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人間界の国王が彼是やらかしに来る? 迎え撃ってやろうじゃないか!!!

第58話 大事な【何か】を放置し、キヌマートの事で荒れる王国②

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 ――王国side――


 直ぐに使者を出し、魔王との和平交渉の場を設けようという提案をしたのだが、返事は素っ気なく断りの返事と来たものだ!!
『和平交渉はなさらないとの事です』と魔王直属の部下が伝えに来てその場に倒れたという使者が言うには「あまりにも恐ろしいオーラを感じました」との事で、前魔王を不意打ちで殺したことが尾を引いているのだと理解した。

 故に、魔王は和平交渉の場には来ないのだろう。
 しかし、一つ提案してきた。

『他の冒険者のようにダンジョンを攻略しながら魔王城を目指す……と言うのなら、理解しないことは無い。第三層までくれば門を用意してやろう』

 そう返事が返ってきたのだ。
 それならば、と立ち上がったのは王太子である。
 どんな状態になるのかは分からないが、ワシは息子である王太子に魔王との話し合いの場を設ける為に、普通の冒険者たちと同じように上の階層を目指す方法を頼んだ。


「どのみち討伐に行く予定だったのですから、向こうから来いだなんて運がいいではありませんか」
「それはそうだが」
「楽園を壊すのが目的なんです。私は吞まれませんよ。偽りの楽園なんかにはね」


 そう胸を張った王太子の成長に涙を流し、せめて精鋭部隊からの返事を待ってからにしようという事になった。
 急いで行かずともダンジョンは消えて無くなる訳ではないのだ。

 それからの日々は、精鋭部隊から毎日送られてくる報告書を王太子と一緒に聞いていたが、日にちが経つにつれてその内容に徐々に変化が訪れていく。
 最初こそ、遊びや賭け事に興じる冒険者達への不満や勇者の堕落した生活が続き、勇者が愚者と成り果てている事に怒りを感じる内容が続いた。
 そして、二階までは自由に行き気が出来る事や、二階には金のある冒険者達は【温泉旅館】なる素晴らしい場所で寝泊まりができ、その他は懐具合を考えてホテルを選んでいるという事が記載されていた。

 人気の『一般的なホテル』は多数建っており、そこには聞いた事も無い【キヌマート大型ショッピングモール】【キヌマート酒店】とあり、更に【キヌマート化粧品店】【キヌマート宝石店】【キヌマート洋服屋】【ドワーフの武器屋】に【ドワーフの防具屋】まであり、更に【不可不思議キヌマート店】が5軒もあるというではないか!


「キヌマートはコンビニだけではなかったのか!?」
「一体どれだけの店を持っているのでしょう……」
「それだけではなく、ドワーフの武器屋にドワーフの防具屋だと……?」
「同盟国ゆえに手に入るのでしょうね……。名刀だと、素晴らしい防具だと名高いドワーフの店があるなんて……」


 そんな中、ダンジョンボスの情報も手に入れる事が出来たが……誰も戦ったことがないというなんとも情けない情報だった。
 敵が何なのかも不明なのだそうだ。
 ただ、入り口はあるらしいが、近寄る冒険者はいないらしいというのは冒険者から聞いた話として纏められている。

 まだ精鋭部隊ですら第一階で必死になっているようで【魔王城ポイント】を貯めねば三階には行けないのだそうだ。
 そこまでは良かった。
 そこまでは。

 次第に連絡が途切れ途切れになっていき、殆どが【魔王城ポイント】がどれだけ溜まったという報告になっていく。
 余程【魔王城ポイント】を貯めるのに必死になっているのだろう……。
 第三層に行くために精鋭部隊は必死なのだ。
 時折最果ての町に戻って精鋭部隊に出しているお金を引き出して戻っているようだったが、調べるための資金だと思えば安かった。

 安かった筈だが――。
 その減りの速さにゾッとしたのは宰相の方で、「魔王ポイントとはかなりお金を使うようですね……」と汗を流していた。
 確かにかなりの金を使ってはいるが、王太子を送り出すのだ。
 シッカリとした調査は必要だろう。
 ――それから三か月した頃、やっと第三層に上がれると喜びの報告が来て、ワシ達もこれですぐに第三層を調べてから王太子を送り出せると喜んだのだが――。

 第三層についてから、ぷっつりと連絡が来なくなった。
 こちらからも連絡を入れているのだが、一切の連絡が来なくなったのだ。
 まさか、死んだのでは?
 そう思ったが精鋭部隊は帰ってきていないのだという。
 一旦城に戻らせるために精鋭部隊の金庫を凍結させ様子を見ていると、更に二か月後彼らは城に戻ってきた。
 そして開口一番に――。


「陛下!! 何故精鋭部隊の金庫が凍結されているのです!!」
「これでは魔王領のダンジョンに行けないではありませんか!!」
「なんという非道な事を!!」
「何を言っている!! 第三層に行った途端貴様たちは連絡もしないで!! 第三層には何があったというのだ!」
「金庫を元に戻してくれないのなら話す必要はない」
「情報には金だよな?」
「お前等……」


 変わり果てた精鋭部隊にゾッとしたのはワシだけではなく、王太子も汗を流して驚いていた。
 王国の為に働いていた精鋭部隊の変わり果てた姿……いや、心と言うべきだろうか?
 王国への、そしてワシへの忠誠心が全くなくなっていたのだ。
 その事実にゾッとする……。


「お、主たちは何を言っている。この国の精鋭部隊! 魔王領にあるダンジョンを調べてくる使命を持った者たちであろう!!」
「調べてきましたよ?」
「ええ、一生懸命調べてきましたよ」
「あらゆる意味で隅々まで……なぁ?」


 下品に笑う精鋭部隊を見たことが無かった……。
 彼らは口々に誰かの名を口にしており、「早くアリュポンの所に帰りたいなぁ」なんて言っている。
 一体誰の事を口にしているのだ?


「精鋭部隊の金庫の凍結を解除してくれるなら第四階のボスの事もゲロりますよ」
「第三階の内容は高いよなぁ」
「高いなぁ……」
「えーい!! 凍結は解除してやる!! どうなっているのだ!!」


 その一言で彼らは素直に喋りだした。
 第三層は全て娼館である事、いい香りが充満していて気持ちがいい場所である事。
 美女の娼婦や美男の男娼が山のようにいて、お気に入りを見つけるのが大変だったなど、どうでもいい話が続く。


「そうそう、第四層は一応調べたんですけど、俺達でも入れませんね」
「入ったら魂が抜け落ちそうになるっていうか」
「ああ、生きながら魂を抜かれる場所だよな」
「生きながら魂を抜かれる……?」
「そういう道がず――っと続いていて、一番奥に扉が見えるんですけど、中にいる敵は恐らくレベル1000くらいの恐ろしい奴ですよ」
「あれは1匹じゃねーな」
「ああ、一体何匹いるのか見当もつかねぇな」
「ま、普通の奴が戦うなら死ぬしかねーって奴ですわ」
「んじゃ話は終わったんでお我たちは帰りますよ」
「帰る? 一体どこに」


 そう言っている間に精鋭部隊は居なくなった。
 一体……何がどうなっている。
 あれほど忠誠を誓っていた精鋭部隊は何処に消えたのだ??
 魔王領のダンジョンとは一体……。
 呆然とするワシの横で、身をブルリと震わせる王太子にこの時はまだ気づきもせず……ワシは何かが崩れていくのを感じ取っていた――。

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