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31 困り果ててた冒険者ギルドと、新しい開発へ勤しむ!

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 そして翌日、私たちは早めの起床と早めのご飯を食べると馬車で【ガーネット二号店】へと入り、朝から三つの工場で鉱石と宝石を出しまくって用意を急いだのは言うまでもない。
 朝9時には傘下に入った方々が集まり、新しい二号店ガーネットでの仕事が始まった。
 広い倉庫に山ほどある材料に彫金師も付与師も大喜びし、仕事は着実に進んでいく。
 新しい100人の従業員は皆さんスキル7以上ある為、【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリー作りに励んで貰うことなった。


「期限は一応1か月の物と2か月のものがありますが、ドンドン作って下さい。多少多めでも構いません」
「先に金とプラチナの【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のアクセサリーからお願いします。こちらは急ぎですので1か月納品なので。個数は黒板に記載してますので担当しながらお願いします」


 こういった指示出しはエンジュさんとシンジュさん二人で朝に行い、昼にロザリオスさんが個数の確認をしに行き黒板を書き換える。
 私は定期的に石と宝石確認を行い、鉱石と宝石を満タンにしていくのが日課となりそうだ。
 しかし、週に1回、月に2回程それが出来ない日がある為、その時は在庫が無くなったら早く帰るという風になった。
 無論店の休みは土日だ。
 有給制度も導入したり、病気の際には給料の半分は出すものの、医師の署名が必要と言う事も決めた。
 妊娠出産に関する取り決めでは、御祝い金なども用意し、出産して戻って仕事をしたい場合は再雇用と言う契約もガーネットでは取り入れた。
 これには女性陣から喜びの声が上がりホッとする。
 やはり子供を産んだ後は中々仕事が決まらなかったりするらしい。


「と、いう訳で本日始動なんですが……暫くお休みさせて頂いていた冒険者ギルドに仕事をしに行ってきます!」
「必ず馬車を使うんだぞ」
「了解です!」


 そういうと二人は私の書いたノートを見ながら会話をし始め、私は馬車のある所まで行くと冒険者ギルドまで連れて行って貰う事になった。
 冒険者ギルドに馬車で来るのは珍しい事だけど、お爺ちゃんもタキも「ここ最近忙しかったからのう」「アルジ チョー イソガシカッタネ!」と慰めてくれて嬉しい。
 一応護衛の二匹がいるんだから歩いても大丈夫なのに、結構エンジュさんは過保護なのだ。
 冒険者ギルドに到着すると、馬車の停泊所で待っていて欲しいと伝えてから冒険者ギルドに入って行く。
 久々の私の登場に道がモーゼの海割りように開いたが、目を輝かせた受付嬢により奥に通され、何時もの倉庫に到着。
 魔道具をセットして部屋をヒンヤリさせつつ仕事をしだすと、ギルドマスターのドナンさんが走ってやって来た。


「ユリ!! 本当に、本当に待っていたぞ!! カツカツなんだ! 足りないんだ!!」
「きょ、今日は多めに出した方が良さそうですね」
「かなり多めに頼む! 各種1万個ずつ!」
「うわぁ」
「鉄の国サカマル帝国から入ってくるはずだった便が、がけ崩れで通れなくなって全く足りないんだ」
「それは……かなり大変ですね。1万でも足りないのでは?」
「正直足りない……だが君も忙しいだろう?」
「そうですね……。スキルが上がったので少し早めに出しますので、二万ずつだったら行けます」
「それで頼む!! 銅も何もないんだ」
「タキちゃん全力で!」
「ハーイ」


 こうしてタキちゃんと二人本気モードでアイテム生成していき、昼休み前までに戻りたかったが昼の三時まで掛かってしまった。
 かなりお腹が空いたけど各種二万ずつ用意でき、ギルドマスターを呼ぶと駆けつけてくれた。


「いや――本気で助かった。今週は、後二回来て欲しいんだ。その時も二万ずつになるがいいか?」
「がけ崩れなら仕方ないですからね」
「支払いは来週必ず払う」
「もう、ツケですね? 絶対ですよ?」
「勿論だとも!! 直ぐ売れるから金は用意できる」
「なら良かったです。お腹が空いたので帰ります」
「ああ、本当にすまないな」
「いえいえ~。後二回もよろしくお願いします」


 そう言うと馬車に乗ってガーネット二号店へと戻り、やっと本社の二階に上がるとエンジュさんとセンジュくんは心配していた様で、事情を話すと理解して貰えた。
 今週は後二回行くようになった事も告げると了承してくれて、ホッと安堵の息を吐く。


