52 / 74
人間界の国王が彼是やらかしに来る? 迎え撃ってやろうじゃないか!!!
第52話 自分がダンジョンにいって変わってしまったことに気づかない
しおりを挟む
――ドナside――
気が付けば、ドルの町に戻ってきていた。
それも病院のベッドの上だ。
気つけ薬中毒と言われ、点滴を受けながら気つけ薬を体から抜いている途中だ。
『魔王領に出来たダンジョン』……あれは信じられないほどの中毒性のある場所だった。
毎日気つけ薬を飲んで何とか正気を保っていられるかどうかの場所だというのが分かった。
そんなものを用意せずいった冒険者達は、最早あのダンジョンに染まりすぎていて、いつも通りのダンジョン生活等出来ない状態だろう。
そういう俺ですら、第三層にいってからは溺れてしまった。
気つけ薬なんて役に立たなかった。
あれは独特の人間の脳を弄るお香が充満しているのだと気づいた時には既に遅かった。
そこで出会ったサキュバスに自分でも信じられないくらい溺れ込んだ。
家族の為に働いていると言っていたまだ年若い娘だった。
本当かウソかは分からない。
だが、手は荒れていて仕事をしている手だというのだけは脳に残っている。
彼女を幸せにしたくて貢ぐだけ貢いで幸せな時間を過ごした。
俺がカプセルホテル送りになった時、泣きながら抱き着いていた。
「また戻ってきてください……それまで客は取りません」
「分かった……必ず戻ってくる」
そういって別れたのだ。
魔族との約束?
なんて馬鹿げたことしたんだ俺は。
魔族が待っていてくれることなんてないのに……。
それでも彼女を想えば早く退院して駆け出していきたかった。
第一層で稼げれば第三層に長くとどまることが出来る事もわかった。
一刻も早く戻りたい……中毒性の高い所にいたからそう思うんだろうか?
「サナリン……」
あの魔族の名を口にする。
あの魔族が本当の事を口にしていると何故か思ってしまう自分は相当脳がやられているらしい。
だが、泣きながら俺に抱き着いて来た涙も、顔も、ウソをついている顔じゃなくて。
俺を一人の男として見ている顔で心が騒めく。
「ドナさん気が付きましたか?」
「ジーか。すまんな、俺がこんな状態じゃなければ良かったんだが」
「いえ、貴方は随分と頑張りましたよ……。気つけ薬の中毒なんて早々なりませんからね」
「ははは」
そう力なく笑うと、ジーは真剣な顔で俺と向き合った。
「それで、魔王領にあるダンジョンはどんな場所だったんですか」
「そうだな……。今まで向かってしまった冒険者は諦めろ。普通のダンジョン等行くことは最早ない」
「そんな!!」
「あったとしても、このドルのダンジョンくらいだろう。金稼ぎにはもってこいだからな」
「それでは困るんですよ~~!! 多方面のダンジョンが放置されすぎて危険な状態なんです!!」
その言葉に俺は溜息を吐いた。
多方面のダンジョンが放置されすぎている=スタンピードが起きても可笑しくないという事だ。
だが、肝心の冒険者は魔王領のダンジョンから出てこない。
手紙を送りつけても無視されている状態なのだという。
既に魔王領のダンジョンに行った者たちは、冒険者ランクが落とされようと全く気にしていない状態らしい。
致命的だ……。
この俺さえも、早く魔王領のダンジョンに戻りたいと思っていたのだから。
いや、今も強く思っている。
決して許されるはずない立場なのに、なんという拷問だろうか。
「フ――……。スタンピードが起きそうな予兆はもう出ているのか?」
「今の所はまだ予兆は出ていない……だが近いうちに出る」
「……王国には連絡は?」
「したさ無論。各地の冒険者ギルドルドが王国に対し、ダンジョンの敵を少しでも減らして欲しいと嘆願書を送っている」
「王国は何と?」
「一か所ずつ回っていく為、時間が掛かると」
そうしている間にダンジョンは更に活性化し、スタンピードが起こる場所は出てくるだろう。
まさか……魔王の狙いはそこか?
いや、そこまで考えている魔王等いるだろうか?
キヌ様に話を聞けば分かっただろうか……。
あの魔族だらけの世界において、まるで女王のように振舞うキヌ様は異様に見えた。
キヌマートが素晴らしいが故の事だろうと思うのだが、魔王はどうやってキヌ様のスキルを知ったのだろうか……。
勇者が嫌いだと言っていたが、キヌ様達と勇者たちに何か因縁があったのだろう。
あの美貌の持ち主だ。
勇者がちょっかいを出したのかもしれない。
可能性は十分に考えられた。
「俺も薬が抜けて頭がスッキリしたらもう一度ダンジョンに戻って話を聞いてくる」
「危険だぞ! こんな気つけ薬中毒になってまで……」
「次は上手くやるさ」
「ドナ……」
「だから、お前がギドルドマスターになっておけ。俺は出来る限りダンジョンを調べて戻ってくる」
「――っ! 分かった、王国には俺から連絡しておく!」
「頼んだぞ」
そう格好いい事を言っているが、俺はサナリンに会いたいだけなのだ。
彼女がウソをついているとは思わないし、思いたくもないが……俺を待っていてくれるのなら早く戻りたい。
嗚呼、出来る事ならサナリンの為にあの魔王領で生きるというのも一つの手かもしれない。
そんな事を思っているとは思わないジーは涙を拭いながら「ドナの気持ちは痛いほどわかる!! 魔王めっ!!」と魔王への怒りを露わにしていた。
サナリン……待っていてくれ。
退院したらすぐに向かう。
どうかそれまで……どうか。
「それで、俺の退院は何時頃になりそうだ?」
「今週中には退院できるそうだ。退院したら直ぐ行くのか……?」
「ああ、確認したいことが山ほどある」
「そうか……。無理をするなよ」
「フッ 分かっているさ」
全ては――サナリンの為に。
最早俺は、人間の国についてなんの執着すら失っていたことに、この時はまだ気が付かなかった。
気が付けば、ドルの町に戻ってきていた。
それも病院のベッドの上だ。
気つけ薬中毒と言われ、点滴を受けながら気つけ薬を体から抜いている途中だ。
『魔王領に出来たダンジョン』……あれは信じられないほどの中毒性のある場所だった。
毎日気つけ薬を飲んで何とか正気を保っていられるかどうかの場所だというのが分かった。
そんなものを用意せずいった冒険者達は、最早あのダンジョンに染まりすぎていて、いつも通りのダンジョン生活等出来ない状態だろう。
そういう俺ですら、第三層にいってからは溺れてしまった。
気つけ薬なんて役に立たなかった。
あれは独特の人間の脳を弄るお香が充満しているのだと気づいた時には既に遅かった。
そこで出会ったサキュバスに自分でも信じられないくらい溺れ込んだ。
家族の為に働いていると言っていたまだ年若い娘だった。
本当かウソかは分からない。
だが、手は荒れていて仕事をしている手だというのだけは脳に残っている。
彼女を幸せにしたくて貢ぐだけ貢いで幸せな時間を過ごした。
俺がカプセルホテル送りになった時、泣きながら抱き着いていた。
「また戻ってきてください……それまで客は取りません」
「分かった……必ず戻ってくる」
そういって別れたのだ。
魔族との約束?
なんて馬鹿げたことしたんだ俺は。
魔族が待っていてくれることなんてないのに……。
それでも彼女を想えば早く退院して駆け出していきたかった。
第一層で稼げれば第三層に長くとどまることが出来る事もわかった。
一刻も早く戻りたい……中毒性の高い所にいたからそう思うんだろうか?
「サナリン……」
あの魔族の名を口にする。
あの魔族が本当の事を口にしていると何故か思ってしまう自分は相当脳がやられているらしい。
だが、泣きながら俺に抱き着いて来た涙も、顔も、ウソをついている顔じゃなくて。
俺を一人の男として見ている顔で心が騒めく。
「ドナさん気が付きましたか?」
「ジーか。すまんな、俺がこんな状態じゃなければ良かったんだが」
「いえ、貴方は随分と頑張りましたよ……。気つけ薬の中毒なんて早々なりませんからね」
「ははは」
そう力なく笑うと、ジーは真剣な顔で俺と向き合った。
「それで、魔王領にあるダンジョンはどんな場所だったんですか」
「そうだな……。今まで向かってしまった冒険者は諦めろ。普通のダンジョン等行くことは最早ない」
「そんな!!」
「あったとしても、このドルのダンジョンくらいだろう。金稼ぎにはもってこいだからな」
「それでは困るんですよ~~!! 多方面のダンジョンが放置されすぎて危険な状態なんです!!」
その言葉に俺は溜息を吐いた。
多方面のダンジョンが放置されすぎている=スタンピードが起きても可笑しくないという事だ。
だが、肝心の冒険者は魔王領のダンジョンから出てこない。
手紙を送りつけても無視されている状態なのだという。
既に魔王領のダンジョンに行った者たちは、冒険者ランクが落とされようと全く気にしていない状態らしい。
致命的だ……。
この俺さえも、早く魔王領のダンジョンに戻りたいと思っていたのだから。
いや、今も強く思っている。
決して許されるはずない立場なのに、なんという拷問だろうか。
「フ――……。スタンピードが起きそうな予兆はもう出ているのか?」
「今の所はまだ予兆は出ていない……だが近いうちに出る」
「……王国には連絡は?」
「したさ無論。各地の冒険者ギルドルドが王国に対し、ダンジョンの敵を少しでも減らして欲しいと嘆願書を送っている」
「王国は何と?」
「一か所ずつ回っていく為、時間が掛かると」
そうしている間にダンジョンは更に活性化し、スタンピードが起こる場所は出てくるだろう。
まさか……魔王の狙いはそこか?
いや、そこまで考えている魔王等いるだろうか?
キヌ様に話を聞けば分かっただろうか……。
あの魔族だらけの世界において、まるで女王のように振舞うキヌ様は異様に見えた。
キヌマートが素晴らしいが故の事だろうと思うのだが、魔王はどうやってキヌ様のスキルを知ったのだろうか……。
勇者が嫌いだと言っていたが、キヌ様達と勇者たちに何か因縁があったのだろう。
あの美貌の持ち主だ。
勇者がちょっかいを出したのかもしれない。
可能性は十分に考えられた。
「俺も薬が抜けて頭がスッキリしたらもう一度ダンジョンに戻って話を聞いてくる」
「危険だぞ! こんな気つけ薬中毒になってまで……」
「次は上手くやるさ」
「ドナ……」
「だから、お前がギドルドマスターになっておけ。俺は出来る限りダンジョンを調べて戻ってくる」
「――っ! 分かった、王国には俺から連絡しておく!」
「頼んだぞ」
そう格好いい事を言っているが、俺はサナリンに会いたいだけなのだ。
彼女がウソをついているとは思わないし、思いたくもないが……俺を待っていてくれるのなら早く戻りたい。
嗚呼、出来る事ならサナリンの為にあの魔王領で生きるというのも一つの手かもしれない。
そんな事を思っているとは思わないジーは涙を拭いながら「ドナの気持ちは痛いほどわかる!! 魔王めっ!!」と魔王への怒りを露わにしていた。
サナリン……待っていてくれ。
退院したらすぐに向かう。
どうかそれまで……どうか。
「それで、俺の退院は何時頃になりそうだ?」
「今週中には退院できるそうだ。退院したら直ぐ行くのか……?」
「ああ、確認したいことが山ほどある」
「そうか……。無理をするなよ」
「フッ 分かっているさ」
全ては――サナリンの為に。
最早俺は、人間の国についてなんの執着すら失っていたことに、この時はまだ気が付かなかった。
77
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる