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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる
89 魔王様、塩梅を理解する。
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保護者会は苛烈を極めたと母からの情報で聞いた。
担任のやる気のなさ、精神不安定と言う要素も大きかったようだが、何より様子がおかしかったのだと言う。
その様子のおかしさは――突然前触れもなく話を聞かない生徒に向けられる事となった。
授業中でも授業に集中せず遊ぶ学生はそれなりの人数いる。
テスト期間になって泣きついても我は知らぬと決めているが、突然担任が大声を上げはじめると、尤も近い場所にいた話を聞いておらず遊んでいる男子生徒の頭に噛みついたのだ。
それも、我の隣の席の男児だった。
一瞬、カニバリズムかと思ったが、噛みついて離れない担任を副担任が慌てて止めに入り、授業は途中で止まってしまった。
噛みつかれた生徒のおでこには青い歯型がついてしまい、血こそはでなかったが担任には職員室に、そして生徒には保健室に行くように指示を出して、教室は騒然となった。
とは言え、教師がキレるのも無理はないと思う。
授業中くらいは真面目に勉強するのが生徒の使命でもあり当たり前の事だ。
それさえ出来ないサルは所詮サル。
人間と扱う方が難しいだろう。
「驚いたな……まさか噛みつくなんて」
「そうでしょうか? 注意しても聞かない連中には良い薬だと思いますよ」
「僕も祐一郎に一票だね」
「でも、怪我が酷かったら」
「自業自得でしょう」
「祐一郎って案外バッサリしてるだな」
「学校とは勉強をしに来るところです。遊びたければ学校に来なければ良い。迷惑です」
「それは言えてる」
その後は自習となったが、教師はその後病院に行く事になり、噛まれた生徒は頭にガーゼをつけて戻ってきた。
ザマァないなと鼻で笑ってしまったが、我たちの事など気にする様子なく、被害者ぶっている姿は滑稽だな。
その後は副担任が諸々進めていく事となったが、クラスの煩い連中も副担任の言う事はある程度きくらしく、大人しいものだった。
人間でも動物でもだが、合う人間合わない人間と言うのはどうしてもある。
理由もなく嫌いな人間と言うのも存在するのは致し方ない事だ。
だからと言って、それを大っぴらにするのは情けない人間のする事だと我は思う。
今回は正に、その良い例だろう。
人間とは少しでも隙のある人間を獲物にしていく。
それは中学になってから良く思う世になった事だ。
人が良いだけでは利用され、隙を見せれば食い物にされる。
学校と言う古めかしい制度がそうさせているのだろうと言うのは安易に理解出来たが、これが人間社会の構図なのだと思えば、汚らしい大人になる為の一歩なのだろう。
そこで脱落していく者は脱落していくし、そうでない者はのし上がる。
クラスカースト制と言うのが正にいい例だ。
バカバカしいにも程がある。
社会に出ればそんなものは何も通用しないと言うのに、今さえ良ければいい学生の多さには嘲笑いたくもなるな。
さて、件のクラス担任だが、一カ月ほど休養が必要と言う事で副担任がクラスを受け持つ事となった。
所詮我々は子供、大人が居なくては話しにはならない。
その大人を殺すのも子供なのだが、子供を殺すのも大人なのだ。
いい塩梅で出来ていると我は思った。
内申点などは教師の塩梅で幾らでも変える事が出来る。
将来のことは教師の心持一つだ。
所詮、我々生徒は教師に将来を握られていると言っても過言ではない。
その事に気が付かない莫迦は、真面目に授業など受けないのだろう。
脳みそが足りないとは正にこの事だな。
「と、私は学校生活で思いました」
「うん、東君の言う事も一理あるね。寧ろそれしかない」
「所詮何を頑張っても担任からの好印象を持たれない限りは、内申点なんて幾らでも悪く書こうと思えば書けるし、次のステップ……まぁ、高校なんだけど、そこでの推薦も難しいだろうね」
「寧ろ授業はそんなに出来てなくても、内申点がよければ推薦も通りやすいからね」
「やはりそう言うのあるんですねー」
「先生も人間ですから、依怙贔屓は嫌でもありますよ」
「それもそうかー」
「ただ、莫迦は莫迦なりの人生を歩むことの方が多いと言うだけの話です」
部活でそんな会話をしながら、中間テストに間に合うようにテスト勉強をしていると、後藤が話に入ってきた。
「何と言うか……東くんは随分と冷めた考えをしているんだな」
「えー? 小学校の頃から変わってないよ? だって別名魔王だもん」
「そうですね、実の妹にすら魔王と呼ばれるような僧侶ですよ」
「ああ、家がお寺だったねそう言えば」
「やはり特殊な環境で育っているから冷めているんだろうか?」
「どうでしょう? 私は特殊とは思ってはいませんが、元々が冷めた目線であらゆることを見る癖はついていますね」
「妹の小雪ちゃんもそう言うところあるよねー」
「あの子はまだまだです。まだ甘い」
「何と言うか、東くんがいると安心感が違うな」
「分かる。祐一郎がいると安心感が違う」
「そうでしょうか?」
そんな会話をしながらテスト勉強に励む我の基に部長が藁ながら歩み寄ってきた。
