【★完結★】下っ端女神の結婚事情 ~最高位太陽神に溺愛される~

うどん五段

文字の大きさ
上 下
7 / 29

07 最高位太陽神、女神たちにフルボッコにされる。

しおりを挟む
――エルグランドside――

「フィフィ! ただいま帰った! 約束のハグを所望する!」
「煩いね! アンタにするハグなんてものはないよ!!」
「エルグランド様、フィフィ様に対してなんて酷い事を為さったのです?」


思いもよらない攻撃が飛んできて、流石の俺も固まる事になった。
一体何のことだ?
するとエルナが俺の方に笑顔で歩み寄り、恭しくお辞儀をすると笑顔だが――目に殺気のようなものを感じる。一体何が起きたんだ?


「エルグランド様、少々確認したいのですが宜しいでしょうか?」
「うむ」
「子供の園からフィフィ様を了承も得ずに、子供達への最後のお別れもさせずに無理やり連れ帰ったという悪魔のような所業、事実でしょうか」
「確かに……フィフィの事で頭がいっぱいでそこまで回らなかった……」
「フィフィ様は長年最下位下っ端豊穣の女神として子供達を心から愛し慈しんで育ててこられました。そんな子供達とフィフィ様に最後の別れをさせない等、なんという酷い事を為さったのです?」
「それは……そうだな、俺が悪い」
「ええ、とっても悪い事です」
「だが、今更子供の園へと連れて行く事は出来ない。フィフィに俺との子が出来れば連れて行ってあげられるのだが」
「それはまた別のお話でしょう」
「むう」


確かにフィフィを慕う子供達は多かったに違いない。
俺がそうだったのだから、急な別れに泣いている子供神も多くいる事だろう。
何という悪の所業をしてしまったのか……今となっては悔やまれる。
だからと言って、昨日の今日で出戻りと言う事は出来ない。
時間を見て最後の別れをさせてやる事くらいは、せめてもの償いになるだろうか。


「分かった。今すぐは無理でも一か月後くらいならば、フィフィを連れて子供の園へ改めて向かい、最後の別れをさせよう。昨日の今日では出戻りと思われてしまう。フィフィ……」
「何ですか」
「許してくれ」


そう言って深々と頭を下げる俺に、フィフィは少し驚いたようだ。


「直ぐにでもフィフィを妻に出来ると思い、自分を止めることが出来なかった。それ程までにフィフィを愛してやまないのだ。それがフィフィの負担になるなど露知らず、何と言う事だ。穴があったら入りたいくらいだ」
「……では、地中深くに入って反省でもして下さい」
「そう言わず、必ず最後のお別れをする時間を作る。ファーリシア様にも連絡する。それで許してはくれないだろうか?」
「……いいでしょう。約束を違えた時は出戻りします」
「そうならぬ様心がける」
「それと、子供達に嫉妬などしないで下さい。私の愛しい子供達でもあります」
「苦しいが、とても苦しいが善処しよう……」


どうやらフィフィは子供達に最後のお別れも出来ず無理やり攫うような形で連れてこられたことに腹を立てていたようだ。
自分の浅はかな行動で、最初の一歩を間違えてしまっていた。
己の奢りと言えばそれまでだが、それでフィフィの心が晴れやかになるのであれば、この程度の苦痛耐えて見せる!


「それと、例え想い焦がれた相手であっても、攫うような真似は寛容出来ませんわ。しかも俗にいうお姫様抱っこではなく、米俵担ぎと同じ運び方だったとか。浪漫もへったくれもありませんわ」
「姫抱っこをすると、その場でフィフィを押し倒して自分の物にしてしまいそうで怖かったのだ。目の前に、俺の肌に愛しいフィフィが振れているのだぞ? 何もしない等ありえない事だったのだ。すまないフィフィ……キスだけでも許してくれるなら今度からは姫抱っこで連れて行こう」
「あ、それなら米俵担ぎで結構です」
「フィフィ……」


即座の拒否!!
流石の今の俺にはその言葉は胸に突き刺さる!!
ションボリとしていると暫く無言が続き、程なくしてフィフィの深いため息が聞こえてきた。
ゆっくりと顔を上げると、フィフィは昔と変わらぬ「困った子だなぁ」と言う時の表情で俺を見つめ、ソファーから立ち上がると俺の元まで歩み寄った。


「これからは、理性的に動いてくださいませね? もう大人なのですから」
「フィフィ……っ」
「あなた様は既に成人した素晴らしい男神です。出来るでしょう?」
「うん、出来る!」
「でしたら、理性的に、感情的にならず、物事を良く見て判断するのです。宜しいですね?」
「はい!」


――はっ!
思わず小さい頃に戻ったかのように返事をしてしまったが、フィフィは嬉しそうに、あの幼い頃の俺を見るかのような柔らかい愛情溢れる表情で見つめてくれている……。
そうか、これこそがフィフィの求めていた事だったのだな?
感情に任せて熱風や熱波を起すような癇癪持ちの俺ではなく、冷静でかつ理性的な素晴らしい男神になって欲しいという……つまりは、フィフィの好みのタイプ!!!

