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61 久しぶりに会えた元シャース王国での命の恩人二人目、ダンさん!!

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 こうして駆け出して行った男性三人をクスクス笑いながら一か所ずつアイテムチェックをして必要なアイテムを生成していき、昼になるまで【破損部位修復ポーション】と他のポーションを交互に作り続けた時間は過ぎて行き……いつも通り休憩室で倒れている私が居たのは、ラフィリアちゃん達には内緒にしたいかな? と思った日。


「うーん……またやってしまった」
「慣れるまではこうなるとお爺様は言っておられました」
「製薬生成は兎に角集中力が沢山必要になるからのう。それに普通は初級ポーションから慣れて行ったりするもんじゃ。蒸留水とかな? しかしユリの場合は最高級のポーションから初めておる。しかもギルドからの依頼じゃ。慣れるまでは倒れるのが普通じゃて」
「ネムッタラ カイフクマホウ カケテルヨ」
「色々ごめんね。助かってるわ」


 そう言ってベッドから起き上がり草履を履くと、イヤリングを付け直して立ち上がる。


「そう言えばお昼はちゃんと食べてる?」
「タベテルヨ」
「ドマも食べてるわよね?」
「食べてます。その間はここに俺の持ってる盗難防止のカギを付けるので誰も入れません」
「盗難防止って……」
「ユリは盗難される可能性があるからのう。正しい判断じゃ」
「な、なるほど」
「義理ノ姉ニ カギヲカケルッテ チョットスゴイヨネ」
「考えちゃ駄目!」


 思わずストップをかけたものの、確かに私は連れ去られる可能性が高いとはいえ、義理の弟に鍵を掛けられるというのは如何なものか!!
 夫的にはどうなの!?


「兄様なら、妥当な判断だなって」
「あ――……。そうね、エンジュさんなら言うわね」
「ただ、センジュとシンジュさんには複雑な顔をされました」
「でしょうね!」


 良かった、一応まともな考えが二人いたわ!
 ドマとエンジュさんって何処か抜けてるのよね……。似た者同士と言うべきかしら?


「それで、センジュが姉様にお握りを作ってくれていたので、お茶と一緒にと」
「わぁ、助かります。腹が減っては戦は出来ませんからね! 午後は冒険者ギルドに行って鉱石出しまくりですよ!」
「お供いたします」
「明日の予定は、朝商業ギルドに行った後は一旦家に帰ってポーション作って、午後は起きてから製薬ギルドに一応行ってみようかと思ってるの。作ったアイテムも多いし、一度納品はしておこうかと」
「分かりました」
「という事で、頂きます!」


 そう言うとお握りを食べつつお茶で口を潤しつつ、シッカリ食べて力を入れなくては。
 すると「ぷっ」と笑われたので「ん?」と返すと――。


「姉様、豪快に食べ過ぎです」
「次の戦いに向けて滾っているのよ。お腹が空いてたんじゃ力が出ないわ」
「それはそうですが、それにしても豪快でしたね」
「ふふっ! 姉弟なんですもの、隠し事は無しよ」
「分かりました。そう言う事にしておきましょう」


 しっかりお握りを食べ終わると手を洗ってからお茶を飲んで一服し、「さて、行きますか!」と気合を入れる。
 馬車に乗り冒険者ギルドに到着すると、懐かしい顔と出くわした。


「――ダンさん!!」
「ユリ!?」


 そう、シャース王国がまだあった頃助けてくれた冒険者ギルドマスターのダンさんだった。
 駆け寄るとモーゼのように道が開き、「ご無事で何よりです!」と伝えると奥からドナンさんもやってきた。


「久しぶりの対面か。良かったらダン、案内してやってくれや」
「分かりました」
「あれ、此処で働き始めたんですか?」
「ああ、今は書記をさせて貰ってる」


 そう会話しながら何時もの倉庫に向かうと、後ろについてきたドマに目を向け「あの子は?」と言われたので事情を説明し弟であることを伝えた。
 随分と驚かれたけれど、「確かに彼なら安心だろう」と太鼓判を押されたので胸を張って置いた。


「そりゃそうですよ、うちの弟は最強で強いんです」
「だろうなぁ。それで、スタンピードが起きた以上ちょっと武器や防具の消費が激しくてな。多めに一万ずつ出して欲しいという依頼なんだが、出来そうか」
「ええ、出来ます。各種ですか?」
「ああ、各種一万だ」
「タキちゃん、始めましょう?」
「ハーイ」


