【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!

うどん五段

文字の大きさ
上 下
60 / 74
人間界の国王が彼是やらかしに来る? 迎え撃ってやろうじゃないか!!!

第61話 悠長に構えていた結果の身から出た錆……ついにスタンピードが起きる②

しおりを挟む
 勇者たちは自分たちが何故「城に帰れば殺される」のか理解していなかったが、それは冒険者の言葉で理解できたようだ。
『人間国では今勇者を殺すための準備が着々と進んでいる』『お前たちの命もあと僅かだな』……そうせせら笑われ、事実だと理解したようだ。
 かといって元の世界に戻るつもりはあるのかどうか……。
 2人は娼館には行かず、コツコツとポイントを貯め続けているし、普通のホテルに一人部屋に二人で寝泊まりしながら金の節約もしてるようだ。
 さてさて、何時元の世界に戻るつもりかね。

 それはそうと、人間国は大変なことになっていた。
 ついに恐れていたスタンピードが起きたのだ。
 それも1か所どころじゃない、雪崩が起きるように一斉に始まった。
 村と言う村は襲われ、町は破壊され、大きな街に逃げ込んだ者たちの多くは死に絶えた。
 冒険者による討伐も行われたが、レベルの低い冒険者も駆り出され殆どが殺されただろう。

 辛うじてドルの街は冒険者がしょっちゅうきては敵を倒している為スタンピードが起きなかったが、あっという間に吞まれるように、人間の住処は消えていった。
 ――頼みの綱だった援軍は間に合わなかった。
 到着した時にはすでにスタンピードが起きた後で、後始末に追われていた。
 沢山の遺体は穴を掘って埋める作業をしていたし、最早どうしようもない状態だったのは誰の目から見ても明白で。

 国王は他国の王より苦言を言われ責められていた。
『もっと早くに対応していれば何とかなったのではいのか!?』と。
 それについては自分たちがキヌマートに夢中になっていてスッカリ頭から抜け落ちていたとは言えず、結局『冒険者を魔王領のダンジョンから何度も呼び戻そうとしたが、誰一人帰ってこなかった』と苦し紛れに、それも事実を伝えていた。
 その事により、魔王領のダンジョンの実態を語り始めた国王だったが――。


『魔王領の事は人間国であるそなた達の仕事であろう。その為に我々は多額の金をそなたの国に支払っている』
『それは……』
『お待ちください。今回の魔王は一筋縄では行かぬのです!!』


 そう声を上げたのは王太子だった。
 その言葉に羽の生えた天使の様なお偉いさんは椅子に座り直し、話を聞くことになったようだ。
 そして、ダンジョンの内容を事細かに語ると、お偉いさんは『ふむ』と頷き『確かに妙だ』と答えていた。


『魔族も、魔王召喚をしたのかもしれん』
『魔王召喚など出来るのか!?』
『一つの可能性だ……。その中にそのキヌマートとやらを作った人間がいても可笑しくはない。であろう?』
『確かに……』
『我ら天使族は魔族とは遣り合わん。相性が悪いのでな。だからこそ元天使領であった場所に人間王国を作るのを許可したのは、無論そなたも知っていよう』


 へぇ。元々人間国は天使領だったのかい。
 随分と気前よく人間たちに与えたもんだね。
 とはても、ダンジョンだらけのあまりいい土地とは言えないが。
 だからこそ人間の国にしたんだろう。
 ずる賢い事をする天使族だねぇ……あーヤダヤダ。


『こうなっては復興にも時間が掛かろう……見舞金くらいは出してやる』
『ありがとう……御座います』


 こうして意気消沈した人間国の王の場から離れ去っていった天使国の者。
 復興と言っても殆どの村や町は破壊され、街は屍の山だ。
 それも天使族が手伝ってくれるようだが……やれやれ、人間の王も愚かだねぇ。
 こうなる前に手を打てた筈なのに、呑気に構えているからこうなるんだ。
 なんでも後手の後手。あーヤダヤダ。


「天使族と魔族は相性が悪いんだねぇ」
「はい、もうずっと昔からだそうですわ」
「なるほど、理由は?」
「昔、大天使がいたそうなんですけれど、魔族と戦って敗れたそうなんですの」


 そう語るピアにアタシは「天使の方が勝ちそうだけどねぇ」と告げると、「そうでもなかったんです」と語り、その大天使は後に魔族の子を産んで死んだのだという。


「それが、今生きている魔王一族であるわたくしなんかがそうですわ。あの天使もオッドアイだったように、わたくしのような魔王一族もまた、オッドアイで生まれますの。大天使が負ける程の魔族ですもの、天使族はそれから畏怖するようになりましたわ」
「なるほどねぇ」


 気持ちは分からなくはないが、大天使であっても負けるというのであれば問題だったのだろう。しかも子も作らされたのか、作ったのかは別として、そりゃ畏怖もしたくなるだろうさね。


「その後、人間たちを住まわせるために魔族領と天使領の間にあった広い土地を人間たちに譲ったそうですの。ダンジョンも多く不便な土地を渡したんですわ!」
「だろうね」
「それでも人間たちはダンジョンを何とかしながら生きてきましたけれど、今回のスタンピードでわたくしの仇討も人間国に出来ましたし、ある程度は留飲が下がった……と言った感じかしら」
「そいつは良かった」
「でも、これで魔王が動き出したら人間国はどうなりますかね」
「そいつは面白い案だねぇ?」


 カナデの言葉にニマァ……と笑うと、アタシは次の一手を考える。
 さて、アタシの素性は知られていない。
 ここで追い打ちをかけてやろうかね……。
 和平交渉には乗らないが、視察にでもいこうかね……ヒヒヒ。


「人間王国に使いを出しな! 視察に行くってね!!」
「行かれるんですか!?」
「おっと、カナデは魔王城を頼むよ。アンタは顔が知られている」
「では僕がついていきますよ」
「そうだね、トッシュは久々にアタシについてきて貰おうか。タリスとトリスにもついてきて貰おうかね」
「久々にお出かけですね!!」


 そういって喜ぶトッシュにアタシは頷くと、直ぐに立ち上がり指示を飛ばす。
 人間の城まではそれなりに遠いが、ハイエーナのキャンピングカーを使えば結構直ぐだ。
 片道5日もあれば到着するだろう。
 その間タリスとトリスに運転させておくというのも手だからねぇ。
 ハイエーナのキャンピグカーは別の拠点にも通れる優れものだ。
 何時でも魔王城に戻ることが可能になる。
 そんな時だった。アタシに手紙が届いたのは――。


「魔王様、お手紙が届いております」
「誰だい?」
「ドワーフ王からです」
「酒飲みの誘いかねぇ?」


 そう思って手紙を見ると――【今、馬を使い部下を連れて魔王城に向かっている】というじゃないか。
 何か問題でもあったのかねぇ?
【到着には三日はかかる為、待っていて欲しい】という内容だった。
 ふむ、三日くらいなら待ってみようかね……。
 その間に勇者たちがどうなるのか、ちいっとばかり様子を見ようか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...