「でもお腹空きました……」
「わしもじゃ」
「タキモー」
「俺の作った昼ご飯なら残ってますよ。オムライスですが」
「「「わーい!!」」」


 こうして遅めの昼ごはんを私とお爺ちゃんとタキちゃんとで食べて満足し、次回は倉庫の中で【お取り寄せ】してご飯を食べる事を告げると「分かりました」と笑顔で返事をしてくれた。
 洗い物を終えて調味料をガンガン【お取り寄せ】で出して冷蔵庫の中もタップリにすると、新しいアイテムの開発に頭を悩ませる二人の元へと向かう。


「出来るだけ魔物討伐隊に有利な物を作りたいんだが」
「魔導ランタンとかは出てますよね。魔物討伐隊では寝る時はどうしてたんですか?」
「地面にベタッと」
「疲れ取れませんよね……」
「かといって鎧を脱ぐ訳にもな」
「すみません、鎧の下って何着てます?」
「普通に肌着だが?」
「夏用の?」
「夏用だな」
「涼しい奴とかないですか? これとかそれを思って書いたんですが」
「クール肌着でしょう?」
「ええ。詳しく書くのを忘れてましたけど、速乾吸収でヒンヤリするのがあちらの世界ではあったんですよね」
「「速乾吸収でヒンヤリ」」
「肌着自体が薄手なんですけど結構丈夫で、汗を沢山吸い込むのに即乾くんですよ」
「「ほお……」」
「布地開発には時間が掛かりそうですけど、【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のついたアクセサリーを付けてるなら、肌着に速乾と吸収の付与をしたらどうでしょう?」
「なるほど、それなら……」
「靴下もそれでありますね」
「実に素晴らしいな!」
「【速乾付与】と【吸収付与】……。吸収付与なら誰でも出来ますが、速乾は考えた事なかったです」
「センジュ君が作れるのなら試してみては?」
「そうですね……幾つか肌着を購入しないとですが」
「俺の予備の肌着でやってみよう。入れ替え用に5枚買ってあったんだ」
「ではそれを持って来て貰えますか?」
「いっそ買いに行った方が早いのでは?」
「……買いに行くか。何枚欲しい」
「そうですね、魔物討伐隊時に来ていたようなのを10着お願いします」


 こうしてエンジュさんは走って馬車に乗っていったようだが、私は【お取り寄せ】で速乾吸収でヒンヤリ肌着を一枚購入し、センジュ君に渡した。
 サラサラ生地には驚いていたけれど、「裁縫ギルドに声を掛けていいかもですね」と口にし、この手の布地があれば肌着を作って欲しいと依頼する事に決めたようだ。
 その上で、吸収の付与は色々な所で使われているらしく、付与師なら誰でも使えるらしい。
 ただ、速乾は考え付かなかったそうだ。


「汗でべたつかないって言うのは大きいですよね」
「そうですね……特に蒸し暑い鎧の中とかはベタベタしているだけで気持ち悪いでしょうし」
「というか、この生地って貴族なら使っている生地だと思うんですよ」
「ああ、確かに」
「王国騎士団は使っていても、他の騎士団は使ってないという感じがします」
「かもしれませんね」
「多少高くともお願いしてみる価値はありそうです」
「ええ、そうですね。ついでに言うと、速乾吸収は女性用下着にも欲しいです」
「あああ……なるほど、女性は二か所下着があるから」
「ええ」
「と言う事は、【速乾付与】はかなりお金になりますよ? ほいほいそんな知識出していいんですか?」
「だって、嫁ぎ先ですし」
「そうですが……姉上は人が良すぎるので不安です」
「この案は流石にセンジュくんとエンジュさんにしか出しませんよ」
「助かります……。そうですね、【速乾付与】……イメージは出来てますし、付与も多分可能です。何度か試して安定させないとですが」
「ひらめきが付与師の命なんですね」
「そうですね」


 そう会話しているとエンジュさんが帰宅し、肌着をまず10枚用意し、付与の力を抑えて、次第に強くしての【速乾付与】と【吸収付与】を肌着10枚にしていく。
 何気なく50枚買ってきたという肌着は、残ったらどうするんだろうかと思いつつも、邪魔ならアイテムボックスに入れようと思った。


「これで10段階の付与をした訳ですが、霧吹きとコップに水を入れて持って来ましょう」
「各自確認だな」
「そうね」


 そうして霧吹きを各自用意し、コップに水を入れ三つの机の上でまずは弱い付与から一つずつ始めていく。
 一番弱い付与は全く駄目で、二番、三番も駄目。
 ただし、三番に関しては若干の速乾はあったようだ。

 続いて中くらいの付与をした物でやってみると、吸収したけど速乾とまではいかない。
 少し時間は掛かるようだ。

 最後に強い付与の速乾と吸収は、吸収して5秒後には速乾が働きサラサラになった。
 ではこれを水に浸したらどうかの実験を、水に入れて出して絞ってをすると、5秒から10秒以内に乾燥した。


「「「おおおおおおお」」」


 思わず歓声が上がる。
 強めの付与が服には良いらしい。
 ただし、ヒンヤリとまではいかないのが残念過ぎる。


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