「まぁ、東君みたいな人が一人いるだけで大分違うよ。危機管理も出来てそうだからね」
「そう言って頂けると幸いです」
こうして皆で中間テストに向けてテスト対策をしながら、テストが終わった後の半日のキャンプを目標に頑張る姿がそこにはあった――。
担任のやる気のなさ、精神不安定と言う要素も大きかったようだが、何より様子がおかしかったのだと言う。
その様子のおかしさは――突然前触れもなく話を聞かない生徒に向けられる事となった。
授業中でも授業に集中せず遊ぶ学生はそれなりの人数いる。
テスト期間になって泣きついても我は知らぬと決めているが、突然担任が大声を上げはじめると、尤も近い場所にいた話を聞いておらず遊んでいる男子生徒の頭に噛みついたのだ。
それも、我の隣の席の男児だった。
一瞬、カニバリズムかと思ったが、噛みついて離れない担任を副担任が慌てて止めに入り、授業は途中で止まってしまった。
噛みつかれた生徒のおでこには青い歯型がついてしまい、血こそはでなかったが担任には職員室に、そして生徒には保健室に行くように指示を出して、教室は騒然となった。
とは言え、教師がキレるのも無理はないと思う。
授業中くらいは真面目に勉強するのが生徒の使命でもあり当たり前の事だ。
それさえ出来ないサルは所詮サル。
人間と扱う方が難しいだろう。
「驚いたな……まさか噛みつくなんて」
「そうでしょうか? 注意しても聞かない連中には良い薬だと思いますよ」
「僕も祐一郎に一票だね」
「でも、怪我が酷かったら」
「自業自得でしょう」
「祐一郎って案外バッサリしてるだな」
「学校とは勉強をしに来るところです。遊びたければ学校に来なければ良い。迷惑です」
「それは言えてる」
その後は自習となったが、教師はその後病院に行く事になり、噛まれた生徒は頭にガーゼをつけて戻ってきた。
ザマァないなと鼻で笑ってしまったが、我たちの事など気にする様子なく、被害者ぶっている姿は滑稽だな。
その後は副担任が諸々進めていく事となったが、クラスの煩い連中も副担任の言う事はある程度きくらしく、大人しいものだった。
人間でも動物でもだが、合う人間合わない人間と言うのはどうしてもある。
理由もなく嫌いな人間と言うのも存在するのは致し方ない事だ。
だからと言って、それを大っぴらにするのは情けない人間のする事だと我は思う。
今回は正に、その良い例だろう。
人間とは少しでも隙のある人間を獲物にしていく。
それは中学になってから良く思う世になった事だ。
人が良いだけでは利用され、隙を見せれば食い物にされる。
学校と言う古めかしい制度がそうさせているのだろうと言うのは安易に理解出来たが、これが人間社会の構図なのだと思えば、汚らしい大人になる為の一歩なのだろう。
そこで脱落していく者は脱落していくし、そうでない者はのし上がる。
クラスカースト制と言うのが正にいい例だ。
バカバカしいにも程がある。
社会に出ればそんなものは何も通用しないと言うのに、今さえ良ければいい学生の多さには嘲笑いたくもなるな。
さて、件のクラス担任だが、一カ月ほど休養が必要と言う事で副担任がクラスを受け持つ事となった。
所詮我々は子供、大人が居なくては話しにはならない。
その大人を殺すのも子供なのだが、子供を殺すのも大人なのだ。
いい塩梅で出来ていると我は思った。
内申点などは教師の塩梅で幾らでも変える事が出来る。
将来のことは教師の心持一つだ。
所詮、我々生徒は教師に将来を握られていると言っても過言ではない。
その事に気が付かない莫迦は、真面目に授業など受けないのだろう。
脳みそが足りないとは正にこの事だな。
「と、私は学校生活で思いました」
「うん、東君の言う事も一理あるね。寧ろそれしかない」
「所詮何を頑張っても担任からの好印象を持たれない限りは、内申点なんて幾らでも悪く書こうと思えば書けるし、次のステップ……まぁ、高校なんだけど、そこでの推薦も難しいだろうね」
「寧ろ授業はそんなに出来てなくても、内申点がよければ推薦も通りやすいからね」
「やはりそう言うのあるんですねー」
「先生も人間ですから、依怙贔屓は嫌でもありますよ」
「それもそうかー」
「ただ、莫迦は莫迦なりの人生を歩むことの方が多いと言うだけの話です」
部活でそんな会話をしながら、中間テストに間に合うようにテスト勉強をしていると、後藤が話に入ってきた。
「何と言うか……東くんは随分と冷めた考えをしているんだな」
「えー? 小学校の頃から変わってないよ? だって別名魔王だもん」
「そうですね、実の妹にすら魔王と呼ばれるような僧侶ですよ」
「ああ、家がお寺だったねそう言えば」
「やはり特殊な環境で育っているから冷めているんだろうか?」
「どうでしょう? 私は特殊とは思ってはいませんが、元々が冷めた目線であらゆることを見る癖はついていますね」
「妹の小雪ちゃんもそう言うところあるよねー」
「あの子はまだまだです。まだ甘い」
「何と言うか、東くんがいると安心感が違うな」
「分かる。祐一郎がいると安心感が違う」
「そうでしょうか?」
そんな会話をしながらテスト勉強に励む我の基に部長が藁ながら歩み寄ってきた。
「まぁ、東君みたいな人が一人いるだけで大分違うよ。危機管理も出来てそうだからね」
「そう言って頂けると幸いです」
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