6 / 106
06 推薦状のお店が閑古鳥!? 嵌められて借金背負ったですって!? 私が何とかしましょうか。
しおりを挟む
馬車は動き出し、私たちは【金の国シャース王国】から、隣の国にある【宝石の国ダイヤ王国の王都ダリルシェイド】を目指す。
その五日間の旅は結構あっと言う間で、敵も本当に出なくて国境を渡ると隣国に入り、初夏のような香りを感じながら気候が穏やかな【宝石の国ダイヤ王国】に入り、そのまま二日走ると馬車はついに首都であるダリルシェイドに到着した。
門番に従魔証明と冒険者カードを提示して中に入ると、白い壁が似合う綺麗な街並みへと入って行く。
「推薦状のあるお店にも急ぎたいけど、まずは何処にあるか聞かないとね」
「そうじゃのう」
「すみませーん」
そう言うと近くのお店の店員に声をかけ、【ガーネット】と言う店を探していると言うと、少し困った顔をしてから、付与アイテムが集まって売っているお店のある場所を教えて貰い、そこに【ガーネット】と言う店があると聞いた。
すると――。
「ただ、アルメリアさんなら亡くなったわよ?」
「え!?」
「もう三年も前かしら。流行り病で……」
「でも、お店はあるんですよね?」
「ええ、今は魔物討伐隊だったお兄さんがそこを辞めて彫金師をしながら、弟さんの付与師とお店をしているけれど……余り評判がよくなくて」
「あらぁ」
「借金まであるって話よ?」
「借金ですか」
「返せるか分からないけど、どうなるのかしらねぇ」
そう言われると不安だ。
でも行ってみないと分らない。
私は意を決してお店に向かう事にした。
ダリルシェイドの北にはダイヤ王国の城があり、その北側に店はあるのだと言う。
貴族や平民も来やすい区画にあるらしく、日差しが若干強いなと思いながらお店に向かうと、確かに他の店は賑わっているのに閑古鳥が鳴いている。
此処まで着たら推薦状を見せるだけでも違う!!
ドアを開けて「すみませーん!」と声を上げると、奥から背の高い銀髪の男性が出て来た。
「はい、えっと」
「すみません、私ユリと申します。此方を先に読んで頂けませか?」
そう言ってダンさんからの推薦状を取り出し男性に見せると、「シャース王国の冒険者ギルドから?」と不思議そうにしながら中を読み、青い瞳で釣り目を見開いてこちらをジッと見てきた。
そしてもう一度手紙に目を通すと「なるほど」と口にする。
「話は分かった。俺の名はエンジュ。この店の店長の息子だ」
「店長さんじゃなかったですか。貴方がもしや魔物討伐隊から彫金師になったっていう」
「ああ、その通りだ」
「店長さんはどちらに?」
「一応手紙は見せてくるが……ちょっと待っていてくれ」
そう言うと奥に向かい、何やら話し声が聞こえてくる。
そしてドスドスと音が聞こえるとエンジュさんが年取ったらこんな感じかなって言う40代の男性が出て来た。
まぁ、40代くらいであのイケメンが生まれるだから早く結婚したんだろうな。
「オイ娘、この手紙は本物か?」
「はい」
「そうじゃよ。さっきワシらはこのダリルシェイドについたばかりじゃて」
「ソウダヨー」
「従魔、名前はホムラとタキで合ってるか?」
「うむ、ワシがホムラじゃ」
「ボク タキダヨー」
「それで、雇って貰えますでしょうか……?」
そう問い掛けると親父さんは頭を書きながら溜息を吐いて、「無理だ」と口にした。
何でも店に借金があるらしく、その借金を作ったのはエンジュさんだと言う。
驚いて口を押えた私にエンジュさんは眉を寄せて立っているが……。
「こいつには婚約者がいたんだが、その元婚約者がアレコレ仕事を持ってきたは良いが捌けなくてな。依頼の取りすぎだと言うエンジュと喧嘩して婚約破棄。借金だけが残ったって奴だ」
「お幾らですか?」
「金貨6万枚。とても払いきれない。今も生活費だなんだと金が掛かるってのに、情けない事に彫金のアイテムも買えない。首が回らん状態だ」
