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06 推薦状のお店が閑古鳥!? 嵌められて借金背負ったですって!? 私が何とかしましょうか。
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馬車は動き出し、私たちは【金の国シャース王国】から、隣の国にある【宝石の国ダイヤ王国の王都ダリルシェイド】を目指す。
その五日間の旅は結構あっと言う間で、敵も本当に出なくて国境を渡ると隣国に入り、初夏のような香りを感じながら気候が穏やかな【宝石の国ダイヤ王国】に入り、そのまま二日走ると馬車はついに首都であるダリルシェイドに到着した。
門番に従魔証明と冒険者カードを提示して中に入ると、白い壁が似合う綺麗な街並みへと入って行く。
「推薦状のあるお店にも急ぎたいけど、まずは何処にあるか聞かないとね」
「そうじゃのう」
「すみませーん」
そう言うと近くのお店の店員に声をかけ、【ガーネット】と言う店を探していると言うと、少し困った顔をしてから、付与アイテムが集まって売っているお店のある場所を教えて貰い、そこに【ガーネット】と言う店があると聞いた。
すると――。
「ただ、アルメリアさんなら亡くなったわよ?」
「え!?」
「もう三年も前かしら。流行り病で……」
「でも、お店はあるんですよね?」
「ええ、今は魔物討伐隊だったお兄さんがそこを辞めて彫金師をしながら、弟さんの付与師とお店をしているけれど……余り評判がよくなくて」
「あらぁ」
「借金まであるって話よ?」
「借金ですか」
「返せるか分からないけど、どうなるのかしらねぇ」
そう言われると不安だ。
でも行ってみないと分らない。
私は意を決してお店に向かう事にした。
ダリルシェイドの北にはダイヤ王国の城があり、その北側に店はあるのだと言う。
貴族や平民も来やすい区画にあるらしく、日差しが若干強いなと思いながらお店に向かうと、確かに他の店は賑わっているのに閑古鳥が鳴いている。
此処まで着たら推薦状を見せるだけでも違う!!
ドアを開けて「すみませーん!」と声を上げると、奥から背の高い銀髪の男性が出て来た。
「はい、えっと」
「すみません、私ユリと申します。此方を先に読んで頂けませか?」
そう言ってダンさんからの推薦状を取り出し男性に見せると、「シャース王国の冒険者ギルドから?」と不思議そうにしながら中を読み、青い瞳で釣り目を見開いてこちらをジッと見てきた。
そしてもう一度手紙に目を通すと「なるほど」と口にする。
「話は分かった。俺の名はエンジュ。この店の店長の息子だ」
「店長さんじゃなかったですか。貴方がもしや魔物討伐隊から彫金師になったっていう」
「ああ、その通りだ」
「店長さんはどちらに?」
「一応手紙は見せてくるが……ちょっと待っていてくれ」
そう言うと奥に向かい、何やら話し声が聞こえてくる。
そしてドスドスと音が聞こえるとエンジュさんが年取ったらこんな感じかなって言う40代の男性が出て来た。
まぁ、40代くらいであのイケメンが生まれるだから早く結婚したんだろうな。
「オイ娘、この手紙は本物か?」
「はい」
「そうじゃよ。さっきワシらはこのダリルシェイドについたばかりじゃて」
「ソウダヨー」
「従魔、名前はホムラとタキで合ってるか?」
「うむ、ワシがホムラじゃ」
「ボク タキダヨー」
「それで、雇って貰えますでしょうか……?」
そう問い掛けると親父さんは頭を書きながら溜息を吐いて、「無理だ」と口にした。
何でも店に借金があるらしく、その借金を作ったのはエンジュさんだと言う。
驚いて口を押えた私にエンジュさんは眉を寄せて立っているが……。
「こいつには婚約者がいたんだが、その元婚約者がアレコレ仕事を持ってきたは良いが捌けなくてな。依頼の取りすぎだと言うエンジュと喧嘩して婚約破棄。借金だけが残ったって奴だ」
「お幾らですか?」
