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婆さんは若返り、銃を片手に冒険者を狩ってレベルアップだよ!!

第1話 美魔女の正体は104歳大正生まれのお婆ちゃん!?

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 森は薄暗く、冒険者たちが魔物の狩猟に勤しんでいる。そんな中、草陰に身を潜めたアタシは静かに銃を手に取り狙いを定める。
 目を閉じる魔物に向けて武器を構える冒険者。――欲望に満ちた冒険者の醜悪な顔を目の当たりにし、細く息を吐くと同時に引き金を引いた。

 バンッ!!

 威勢のいい銃声が鳴り響き、脳天直撃で武器を持った男が崩れ落ちる。
 残り二人、仲間の冒険者が不意の一撃に慌てふためく。その瞬間を狙ったように、別の草叢から飛び出した小柄な少女が彼らに向けてリボルバーを構え、そのまま発砲した。
 ピアリア。アタシが魔王城から連れてきた女の子だ。


「っこの!」


 逃げられないようにと足を狙ったのだろうが、銃の扱いがまだ未熟なピアリアは当てることができない。
 その様子を見たアタシは、素早くマグナムを取り出して狙いを定め、逃走を図る冒険者の無防備な首を正確に狙い撃った。。

 パンパァン!!

 途端ドサリと倒れる音が聞こえ、アタシとピアリアは草叢から出て来て事切れた冒険者の元へと足を急ぐ。
 この世界のルールでは、死亡した冒険者は【ホーム】と称される、教会の中心にあるクリスタルへと戻されるのだ。
 その為の冒険者用プレートを彼らは何時も身に着けている。


「さ、ピア! 時間がないよ。さっさと金と金目の物を奪い取って剥ぎ取りな!」
「急ぎますわ!」
「どれどれ、アタシも調べさせて貰おうかね……ヒヒヒ」


 そう言いながら、地面に倒れ血を流す冒険者の鞄を漁り、財布や価値のあるアイテムを探し始めた。
 ポーションに護符、これらはあって損はない代物だとスキル【鑑定】で分かる。それらをアイテムボックスに仕舞いこみ、更に装備品で高そうな物を鑑定して剥ぎ取りアイテムボックスに投げ込む。


「コイツはシケテルねぇ。ピア、そっちはどうだい」
「まだ駆け出しの冒険者だったのでしょう。持っている物がお粗末ですわね」
「違いない。だが多少なりと経験値は入った。残る一人は財布だけでも抜き取ってから放置だね。さて、魔物のお前さんには回復魔法をかけてやろうか。おいでぇな?」


 そうアタシが手のひらから回復の魔法陣を出して倒されそうになっていたか弱き魔物に回復魔法をかけると、傷ついた身体は治って行き、嬉しそうに飛び跳ねながら去って行った。


 ――アタシの名前は、田中 絹。現在の職業は【魔王】。
 この世界に魔王転移させられた御年104歳になる大正生まれ。
 見た目は常時スキルの【過去への若返り】のお陰で、見た目は40代前半って所かねぇ?
 魔王召喚されたあの日は驚いたもんだが、ついにアタシもお迎えが来たかと思ったのに、この小娘、元魔王のひ孫であるピアリアが――。


『魔王召喚したのに! こんなお婆様が来てしまわれるなんて!!』


 そう言ってガックリと膝から倒れ落ちる様を見て笑ったっけねぇ。
 あれからややあって、冒険者を殺しながらレベルを上げる日々ってのも、中々最初は慣れそうにないかと思ったが、戦争時代は【殺られる前に殺れ】の世界で生き延びたんだ。
 途中からどうでもよくなっちまった。
 これも、魔王故なのか――それとも、アタシの性格故なのか。


「いいかいピア、銃はしっかりと狙いを定めな。殺す事に躊躇すれば相手が苦しむだけだという事は良く分かっているだろう? 足を貫通すれば足が痛い、腕に当たれば腕が痛い。ジワジワ殺すのがお好みならそれでいいが、効率が悪い。狙う所は?」
「頭、喉、心臓」
「よく覚えておきな」
「はい!」


 アタシがそう言えば素直に聞いてくれる子だ。
 育て甲斐もある根性もある。


「しかし今日は入れ食いの日だね! 久々に町の近くまで来たが……町で聞いてみるのも悪くはないねぇ?」
「人間のやるイベントなんて興味なんかありませんわ! 冒険者なんて、わたくし達の経験値じゃありませんの」
「だが、その経験値が入れ食い状態なんだ。何時まで続くか知りたくはないかい?」
「それは……そうですけれど」