「なら、私が冒険者ギルドで稼ぐんで、その借金私が一旦引き受けます」
「「は?」」
「本当ですか!?」
そう言って出て来たのは13歳くらいの男の子だ。
この子もまたお兄さんに似ていて綺麗な銀髪をポニーテールにしている。
どっちかと言うと女の子だとこんな感じかな? って感じだけど男の子だ。
「あの、俺センジュと申します……付与師をしてます」
「初めまして、ユリです」
「ホムラじゃ」
「タキダヨ」
「お願いです。まるで兄上を陥れるような酷い依頼を受けられたんです……。まるで嵌められたみたいで……。二日以内に借金払えなかったら俺はその兄上の元婚約者のいる店に連れて行かれることになっていて」
「なるほど、人身売買みたいなものですか。見過ごせませんね」
「だが、俺達では金が……」
「私が作ります。というか今作ります。店の奥は作業場ですか?」
「お? おお」
「失礼します」
そう言うと奥に入らせて貰い、綺麗に掃除された机を前に椅子に座り――。
「お父様?」
「お、お父様!?」
「こちらで金塊って幾らくらいになります?」
「き、金塊か? 金塊なら今戦争で金が入ってこないから……金貨500万枚だな」
「良いでしょう。手切れ金です。払って差し上げます」
「「「え」」」
「アイテム生成、金塊」
そう言うと少し長めの魔法発動音と共に魔法陣が現れ、形は悪いが金塊が3個程落ちて来た。
鑑定すると純度の高い混じりっけなしの綺麗な金塊だけど少し形が悪い。スキルが低いからだと理解するが、タオルの上に落としたのでそのままタオルで包んで上を結ぶ。
三人は呆然としていたけれど、私が笑顔で振り返り真っ直ぐにエンジュさんを見ると――。
「エンジュさん」
「は、はい!」
「この金塊で貴方の借金を私が買います。お父様、この家に私たちを置いてください」
「お、おう……いやいや、こんな男所帯に年頃の娘が、」
「アルメリアさんの血縁とでも言っておけばいいです。御着物お好きだったんですよね?」
「何故その事……ダンの野郎か!」
「ええ、黒髪の美しい女性だったと聞いています。私も幸い黒髪です。アルメリアさんの血縁者と言っても問題は無いでしょう?」
「まぁ、確かにアルメリアもお前さんみたいに猫っぽい所はあったが」
「従姉妹と言う事にしておいてください」
「む、むう」
「それで、エンジュさん。これから私は貴方の借金を買います。どこにお金を支払いに行けばいいです?」
「あ、ああ……商業ギルドだが」
「丁度いいです。私も商業ギルドには行きたかったので。あと金塊一つは手元に置いておきますが、こちらはセンジュ君を難癖付けて連れてこうとした場合、私がセンジュ君を買うお金です」
「俺を買う!?」
「家族と離れ離れになっていいんですか?」
「それは……困ります」
「ですよね? 何もお二人にお金を返せとは言いません。これからお世話になりますし、私は屋根のある家で生活が出来て、仕事場もある。お互い嬉しいならそれでいいんです」
はっきり真っ直ぐ三人を見つめて口にすると、お父様は涙を溜めて頭を下げ、エンジュさんは「本当にすまない」と頭を下げ、センジュ君は「お願いします」と口にした。
その後金塊をエンジュさんに持って貰い、私とエンジュさんは二人で商業ギルドへと向かう。
商業ギルドと冒険者ギルド等のギルドは東西南北の真ん中に集まっているらしく、そこまで歩いて行くと、如何にも儲かってますって感じの商業ギルドへと入って行く。
無論職員は私をスルーしたけれど、エンジュさんを見ていい顔はしない。
しかし、私は敢えて笑顔で受付に行った。
「すみません、売りたいものが御座いまして……それもかなりありまして。個室を用意して頂けませんでしょうか?」
「売りたいものですか? は――……直ぐ案内します」
「それと、ギルドマスターに挨拶をしておけとシャース王国の冒険者ギルドマスターに言われているので、ギルドマスター様にお会いしたく」
