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01 【石を作り出す程度の能力】しかないと言われて、いきなり追放されました!

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 夏祭りの最中、妹と二人で出かけて花火を見上げていた。
 周囲には男女高校生くらいの恋人たちがいて、妹と二人「恋がしたいねー」なんて笑いあっていた。
 後ろは屋台で何か変な臭いがしていて……破裂するような音と花火の大きな音が聞こえたと思った途端、気が付いたら私は床に倒れていていた。
 ――床?
 ヒンヤリと感じる床は綺麗な大理石のような石で、起き上がるとバタバタと映画とかで見た事のある中世のような恰好をした人たちが沢山いた。


「おお、ついに召喚に成功したか!!」


 そう意気揚々と現れた派手な服装の男性は、倒れていている後ろにいた男女の元へと駆け寄った。
 そして何かの石板を手に、相手の手を掴んで触らせると頷き合っている。
 一体何? どういう事? コズエは?
 妹のコズエが居なかった。
 一体此処は何処?


「この者は?」
「はい、一緒に召喚された者です」
「そうか、おい女。この石板に手を当てろ」
「は?」
「良いから早くしろ愚図が」
「は???」


 思わずイラっとするが石板に手を当てると首を横に振られた。


「年増な上に屑スキル……は――……ハズレだな」
「一体どういう事?」


 そう問い掛けても男性も付き添っていた方々も立ち上がり起き上がった私達に声高らかに異世界転移させたことを告げた。
 異世界転移って……よくアニメとか小説とかで見かけるアレ?
 嘘でしょ? 寝ぼけているのかしら。


「君たち若い四人は素晴らしいスキルを持っている! 誇っていい!!」
「私達が!?」
「正に英雄に相応しいスキルだ」


 そう言って少し離れた所で語る派手な人に子供達は喜んでいる。
 でも――私をキッと睨みつけた瞬間。


「だがコイツは駄目だ。【石を作り出す程度の能力】しかないと出ている! 正に屑だ!」
「は?」
「やだ、石って」
「その辺の石ころしか出せないって事?」
「やだ、地味―」


 そう言ってクスクス笑う四人にイラっとはしたものの、私は声を張り上げて聞いた。
 妹が近くにいた筈なのだ。妹を知らないかと聞くと「そんなものは知らん」と返され、革袋を手渡されるとジャラリと音がした。


「貴様は要らん。手切れ金だ、そのまま追い出すとこっちもアレコレ言われかねん。金貨100枚入っている。それで外で好きに生活しろ」
「え」
「手切れ金だと言っただろう。理解力も無いのか? おい、コイツをサッサと城から追い出せ」
「バイバーイ、石ころさーん」
「石でも売って生活してねー?」
「やだ、身体売る方が早いんじゃね?」
「もーやだー!」


 そう言って私を馬鹿にする子供達に更に腹が立ったが、金貨の入った袋を手渡されグイグイ引っ張られる。
 着物だから歩きにくいのに関係なしって感じで城から追い出されたものの――。


「本当にこっちに妹は居ないのよね!?」


 そう私を引っ張ってきた男性に聞くと、若い男性なのか顔を伏して「貴方に似た女性はいませんでした。それとコレを」と一枚の紙を手渡された。
 何だろうと思いつつ受け取ると、【乗合馬車フリーパス券】と【宿屋フリーパス券】と書かれていて、彼が言うには「1カ月はこの二つで国の乗合馬車に乗っても、宿屋に泊まってもタダで使えます」と言われて思わず沈みそうだった心が上がった。


「ありがとう、貴方とても良い人なのね」
「この国は【金の国シャース王国】と呼ばれていて、現在【鉱石の国ノシュマン王国】と戦争状態にあります。早めにこの国を出た方が良い……。少し離れた所に【宝石の国ダイヤ王国】があります。そこまで冒険者を雇って向かうか、馬車に乗せて貰えそうな所に頼んで向かって下さい」
「貴方……何故そこまで親身になってくれるの?」
「俺は……異世界転移を止められなかった」
「……」
「兄上はこの国の王太子なんです。先程派手な人が貴女を侮辱していたでしょう?」
「え、ええ」
「兄が申し訳ありません……」
「優しい弟さんなのね。私は桜木ユリよ。もう会う事は無いでしょうけど元気でね」
「サクラギ……ユリ」


 そう言って微笑むと、顔を少し赤くしてから私の肩を掴み、クルッと回すと「さぁ、早く行って」と言われ小さく「ありがとう、優しい弟さん」とお礼を言ってから階段を駆け下りた。
 取り敢えず外はもう夜。
 宿屋らしき場所を見つけ「一泊したい」と券を見せて泊まらせて貰い、これからの事を考える。
 王太子と言われる人が【石を出す程度の能力しかない】って言っていたけれど、実際はどんな感じなんだろう。
 こう、ステータスオープンって言えば出てきたりしない?