「金貨6万枚。とても払いきれない。今も生活費だなんだと金が掛かるってのに、情けない事に彫金のアイテムも買えない。首が回らん状態だ」
「なら、私が冒険者ギルドで稼ぐんで、その借金私が一旦引き受けます」
「「は?」」
「本当ですか!?」
そう言って出て来たのは13歳くらいの男の子だ。
この子もまたお兄さんに似ていて綺麗な銀髪をポニーテールにしている。
どっちかと言うと女の子だとこんな感じかな? って感じだけど男の子だ。
「あの、俺センジュと申します……付与師をしてます」
「初めまして、ユリです」
「ホムラじゃ」
「タキダヨ」
「お願いです。まるで兄上を陥れるような酷い依頼を受けられたんです……。まるで嵌められたみたいで……。二日以内に借金払えなかったら俺はその兄上の元婚約者のいる店に連れて行かれることになっていて」
「なるほど、人身売買みたいなものですか。見過ごせませんね」
「だが、俺達では金が……」
「私が作ります。というか今作ります。店の奥は作業場ですか?」
「お? おお」
「失礼します」
そう言うと奥に入らせて貰い、綺麗に掃除された机を前に椅子に座り――。
「お父様?」
「お、お父様!?」
「こちらで金塊って幾らくらいになります?」
「き、金塊か? 金塊なら今戦争で金が入ってこないから……金貨500万枚だな」
「良いでしょう。手切れ金です。払って差し上げます」
「「「え」」」
「アイテム生成、金塊」
そう言うと少し長めの魔法発動音と共に魔法陣が現れ、形は悪いが金塊が3個程落ちて来た。
鑑定すると純度の高い混じりっけなしの綺麗な金塊だけど少し形が悪い。スキルが低いからだと理解するが、タオルの上に落としたのでそのままタオルで包んで上を結ぶ。
三人は呆然としていたけれど、私が笑顔で振り返り真っ直ぐにエンジュさんを見ると――。
「エンジュさん」
「は、はい!」
「この金塊で貴方の借金を私が買います。お父様、この家に私たちを置いてください」
「お、おう……いやいや、こんな男所帯に年頃の娘が、」
「アルメリアさんの血縁とでも言っておけばいいです。御着物お好きだったんですよね?」
「何故その事……ダンの野郎か!」
「ええ、黒髪の美しい女性だったと聞いています。私も幸い黒髪です。アルメリアさんの血縁者と言っても問題は無いでしょう?」
「まぁ、確かにアルメリアもお前さんみたいに猫っぽい所はあったが」
「従姉妹と言う事にしておいてください」
「む、むう」
「それで、エンジュさん。これから私は貴方の借金を買います。どこにお金を支払いに行けばいいです?」
「あ、ああ……商業ギルドだが」
「丁度いいです。私も商業ギルドには行きたかったので。あと金塊一つは手元に置いておきますが、こちらはセンジュ君を難癖付けて連れてこうとした場合、私がセンジュ君を買うお金です」
「俺を買う!?」
「家族と離れ離れになっていいんですか?」
「それは……困ります」
「ですよね? 何もお二人にお金を返せとは言いません。これからお世話になりますし、私は屋根のある家で生活が出来て、仕事場もある。お互い嬉しいならそれでいいんです」
はっきり真っ直ぐ三人を見つめて口にすると、お父様は涙を溜めて頭を下げ、エンジュさんは「本当にすまない」と頭を下げ、センジュ君は「お願いします」と口にした。
その後金塊をエンジュさんに持って貰い、私とエンジュさんは二人で商業ギルドへと向かう。
商業ギルドと冒険者ギルド等のギルドは東西南北の真ん中に集まっているらしく、そこまで歩いて行くと、如何にも儲かってますって感じの商業ギルドへと入って行く。
無論職員は私をスルーしたけれど、エンジュさんを見ていい顔はしない。
しかし、私は敢えて笑顔で受付に行った。
「すみません、売りたいものが御座いまして……それもかなりありまして。個室を用意して頂けませんでしょうか?」
「売りたいものですか? は――……直ぐ案内します」
「それと、ギルドマスターに挨拶をしておけとシャース王国の冒険者ギルドマスターに言われているので、ギルドマスター様にお会いしたく」