「分かりました。部屋にご案内しますので暫くお待ちください」
「ありがとう御座います」
商売何事もこっちは売る側だ。多少強気に出てもいい筈。
後ろについてくるエンジュさんに頷くと案内された部屋で待つことになった。
暫くするとドアが開き、ダンディなおじ様がやってくると、どうやらここのギルドマスターらしい。
「私がダイヤ王国首都ダリルシェイドの商業者ギルドマスターだが?」
「初めまして、ユリと申します。この度お売りしたい物と、お支払いしたいものがありまして来ました」
「お支払い? ああ、エンジュ君の借金ですか? でも6万枚の金貨ですよ? 今も請け負った先からお金を吊り上げられていて」
「では、それらの方々から受ける借金、これで手切れ金になりますかしら?」
そう言うとエンジュさんに声をかけ、机の上にタオルに入った金塊を二本見せると、ギルドマスターは口に手を当て驚いてから、鑑定をしているのか「ほおお……素晴らしい」と声を上げた。
「これにて借金は帳消し。出来ますよね?」
「ああ、こんな素晴らしいもの……イヤイヤ待ちなさい。手切れ金にするにしても余りにも其方が払うお金が大きすぎる」
「ええ、ですので悪い噂も全てまとめての手切れ金です。それが出来るなら金塊でお釣り無しで支払いますわ」
まさかそこまで言われると思っていなかったのだろう。
暫くギルドマスターは黙った後、強く頷き「良いでしょう。商業ギルドが責任をもって噂も消します」と言ってくれた。
「ですが、本当に宜しいんですね?」
「構いません。これでエンジュさん、センジュさんは無事ですよね?」
「流石にこれだけの物で支払ったのに、センジュくんを渡せと言う馬鹿がいたら見てみたいよ」
「では、早速商業ギルドで動いてくれますよね?」
「ああ、直ぐに動こう」
そう言うと職員を呼び、職員も机の上にある金塊に驚きギルマスが何かの指示を出すとバタバタと商業ギルドの職員が走り始めた。
ふう……これで【ガーネット】は守られるし、何とかなりそう。
さて、此処からは私がもうひと踏ん張りする番よ!!
「良かったですね、エンジュさん」
「君は……」
「良かった事にしましょう?」
「……ああ」
少しだけ微笑んだエンジュさんから視線を戻すと、目の前に座ったギルマスと向かい合う事になった。
その五日間の旅は結構あっと言う間で、敵も本当に出なくて国境を渡ると隣国に入り、初夏のような香りを感じながら気候が穏やかな【宝石の国ダイヤ王国】に入り、そのまま二日走ると馬車はついに首都であるダリルシェイドに到着した。
門番に従魔証明と冒険者カードを提示して中に入ると、白い壁が似合う綺麗な街並みへと入って行く。
「推薦状のあるお店にも急ぎたいけど、まずは何処にあるか聞かないとね」
「そうじゃのう」
「すみませーん」
そう言うと近くのお店の店員に声をかけ、【ガーネット】と言う店を探していると言うと、少し困った顔をしてから、付与アイテムが集まって売っているお店のある場所を教えて貰い、そこに【ガーネット】と言う店があると聞いた。
すると――。
「ただ、アルメリアさんなら亡くなったわよ?」
「え!?」
「もう三年も前かしら。流行り病で……」
「でも、お店はあるんですよね?」
「ええ、今は魔物討伐隊だったお兄さんがそこを辞めて彫金師をしながら、弟さんの付与師とお店をしているけれど……余り評判がよくなくて」
「あらぁ」
「借金まであるって話よ?」
「借金ですか」
「返せるか分からないけど、どうなるのかしらねぇ」
そう言われると不安だ。
でも行ってみないと分らない。
私は意を決してお店に向かう事にした。
ダリルシェイドの北にはダイヤ王国の城があり、その北側に店はあるのだと言う。
貴族や平民も来やすい区画にあるらしく、日差しが若干強いなと思いながらお店に向かうと、確かに他の店は賑わっているのに閑古鳥が鳴いている。
此処まで着たら推薦状を見せるだけでも違う!!
