【中学突入!】転生魔王は寺に生まれる

うどん五段

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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる

83 魔王様はケルベロス達を連れて、中学生の第一歩を歩まれる。

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新学期と言うのは色々と面倒な事もあるのは世の常で。
我と魔法使いとアキラとで自転車に乗り学校の駐輪場に並べると、今日から始まる色々な事を話しながら歩いていた。
すると――。


「「「東様!!」」」


そう言って駆け込んでくる三人――言うまでもなくケルベロスである。
しかし、我に近寄った瞬間、三人の目は素早くアキラと魔法使いを見つめ、笑顔を見せるとゆっくりと歩み寄った。


「え――? 東様とどんな関係―?」
「気になるー?」
「特にこっちの綺麗な顔をした子……昔の知り合い?」


ケルベロスは魔法使いにトドメを刺されたと報告があったな……。
やはり絡まれたかと思いながらも、我は口を開いた。


「竹内三兄弟、こっちはアキラ。私の幼い頃からの友人です。仲良くしてください。こちらは恵さん、私と一緒に住んでいます。争いは許しませんよ」
「でもぉ……この子の匂いって、嗅いだことがあるんですよねー」
「やだ、匂いなんて恥ずかしいんだけど」
「なんて言うか~? ズタズタに引き裂いてやりたくなるっていうかー?」
「マリア、そこまでですよ」
「はーい」
「祐一郎さっそく友達出来たんだな! しかも三人かー……凄いな!」
「凄くありませんよ、絡まれたんです」
「まるで当たり屋だよね」
「そうなのか?」
「お二人と仲良くしないというのなら其方とも仲良くする道理はありません」
「「「仲良くします!」」」
「よろしい。では教室に向かいましょう」


無駄な争いは避けるに越したことはない。
特に魔法使いは口は強いが体力に自信があるかというと、動きは確かに俊敏だがスタミナがまだ足りていない。
アキラはパワー型だが、制度がまだ低いという事もある。
この三人は手練れだ。
魔法使いとアキラでは太刀打ちなど出来ないだろう。


「それより東様は1組ですよね! 俺達2組なんで、これからもちょくちょく会いに来ていいですか?」
「僕は余り来て欲しくないけど」
「俺達は東様に聞いてるんだけど?」
「まぁ良いんじゃないか? 新しい友達っていうのも大事にしないとな!」
「アキラって子、良く分かってんじゃん!」
「アタシ、アキラ君みたいな子は好きよ? 付き合っちゃう?」
「ごめん、俺祐一郎の妹と付き合ってるから」
「ざんねーん! 売り切れかー!」


そう言いながら歩いていくと、どうも同年代の目線が厳しい。
何事かと思い耳を澄ましていると、どうやらこのケルベロス三兄弟が原因のようだ。
元々荒れていた奴らだとか、関わると碌なことが無いとか、そう言う声がチラホラ入ってくる。
そもそもケルベロスと言うのは主人がいてこそ大人しい生き物だ。
これまで主人であった俺が居なかった事で羽目を外していたのだろう。


「竹内兄弟は今後は私の指示にある程度は従って貰いますが、何かあれば直ぐに相談を」
「「「はい!」」」
「恵さんとアキラもですよ。どうやら目立っているようなので」
「はーい」
「はははは、入学早々大変そうだな!」


アキラの底知れぬ明るさが今は救いか。
上履きを脱いで下履きに履き替え教室まで向かう最中もやはり目線とは怪訝なものではあったが、ケルベロス達が大人しく指示に従っている所を見て考えるものも多くいるようだ。
多分質問の嵐が後で来るだろうが、まぁそれは追々考えて行こう。

予鈴が鳴るまでケルベロスも我たちと同じクラスに来ていたが、やはり魔法使いの事が気になるのか色々聞いてはいる。
聞いてはいるが――。


「ていうかー? 一々突っかからないで欲しいんですけどー?」
「でもでもー? 気になっちゃうって言うかー?」
「僕は昔から祐一郎の近くで生活していたんだよ? 君たちよりも長いの。解かる?」
「マウント取りウザイでーす」


魔法使いとケルベロスの女性部分として生まれたマリアが口で言い争っている。
はたから見れば女子同士の言い合いだが、他のケルベロス達はというと――。


「えー? アキラたちってキャンプ部に入る予定なのか」
「竹内たちはどうなんだ?」
「俺達は走るのが好きだから陸上かな」
「マリアも確か陸上部って聞いてるし」
「良いんじゃないか? 走るのが好きって最高じゃん!」
「だよな――でも、東様がいらっしゃる所に入りたい気持ちも強いんだよ」
「あなた方は少しくらい走ってその内駅伝なりオリンピックに出れるくらいまで強く成れそうですから、そちらで頭角を現すのはどうです?」
「駅伝にオリンピックか」
「夢があるな!!」
「もし駅伝でもオリンピックでも応援にいくよ!」
「「アキラサンキュー!」」


と、流石陽キャのアキラ……ケルベロスを手なずけるのもたやすい様だ。
特に幼少期からずっと一緒でいたという事もあり、信頼度も高い様だな。
そうこうしていると予鈴がなり、バタバタと三人は教室に戻っていったが、先生が来るまでの間は近くのクラスメイトから「竹内たちとはどういう関係?」と聞かれ「ただの友人ですよ。悪い噂も聞きますがね」と答えておいた。
特に仲がいいという事も告げず、ただし悪い噂も聞いているという二つの情報を出しておくことで、後は放置が一番だ。

しかし、後ろの席に座る魔法使いからは「マリアぶっ飛ばしたい」と怒りの声が上がる程、どうやらイライラしている様子。
そこでメモ帳に経緯を書いて渡しておくと納得したようで溜息を吐いていた。


「まぁ、貴方がそうイライラしなくとも私の方からトドメは刺しますよ」
「早めにお願いしとくわ」
「ええ、今日の昼休みにでもね」


こうして一時間目が始まり、簡単な学力テストを行った後に授業が始まる。
小学校の時とは違う勉強の種類も増えたが、この日本と言う世界では勉強が出来る、出来ないで人生が大きく変わるのだ。
しっかり勉学を励んで、将来は決まっていても好きな大学くらいには入りたいものだ。
人生あらゆる面で豊かな知識があると、それだけで色々と楽しいからな。


――こうして、中学生として我たちは第一歩を更に踏み出したのである。
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