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後編

はち

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「(…………今、何時だろ……)」

 時間の感覚がまるでない。朝なのか、夜なのか。買われてから何日経ったのか。

 エントランスの階段横、花瓶の傍に放置されてから、考えることすら放棄していた気がする。何だろう、久々に頭が回ってくれているかも。少し、状況を客観視してみよう。

 ……僕を買ったあのスライムは、早々に僕に飽きた。確かに身体は溶けなかったけど、服は溶けて裸にされた。そのまま精液を搾られたけど、どうやらすごく不味かったらしい。リザードマンの尻尾のようにスライムを分裂させて、取り込まれたままの僕を罵りまくってきた。

 そうして、コアをなくしたスライムを拘束具代わりに、僕はインテリアの一つになった。ちんぐり返しで、おちんちんだけが外に露出させられている。おまんこにはぐっぽりとスライムが挿入されているけど、痛くはないし寧ろ喪失感がある。スライムを挿れるために解してきたわけじゃないんだけどな。

 口もスライムで塞がれて、そこから注がれるねっとりとした液体で無理矢理栄養を与えられている。一時的に生かされてはいるけど、コアがなくなった分裂スライムは、次第に力をなくして、硬直した後に弾けて死ぬ。きっとその時、取り込まれている僕も巻き込まれるんだろう。

 下等で低級な羽なし淫魔の命なんて、その程度のものなんだ。

「ーーー、ーーで、ーああ、それがーー」
「お招きいただきーー、ーーはい、本日はーー」

 不意に、ざわめいた声が聞こえてくる。また何かろくでもないパーティでも開くんだろう。毎日のように仮面をつけた貴族らしき魔族が訪れては、ラリった様子で帰っていくから。

 エントランスからホールに向かう時、嫌でも僕の姿はそいつらの目に留まる。鼻で笑われたり、蔑まれるのはまだいい方で、おちんちんを叩いてくるのが最悪だった。痛いのは嫌だ。……死ぬ時も、痛くないといいな。

「おやおや、まだ生きていたんですね。随分しぶとい」
「飾りっけがなくて可哀想だし、これをつけてやろう」
「ふふふっ、家畜用のタグか。似合っているな」

 すれ違いざま、何度か見たことがある魔族がおちんちんにリングを嵌めてきた。魔族どころか家畜扱いかぁ……。

 こんな僕がミラくんに好きになってもらおうだなんて、図々しいにも程があったね。理解出来てよかった。ミラくんの隣に並ぶのに、僕は全くふさわしくないんだから。

 続々と訪れる魔族達からの嘲笑をぼんやり受け流していると、ミラくんの姿が見えた気がした。
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