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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる
85 魔王様達、ついにキャンプ部に入部する。
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過去――と言っても小学校の頃だが、やはり魔法使いは男子に人気が高かった。
元が女性なのだから、一般的なクラスの女子より圧倒的に女子力が高いというか、仕草事態が並の女性では到底勝てないというものもあった。
線も細く、だが脱げばそれなりに筋肉もある魔法使いは、陰で【恵様】や【女王様】と崇められていたのは本人が知っているかは定かではないが、実際にあったのだ。
そして、大抵こういう場合――本人が来ると面倒くさい事になる。
元々がフェロモンの凄い魔法使いだったのだ。
並の男などたちまち虜になってしまうだろう。
男子の健全たる生活の為に、性癖を歪めることは出来ない。
「まず、恵さんに関してですが」
「「「はい」」」
「許可なく写真を渡されるのを嫌います。本人に聞いて了承を得れば貰えるかと思いますが」
「むう……やはりあの御面相では色々苦労があったのかもしれないな」
「そうかもしれませんね」
「何せクラスで一番の美少女かと思ったら男でしたからね」
「そうだったんですね……」
確かにクラスの中で魔法使いの美貌とは一際輝いていた。
化粧もしていないのに白い肌、ぱっちりとした二重の目、ふっくらとした色づいた小さい唇。少し長めの明るい茶色の髪。元の女性だった頃が抜けきれない、寄りかかって立っている時の立ち方。
確かに健全なる男子が不健全になるのも致し方ないかもしれない……。
「では、せめて話しかけるチャンスをくれないだろうか?」
「話しかけるチャンス……ですか?」
「余りの美しさに声を掛けられない男子が兎に角多い」
「「あ――」」
「ましてや、狂犬と呼ばれた竹内三兄弟まで近くにいる。声を掛けたくても掛けられないのだ」
「つまり、一緒に喋れる機会が欲しいということですね?」
「うむ」
「えっと……確か後藤さんでしたっけ」
「そうだ」
「もし恵さんと沢山喋りたいなら、同じ部活に入るという手もありますよ?」
「「「部活」」」
「俺達三人はキャンプ部に入る予定なんだよ。外で食べる飯って上手いだろうしな!」
「作るのは私ですけどね」
「なるほど、部活か……良い事を聞いた。検討してみよう」
「ええ、キャンプ部ならキャンプ先で写真を撮る事も可能でしょうし、一石二鳥ですよ」
「素晴らしい!!! 是非我々もキャンプ部に入ろう! 東君、杉本くん、とても助かった!」
「どういたしまして」
「一緒の部活に入れるの楽しみにしてるぜ」
そう言うと男三人は去って行った。
嵐のような去り方だったが、あの体型からして柔道部に入る予定だったのだろう。
恋や想いと言うのは人をダメにする反面、化学反応を起こして面白い反応が出ることがある。
それを正に見た気分だ。
それから10分程アキラと話していると――。
「あれ、待っててくれたの?」
「待っていましたよ」
「優しいだろ俺達」
「はいはい、優しい優しい。そうそう、一週間以内に入りたい部活に見学に行って、入部届出せってさ」
「分かりました。そうそう、同じクラスの後藤さんが一緒の部活に入りたいと言っていましたよ」
「そうなんだ。クラスでもあのケルベロスみたいなのが来るからクラスの男子ともまだ話せてないんだよね。部活で一杯喋りたいよ」
「ええ、そうしましょう」
「中々個性的な奴らだったぞ」
「へ――どんな風に?」
「恵の事が好きだってさ!」
アキラ! アキラ!!
我が必死に隠していた内容をぺろりと!!