「分かりました。部屋にご案内しますので暫くお待ちください」
「ありがとう御座います」
商売何事もこっちは売る側だ。多少強気に出てもいい筈。
後ろについてくるエンジュさんに頷くと案内された部屋で待つことになった。
暫くするとドアが開き、ダンディなおじ様がやってくると、どうやらここのギルドマスターらしい。
「私がダイヤ王国首都ダリルシェイドの商業者ギルドマスターだが?」
「初めまして、ユリと申します。この度お売りしたい物と、お支払いしたいものがありまして来ました」
「お支払い? ああ、エンジュ君の借金ですか? でも6万枚の金貨ですよ? 今も請け負った先からお金を吊り上げられていて」
「では、それらの方々から受ける借金、これで手切れ金になりますかしら?」
そう言うとエンジュさんに声をかけ、机の上にタオルに入った金塊を二本見せると、ギルドマスターは口に手を当て驚いてから、鑑定をしているのか「ほおお……素晴らしい」と声を上げた。
「これにて借金は帳消し。出来ますよね?」
「ああ、こんな素晴らしいもの……イヤイヤ待ちなさい。手切れ金にするにしても余りにも其方が払うお金が大きすぎる」
「ええ、ですので悪い噂も全てまとめての手切れ金です。それが出来るなら金塊でお釣り無しで支払いますわ」
まさかそこまで言われると思っていなかったのだろう。
暫くギルドマスターは黙った後、強く頷き「良いでしょう。商業ギルドが責任をもって噂も消します」と言ってくれた。
「ですが、本当に宜しいんですね?」
「構いません。これでエンジュさん、センジュさんは無事ですよね?」
「流石にこれだけの物で支払ったのに、センジュくんを渡せと言う馬鹿がいたら見てみたいよ」
「では、早速商業ギルドで動いてくれますよね?」
「ああ、直ぐに動こう」
そう言うと職員を呼び、職員も机の上にある金塊に驚きギルマスが何かの指示を出すとバタバタと商業ギルドの職員が走り始めた。
ふう……これで【ガーネット】は守られるし、何とかなりそう。
さて、此処からは私がもうひと踏ん張りする番よ!!
「良かったですね、エンジュさん」
「君は……」
「良かった事にしましょう?」
「……ああ」
少しだけ微笑んだエンジュさんから視線を戻すと、目の前に座ったギルマスと向かい合う事になった。
その五日間の旅は結構あっと言う間で、敵も本当に出なくて国境を渡ると隣国に入り、初夏のような香りを感じながら気候が穏やかな【宝石の国ダイヤ王国】に入り、そのまま二日走ると馬車はついに首都であるダリルシェイドに到着した。
門番に従魔証明と冒険者カードを提示して中に入ると、白い壁が似合う綺麗な街並みへと入って行く。
「推薦状のあるお店にも急ぎたいけど、まずは何処にあるか聞かないとね」
「そうじゃのう」
「すみませーん」
そう言うと近くのお店の店員に声をかけ、【ガーネット】と言う店を探していると言うと、少し困った顔をしてから、付与アイテムが集まって売っているお店のある場所を教えて貰い、そこに【ガーネット】と言う店があると聞いた。
すると――。
「ただ、アルメリアさんなら亡くなったわよ?」
「え!?」
「もう三年も前かしら。流行り病で……」
「でも、お店はあるんですよね?」
「ええ、今は魔物討伐隊だったお兄さんがそこを辞めて彫金師をしながら、弟さんの付与師とお店をしているけれど……余り評判がよくなくて」
「あらぁ」
「借金まであるって話よ?」
「借金ですか」
「返せるか分からないけど、どうなるのかしらねぇ」
そう言われると不安だ。
でも行ってみないと分らない。
私は意を決してお店に向かう事にした。
ダリルシェイドの北にはダイヤ王国の城があり、その北側に店はあるのだと言う。
貴族や平民も来やすい区画にあるらしく、日差しが若干強いなと思いながらお店に向かうと、確かに他の店は賑わっているのに閑古鳥が鳴いている。
此処まで着たら推薦状を見せるだけでも違う!!
