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第二章 魔王様、小学校六年生をお過ごしになる
62 魔王様は小学6年の最後の夏休みを遊び倒したい⑥
しおりを挟む さっきからそれも気になっていた。あの子、とは空想上の友だちというやつだろうか。
「その『あの子』ってお前の友だちか? それとも動物でも飼ってるのか? いないとは思うけど彼女とかか?」
最後のはさすがに失礼か。でもこいつ絶対にもてない。気にする様子もなく、少しだけ眉毛を寄せて自称作成者が呟いた。
「友だち……動物……彼女……」
どれもしっくりこないといった表情だ。だろうな。
「いいよ、無理に答えなくて」
「――こども、かな」
「こども?」
若そうに見えたので意外だったが、それなら別の意味でも気の毒だ。父親がこんな風ではその子も苦労するだろう。遊び相手くらいならなってやってもいい。
「その子は何て名前なんだ」
「ナイト、鏡の悪魔なんだ」
おっと、そっち系の妄想に苦しめられているのか。こういう時は下手に否定するのも、興味本位で根掘り葉掘り聞くのも間違いだろう。話題を変えよう。
「俺は何でここにいるんだろう? お前、何か見てたか」
俺より長く入院しているなら、搬送されきた時の様子も知っているかもしれない。
「事故に合う前の日に蜘蛛を助けただろう。あれが最後の課題だったんだよ」
「全っ然覚えてない」
感情の見えなかった作成者の目が、わずかに悲し気に揺れた。
「悪い、本当に記憶にないんだ。それに課題ってなんのことだ」
「シロキは何も教えてくれなかったの? あの子はそういうところが抜けているからな。ともていい子なんだけれど」
また登場人物が増えてしまった。
「シロキ? それもまさかお前の子どもか?」
作成者の口元がこれもほんの微かに笑う。
「わたしにはたくさん子どもがいるんだけど、彼が最初の子なんだよ。特別な子だ」
――はあ、なるほど。わかってきたぞ。こいつ妙な宗教にはまっているのではないか。
「そうか、でもそのシロキくんのことも覚えていないんだよ」
「あの子をくん呼びするのはお前が初めてだ。さすがだね。略して呼ぶのもわたしとナイトくらいだというのに」
早く医者か専門家が来てくれないだろか。素人の手に負える類のやつじゃない。この部屋、窓も扉もないようだが……。
「その『あの子』ってお前の友だちか? それとも動物でも飼ってるのか? いないとは思うけど彼女とかか?」
最後のはさすがに失礼か。でもこいつ絶対にもてない。気にする様子もなく、少しだけ眉毛を寄せて自称作成者が呟いた。
「友だち……動物……彼女……」
どれもしっくりこないといった表情だ。だろうな。
「いいよ、無理に答えなくて」
「――こども、かな」
「こども?」
若そうに見えたので意外だったが、それなら別の意味でも気の毒だ。父親がこんな風ではその子も苦労するだろう。遊び相手くらいならなってやってもいい。
「その子は何て名前なんだ」
「ナイト、鏡の悪魔なんだ」
おっと、そっち系の妄想に苦しめられているのか。こういう時は下手に否定するのも、興味本位で根掘り葉掘り聞くのも間違いだろう。話題を変えよう。
「俺は何でここにいるんだろう? お前、何か見てたか」
俺より長く入院しているなら、搬送されきた時の様子も知っているかもしれない。
「事故に合う前の日に蜘蛛を助けただろう。あれが最後の課題だったんだよ」
「全っ然覚えてない」
感情の見えなかった作成者の目が、わずかに悲し気に揺れた。
「悪い、本当に記憶にないんだ。それに課題ってなんのことだ」
「シロキは何も教えてくれなかったの? あの子はそういうところが抜けているからな。ともていい子なんだけれど」
また登場人物が増えてしまった。
「シロキ? それもまさかお前の子どもか?」
作成者の口元がこれもほんの微かに笑う。
「わたしにはたくさん子どもがいるんだけど、彼が最初の子なんだよ。特別な子だ」
――はあ、なるほど。わかってきたぞ。こいつ妙な宗教にはまっているのではないか。
「そうか、でもそのシロキくんのことも覚えていないんだよ」
「あの子をくん呼びするのはお前が初めてだ。さすがだね。略して呼ぶのもわたしとナイトくらいだというのに」
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