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第二章 魔王様、小学校六年生をお過ごしになる
71 魔王様達は、小学校最後の夏祭りに挑まれる④(※読む際にはご注意下さい)
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―長谷川side―(読む際注意してください)
産まれた時から、あまり親には恵まれていなかった。
母は極度の負けず嫌いで、全て自分の都合のいい様に変換する毒親。
俺を産む前は「子育てなんて無理」と周囲に笑っていたようだが、実際その通りだった。
父は仕事に忙しくて子育てする余裕もない。
母は慣れない子育てでネグレクトになった。
見かねた祖父がある程度は育ててくれたが、結局はある程度だ。
そして最悪な事に、俺は母親にソックリの性格に育ってしまった。
自分の思うままに振る舞い、自分の思い通りにならなければ相手に制裁を加える。
元々身体が大きかったから苦はなかった。
アイツに会うまでは。
アイツは徹底的に俺を潰すことに長けていた。
俺の子分たちも皆、アイツにいい様に転がされて去っていった。
アイツこそが徹底的と言う言葉を知っているように思える。
初恋の相手まで奪われて、学校では針の筵だった。
皆ヒソヒソヒソヒソ……。
皆クスクスクスクス……。
耐えられなかった。
イライラは止められず家にぶつけた。
穴の開いた壁、扉、泣き叫ぶ母親に止めようともしない父親。
祖父は呆然としていた。
毎日暴れるだけ暴れて、それでもスッキリしなくて。
――ああ、スッキリしないならアイツの大事にしているモノを壊せばいいんだ。
そう思った時、脳裏に浮かんだのはアイツの妹だった。
壊そう。
殺そう。
どうやって?
そう思っているうちに夏祭りがやってきて、俺はアイツの妹を狙った。
泣き叫んで、死ぬのをジッと楽しみながら見ていようと思ったのに、アイツは別の奴に助けられた。
俺は一度も助けられたことなんかないのに!!
お前さけ出てこなければスッキリ出来たのに!!
そう思って落ちていた瓶で殴り飛ばした。
瓶が割れて俺も怪我をしたが、アイツの妹の泣き叫ぶ声に大満足した。
でも――。
『……哀れな人だ』
『こんな手を使う事でしか表現する事を、気持ちを表すことが出来ない貴方が哀れでならない』
――ち……違うだろ? もっとこうさ……俺に怒鳴り散らしたり喚き散らしたりしてみろよ
『その様な無駄な労力、貴方に使うことすら勿体無い』
――ふざけるな! 俺はお前の妹を殺そうと思ってさらったし! 川に放り投げて溺れさせようとしたし! 〇〇〇だって!
『ええ……貴方はなんて哀れな人なんでしょうね。哀れで愚かだ』
冷静に淡々と語るアイツに、俺は力が抜けてその場に膝をついた。
気が付けば警察に捕まっていて、ケガをした手は処置して貰えたものの、警察からも、駆けつけた両親からも、泣き叫ぶ祖父からも酷く叱られた。
俺のしたことは……何だったんだろうか?
罪の意識が芽生える事は無かった。
ただ、やりたいようにやっただけ。
だって母親だってやってるじゃないか。
俺がやってはいけないと言う道理はない。
そう考えているうちに、俺たちは遠い遠い県に引っ越した。
引っ越し先ではもっとグレた。
危険な奴らと一緒にいるのは楽しい。
暴力だって楽しい。
でも――何時もアイツが頭の中をチラチラ横切ってイライラする。
それを悪友達に話したら「だったらもう一度ボッコボコにしてこいよ」と笑顔で言われ、俺はその足でまた戻ってきた。
丁度夏祭りの時期で、身を隠すには丁度良かった。
それに、アイツも初恋の相手もすぐに見つかった。
幸せそうな顔して、幸せそうな雰囲気で、俺の事なんて居なかったような、存在すらしていなかったような感じで過ごしていた。
昔の事を思い出して、俺の事を思い出していると思っていたのに。
あの時の事に怯えて暮らしてうと思えば留飲だって下がったのに。
そんな夢のようなことは無かった。
そしたら、あの時、アイツの妹を殺そうとした場所に気がついたら向かっていた。
もう一度あんな事が起きれば――そう思って歩いていたら、アイツの妹とあの野郎がイチャイチャしてやがった。
二人にとっては嫌な思いでしかない場所で。
俺は無性に腹が立って、今度こそ殺そうとナイフを手にした瞬間だった。
――気が付けば俺は吹き飛ばされ、二人の強面のオッサンに捕まっていた。
何だ?なんだ?一体何が起きたんだ?