ドアを開けて「すみませーん!」と声を上げると、奥から背の高い銀髪の男性が出て来た。
「はい、えっと」
「すみません、私ユリと申します。此方を先に読んで頂けませか?」
そう言ってダンさんからの推薦状を取り出し男性に見せると、「シャース王国の冒険者ギルドから?」と不思議そうにしながら中を読み、青い瞳で釣り目を見開いてこちらをジッと見てきた。
そしてもう一度手紙に目を通すと「なるほど」と口にする。
「話は分かった。俺の名はエンジュ。この店の店長の息子だ」
「店長さんじゃなかったですか。貴方がもしや魔物討伐隊から彫金師になったっていう」
「ああ、その通りだ」
「店長さんはどちらに?」
「一応手紙は見せてくるが……ちょっと待っていてくれ」
そう言うと奥に向かい、何やら話し声が聞こえてくる。
そしてドスドスと音が聞こえるとエンジュさんが年取ったらこんな感じかなって言う40代の男性が出て来た。
まぁ、40代くらいであのイケメンが生まれるだから早く結婚したんだろうな。
「オイ娘、この手紙は本物か?」
「はい」
「そうじゃよ。さっきワシらはこのダリルシェイドについたばかりじゃて」
「ソウダヨー」
「従魔、名前はホムラとタキで合ってるか?」
「うむ、ワシがホムラじゃ」
「ボク タキダヨー」
「それで、雇って貰えますでしょうか……?」
そう問い掛けると親父さんは頭を書きながら溜息を吐いて、「無理だ」と口にした。
何でも店に借金があるらしく、その借金を作ったのはエンジュさんだと言う。
驚いて口を押えた私にエンジュさんは眉を寄せて立っているが……。
「こいつには婚約者がいたんだが、その元婚約者がアレコレ仕事を持ってきたは良いが捌けなくてな。依頼の取りすぎだと言うエンジュと喧嘩して婚約破棄。借金だけが残ったって奴だ」
「お幾らですか?」
「金貨6万枚。とても払いきれない。今も生活費だなんだと金が掛かるってのに、情けない事に彫金のアイテムも買えない。首が回らん状態だ」
「なら、私が冒険者ギルドで稼ぐんで、その借金私が一旦引き受けます」
「「は?」」
「本当ですか!?」
そう言って出て来たのは13歳くらいの男の子だ。
この子もまたお兄さんに似ていて綺麗な銀髪をポニーテールにしている。
どっちかと言うと女の子だとこんな感じかな? って感じだけど男の子だ。
「あの、俺センジュと申します……付与師をしてます」
「初めまして、ユリです」
「ホムラじゃ」
「タキダヨ」
「お願いです。まるで兄上を陥れるような酷い依頼を受けられたんです……。まるで嵌められたみたいで……。二日以内に借金払えなかったら俺はその兄上の元婚約者のいる店に連れて行かれることになっていて」
「なるほど、人身売買みたいなものですか。見過ごせませんね」
「だが、俺達では金が……」
「私が作ります。というか今作ります。店の奥は作業場ですか?」
「お? おお」
「失礼します」
そう言うと奥に入らせて貰い、綺麗に掃除された机を前に椅子に座り――。
「お父様?」
「お、お父様!?」
「こちらで金塊って幾らくらいになります?」
「き、金塊か? 金塊なら今戦争で金が入ってこないから……金貨500万枚だな」
「良いでしょう。手切れ金です。払って差し上げます」
「「「え」」」
「アイテム生成、金塊」
そう言うと少し長めの魔法発動音と共に魔法陣が現れ、形は悪いが金塊が3個程落ちて来た。
鑑定すると純度の高い混じりっけなしの綺麗な金塊だけど少し形が悪い。スキルが低いからだと理解するが、タオルの上に落としたのでそのままタオルで包んで上を結ぶ。
三人は呆然としていたけれど、私が笑顔で振り返り真っ直ぐにエンジュさんを見ると――。
「エンジュさん」
「は、はい!」
「この金塊で貴方の借金を私が買います。お父様、この家に私たちを置いてください」
「お、おう……いやいや、こんな男所帯に年頃の娘が、」
「アルメリアさんの血縁とでも言っておけばいいです。御着物お好きだったんですよね?」
「何故その事……ダンの野郎か!」
「ええ、黒髪の美しい女性だったと聞いています。私も幸い黒髪です。アルメリアさんの血縁者と言っても問題は無いでしょう?」
