石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

うどん五段

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46 貴族用護衛のドマと、姉弟契約を行い書類上では本当の姉弟になる。

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「でもドマ。私は婚約者が既にいますので、その方とその家族に反抗的な態度は駄目ですよ?」
「はい。あの、頑張りますので本当に気に入ったら、本当の姉弟の契約をして貰えないでしょうか?」
「え!?」


 思わぬ言葉に私が目を見開くと、ドマの目は真剣で、レイルさんはうんうんと頷いてから口を開いた。
 なんでもこの国では家族のいない護衛者、つまりドマのような子を気に入った場合、本当の自分の家族にする事が出来るという法律があるという。
 その場合、身元不明の護衛者から身元アリの護衛者になる為、相手がドマに課す内容が大分厳しい物を排除できるそうだ。


「つまり、ドマは今まで身元を証明できる人が居なかったから、辛い思いをした事があるのね?」
「はい……」
「場合に寄っては、その条件を飲まないのであれば仕事はやらないという貴族も多かったんだよ。内容に関して商業ギルドが駄目だと言っても、貴族は言う事を聞かないからね。それでドマはドンドン攻撃的になってしまったんだ」
「それでは、ドマが自分の身を守るためにドンドン過激になってしまったのと一緒だわ」
「そうなるねぇ……ある種のストレスと言って良いかも知れない」


 そう答えたレイスさんに、自分もまた身元不明で放り出されシャース王国で偶々運よく冒険者ギルドのギルマスに助けて貰ったからこそ、今がある事を思い出した。
 あの時はずっと心細かったけれど、その思いを今までずっとドマがしてきているのだと思うと、居てもたってもいられなかった。


「その姉弟契約は、お金はどれ位掛かります?」
「そうだね、契約書を記載したら二度と解除は出来ないけれど、大体金貨200枚かな」
「しましょう」
「良いんですか!?」
「ええ、私はドマの姉になります。それで良いですよね? レイスさんもそれを見越してだったんでしょう?」
「そう言う訳ではないが……良いのかい?」
「同じサクラギと言う名字も何かしらの縁を感じますし、是非」


 そう微笑むと、ドマは嬉しそうな顔で「姉様……っ」と口にして私も微笑んで頷き、レイルさんは「それならいいよ。お爺ちゃんたちも良いよね?」と伝えると満足そうに頷いていた。


「分かった。書類を持って来よう。お金はあるのかい?」
「アイテムボックスに一億は入っているので」
「ははは! 流石金の成る木だね!」
「その言い方嫌だわ」
「すまないね、だが直ぐ姉弟の契約を進めよう。魔法契約になるからちょっと待っててくれ」


 そう言うとレイルさんは出て行き、ドマは私にツカツカと歩み寄ると深々と頭を下げた。


「貴女は余りにも人が良すぎる……俺は不安です。でも、俺を弟と思って下さると言ってくれてありがとう御座います」
「実は私も身元不明で大変な思いをした事があるの」
「姉様も!?」
「だから他人事とは思えなくて……これから本当の姉弟になるけれどよろしくね?」
「――はい!」
「そうなると、私のレアスキルも見られても他人には言わないでくれる?」
「無論です」
「じゃあ……【お取り寄せ】」


 そう言うとタブレットが出て来てドマの背格好から選んだ着流しと作務衣を用意し、中に着る肌着は商業ギルドで今販売されている速乾吸収でヒンヤリする男性用肌着を取り出した。
 男性用肌着は裁縫ギルドで「これからも御贔屓に」と貰った物だった。


「こちらをあげるから、後で着替えて一緒に出ましょうね」
「懐かしい……着流し一式に袴に作務衣ですね」
「ふふ、夫となるエンジュさん達も作務衣は気に入って着てるのよ」
「色々隠すなら着流し一本ですが、動きやすさなら袴装備ですね」
「欲しかったら何時でも言って頂戴。色んな着物があるから一緒に楽しみましょう?」
「はい!」


 そう言うとアイテムボックスに仕舞いこんだドマ。
 どうやらアイテムボックス持ちらしい。


「お待たせ。契約書を持ってきたよ」
「ありがとう御座います」
「ドマも記載してくれ」
「はい」


 こうして姉弟の魔法契約を行い、本当の姉弟になったのだが、護衛者としての契約もした為、一ヶ月幾らと言う金額で毎月支払う事になった。
 支払う場合は銀行に行って支払えばいいらしく、私はこの貴族問題が片付くのがどれ位時間が掛かるか分からない為、一年契約を行い、その都度更新していくことにした。