「良い事聞いちゃったなー? もしかして祐一郎ってその事黙ってようとした?」
「まぁ、そうですね」
「ふふふ、これで学校生活は上手く行きそうだよ。ありがとうアキラ」
「どういたしまして!」
「はぁ……」
後藤、君の事は多分忘れるだろうが、少しの間は忘れない。
そんな事を思いつつ寺の手伝いを済ませ宿題や予習と復習を終わらせると早々に眠りについた。
そして、次の日の放課後の事だった。
「ねぇ――? 今からキャンプ部に行くけど、誰か一緒に行く人いないー?」
そう声を掛けたのは魔法使いだった。
途端ガタリと数名が立ち上がり、「是非俺達もキャンプ部に」と5名程が名乗りを上げた。
その中には後藤もいて、皆でキャンプ部に行く事にしたのだ。
キャンプ部は部室が野外にあり、古びた建物を部室として使っているらしく、ドアの建付けも悪い。
アキラが何とか開けると、上では何やら話し声が聞こえる。
階段を上がり木製のドアをノックすると、一人の男子が飛び出してきた。
「もしかして! もしかしてキャンプ部に興味がありますか!?」
「あります。入部届です」
「おおおおおお!!! こんな美少女……じゃなさそうだな、だが美少女が入ってくれるなんて喜ばしい事だよ!! 是非、是非入ってくれ! 他の皆も一緒かな?」
「同じくでーす」
「よろしくお願いします」
「部長の富岡です! 是非中で話をしましょう!」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
こうして、我たちは古びた上に二階建てだというのに一階に繋がる穴まであるような部室に入り、部長から話を聞くこととなった。
部員は部長を入れて三人だったらしく、廃部の危機だったそうだ。
魔法使い効果で人数も増えたことで、何とかなりそうだとホッと胸を撫でおろす。
我たちの暮らすエリアは、意外とキャンプ地に恵まれている為、各自必要なものは自分で揃えねばならないが、それなりに一泊等でキャンプを行うらしい。
夏休みなどは少し長くキャンプをすることもあるそうだが、部室を見ると確かにキャンプ系の本や雑誌、それにキャンプで使うようなランタンまでおいてあって、室内キャンプに近い作りになってることに気が付いた。
「部室は、室内キャンプを取り入れているのですね」
「わかるかい東君!!」
「ええ、浪漫があります」
まるで魔王城の廊下のようなランタンなのもまた趣があっていい。
――と言うのは、流石に言わなかったが。
「現在室内キャンプと言うのも一部では流行っているんだよ。キャンプ用品は中古でもそれなりに高いけれど、揃えることは出来るからね」
「じゃあ今度皆で中古ショップ行ってみる?」
「そうですね、次の土曜あたりどうでしょう?」
「良いんじゃないかな?」
「あの、俺達も御一緒していいですか?」
「いいよー? 皆で行こうよ。集合場所は学校の校門ね」
「「「「「有難うございます!!」」」」」
「どういたしまして!」
「はははは! 鬼塚くんはまるで女王様だね!」
「せんぱーい、僕、鬼塚って呼ばれるの好きじゃないので、恵ちゃんって呼んでください」
「恵ちゃんか! よし、ここでは恵ちゃんって呼んであげよう!」
「ありがとうございまーす!」
魔法使いの陣地になったな……。
それを遠い目で思っていると、アキラは「恵ちゃんかー」と笑っているし、後藤さん達も「恵ちゃんっ」と悶えているし、何だろうな。男臭い匂いがしてくる。
今度ファブってアロマを持って来ようと決意した。
「じゃあお勧めの店を紹介するから俺達も行くよ。皆でキャンプ用品集めに行こう」
「金額的にどれくらい掛かりそうなのでしょうか?」
「今キャンプ用品って品薄でね、一応数万あれば良いと思うけど」
「やはりキャンプって高いだねー」
「それでも買えば、壊れなければ一生ものに近いからね」
