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29 家では手狭! 効率アップの為にガーネット二号店となる作業用倉庫をツケ払いで貸して貰う!

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 無論魔法契約をしているので、私のスキルの事も家族や他人には一切喋れない。
 その代わり、彫金師にとっては質のいい鉱石が使えるし、付与師は不純物が入っていない鉱石が使える為、付与がしやすくなるというメリットはある。
 また、他所に店を持っている人たちは、定期的にガーネットまで来てもらい、アイテムボックスで鉱石や宝石を持ち帰って仕事をする事が義務付けられたが、それらを転売する事は契約違反となる為出来ないように魔法契約をしている。
 そこまで徹底した結果、一週間後商業ギルドマスターのレイルさんは依頼していた三人をガーネットへ連れてきてくれた。


「で、今日からこちらに派遣して働いて貰う三人だよ。ウィスパー君は『会計士』、カラク君は『書類整理係』、ロザリオス君は『依頼担当者』となる。皆挨拶を」
「初めまして、ウィスパーです。会計はお任せください」
「カラクです。書類整理は是非お任せください!」
「ロザリオスです。依頼担当だけどよろしくね?」


 一人オネェが入っていた。
 この世界にも居るんだ、ちょっと驚き。
 でも新鮮な気持ちを味わいつつ、よろしくお願いしますと頭を下げ二階へと案内する。
 もう直ぐ夫婦の彫金師と付与師も来るが、取り急ぎして貰いたいことがあったのだ。


「こちらが事務室、まぁ、執務室ですね。改装したばかりなのと、勝手が分からない為工事を受け持って下さった方にお願いしました。それと連絡用魔道具から既に依頼が結構入っておりまして、正直大変な事態になりそうなので、現在傘下の魔道具店全員にアイテムを取りに来て貰っている最中です」
「見せて頂いても?」
「はい」


 そういうと依頼担当のロザリオスさん、に書類を手渡した。


「王家の財務部より【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のついたアクセサリーを至急50個先に納品。こちらはネックレイルで金を使う事との事。魔物討伐隊からもプラチナ鉱石を使ったネックレイルでこちらも【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のついたアクセサリーをまずは40個、その後時間が出来次第40個ずつを依頼。更にレトルトの依頼がスープ80人分で100個の依頼。その他の食べ物のレトルトは月1で一週間分納品依頼と。こちらは調理ギルドに投げますわ。それと水筒の発注が80人分とありますわね。それに【命の花びら】の注文が80個ですか」
「今一斉に傘下の方々に鉱石や宝石を取りに来て頂いている最中です。この依頼が全て一か月以内なので、全員で【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】のついたアクセサリーを一気に回すことになりそうですね」
「この家の一階の彫金師たちには水筒をお願いする予定だ。俺が居ないと水筒の作り方を教えらえられないからな」


 そう苦い声を上げたのはお父様。
 そうね、水筒はお父様の汗と涙の結晶ですものね!!
 是非頑張って頂きたい!!
 するとセンジュくんが暫く考え込んだ末、こんな事を口にした。


「レベルの低い付与師には【迷わずの鈴】【帰還の護符】の作成をして貰おうと思います。【命の花びら】は付与レベル7ないと出来ないので、7レベル以上は先に【命の花びら】を、彫金レベル7の方にはその【命の花びら】の彫金をさせます。7以上の方々には【真空付与】と【体感温度が下がる付与】と【身体を若干冷やす冷風付与】ですね」
「分かりましたわ。その様に連絡いたします」
「金額はどうなるのでしょう」
「そうですね、金額は――」


 と、その後お金の話にもなり、今回の依頼だけでとんでもない金額が来る事になったけれど、傘下に入った方には長くいて貰いたい為、マージンは多めに取って貰うようにしているのだ。
 それでもかなりの金額がガーネットには入るけれど。


「こうなると、新しい開発は難しいな。エンジュとセンジュとユリは新しい開発出来そうか?」
「「時間を見て何とかしてみます」」
「私も他所での依頼もあるので、そこをクリアしながらですかね」
「それでいい。少しずつ開発を頼む」
「「「分かりました」」」
「開発は今まで通りガーネットの店でしてくれ。こっちは俺がなんとかしよう」
「「「お願いします」」」
「あとお聞きしたいんだけど、傘下の方々の家の名前や店の名前ってどれかしら?」
「こちらにリストを作っておきました。付与師のレベルと彫金師のレベルも書き込んでます。レベルが上がれば随時書き換えになりますが」
「ありがたいわ。これで色んな所に依頼が出せるから」