「まぁ、確かにアルメリアもお前さんみたいに猫っぽい所はあったが」
「従姉妹と言う事にしておいてください」
「む、むう」
「それで、エンジュさん。これから私は貴方の借金を買います。どこにお金を支払いに行けばいいです?」
「あ、ああ……商業ギルドだが」
「丁度いいです。私も商業ギルドには行きたかったので。あと金塊一つは手元に置いておきますが、こちらはセンジュ君を難癖付けて連れてこうとした場合、私がセンジュ君を買うお金です」
「俺を買う!?」
「家族と離れ離れになっていいんですか?」
「それは……困ります」
「ですよね? 何もお二人にお金を返せとは言いません。これからお世話になりますし、私は屋根のある家で生活が出来て、仕事場もある。お互い嬉しいならそれでいいんです」
はっきり真っ直ぐ三人を見つめて口にすると、お父様は涙を溜めて頭を下げ、エンジュさんは「本当にすまない」と頭を下げ、センジュ君は「お願いします」と口にした。
その後金塊をエンジュさんに持って貰い、私とエンジュさんは二人で商業ギルドへと向かう。
商業ギルドと冒険者ギルド等のギルドは東西南北の真ん中に集まっているらしく、そこまで歩いて行くと、如何にも儲かってますって感じの商業ギルドへと入って行く。
無論職員は私をスルーしたけれど、エンジュさんを見ていい顔はしない。
しかし、私は敢えて笑顔で受付に行った。
「すみません、売りたいものが御座いまして……それもかなりありまして。個室を用意して頂けませんでしょうか?」
「売りたいものですか? は――……直ぐ案内します」
「それと、ギルドマスターに挨拶をしておけとシャース王国の冒険者ギルドマスターに言われているので、ギルドマスター様にお会いしたく」
「分かりました。部屋にご案内しますので暫くお待ちください」
「ありがとう御座います」
商売何事もこっちは売る側だ。多少強気に出てもいい筈。
後ろについてくるエンジュさんに頷くと案内された部屋で待つことになった。
暫くするとドアが開き、ダンディなおじ様がやってくると、どうやらここのギルドマスターらしい。
「私がダイヤ王国首都ダリルシェイドの商業者ギルドマスターだが?」
「初めまして、ユリと申します。この度お売りしたい物と、お支払いしたいものがありまして来ました」
「お支払い? ああ、エンジュ君の借金ですか? でも6万枚の金貨ですよ? 今も請け負った先からお金を吊り上げられていて」
「では、それらの方々から受ける借金、これで手切れ金になりますかしら?」
そう言うとエンジュさんに声をかけ、机の上にタオルに入った金塊を二本見せると、ギルドマスターは口に手を当て驚いてから、鑑定をしているのか「ほおお……素晴らしい」と声を上げた。
「これにて借金は帳消し。出来ますよね?」
「ああ、こんな素晴らしいもの……イヤイヤ待ちなさい。手切れ金にするにしても余りにも其方が払うお金が大きすぎる」
「ええ、ですので悪い噂も全てまとめての手切れ金です。それが出来るなら金塊でお釣り無しで支払いますわ」
まさかそこまで言われると思っていなかったのだろう。
暫くギルドマスターは黙った後、強く頷き「良いでしょう。商業ギルドが責任をもって噂も消します」と言ってくれた。
「ですが、本当に宜しいんですね?」
「構いません。これでエンジュさん、センジュさんは無事ですよね?」
「流石にこれだけの物で支払ったのに、センジュくんを渡せと言う馬鹿がいたら見てみたいよ」
「では、早速商業ギルドで動いてくれますよね?」
「ああ、直ぐに動こう」
そう言うと職員を呼び、職員も机の上にある金塊に驚きギルマスが何かの指示を出すとバタバタと商業ギルドの職員が走り始めた。
ふう……これで【ガーネット】は守られるし、何とかなりそう。
さて、此処からは私がもうひと踏ん張りする番よ!!
「良かったですね、エンジュさん」
「君は……」
「良かった事にしましょう?」
「……ああ」
少しだけ微笑んだエンジュさんから視線を戻すと、目の前に座ったギルマスと向かい合う事になった。
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