「備えあれば憂いなしかな?」
「かも知れません。色々調べてから行きましょう」
「万単位だしな」
こうしてその日は挨拶をしたり、キャンプ用品の本で何が一番オススメかを聞いたりして過ごし他訳だが、後藤さん達は夢心地でニッコニコだったのは言う間でもなく。
「じゃあまた明日ね後藤さんたちー!」
「気を付けて帰れよー!」
「それでは良い夢を」
そう言って互いに自転車に跨り、暗くなる前に我たちは家路へと着いたのだが――。
元が女性なのだから、一般的なクラスの女子より圧倒的に女子力が高いというか、仕草事態が並の女性では到底勝てないというものもあった。
線も細く、だが脱げばそれなりに筋肉もある魔法使いは、陰で【恵様】や【女王様】と崇められていたのは本人が知っているかは定かではないが、実際にあったのだ。
そして、大抵こういう場合――本人が来ると面倒くさい事になる。
元々がフェロモンの凄い魔法使いだったのだ。
並の男などたちまち虜になってしまうだろう。
男子の健全たる生活の為に、性癖を歪めることは出来ない。
「まず、恵さんに関してですが」
「「「はい」」」
「許可なく写真を渡されるのを嫌います。本人に聞いて了承を得れば貰えるかと思いますが」
「むう……やはりあの御面相では色々苦労があったのかもしれないな」
「そうかもしれませんね」
「何せクラスで一番の美少女かと思ったら男でしたからね」
「そうだったんですね……」
確かにクラスの中で魔法使いの美貌とは一際輝いていた。
化粧もしていないのに白い肌、ぱっちりとした二重の目、ふっくらとした色づいた小さい唇。少し長めの明るい茶色の髪。元の女性だった頃が抜けきれない、寄りかかって立っている時の立ち方。
確かに健全なる男子が不健全になるのも致し方ないかもしれない……。
「では、せめて話しかけるチャンスをくれないだろうか?」
「話しかけるチャンス……ですか?」
「余りの美しさに声を掛けられない男子が兎に角多い」
「「あ――」」
「ましてや、狂犬と呼ばれた竹内三兄弟まで近くにいる。声を掛けたくても掛けられないのだ」
「つまり、一緒に喋れる機会が欲しいということですね?」
「うむ」
「えっと……確か後藤さんでしたっけ」
「そうだ」
「もし恵さんと沢山喋りたいなら、同じ部活に入るという手もありますよ?」
「「「部活」」」
「俺達三人はキャンプ部に入る予定なんだよ。外で食べる飯って上手いだろうしな!」
「作るのは私ですけどね」
「なるほど、部活か……良い事を聞いた。検討してみよう」
「ええ、キャンプ部ならキャンプ先で写真を撮る事も可能でしょうし、一石二鳥ですよ」
「素晴らしい!!! 是非我々もキャンプ部に入ろう! 東君、杉本くん、とても助かった!」
「どういたしまして」
「一緒の部活に入れるの楽しみにしてるぜ」
そう言うと男三人は去って行った。
嵐のような去り方だったが、あの体型からして柔道部に入る予定だったのだろう。
恋や想いと言うのは人をダメにする反面、化学反応を起こして面白い反応が出ることがある。
それを正に見た気分だ。
それから10分程アキラと話していると――。
「あれ、待っててくれたの?」
「待っていましたよ」
「優しいだろ俺達」
「はいはい、優しい優しい。そうそう、一週間以内に入りたい部活に見学に行って、入部届出せってさ」
「分かりました。そうそう、同じクラスの後藤さんが一緒の部活に入りたいと言っていましたよ」
「そうなんだ。クラスでもあのケルベロスみたいなのが来るからクラスの男子ともまだ話せてないんだよね。部活で一杯喋りたいよ」
「ええ、そうしましょう」
「中々個性的な奴らだったぞ」
「へ――どんな風に?」
「恵の事が好きだってさ!」
アキラ! アキラ!!
我が必死に隠していた内容をぺろりと!!
