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アタシの魔王たる器をみせてやろうかね!!
第75話 これからと、そしてその先の――
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――人間国がほぼ壊滅し、獣人国がアタシの庇護下になって三年。
特に変わり映えのない生活をしているが、少しずつ、このダンジョンから冒険者を人間国に戻していっている。
無論戻しても戻ってくる輩はいるが、そいつは仕方ない。
楽園を一度味わうと、現実には帰りたがらないのが人間だ。
だが、少しずつだが変わりつつあった。
微々たる変化だが、それは少しずつ魔王領から始まっている。
まず、最果ての街に【不可不思議キヌマート】……つまりコンビニ一号店が出来た。
この情報は直ぐに人間国の王の元に行ったようで、毎日ではないが、頻繁に人間国の城からあらゆる品を買いに来ているのは知っている。
知られていないと思っているのは人間国のアホな王くらいだ。
戻っていく冒険者たちにより復興は思った以上に進んでいるようで、いい報告を聞くこともあれば悪い報告を聞くこともある。
人生山あり谷ありだよ。
ドワーフ王は未だに諦めちゃいないし、爺様との喧嘩は名物になりつつある。
今の所、爺様一強だがね。
流石アタシの夫だと惚れ直したのは内緒だよ? ヒヒヒ。
そして、アタシと爺様に夜叉孫が生まれた。
可愛い男の子と女の子の夜叉孫だ。
カナデもなんだかんだと頑張ったんだねぇ……と有難く思う。
ピアもミツリもよく頑張ったもんだ。
しかし、人生で夜叉孫まで見るなんて思ってもいなかったからね。
人としての人生ならまず見る事は無理だっただろう。
何せこの異世界に召喚された時、アタシは既に病を患っていて、薬がなければ幾ばくも無い命だったのだから。
無論爺様にも教えていない事実さ。カナデは恐らく知っているだろうが、怖くて言えないんだろうねぇ。
だが、常時若返りで病気のなかった時代の体に戻っている為、健康体そのものだ。
爺様も目立った病気をしていない働き盛りの年齢だからね。
まだまだアタシと爺様が魔王領を、そして魔王と英雄として君臨していくんだろうが、それが世界の均等を保つというのなら安いもんだ。
そう言えば、各場所を回っていた飢饉だが、人間界にもやはり飢饉はやってきた。
だが、人間が少なくなっていた事や、天使族からの支援をガッツリ貰えた為、飢饉は乗り越える事が出来たらしい。
この情報は驚くべきことに、人間王国の王太子より書簡で届いたのだ。
陛下はまぁ、残念だが……。ショックでちぃっとばかり、頭が可笑しくなっちまった所があるらしい。
そこで、徐々にだが王太子が王の仕事を引き受けているらしく、アタシの元に手紙が届くという訳だ。
『世代交代がしっかり果たせず王になりそうだね』と返事を返すと『これもまた、一つの時代が終わる為には必要な事だったのでしょう』と返事が返ってきており、カナデとは仲良く出来そうな国王になってくれそうだ。
時代は巡る。
だが、アタシと爺様、曾孫のカナデの時間は止まっていて、前には進まない。
先にミツリが老いて死ぬだろう。
それでも残る事を決めたのはミツリだ。
カナデもそれを理解した上で第二妃に貰っている。
こちらの世界で言えば、異世界人の血は残ったのだ。
ただ、悲しい事に……アタシ達を置いて咲いては消えていく儚い命だがね……。
それは、あちらの世界からの『忘れるな』と言う意味の贈り物なのかなんなのか。
もしかしたら、これこそが一番のデバフなのかもしれないねぇ。
それでもアタシ達は魔王として、その夫として、曾孫として生きて行かねばならない。
この異世界で。
平和の礎の為に。
「それは悪い事じゃないが、いい事でもない。でも、戦争を引き起こさないっていう意味では、最高に大事な存在がアタシ達なんだよ」
「そうですね」
「ワシら三人がいるからこそ、全ての国で飢えに苦しまず、戦争で親を亡くすことも、我が子を亡くすこともなく、当たり前ではないが、当たり前だと思える平和の上で生活が出来ておるんじゃよ」
――そう、魔王キヌはその為の生贄ともいえるかもしれないね。
それでも一人じゃない。
一人なら耐えれなかったかもしれないが、三人居れば未来は多少なりと明るい。
そう思えたのは、幸せなことかもしれないね。
「さて、次はアタシと爺様とカナデの楽園でも作ろうか!」
「楽園……ですか?」
「ワシらのか? そりゃええのう!」
「んじゃ、いっちょダンジョンボスでも倒してダンジョンコアを手に入れようかね!」
「待ってください曾婆様!! どんな楽園を作るつもりです!?」
「せっかくネットスーパーがあるんだから、派手に使いたいじゃないか! 第三の人生だよ!! 大人しく着いていきな!!」
下を向いてクヨクヨしてるのはアタシの性に合わないね!!
次はアタシ達だけの楽園を作るとしようか!!
何れアタシ達の事が神話になる頃、旅に出るのも良い。
生きてる間は華の人生だ!
「ちゃっちゃとボスを倒して次の人生のスタートだよ!!」
――アタシ達が神話になる頃また物語は始まるかもしれないが、それまではこの異世界、平和でいておくれよ?
――完――
特に変わり映えのない生活をしているが、少しずつ、このダンジョンから冒険者を人間国に戻していっている。
無論戻しても戻ってくる輩はいるが、そいつは仕方ない。
楽園を一度味わうと、現実には帰りたがらないのが人間だ。
だが、少しずつだが変わりつつあった。
微々たる変化だが、それは少しずつ魔王領から始まっている。
まず、最果ての街に【不可不思議キヌマート】……つまりコンビニ一号店が出来た。
この情報は直ぐに人間国の王の元に行ったようで、毎日ではないが、頻繁に人間国の城からあらゆる品を買いに来ているのは知っている。
知られていないと思っているのは人間国のアホな王くらいだ。
戻っていく冒険者たちにより復興は思った以上に進んでいるようで、いい報告を聞くこともあれば悪い報告を聞くこともある。
人生山あり谷ありだよ。
ドワーフ王は未だに諦めちゃいないし、爺様との喧嘩は名物になりつつある。
今の所、爺様一強だがね。
流石アタシの夫だと惚れ直したのは内緒だよ? ヒヒヒ。
そして、アタシと爺様に夜叉孫が生まれた。
可愛い男の子と女の子の夜叉孫だ。
カナデもなんだかんだと頑張ったんだねぇ……と有難く思う。
ピアもミツリもよく頑張ったもんだ。
しかし、人生で夜叉孫まで見るなんて思ってもいなかったからね。
人としての人生ならまず見る事は無理だっただろう。
何せこの異世界に召喚された時、アタシは既に病を患っていて、薬がなければ幾ばくも無い命だったのだから。
無論爺様にも教えていない事実さ。カナデは恐らく知っているだろうが、怖くて言えないんだろうねぇ。
だが、常時若返りで病気のなかった時代の体に戻っている為、健康体そのものだ。
爺様も目立った病気をしていない働き盛りの年齢だからね。
まだまだアタシと爺様が魔王領を、そして魔王と英雄として君臨していくんだろうが、それが世界の均等を保つというのなら安いもんだ。
そう言えば、各場所を回っていた飢饉だが、人間界にもやはり飢饉はやってきた。
だが、人間が少なくなっていた事や、天使族からの支援をガッツリ貰えた為、飢饉は乗り越える事が出来たらしい。
この情報は驚くべきことに、人間王国の王太子より書簡で届いたのだ。
陛下はまぁ、残念だが……。ショックでちぃっとばかり、頭が可笑しくなっちまった所があるらしい。
そこで、徐々にだが王太子が王の仕事を引き受けているらしく、アタシの元に手紙が届くという訳だ。
『世代交代がしっかり果たせず王になりそうだね』と返事を返すと『これもまた、一つの時代が終わる為には必要な事だったのでしょう』と返事が返ってきており、カナデとは仲良く出来そうな国王になってくれそうだ。
時代は巡る。
だが、アタシと爺様、曾孫のカナデの時間は止まっていて、前には進まない。
先にミツリが老いて死ぬだろう。
それでも残る事を決めたのはミツリだ。
カナデもそれを理解した上で第二妃に貰っている。
こちらの世界で言えば、異世界人の血は残ったのだ。
ただ、悲しい事に……アタシ達を置いて咲いては消えていく儚い命だがね……。
それは、あちらの世界からの『忘れるな』と言う意味の贈り物なのかなんなのか。
もしかしたら、これこそが一番のデバフなのかもしれないねぇ。
それでもアタシ達は魔王として、その夫として、曾孫として生きて行かねばならない。
この異世界で。
平和の礎の為に。
「それは悪い事じゃないが、いい事でもない。でも、戦争を引き起こさないっていう意味では、最高に大事な存在がアタシ達なんだよ」
「そうですね」
「ワシら三人がいるからこそ、全ての国で飢えに苦しまず、戦争で親を亡くすことも、我が子を亡くすこともなく、当たり前ではないが、当たり前だと思える平和の上で生活が出来ておるんじゃよ」
――そう、魔王キヌはその為の生贄ともいえるかもしれないね。
それでも一人じゃない。
一人なら耐えれなかったかもしれないが、三人居れば未来は多少なりと明るい。
そう思えたのは、幸せなことかもしれないね。
「さて、次はアタシと爺様とカナデの楽園でも作ろうか!」
「楽園……ですか?」
「ワシらのか? そりゃええのう!」
「んじゃ、いっちょダンジョンボスでも倒してダンジョンコアを手に入れようかね!」
「待ってください曾婆様!! どんな楽園を作るつもりです!?」
「せっかくネットスーパーがあるんだから、派手に使いたいじゃないか! 第三の人生だよ!! 大人しく着いていきな!!」
下を向いてクヨクヨしてるのはアタシの性に合わないね!!
次はアタシ達だけの楽園を作るとしようか!!
何れアタシ達の事が神話になる頃、旅に出るのも良い。
生きてる間は華の人生だ!
「ちゃっちゃとボスを倒して次の人生のスタートだよ!!」
――アタシ達が神話になる頃また物語は始まるかもしれないが、それまではこの異世界、平和でいておくれよ?
――完――
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