回りをした初恋が実を結び、あの日の花畑に負けないくらいの満開の花が、咲き誇ろうとしていた。
【王子に恋した魔法使い】
(……で、めでたしめでたしってわけやな?ま、おめでとうと言っといたるわ)
(…………いや、それがだな、フェザント……)
(あ?何や、王様も王妃様も喜んでくれたんちゃうんか?)
(うむ。それはとても有り難かったのだがな。あれよあれよという間に婚約まで決まったし……。だが、それとは別にちょっとした問題が……)
(惚気だったらさっさと帰れや)
(違うぞフェザント!セクハラされて困っているのだ!)
(やっぱ惚気じゃねぇか!)
(アウルではないっ!アウルなら喜んでこの身を差し出すが、あいつらはオレが嫌がるのを無視して触ってくるんだよ……!)
(……あいつらって、誰や)
(…………アウルのところの、近衛兵達だ)
(セクハラされるようになったきっかけは)
(……風呂ではち合わせて、その、……胸の件がバレてからだな)
(旦那には話したんか?)
(だん……!……い、言えるわけないだろう……!バレたらオレが嫉妬で抱き潰されるのだぞ!?だからフェザント何とかして助けてくれ……!)
(あー……、見た目に反して独占欲強いもんな、あの王子様。大人しくゲロって抱き潰してもらえや)
(フェザント!?それは酷くないか、友人だろう!?)
(そうやな。だから友人らしく、手製の超絶気持ちよくなれる媚薬ローション贈っといてやるわ。使いすぎんよう気をつけてな、旦那)
(は……?おい、お前どこ見て、…………え?ア、アウ、ル?)
「……ホークから?」
「正確には、ロビンという近衛兵からだ。俺があの女性の所へ向かった時、お前がひどく悲しそうな顔をしていたと」
「ほう、そのロビンという奴はなかなかの観察眼だな。……そうか、見られていたか」
お互いにすっきりして後始末をした後、抱き合いながら小さなベッドに横になった。目は完全に冴えてしまっている。眠れそうにもないので、レイヴンはいい機会だとばかりに、ここに至るまでのアウルの話を聞き出すことにした。
魔法で消されていたはずの記憶が、どうして今になって蘇ったのか。それが一番の疑問であったからだ。
「茫然自失な表情をしていたと、言っていた。その時俺はシロロメクサと答えた彼女より、お前の方を優先した。言葉には出さなかったが、お前の傍にいなければと、……そう思ったんだ」
「……あ、相変わらず、お前は……こっ恥ずかしいことを……っ。というか、そうだ、そのシロロメクサの女性はどうしたのだ!?まさかそのまま放置してきたわけではないだろうな!?」
「……安心しろ。そもそも彼女自身がシロロメクサだったのだから」
「は……?」
「お前の所に向かおうとした俺に、彼女が真実を教えてくれた。『私を生み出してくれたあなた達には幸せになってほしい』……と、そう前置きして、俺の消えていた記憶を全て戻してくれたんだ」
「……まさか、彼女は、妖精だったのか……?」
想いがこもったモノには妖精が宿る。東洋の付喪神に似た言い伝えだ。あの時の花冠に宿った妖精が成長して、自分達の前に現れたのだとすれば。それはもう妖精というよりキューピッドに近い存在である。妙に回りくどいことをしてきたのは、悪戯好きな妖精だからだろうか。
「…………ふふ、何が起きるか分からないものだな、人生というやつは。……こうして、王子であるお前と一緒に寝るなんて、想像もしていなかったぞ」
「フ……、そうだな」
「同性で、魔法使いと王子の番だなんて茨の道だぞ?……それでも、俺で……いいのか?」
「愚問だな。お前が、いいんだ」
額をこつりと合わせて幸せそうに微笑む魔法使いと、そんな彼を見つめ眩しそうに目を細める王子。
遠回りをした初恋が実を結び、あの日の花畑に負けないくらいの満開の花が、咲き誇ろうとしていた。
【王子に恋した魔法使い】
(……で、めでたしめでたしってわけやな?ま、おめでとうと言っといたるわ)
(…………いや、それがだな、フェザント……)
(あ?何や、王様も王妃様も喜んでくれたんちゃうんか?)
(うむ。それはとても有り難かったのだがな。あれよあれよという間に婚約まで決まったし……。だが、それとは別にちょっとした問題が……)
(惚気だったらさっさと帰れや)
(違うぞフェザント!セクハラされて困っているのだ!)
(やっぱ惚気じゃねぇか!)
(アウルではないっ!アウルなら喜んでこの身を差し出すが、あいつらはオレが嫌がるのを無視して触ってくるんだよ……!)
(……あいつらって、誰や)
(…………アウルのところの、近衛兵達だ)
(セクハラされるようになったきっかけは)
(……風呂ではち合わせて、その、……胸の件がバレてからだな)
(旦那には話したんか?)
(だん……!……い、言えるわけないだろう……!バレたらオレが嫉妬で抱き潰されるのだぞ!?だからフェザント何とかして助けてくれ……!)
(あー……、見た目に反して独占欲強いもんな、あの王子様。大人しくゲロって抱き潰してもらえや)
(フェザント!?それは酷くないか、友人だろう!?)
(そうやな。だから友人らしく、手製の超絶気持ちよくなれる媚薬ローション贈っといてやるわ。使いすぎんよう気をつけてな、旦那)
(は……?おい、お前どこ見て、…………え?ア、アウ、ル?)
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