「良い事聞いちゃったなー? もしかして祐一郎ってその事黙ってようとした?」
「まぁ、そうですね」
「ふふふ、これで学校生活は上手く行きそうだよ。ありがとうアキラ」
「どういたしまして!」
「はぁ……」
後藤、君の事は多分忘れるだろうが、少しの間は忘れない。
そんな事を思いつつ寺の手伝いを済ませ宿題や予習と復習を終わらせると早々に眠りについた。
そして、次の日の放課後の事だった。
「ねぇ――? 今からキャンプ部に行くけど、誰か一緒に行く人いないー?」
そう声を掛けたのは魔法使いだった。
途端ガタリと数名が立ち上がり、「是非俺達もキャンプ部に」と5名程が名乗りを上げた。
その中には後藤もいて、皆でキャンプ部に行く事にしたのだ。
キャンプ部は部室が野外にあり、古びた建物を部室として使っているらしく、ドアの建付けも悪い。
アキラが何とか開けると、上では何やら話し声が聞こえる。
階段を上がり木製のドアをノックすると、一人の男子が飛び出してきた。
「もしかして! もしかしてキャンプ部に興味がありますか!?」
「あります。入部届です」
「おおおおおお!!! こんな美少女……じゃなさそうだな、だが美少女が入ってくれるなんて喜ばしい事だよ!! 是非、是非入ってくれ! 他の皆も一緒かな?」
「同じくでーす」
「よろしくお願いします」
「部長の富岡です! 是非中で話をしましょう!」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
こうして、我たちは古びた上に二階建てだというのに一階に繋がる穴まであるような部室に入り、部長から話を聞くこととなった。
部員は部長を入れて三人だったらしく、廃部の危機だったそうだ。
魔法使い効果で人数も増えたことで、何とかなりそうだとホッと胸を撫でおろす。
我たちの暮らすエリアは、意外とキャンプ地に恵まれている為、各自必要なものは自分で揃えねばならないが、それなりに一泊等でキャンプを行うらしい。
夏休みなどは少し長くキャンプをすることもあるそうだが、部室を見ると確かにキャンプ系の本や雑誌、それにキャンプで使うようなランタンまでおいてあって、室内キャンプに近い作りになってることに気が付いた。
「部室は、室内キャンプを取り入れているのですね」
「わかるかい東君!!」
「ええ、浪漫があります」
まるで魔王城の廊下のようなランタンなのもまた趣があっていい。
――と言うのは、流石に言わなかったが。
「現在室内キャンプと言うのも一部では流行っているんだよ。キャンプ用品は中古でもそれなりに高いけれど、揃えることは出来るからね」
「じゃあ今度皆で中古ショップ行ってみる?」
「そうですね、次の土曜あたりどうでしょう?」
「良いんじゃないかな?」
「あの、俺達も御一緒していいですか?」
「いいよー? 皆で行こうよ。集合場所は学校の校門ね」
「「「「「有難うございます!!」」」」」
「どういたしまして!」
「はははは! 鬼塚くんはまるで女王様だね!」
「せんぱーい、僕、鬼塚って呼ばれるの好きじゃないので、恵ちゃんって呼んでください」
「恵ちゃんか! よし、ここでは恵ちゃんって呼んであげよう!」
「ありがとうございまーす!」
魔法使いの陣地になったな……。
それを遠い目で思っていると、アキラは「恵ちゃんかー」と笑っているし、後藤さん達も「恵ちゃんっ」と悶えているし、何だろうな。男臭い匂いがしてくる。
今度ファブってアロマを持って来ようと決意した。
「じゃあお勧めの店を紹介するから俺達も行くよ。皆でキャンプ用品集めに行こう」
「金額的にどれくらい掛かりそうなのでしょうか?」
「今キャンプ用品って品薄でね、一応数万あれば良いと思うけど」
「やはりキャンプって高いだねー」
「それでも買えば、壊れなければ一生ものに近いからね」
「備えあれば憂いなしかな?」
「かも知れません。色々調べてから行きましょう」
「万単位だしな」
こうしてその日は挨拶をしたり、キャンプ用品の本で何が一番オススメかを聞いたりして過ごし他訳だが、後藤さん達は夢心地でニッコニコだったのは言う間でもなく。
「じゃあまた明日ね後藤さんたちー!」
「気を付けて帰れよー!」
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