 ドマの仕事内容は、一般的な護衛の為の仕事と、私の仕事の補佐が出来ればと言う事にしておいたのでかなり自由度は高い。出来ない事の方が多いけれど、見張り役等でお願いしたり、アイディアを相談した場合の話し相手となって貰う事になった。
 ドマは「こんな好待遇あっていいんだろうか」と呟いていたけれど、どれだけ酷い契約をしていたのかと考えるとゾッとする。


「じゃあ、後は銀行に行って一年分の支払いだね。ドマの場合家族からの護衛依頼だから、お金は余り貰えないけどいいかい?」
「はい、それでも十分なお金ですから」
「一年で金貨1,200,000枚。一か月で10万枚の計算だね。それでも君の値段からしてみれば安いけれど」
「私の値段って……」
「貴族が挙って吊り上げる程の金額だよ」
「ゾッとします」
「姉様は貴族が嫌いなのですね」
「ええ、得意ではありません。城に赴く時も何時も胃が痛くなるわ」
「ふぇっふぇっふぇ! 城の連中はワシ等がいるから何とかなるわい。じゃが貴族相手ではドマ、お主が頼りじゃぞ」
「はい! お爺ちゃん!」
「ボク タキ ダヨ」
「よろしくタキ」
「ヨロシクネ~」
「ではドマには着替えてきて貰って、必要な物を用意して貰って来よう。その間に何かお願いしたいことは?」
「そうでした、実は――」


 と、ドマが部屋を出て行ったのを見計らい、二号店の二階の開発場所を他人から見えないように工事して欲しいと頼むと、なら今頼んでる工事が終わったら直ぐ取り掛かって貰おうという事になった。
 無論私とエンジュさんが購入した家の二階もやり替えて貰うけれど。


「しかし面倒な貴族相手に目を付けられたもんだね」
「そうですね。王城に行けば絶対何かしらあると思っていたんですが……」
「早かれ遅かれそうなって居たさ。今頃国王陛下も大変だろうね。レジェンドモンスターのお爺ちゃんとタキが暴れたら国が終わるとさぞ慌てていると思うよ」
「あはははは……」
「王族が後ろ盾だと貴族連中が知れば手を出さなくはなる。だが用心に越したことはないし、護衛を常に連れて行くのは当たり前になるだろうね」
「ドマなら大丈夫だと思います。危険察知も悪意察知もお爺ちゃんたちは感じなかったようなので。寧ろ私はドマを大事にしたいとさえ思いました」
「そうか……今まで辛いのを耐えて来た子だ。大事にしてあげて欲しい」
「はい、私には妹がいたので、弟も欲しかったんです」
「そうなのかい? きっと喜ぶよ」


 そう話しているとノック音が聞こえ、袴に着替えたドマが立っており、「お待たせしました」と入ってきた。


「ははは! 本当に姉弟に見えるね!!」
「「ありがとう御座います」」
「暗器等は大分隠せますね」
「その上、刀も帯刀してるからいい威嚇にはなるよ」
「ええ」
「ドマ、頼りにしてるわ」
「はい姉様」
「では銀行に行って早速一年分支払わないとね!」
「姉弟になったのならドマに手渡してドマがお金を入れてくる事も出来るよ。銀行なんて貴族のうじゃうじゃいるところに行くのはお勧めしない」
「それもそうでした。ドマ、お金を渡すからお願い出来る?」
「はい姉様」


 そう言ってアイテムボックスから金貨120万枚手渡すと、ドマはアイテムボックスに入れて銀行へといった。
 その間はこの応接室で待つことになる。
 暫く談笑しながら待っているとドマは帰宅し、支払いが終わった事を告げると、「ではドマもこれから姉弟として頑張ってね」とレイスさんに言われ「今までありがとう御座いました」と告げると「いやいや、余り力になれなかったよ」と苦笑いし、私たちは馬車に乗り込み二号店ガーネットへと帰って行く。


「銀行では姉様の話題で持ちきりでした。行かなくて正解でしたね」
「ゾッとします」
「婚約者がおられるなら、早く結婚した方が良いかと」
「うう、でもせっかくドマと姉弟になったのに」
「姉様の身の安全優先ですから」
「ごめんねドマ」
「これからも優しい姉様でいて下さいね」
「ええ、出来るだけそうしたいわ」


 こうして馬車はガーネット二号店に到着し、私たちは馬車から降りて二号店の二階へと向かったのだった。
 すると――。



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