ドアを開けて「すみませーん!」と声を上げると、奥から背の高い銀髪の男性が出て来た。
「はい、えっと」
「すみません、私ユリと申します。此方を先に読んで頂けませか?」
そう言ってダンさんからの推薦状を取り出し男性に見せると、「シャース王国の冒険者ギルドから?」と不思議そうにしながら中を読み、青い瞳で釣り目を見開いてこちらをジッと見てきた。
そしてもう一度手紙に目を通すと「なるほど」と口にする。
「話は分かった。俺の名はエンジュ。この店の店長の息子だ」
「店長さんじゃなかったですか。貴方がもしや魔物討伐隊から彫金師になったっていう」
「ああ、その通りだ」
「店長さんはどちらに?」
「一応手紙は見せてくるが……ちょっと待っていてくれ」
そう言うと奥に向かい、何やら話し声が聞こえてくる。
そしてドスドスと音が聞こえるとエンジュさんが年取ったらこんな感じかなって言う40代の男性が出て来た。
まぁ、40代くらいであのイケメンが生まれるだから早く結婚したんだろうな。
「オイ娘、この手紙は本物か?」
「はい」
「そうじゃよ。さっきワシらはこのダリルシェイドについたばかりじゃて」
「ソウダヨー」
「従魔、名前はホムラとタキで合ってるか?」
「うむ、ワシがホムラじゃ」
「ボク タキダヨー」
「それで、雇って貰えますでしょうか……?」
そう問い掛けると親父さんは頭を書きながら溜息を吐いて、「無理だ」と口にした。
何でも店に借金があるらしく、その借金を作ったのはエンジュさんだと言う。
驚いて口を押えた私にエンジュさんは眉を寄せて立っているが……。
「こいつには婚約者がいたんだが、その元婚約者がアレコレ仕事を持ってきたは良いが捌けなくてな。依頼の取りすぎだと言うエンジュと喧嘩して婚約破棄。借金だけが残ったって奴だ」
「お幾らですか?」
「金貨6万枚。とても払いきれない。今も生活費だなんだと金が掛かるってのに、情けない事に彫金のアイテムも買えない。首が回らん状態だ」
「なら、私が冒険者ギルドで稼ぐんで、その借金私が一旦引き受けます」
「「は?」」
「本当ですか!?」
そう言って出て来たのは13歳くらいの男の子だ。
この子もまたお兄さんに似ていて綺麗な銀髪をポニーテールにしている。
どっちかと言うと女の子だとこんな感じかな? って感じだけど男の子だ。
「あの、俺センジュと申します……付与師をしてます」
「初めまして、ユリです」
「ホムラじゃ」
「タキダヨ」
「お願いです。まるで兄上を陥れるような酷い依頼を受けられたんです……。まるで嵌められたみたいで……。二日以内に借金払えなかったら俺はその兄上の元婚約者のいる店に連れて行かれることになっていて」
「なるほど、人身売買みたいなものですか。見過ごせませんね」
「だが、俺達では金が……」
「私が作ります。というか今作ります。店の奥は作業場ですか?」
「お? おお」
「失礼します」
そう言うと奥に入らせて貰い、綺麗に掃除された机を前に椅子に座り――。
「お父様?」
「お、お父様!?」
「こちらで金塊って幾らくらいになります?」
「き、金塊か? 金塊なら今戦争で金が入ってこないから……金貨500万枚だな」
「良いでしょう。手切れ金です。払って差し上げます」
「「「え」」」
「アイテム生成、金塊」
そう言うと少し長めの魔法発動音と共に魔法陣が現れ、形は悪いが金塊が3個程落ちて来た。
鑑定すると純度の高い混じりっけなしの綺麗な金塊だけど少し形が悪い。スキルが低いからだと理解するが、タオルの上に落としたのでそのままタオルで包んで上を結ぶ。
三人は呆然としていたけれど、私が笑顔で振り返り真っ直ぐにエンジュさんを見ると――。
「エンジュさん」
「は、はい!」
「この金塊で貴方の借金を私が買います。お父様、この家に私たちを置いてください」
「お、おう……いやいや、こんな男所帯に年頃の娘が、」
「アルメリアさんの血縁とでも言っておけばいいです。御着物お好きだったんですよね?」
「何故その事……ダンの野郎か!」
「ええ、黒髪の美しい女性だったと聞いています。私も幸い黒髪です。アルメリアさんの血縁者と言っても問題は無いでしょう?」
「まぁ、確かにアルメリアもお前さんみたいに猫っぽい所はあったが」
「従姉妹と言う事にしておいてください」
「む、むう」
「それで、エンジュさん。これから私は貴方の借金を買います。どこにお金を支払いに行けばいいです?」
「あ、ああ……商業ギルドだが」
「丁度いいです。私も商業ギルドには行きたかったので。あと金塊一つは手元に置いておきますが、こちらはセンジュ君を難癖付けて連れてこうとした場合、私がセンジュ君を買うお金です」
「俺を買う!?」
「家族と離れ離れになっていいんですか?」
「それは……困ります」
「ですよね? 何もお二人にお金を返せとは言いません。これからお世話になりますし、私は屋根のある家で生活が出来て、仕事場もある。お互い嬉しいならそれでいいんです」
はっきり真っ直ぐ三人を見つめて口にすると、お父様は涙を溜めて頭を下げ、エンジュさんは「本当にすまない」と頭を下げ、センジュ君は「お願いします」と口にした。