「君ね~? 手を出しちゃいけない相手ってのをまだ学習出来ない脳みそなのかな?」
「悪ガキは悪ガキで終わらせておいた方が幸せな事もあるんだよ~」
「何を……」
「裏社会にまだ足を踏み入れてない坊やにはわからないか」
「だからお兄さんたちが裏社会の人間が大事に護衛してる人を傷つけられそうになった場合の対処の仕方、直々に身体に教えてあげるね」
開いた口が塞がらない。
え?裏社会の人間?どういう事?
俺はアイツの妹とあの男を殺そうと思っただけで……俺は悪くない、俺は悪くない!
そう叫ぼうとしても、口にはガムテープが張られて声が出せない。
そしてそのまま俺は担ぎ下られて、暗がりへと連れていかれる。
何がどうなってる?
何がどうなろうとしている??
ガクガクと震えていると、黒いハイエースに押し込まれ、そのまま車は走り出した。
腕と脚に手錠がかけられて動けもしない。
どうしてこうなった?
俺は何か悪い事をしたのか?
コワイオッサンたちは何かで連絡を取り合って、俺はどんどん知らない場所へと連れていかれる。
――それからは、もう何も覚えていない。
何日経ったのかも覚えていない。
自分が何をしようとしていたのか、何をされたのかもわからない。
山道を只管歩いて降りて……保護されて……それから……?
それから俺は入院した。
目の前には鉄格子が見える。
一体どこに入院したのか解らない。
親も面会には来ないし、誰も俺の許にやってこない。
俺、なにしてたっけ?
俺、どこにいってたんだっけ?
分からない。思い出せない。わからない。
けど、イライラしなくなったのは嬉しい。
一日ボーっとしてヘラヘラ笑って、気がついたらご飯の時間で、気がついたら寝てる生活。
医者が何か聞いてくるけど、何を言ってるのかわからない。
へらへらニコニコ。
俺がしているのはそれだけのこと。
あーあ……一体俺は、何がしたくて生まれてきたんだろうな。
もう、それさえも考えるのが面倒くさいや。
なーにも考えず。
なーにも思わず。
俺は一生、此処で暮らすんだ。
そしたら、コワイコトナンテナイ。
コワイコト?
なんだったかなぁ……思い出せないや。
産まれた時から、あまり親には恵まれていなかった。
母は極度の負けず嫌いで、全て自分の都合のいい様に変換する毒親。
俺を産む前は「子育てなんて無理」と周囲に笑っていたようだが、実際その通りだった。
父は仕事に忙しくて子育てする余裕もない。
母は慣れない子育てでネグレクトになった。
見かねた祖父がある程度は育ててくれたが、結局はある程度だ。
そして最悪な事に、俺は母親にソックリの性格に育ってしまった。
自分の思うままに振る舞い、自分の思い通りにならなければ相手に制裁を加える。
元々身体が大きかったから苦はなかった。
アイツに会うまでは。
アイツは徹底的に俺を潰すことに長けていた。
俺の子分たちも皆、アイツにいい様に転がされて去っていった。
アイツこそが徹底的と言う言葉を知っているように思える。
初恋の相手まで奪われて、学校では針の筵だった。
皆ヒソヒソヒソヒソ……。
皆クスクスクスクス……。
耐えられなかった。
イライラは止められず家にぶつけた。
穴の開いた壁、扉、泣き叫ぶ母親に止めようともしない父親。
祖父は呆然としていた。
毎日暴れるだけ暴れて、それでもスッキリしなくて。
――ああ、スッキリしないならアイツの大事にしているモノを壊せばいいんだ。
そう思った時、脳裏に浮かんだのはアイツの妹だった。
壊そう。
殺そう。
どうやって?
そう思っているうちに夏祭りがやってきて、俺はアイツの妹を狙った。
泣き叫んで、死ぬのをジッと楽しみながら見ていようと思ったのに、アイツは別の奴に助けられた。
俺は一度も助けられたことなんかないのに!!
お前さけ出てこなければスッキリ出来たのに!!
そう思って落ちていた瓶で殴り飛ばした。
瓶が割れて俺も怪我をしたが、アイツの妹の泣き叫ぶ声に大満足した。
でも――。
『……哀れな人だ』
『こんな手を使う事でしか表現する事を、気持ちを表すことが出来ない貴方が哀れでならない』
――ち……違うだろ? もっとこうさ……俺に怒鳴り散らしたり喚き散らしたりしてみろよ
『その様な無駄な労力、貴方に使うことすら勿体無い』
――ふざけるな! 俺はお前の妹を殺そうと思ってさらったし! 川に放り投げて溺れさせようとしたし! 〇〇〇だって!