 こうしてスタートした【王家御用達店】と【魔物討伐隊御用達】のスタートは、正に戦争という忙しさから始まった。
 後は三人にお任せし、傘下の人たちに持って行って貰う為の素材を用意する。一階に広くとった鉱石置き場と宝石置き場に大きな木箱をいくつも並べ、まずは鉱石置き場から金や鉱石をドンドン出しては入れて行く。
 多分ここにある鉱石はあっという間になくなるだろう。
 更に宝石部屋に移動してこちらもドンドン宝石を作っては出し、ズラリとここだけで何億かの宝石が並んだ。

 それらが済んだ頃傘下の店の方々でアイテムボックス持ちが集まり、ロザリオスさんから依頼内容を聞いてザワリとしつつも、鉱石部屋と宝石部屋に皆さん行き来しながらゴッソリ持って行かれた。
 転売できないとは言え、凄い量があっという間に消えた。
 そこで店の裏手に置いてあった空の木箱をエンジュさんとセンジュ君と中へ運び入れた。更に私は「アイテム生成」しながら金銀プラチナをドンドン詰めていった。
 毎回此処がいっぱいの状態にしておかないと、全員に行きわたらないかもしれない。
 宝石も、もう一度いっぱいにすると、フウッと息を吐いたところでレイルさんが話しかけて来た。


「やっぱり離れてると効率が悪いと思うんだけど、どう思う?」
「そうですね、大きな作業スペースで集まって仕事して欲しいですね」
「そうだよね。前々回王家御用達だったお店が使っていた大きな作業スペースがあるんだけど、借りない?」
「借りましょうか。でもお父様に一度聞いて下さい」
「分かった、聞いてこよう」


 そういうとレイルさんはお父様に事情を説明し、「それならそこを借りたい」と言う事になった。場所は今ガーネットからそう遠くなく、歩いて10分程度の所にある倉庫が三つと、大きな建物で二階建ての作業場が三つ。三つの作業場にはそれぞれ広々とした作業スペースと、作業に使う鉱石や宝石の保管場所が完備されている。建物の一つは本社として使われていたため、一階に受付があるらしい。無論本社の二階には商談スペースと開発用作業スペース、更に事務処理用のスペースもあるらしく、欲しい所は全て揃っているそうだ。


「ツケ払いしてるの、これで少し減らない?」
「ああ、それで暫く無料で貸してくれるんですか? それともつけ払いが終わるまで無料にしてくれるんですか?」
「ツケ払いが終わるまで無料で貸します」
「数十年単位ですよ?」
「ごめんね――!! 借金してたお店が皆さん夜逃げしたの――!!」
「「「ああ……」」」
「それで支払えなくなっちゃって――!!」
「いえ、そういう事なら遠慮なくお借りします」


 まさか、ツケ払いがこんな形で返って来るとは。
 となると店はこのままで工場……と言うのだろうか、そこの手直しをしないとと思っていると、そこもツケ払いで出してくれるらしく、一週間後には完璧に仕上げてくれることになった。無論看板も大きく【ガーネット二号店】と入れてくれるらしい。


「このお店はお父様の奥さんとの思い出の場所だろう? 弄れないからね」
「そうですね」
「一週間の間に完璧な形に仕上げてくるから! 調理ギルドの近くだから食事は調理ギルドの食堂が借りられるようにしてくるから!!」
「絶対ですよ!?」
「任せて!!」


 こうしてレイルさんは去って行き、翌日商業ギルドに呼ばれ、私のツケ払いと言うのがある為、私が倉庫の管理者になるしかなく、土地と建物をツケ払いで借りることになった。
 無論既に昨日から工事が入っているそうで、おまけで「二階に休憩スペースと料理が出来るスペースは作って下さい。試作品作りたいので」と言えば了承して貰えた。
 無論大きな冷蔵庫やコンロも用意してくれるらしい。助かる!


「後は彫金師と付与師をもう少し増やすかだね。増やしたいならお勧めの所があるんだけど」
「本当ですか?」
「中規模のお店だったんだけど、オーナー家族が今回の宝石関連でドロンしちゃってね。残ってた彫金師と付与師がゾロッと50人ずつ置き去りにされたんだよ。職を失うのも大変だし、彼らみんな真面目だからどうかなと」
「お父様とエンジュさんたちどう思います?」
「まぁ、ユリの危険察知と悪意察知に反応した人はなしだが……そうでないのなら今からでも商業ギルドで面接して、大丈夫そうなら雇ったらどうだ?」
「と、いう事です」
「分かった。直ぐ連絡するよ」
「では俺は先に帰る。そろそろ仕事場に彫金師たちが来るからな」


 こうしてお父様だけ先に帰り、一時間後商業ギルドには合計100人の彫金師と付与師が集まり面接を行う事になった。
 すると――。


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