 不満そうに口をとがらせて言うピアリアに、アタシ達は事切れた冒険者に興味もなくその場を去り、次なる経験値――【冒険者】を探して行く。
 魔王側であるアタシ達は、魔物や魔獣を倒しても経験値なんて上がりゃしない。
 上がるのは魔王軍と敵対している【人間】、つまりは【冒険者】を殺した時にこそ経験値が上がる。

 だからと言って、アタシ達は一般人だけ殺さない。
『許される命と、許されざる命』の区別くらいはつけている。そのことをピアにも厳しく教え込んでいる。

「しかし『魔王のレベルが低い等、魔王とは認めない!!』って輩が多くて困っちまうね」
「それは……仕方ないかも知れませんわ。でも、少なくともキヌ様はわたくしよりレベルが高かったですわ。何故ですの?」
「昔の経験……って奴かねぇ。アタシは戦時中、従軍看護婦だったからね」
「さっぱりわかりませんわ?」
「あはは! 分からなくて大いに結構! まぁ、あの時代は助からない方がマシって言う輩も多かったって事さね」
「キヌ様は良く分からない事を仰いますわ?」


 そう言って首を傾げる15歳のピアにアタシはニッコリ微笑むと、それ以上口にする事は無かった。
 戦時中は腕がない足がない、破損部位の多い兵士が何人も担ぎ込まれてはもがき苦しみながら死んでいった。
 助けたくても助からない。
「いっそ殺してくれ」と涙を流しながら懇願する兵士たち……。


「――さて、今日は後三組はやってキリ良くレベル上げきりちまいたいね」
「そうですわね……。魔王様今レベル幾つでして?」
「今34レベルだね」
「わたくしは24レベルですわ」
「冒険者のプレートを用意する訳にゃいけないが、レベルで言えばそれなりに冒険者を屠ってきたが、一般的には中堅どころのレベルって所かね」
「村のおばさまのお話だと、レベル30台でCランクの冒険者と同じだという事でしたわ。あの忌々しい勇者たちはレベル60台だとか……」


 そう言って怒りの形相になるピアに、アタシは彼女の背中をポンポンと叩いて落ち着かせる。冷静に見えて怒ると手が付けられない所があるのだ。


「お爺様のっ! お爺様の命を奪っておいて日々宴ですって!? ふざけんじゃありません事よ!?」
「本当にそうだねぇ。それで、その勇者もまたアンタが魔王召喚したように、【勇者召喚】されたんだろう?」
「そうですわ! 一人は荷物持ちだったから戦ってないそうですけれど……」
「ああ、所謂ポーターかい。戦闘向きじゃない子でもいたのかねぇ」
「腹立ちますわ~~~!!」
「うんうん、じゃあその怒りを此処から2キロ離れた所にいる冒険者にぶつけようか」
「殺ってやりますわ!!」


 そう言うとスキルである【広範囲マップ】で人間だと分ると赤く光る為、そいつらを求めて走り出す。
 アタシ達の装備は特別製だ。
 魔王アイテムの『魔王の配下EX』はピアスから武器を取り出す事が出来る。『転移の腕輪』はある程度離れていても瞬間移動で移動する事が可能だ。
『レベルアップEX』は指輪だし、『俊足ヒールEX』に『マントEX』。マントには疲れ知らず付与がされている。
 ところが、アタシのスキル『ネットスーパー』で買った『サングラスEX』は遠くまで見ることができる。何故か付与スキルが着いていた、謎アイテムでもある。
 ――そう、アタシの魔王としてのスキルは色々ぶっ飛んでるらしい。

 ピアの分は同じものだが全てEXはつかなかった。
 魔王補正なんてものがあるのかも知れないねぇ……。
 正にひ孫がやってたゲームみたな世界じゃないかい?
 まぁ、やる事が勇者側じゃなくて魔王側だがね!


「全く、鶏の首を切り落とすのと人間を殺すのが同じ感覚になっちまうなんてねぇ」
「どうしましたの?」
「アタシも色々ぶっ飛んじまったってことさね!」
「あらまぁ、うふふふ!!」


 そう鼻で嘲笑って言うと、ピアは嬉しそうに笑いながら俊足のブーツでアタシについてきて茂みに音もなく隠れる……。
 さてさて、ピアのご機嫌をなおす為の今回の冒険者は果たして――。
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