既に成人した最高位の太陽神を、今から好みのタイプにフィフィ自ら育てようというのだな!!!!

そう思った途端身体から炎が上がり、俺の心が燃えた!!
もう一度、もう一度フィフィに育てて貰えると思うと、何という感情だろうか!!
そうだ、下界ではこれを、バブミとでも呼んでいただろうか!?
育てて貰いつつ溢れんばかりの愛情を貰いつつ、そして好みのタイプに育て上げる等、流石俺のフィフィ――!!!


「熱い熱い!!」
「火柱凄いね、耐火付与された神殿でなかったら今頃溶けて天井が無くなっちまってるよ」
「エルグランド様、落ち着いてくださいませ」


その声と共に、頭上から大量の水をぶっかけられた。
エルナの水魔法は強力だな……だが少し冷静になれた。
これからはフィフィに育てて貰いながら愛を深めていこう。


「すまない、フィフィにまた一から育てて貰えると思うと心が燃え滾ってしまった」
「え……育てるんですか?」
「ああ、フィフィの好みの男に育ててくれ。君だけの為の俺になろう」
「愛が重い……」
「まぁまぁ、要は改造ですわフィフィ様」
「モノは言いよう。まぁ自分好みに育てて欲しいって言う男神なんて珍しいんだし、育ててやってもいいんじゃないかね?」
「他人事だと思って!」
「他人事だもん」
「そうですけれど!!」
「俺はフィフィの為ならば幾らでも成長できる! また昔のように育ててくれると思うと胸が弾む! 溢れんばかりの愛情を貰えると思うと乾ききった心が潤い満たされる! フィフィの愛情で溺れたい!」
「と、言う事ですのでフィフィ様」
「頑張れ」
「………はぁ」


呆れたような溜息が零れていたが、きっと照れているのだろう。
男神は女神を好みに育てたいという者が多いが、何せ俺のオムツ交換までしていたほどの古参の下っ端女神のフィフィだ。
育てる方がきっと彼女の楽しみになるだろう!
そして俺も出来る事ならフィフィに育てて欲しい!! 甘えたい!! ウッカリ足を引っかけた振りをしてあの胸に飛びつきたい! 身長差はあるがそこは何とか計算して飛び込みたい!


「何やらよからぬ事を考えていませんか?」
「いいや、全く?」
「そうですか、ゾワッとしたので」


流石危機管理が出来ているな!
いや、俺に対してだけか?
きっとまだ警戒しているのだろう。
ゆっくりと距離を詰めるしか無い様だな。


「大丈夫だフィフィ。君に一から育てられる喜びを噛み締めていただけだ」
「子供神は可愛いから育て甲斐がありますけど、貴方既に成人してますしね……」
「君の色に染めてくれ」
「染まる前に私が燃やされて消えそうですが、まぁ出来る限りの事はしますよ、出来る限りの事は」


こうしてフィフィからの許可も貰い、俺はフィフィの好みのタイプに成長することを選んだ。
男神のプライドなど、フィフィの前では紙切れのようなものだ。


「では、あくまで紳士的に、理性的に、それでいて心も広く大らかになってくださいね」
「随分と具体的だな」
「私に対するあなたに無いものばかりですよ」
「不甲斐ない」
「最上位の太陽神とは全ての神の指針となるお方です。エルグランド様が公私ともに素晴らしい男神にならねば示しがつきませんよ?」
「心得た。必ずや立派な男神となろう!」
「ええ、頑張ってください」
「そしてシッカリとフィフィ好みの男神になった暁には、是非とも子作りをしたい!」
「………いいでしょう。厳しい条件にしておきます」


――こうしてやっと、一歩でもフィフィに近づくことが出来るようになったような気がする!
フィフィの為のフィフィの為にあるフィフィ専用の俺を育てる為にも、あらゆる努力をするつもりだ。
彼女こそが、俺の求める最愛の女神なのだから!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

捕まり癒やされし異世界

波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。 飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。 異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。 「これ、売れる」と。 自分の中では砂糖多めなお話です。

【完結】断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央
恋愛
【完結】 「なんでわたしを突き落とさないのよ」  学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。  階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。  しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。  ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?  悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!  黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

処理中です...