その後金塊をエンジュさんに持って貰い、私とエンジュさんは二人で商業ギルドへと向かう。
商業ギルドと冒険者ギルド等のギルドは東西南北の真ん中に集まっているらしく、そこまで歩いて行くと、如何にも儲かってますって感じの商業ギルドへと入って行く。
無論職員は私をスルーしたけれど、エンジュさんを見ていい顔はしない。
しかし、私は敢えて笑顔で受付に行った。
「すみません、売りたいものが御座いまして……それもかなりありまして。個室を用意して頂けませんでしょうか?」
「売りたいものですか? は――……直ぐ案内します」
「それと、ギルドマスターに挨拶をしておけとシャース王国の冒険者ギルドマスターに言われているので、ギルドマスター様にお会いしたく」
「分かりました。部屋にご案内しますので暫くお待ちください」
「ありがとう御座います」
商売何事もこっちは売る側だ。多少強気に出てもいい筈。
後ろについてくるエンジュさんに頷くと案内された部屋で待つことになった。
暫くするとドアが開き、ダンディなおじ様がやってくると、どうやらここのギルドマスターらしい。
「私がダイヤ王国首都ダリルシェイドの商業者ギルドマスターだが?」
「初めまして、ユリと申します。この度お売りしたい物と、お支払いしたいものがありまして来ました」
「お支払い? ああ、エンジュ君の借金ですか? でも6万枚の金貨ですよ? 今も請け負った先からお金を吊り上げられていて」
「では、それらの方々から受ける借金、これで手切れ金になりますかしら?」
そう言うとエンジュさんに声をかけ、机の上にタオルに入った金塊を二本見せると、ギルドマスターは口に手を当て驚いてから、鑑定をしているのか「ほおお……素晴らしい」と声を上げた。
「これにて借金は帳消し。出来ますよね?」
「ああ、こんな素晴らしいもの……イヤイヤ待ちなさい。手切れ金にするにしても余りにも其方が払うお金が大きすぎる」
「ええ、ですので悪い噂も全てまとめての手切れ金です。それが出来るなら金塊でお釣り無しで支払いますわ」
まさかそこまで言われると思っていなかったのだろう。
暫くギルドマスターは黙った後、強く頷き「良いでしょう。商業ギルドが責任をもって噂も消します」と言ってくれた。
「ですが、本当に宜しいんですね?」
「構いません。これでエンジュさん、センジュさんは無事ですよね?」
「流石にこれだけの物で支払ったのに、センジュくんを渡せと言う馬鹿がいたら見てみたいよ」
「では、早速商業ギルドで動いてくれますよね?」
「ああ、直ぐに動こう」
そう言うと職員を呼び、職員も机の上にある金塊に驚きギルマスが何かの指示を出すとバタバタと商業ギルドの職員が走り始めた。
ふう……これで【ガーネット】は守られるし、何とかなりそう。
さて、此処からは私がもうひと踏ん張りする番よ!!
「良かったですね、エンジュさん」
「君は……」
「良かった事にしましょう?」
「……ああ」
少しだけ微笑んだエンジュさんから視線を戻すと、目の前に座ったギルマスと向かい合う事になった。
218
お気に入りに追加
2,234
あなたにおすすめの小説
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな
・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー!
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。
だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。
なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!
《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。
そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!
ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!
一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!
彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。
アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。
アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。
カクヨムにも掲載
なろう
日間2位
月間6位
なろうブクマ6500
カクヨム3000
★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる