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経験値は程よく溜まった。後は勇者狙いうちしつつ金稼ぎだねぇ!!

第38話 ダンジョンに入れないってどういうことだよ!!(ザマァ)

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 ――勇者side――

 最果ての村の連中は俺達を見て「実力無しの勇者が」等とほざいていたが、不意打ちでも魔王を殺した勇者だぞ!! 全く俺の功績を理解していない!!
 腹が立ちつつ他の冒険者と一緒に仕方なくデュラハンの運転する乗合馬車に金貨1枚も払って魔王領の中に入っていく。
 こうして魔王領に入るのも初めてな俺とは違い、冒険者たちは「楽しみだな」なんて盛り上がっているし、余程ダンジョンは金儲けができるらしい。


「なぁ、アンタ達は魔王領のダンジョンに籠って長いのか?」
「俺達は中にいる時間も長かったからなぁ」
「これで三回目か?」
「へぇ」
「キヌマートがあるのがいいんだよなぁ!!」
「「キヌマート……」」


 キヌマートと言えば俺が来るからと撤退していった糞野郎な店じゃないか。
 これを機に勇者権限を使って好きなだけ入り浸るのもありだな。
 だが、場所が魔王領だ。
 魔王を殺した俺をどう扱うかによって変わってくる。
 勇者だからと跳ね返すなら大暴れしてやるし、腰を低くして入れてやるなら許してやっても構わない。
 ふんぞり返って馬車で揺られること一時間余り、到着したダンジョンはデカかった。
 冒険者一行が何かのカードを翳して中に入っていく中、俺達も続こうとしたが入れず、受付から声が掛った。


「初めての方はこちらでーす」
「ッチ」
「面倒臭いわね」


 そういって新規冒険者に交じって待つこと数分、俺がと魔法使いが勇者カードを出すと、受付が眉を寄せて「申し訳ありませんが、勇者を通すことは禁じられております」なんて言いやがった!!


「はぁ!?」
「なんで勇者はダメなんだよ!!」
「前魔王様を殺したのはあなた方ですし、現魔王様が許可をお出しになりませんでした」
「現魔王……もう新たな魔王が生まれてやがったか!!」
「ぶっころしてやりましょう!!」
「レベル差がありすぎて無駄だと思いますが……」
「うるせぇ!! 黙れ魔族風情が!!」


 そういって炎の魔法を繰り出したが透明な壁が邪魔して届かなかった。
 俺の魔法が通用しないだと!?
 この強化ガラスみたいなのが弾いたのか!?
 剣を取り出しダンジョンの入り口を殴るがビクともしない!?
 魔法使いも魔法を放ったが跳ね返って危ないばかりで、全く歯が立たなかった。


「どうなってやがんだ……」
「あ!! ねぇあれコンビニじゃない!?」
「!!」


 その言葉にガラスの奥を見ると、確かに冒険者たちが入っては次々袋を持って出て着てやがる。
 ポテチにジュース、コンビ微弁当……。


「やばい!! 欲しい!! 入りたい!! ねぇ何とかして入れないの!?」
「入れたら苦労してねぇよ!!」
「ねぇお姉さんたち、金渡すから買ってきて!!」
「それも禁止されてますので」
「はぁ!? マジ糞役に立たねぇババア共だな!!」
「コンビニでのお使いくらいすぐだろうが、行って来いよ!」
「「禁止されてますので」」
「そこは柔軟にさー!」


 そこまで言うと受付のシャッターが閉じ、これ以上聞く気はないとばかりに閉められた。
 まじかよ、コンビニがあそこにあるのに見てるだけかよ!!
 何とか透明な強化ガラスを突破しようと試みたが、全く歯が立たない……。
 持ってきている食料は僅か。これじゃ馬車に乗ってとんぼ返りして食料をまた買ってここに来ることになっちまう!!
 美味そうなコンビニが目の目にあるってのに!!
 必死になって剣を振っていると、冒険者たちもなんだなんだと集まってきて、俺達が勇者だと知ると「魔王殺したから入れないじゃね?」「なるほどな」なんて言って去っていきやがる!!

 結局中に入る事も出来ないまま、ダンジョンの隅っこでまるでホームレスみたいな生活しながら中に入れる日を待つことになった。
 多分一生入れない気がしなくもないのは気のせいだと思いたい……。
 一日目、二日目までは我慢が出来た。
 三日目になるとイライラが最高潮に達し、四日目――ついにカナデとミツリの姿を見つけた。

 白の羽織を着た二人と一人の美人な年齢の少し行った女性に庇護欲を誘う可愛い美少女が二人、カナデの野郎俺が苦労してるってのにあんないい思いしやがって!!
 そう思って外でギャンギャン喉が潰れるほど叫んでいると、俺達に気づきもせずコンビニに入っていきやがった!!
 暫くすると笑顔で出て来たカナデにドンドンと透明な壁を叩いていると、ようやく俺に気づいたようだ。
 ガラス越しでの会話がスタートする!!


「カナデ!! てめぇ一人いい思いしやがって!! 中に入れやがれ!!」
「そうよそよう!!」
「魔王を殺したあなた方を入れる筈無いでしょう。馬鹿でも考えたらわかりますよ」
「ば、馬鹿だと!?」
「ミツリもどうなのよ!! アンタだって勇者側だったじゃないの!!」


 そうだとも、ミツリだって勇者側だったはずだ!!
 それなのにそっちに入ってるなんて可笑しいだろ!?


「私はもう勇者側と言うのもなくなりましたので」
「「はぁ!?」」
「今ではカナデ君の右腕として生活しているだけです」
「キヌマートや店類は俺とキヌさんでしているからね」
「ええ」


 つまりはコンビニ店長みたいなものか。くそ!!


「だったら俺達になにかコンビニの食いもん寄越せよ!!」
「いくらお金をもらったとしても断ります」
「はぁ!?」
「入れない、食べられないをそこで責め苦として味わえばいいんですよ。ミツリ、いきましょうか」


 そういって俺達に背を向けて歩き出すカナデにイライラして雄叫びを上げてドアを殴ったがヒビ一つ入れる事が出来なかった。
 その日の晩、明日には一旦食料を調達する為に最果ての村に戻る予定を立て、何とか打開策を見つけないとどうしようもないのだという事が分かり悶々としていた頃、外にトイレに向かった俺は油断していた。

 パシュッ

 と言う音が聞こえたと思った瞬間、下半身丸出しのまま脳を打たれて倒れて死んだ。
 気づけば最果ての村のホームに立っていて、慌てて下半身を隠したわけだが――。
 ほどなくして、魔法使いのユキコも現れ、俺達が闇討ちに会ったことを悟った。
 だが全く人の気配すらなかったというのに何故、どこから――。


「も――魔王領ダンジョンにも入れないし殺されるし、どうしろっていうのよ!!」
「ッチ、一応国王にこの事伝えようぜ」
「それもそうね。手紙でいいわよね」
「手紙でいいだろ」


 こうして、俺の方から手紙を書き、国王からの指示待ちとなったのだが――連絡は何時まで経っても来ず、俺達は仕方なく一か月ほど最果ての町に滞在することになるのであった――。
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