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アタシの魔王たる器をみせてやろうかね!!

第67話 ついに獣人国の崩壊が始まっていく……①

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 勇者と魔法使いの禊……。何か手っ取り早く終わる方法はないだろうか。
 カナデを見ると「俺は要りませんよその二人」と返され、思わず頭を抱えて溜息を零す。
 確かに自分を奴隷に堕とした相手等と一緒にはいたくないだろう。
 となると、アタシがどうにかしなと行けないんだが……。


「魔王よ、いっそ獣人国へ連れて行き、護衛として歩かせてはどうだ?」
「だがね。勇者としてのデバフが酷すぎてレベル60なのに40レベルしかないんだよ」
「「え!?」」
「なんだいアンタ達、知らなかったのかい?」


 そう呆れて口にすると、ピアが一歩前に出てお辞儀をすると補填的に話をしてくれた。
 強い力を持って召喚されたものは、デバフが掛かるのだと。
 勇者と魔法使いと言う強いデバフの為、色々なデバフが掛った状態に現在なっており、勇者やその魔法使いでなくなれば、デバフが取れて正しいレベル60になるだろうと勇者たちに語った。
 しかし、勇者たちは「では魔王様の場合はどうなんですか?」と聞いて来た為、魔王の場合は、魔王そのものがデバフの塊だった為、それを補うためにバフが強くかかったのがアタシとカナデであった事をピアが語り、勇者たちは納得していた。


「時折、英雄と呼ばれる方が召喚される場合があります。その方はデバフが掛からずバフだけが掛かる稀有な存在なのだそうです」
「へぇ……。英雄ねぇ」
「英雄は勇者より強いですわよ」
「くっ」


 勇者の方を見て鼻で嘲笑たピアにアタシは苦笑いしつつ、「英雄に会えるならあってみたいもんだねぇ」と声を出して笑った。
 取り敢えず勇者たちの禊だ。
 仕方ない……暫くアタシの傍で働いて貰おうかねぇ。


「勇者キョウスケと魔法使いユキコ、アンタ達は暫くアタシの傍で働いて貰うよ。と言っても、今の予定だと獣人国への護衛だ。別にアンタ達は必要ないんだが、それが手っ取り早く禊になるんでね」
「「分かりました」」
「今日からは、【勇者】【勇者の魔法使い】と言う肩書は捨てて貰うよ。いいね」
「「はい!!」」


 そう伝えると、キョウスケとユキコは力強く頷き、まずはデバフが消えるまで禊の時間とすることになった。
 ミツリは案外早くに禊が済んだが、キョウスケとユキコは時間が少し掛かるかも知れないねぇ。
 それでも、獣人国へ行くまでの間に禊は済んでくれるだろう。


「さて、これからの予定だが。まず獣人国に向かい『ファンブリス家』にフォルの無事を伝える。それが一番の目的だ。派手に動き回りたい訳じゃないが、情報収集はしたいところだねぇ……。獣人族がアタシ達を受け入れれば、が前提だが」
「受け入れられない可能性があると」
「同盟国ながら断交状態なのです。形だけの同盟国なので、何が起きるか……」


 そうモーダンが伝えると、眉を寄せたのはアタシだけではなく、ドワーフ王もだった。


「今の獣人王にはお子が居ないという。王妃でもダメ、側妃でも無理。そこで、王がどこかで不貞を働き生まれた子が居るのではと言う話だ」
「そいつは、ドワーフ王国と獣人国との間でやり取りがあったのかい?」
「人間国でスタンピードが起きた際、大量の武器防具の発注が獣人国から来た。その際に聞き出した情報だ。奴ら戦争を仕掛けるつもりだぞ」
「だろうね。今の人間国は恰好の餌食だ」


 そうしたのは自分たちだが、人間国が襲われれば間違いなく天使族との戦争は避けられない。
 その場所が魔王領と言うのがまた困る事なんだよねぇ。


「天使族とやり合いたい訳ではないし、同盟国と言っても断交している同盟国を守る気もない。モーダン、獣人国に魔王からの書簡を出したい。頼めるかい?」
「用意いたします」
「どうするのだ魔王」
「既に獣人国は魔族にとって同盟国に非ず。魔王領での争いは領土侵略とする。また、天使族と獣人国どちらの味方にもならない。って事を出しておくのさ」


 簡単に言うなら「こっちを巻き込むな」と言う奴だ。
 モーダンの持ってきた紙にそれらの事を記入し魔力を注いで名を書くと、後は部下にこの書簡を持って行って貰うだけだ。
 影を操る魔族がいる為、その者が適任とされており、各地に書簡を送るのはその魔族が手掛けている。


「早くて明後日には伝わるだろう。戻りはリングを使って直ぐだから早いだろうね」
「魔族は羨ましい。あのような稀有な魔族もいるのだから」
「影に潜む魔族だが、使い勝手はいい。だが大本の性格が『ストーキング』だから、ある程度こちらも諦めは必要さね」
「わたくしたちの影にも潜んでましてよ」
「そうだね」


 その言葉に自分の影を見つめるドワーフ王にキョウスケとユキコ。
 固まるのも仕方ない。奴らは潜むのが仕事で趣味なようなものだ。
 アタシから見れば、一反木綿みたいな見た目なのに真っ黒ってのが、時代を感じるというか懐かしいというか……と言う感じなんだけどねぇ。


「では……キヌの影には今どんな影が入っているのだ?」
「今はメスの影が入ってるよ。オスの影はメスの影に追い出された感じさね」
「そ、そうか。メスならば問題は無さそうだ」
「やだねぇ。所詮は一反木綿じゃないか」
「いったんもめん?」
「ああ、俺達のいた世界にいる魔族に似たというか、妖怪と言われる架空の存在なんです。それに似ているのでキヌ様は大層可愛がっておられるんですよ。何せキヌ様は妖怪大好きでしたから」
「ほう……キヌの好きな架空の存在がこちらに居たということか。それなら影に住ませるのも頷ける」


 そう言って一人納得するドワーフ王に少し引きながらも、アタシは此奴の嫁でも女房でもなんでもないんだけどねぇ……と溜息を吐く。
 取りあえずは明後日を待つことにしようかね。


「だが、同盟国ではないと言う事になったらファンブリス家にはどうやって返事を送るのだ?」
「一反木綿に行って貰うのが一番手っ取り早いだろうね。もし話し合いの場を……と言う場合は行くが、そこも含めて明後日を考えている」
「獣人国は断交して長いので、迂闊に動けないというのもあるんですよ」
「もしこのまま断交と言うのなら、ドワーフ王国経由で行って貰っても構わんぞ」


 思わぬ提案に驚いていると、ドワーフ王は「こちらは儲からせて貰っているからな」と、冒険者が買っている武器等で潤っている事に感謝していたようだ。


「なら、その時は一反木綿じゃなく、ドワーフ王国経由でいこうかねぇ。これで一つ貸しは返して貰ったよ」
「ははは」


 こうして問題は一つ片付いた為ホッと安堵しつつ、明後日の報告を待つことになり、それから三日後、獣人王国から返事がきたのだ。そこには――。



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