『ええ……貴方はなんて哀れな人なんでしょうね。哀れで愚かだ』
冷静に淡々と語るアイツに、俺は力が抜けてその場に膝をついた。
気が付けば警察に捕まっていて、ケガをした手は処置して貰えたものの、警察からも、駆けつけた両親からも、泣き叫ぶ祖父からも酷く叱られた。
俺のしたことは……何だったんだろうか?
罪の意識が芽生える事は無かった。
ただ、やりたいようにやっただけ。
だって母親だってやってるじゃないか。
俺がやってはいけないと言う道理はない。
そう考えているうちに、俺たちは遠い遠い県に引っ越した。
引っ越し先ではもっとグレた。
危険な奴らと一緒にいるのは楽しい。
暴力だって楽しい。
でも――何時もアイツが頭の中をチラチラ横切ってイライラする。
それを悪友達に話したら「だったらもう一度ボッコボコにしてこいよ」と笑顔で言われ、俺はその足でまた戻ってきた。
丁度夏祭りの時期で、身を隠すには丁度良かった。
それに、アイツも初恋の相手もすぐに見つかった。
幸せそうな顔して、幸せそうな雰囲気で、俺の事なんて居なかったような、存在すらしていなかったような感じで過ごしていた。
昔の事を思い出して、俺の事を思い出していると思っていたのに。
あの時の事に怯えて暮らしてうと思えば留飲だって下がったのに。
そんな夢のようなことは無かった。
そしたら、あの時、アイツの妹を殺そうとした場所に気がついたら向かっていた。
もう一度あんな事が起きれば――そう思って歩いていたら、アイツの妹とあの野郎がイチャイチャしてやがった。
二人にとっては嫌な思いでしかない場所で。
俺は無性に腹が立って、今度こそ殺そうとナイフを手にした瞬間だった。
――気が付けば俺は吹き飛ばされ、二人の強面のオッサンに捕まっていた。
何だ?なんだ?一体何が起きたんだ?
「君ね~? 手を出しちゃいけない相手ってのをまだ学習出来ない脳みそなのかな?」
「悪ガキは悪ガキで終わらせておいた方が幸せな事もあるんだよ~」
「何を……」
「裏社会にまだ足を踏み入れてない坊やにはわからないか」
「だからお兄さんたちが裏社会の人間が大事に護衛してる人を傷つけられそうになった場合の対処の仕方、直々に身体に教えてあげるね」
開いた口が塞がらない。
え?裏社会の人間?どういう事?
俺はアイツの妹とあの男を殺そうと思っただけで……俺は悪くない、俺は悪くない!
そう叫ぼうとしても、口にはガムテープが張られて声が出せない。
そしてそのまま俺は担ぎ下られて、暗がりへと連れていかれる。
何がどうなってる?
何がどうなろうとしている??
ガクガクと震えていると、黒いハイエースに押し込まれ、そのまま車は走り出した。
腕と脚に手錠がかけられて動けもしない。
どうしてこうなった?
俺は何か悪い事をしたのか?
コワイオッサンたちは何かで連絡を取り合って、俺はどんどん知らない場所へと連れていかれる。
――それからは、もう何も覚えていない。
何日経ったのかも覚えていない。
自分が何をしようとしていたのか、何をされたのかもわからない。
山道を只管歩いて降りて……保護されて……それから……?
それから俺は入院した。
目の前には鉄格子が見える。
一体どこに入院したのか解らない。
親も面会には来ないし、誰も俺の許にやってこない。
俺、なにしてたっけ?
俺、どこにいってたんだっけ?
分からない。思い出せない。わからない。
けど、イライラしなくなったのは嬉しい。
一日ボーっとしてヘラヘラ笑って、気がついたらご飯の時間で、気がついたら寝てる生活。
医者が何か聞いてくるけど、何を言ってるのかわからない。
へらへらニコニコ。
俺がしているのはそれだけのこと。
あーあ……一体俺は、何がしたくて生まれてきたんだろうな。
もう、それさえも考えるのが面倒くさいや。
なーにも考えず。
なーにも思わず。
俺は一生、此処で暮らすんだ。
そしたら、コワイコトナンテナイ。
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