「ステータスオープン?」


 そう口にするとブオンッという音と共に何かが出て来た!!
 そこには色々書いてある。
 私の名前の隣には――。


「サクラギ ユリ:追放されし者。やだー……本当に追放されたのね。他には?」


 そう言ってスキルを見ていくと、確かに【石生成する程度の能力】と書いてあり、その下には出せる石がズラリと並んでいた。
 宝石は無論、宝石に使われる石や鉄……鉄!? なるほど、鉱石も出せるし鉄資源も出せるらしい。それも全て純度の高い100%の物が。
 金の延べ棒も作れるらしく、これってある意味凄いのでは?
 でも余りゲームとかしてないから石の事や鉄とかその辺りよく分からないのよね。
 鉄鉱石とか売るならやっぱり冒険者ギルド?
 でも冒険者ギルドって怖いイメージが強い、うう、生きる為に一度は行くけれど。
 金の延べ棒なら商業ギルドとかで買ってくれないかな?
 そっちの方がまだ怖くないって言うか……。
 取り敢えず他のスキルも見ていくと――。


【石スキルレベル:鉱石加工レベル1・宝石加工レベル1・貴金属加工レベル1】
 こっちは上げて行かないといけないスキルなのね。例えば宝石店とかがいいのかしら。
 他には……?

【鑑定スキル(物や相手の事を鑑定出来ます)・お取り寄せ(元の世界から宝石や貴金属と交換で買い物が出来ます)・テイマー(魔物を仲間にする事が出来ます)・デザイン(貴金属のデザインを作れます)・アイテムボックス(異世界人なら誰でも持ってます・無限)・調理スキル10・生活魔法スキル9・幸運6・危険察知5・悪意察知4】


 なるほど?
 多分この下のスキルって、自分が今まで生きて来た中で会得したスキルなのね。
 多分鑑定はネットでの調べもの。お取り寄せはネットで購入してた事。テイマーは私が子供の頃から動物を飼っていた事。デザインは絵を描くのが好きだったからかしら?
 調理と生活に関しては両親が早くに亡くなったから家事をしていたことが切っ掛けね。
 幸運はよくわからないけど、危険察知と悪意察知は仕事を初めてから得た物かしら?


「何よ、別にハズレでもなんでもないじゃない。アホ王太子め。弟さんの方が立派だったわよ!」


 そう悪態つきつつ、取り敢えず服に関しては買い替えたい。
 でもこの世界の服装じゃないと駄目よね? 明日まではこの服装でいよう。
 アイテムボックスがあるならそこにお金と持って来ていた鞄を入れて……せめてがま口の財布だけでもお取り寄せしたいけど、宝石とか貴金属が必要なのよね?
 生成って書いてあったし………。
 そう思うと椅子に座り直して両手を前に出し、床に物が落ちる感じで――。


「アイテム生成、金の延べ棒」


 そう言うと小さな魔法陣が出て来て、机の上に形の悪い金の延べ棒が一本ゴトリと落ちて来た。
 それを【鑑定】してみると確かに純度100%のまじりっけなしの純金。
 それを【お取り寄せ】スキルを呼び出したらタブレットみたいなのが手に出て来て、そこに落ちて来た金の延べ棒を当てるとチャリーンって音と共にお金になったようだ。
 金の延べ棒1個で100万のお金が入った。
 ヤバくない? ちょー有能スキル!!
【お取り寄せ】みたら、密林とか、なんとか天みたいな店のようなものでアッチの世界の物が買えるらしい。
 そこで、ペットボトルのお茶を2本と、パンを1つ購入。
 お茶を飲みつつ更に調べていくと、色々買えることが分かった。
 野菜も果物も調味料も買い放題。無論あちらの商品だけど。
 あ、鞄だけは買ってこう。ショルダーバック。
 こうして一応今必要なものを購入して机に置くと、私は目を閉じて唸った。
 ハズレじゃないじゃん? 超有能じゃん?
 生きてきた時間が長い分、って言っても23歳なんだけど。なんていうか、使えるスキルが多い気がする。
 ただ、この【石】に関してのスキルは……私が宝石の本を見るのが好きだったからかな?


「取り敢えず明日は冒険者ギルドと商業ギルドに行ってから決めようかな」


 そう言うと私はお茶をもう一杯飲んで横になって眠り、翌朝お取り寄せでパンと珈琲を購入してゴミをアイテムボックスに入れると、ゴミは消えるらしい。便利。
 ショルダーバックを掛けて中にペットボトルのお茶と朝作った金の延べ棒はタオルに包んで、鉄鉱石と銅鉱石と、プラチナ鉱石だけは鞄に入れていく。
 結構重いけど、取り敢えず冒険者ギルドね。
 宿の女将さんに二つのギルドの場所を聞いてからまずは冒険者ギルドへと向かう。
 怖い所じゃありませんように……。



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