 そう言うと二人で「アイテム生成」と口にして銅鉱石、鉄鉱石、銀鉱石、プラチナ鉱石と出していく。
 塊でも出せるけど、出すと色々面倒と最初に注意されているのでそのままのスタイルだ。
 一万個になったらお互い魔法陣を止めて次の生成と繰り返し、夕方4時半頃には終わらせた。あれから結構スピードが速くなったのだ。


「随分と早くなったな」
「ええ、沢山出してますからね!」
「そう言えば結婚したんだってな、アルテミアさんの息子さんと」
「ええ、アルテミアさんは流行り病で亡くなっていらっしゃいましたが」
「だが、君と言う勝利の女神が来た。あのシャース王国も君を逃さなければ勝てただろうに、本当に必要なスキルを見落としたばかりに負けたようなものだ。その上スタンピード……。王家も国の連中も、周りを全く見ていなかった。そう言う国民性ではあったがね」
「ダンさん苦労多かったでしょう?」
「ははは、かなりね。それより商業ギルドに行くのなら気を付けるといい。シャース王国にいたギルド長が来ているんだけれど、随分とレイルさんと相性が悪くてな……。商業ギルドを追い出されそうになってるらいし」
「え、どっちがですか?」
「元シャースから来た方のギルドマスターがさ」
「ああ……」


 確かにこのダイヤの国で実績を上げてきたのはレイルさんであって、元シャース王国のギルドマスターではない。
 それを理解しきれない残念な頭なのだろう。
 良かった、あの時ダンさんのいる冒険者ギルドに行って良かった!
 運がついていて良かった!!


「まぁ、流石にレイスの奴もお前さんの事は秘匿にしたいんじゃないかな。仕事が終わる前に手紙を出しておきな。明日伺っても良いですかって」
「そうします」
「多分断られると思うから、その時はガーネット二号店だったか? そこで取引すればいい」
「そうしてみますね。ダンさん色々気にしてくれてありがとう!」
「いいってことよ! お互い乗り越えていこうぜ!」
「了解です!」


 こうして本当のギルマスであるドナンさんがやってくると、アイテムを鑑定してバッチリあったようで、お金を支払って貰い馬車に乗り込んで二号店へと帰る。
 その時――。


「あの男性が救ってくれたんですね?」
「ん? ああ、元シャース王国から出る前に色々と手助けしてくれた人なの。お爺ちゃん達との出会いもそうだったわよね」
「なつかしいのう……」
「ナツカシイネ」
「もうあの国は無いのだと思うと、精々するというか、なんというか」
「俺はこの国に来ていい思い出は姉様たちと出会う前はありませんでしたが、今は沢山あります。姉様や兄様は優しい……俺は……懐かしい」
「懐かしいって思うのね」
「ええ、酷く懐かしく感じる時があるんです」
「そう……」
「思い出せなくとも、こんなに懐かしく温かく感じるという事は、きっと俺は愛されていたのだと思います」
「うん」
「何も思い出せないのが悔しいですが……何時かは、何か分かれば良いのですが」


 そう語るドマに何もいせず、小さく「そうね」と呟き頭を撫でると、少し照れながら笑っている顔が幼く見える。
 二号店に帰宅すると各所にアイテムが不足している所がないかチェックしていき、少ない所にはドンドン入れて繰り返し、そろそろチャイムが鳴る頃に仕事を終えて本社二階に向かい、ロザリオスさんに商業ギルドに明日のお伺いを聞きたいと伝えると手紙を書いて送ってくれた。
 すると直ぐに返事が帰ってきて、明日朝こちらに来てくれることになったのだ。
 やはりダンさんがいった通り問題が起きているのね……。


「レイルさんが心配ですね」
「そうね……元シャース王国のギルマスがどんな人かは知らないけれど、傲慢そう……」
「そう言う国民性だったのなら、傲慢なんでしょうね」
「ちょっと安く出すかな……気持ちだけど」
「お優しい」


 こうして仕事を終えた皆が集まり、一日の出来事を話し合いながら何時城に持って行くか等、次の商売展開をどうするかなどを語り合い時間は過ぎて行ったのだった。
 その夜、食事を終えて暫くすると――。


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