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第二章 魔王様、小学校六年生をお過ごしになる
54 魔王様、仲間たちと異世界憧れ少年と対峙する③
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異世界拗らせ系男子、原田ハガネ。
我らの前に輝く表情で立ち尽くす彼は、一言で表すなら……面倒くさい。正にそれに尽きる。
「そもそも、異世界ってなんだ?」
RPG等のゲームは嗜むアキラでも、異世界と言う言葉にはピンとこなかったらしい。
故に、その後はハガネの独壇場であった。
あらゆる異世界の知識を貯めこんでいたであろうハガネの脳内フォルダが火を噴いたのである。が、我たちはそれらを聞き流しつつ、アキラを除き三人で目を合わせ溜息を吐いた。
意気揚々と語るハガネだったが、彼は見落としていることがある。
長い付き合いだからこそ理解できる――アキラの心の清らかさだ。
「つまり……ハガネの言う異世界ってのは、美女を何人も手に入れたりして、強い力を持って、更にリアルラックが最高で、ええっと……チート?みたいな力を持って世界を救ったりってのは分かった」
「解って頂けましたか!!!」
「でもさ、俺、何人もの女の子の人生を狂わせるような異世界って、正直最低だと思うし憧れもしないな」
純粋かつ清らかな心を持つアキラにとって、美女を何人も手に入れるハーレムのような異世界は毛嫌いする部類だったのだ。
否定されたハガネの方はと言うと、アキラが何故否定するのかが理解できないらしい。
「え? 男なら誰もが夢を見る世界じゃないですか? 可愛い女の子に囲まれてイチャラブですよ?」
「ん――俺はそういうのはいらないかな。大事な女性は一人でいい」
「またまたご謙遜を」
「俺は、守りたい女性は一人で充分だし、大切にしたい女性も一人で充分。命を賭ける女性も、一人だけでいいんだ。確かにハガネのように沢山の女性を大事にしたいって言う奴もいると思うけど、俺はそこまで器用じゃないからな」
そう言って苦笑いするアキラに、勇者は頬を染め、魔法使いは深く頷き、我はアキラの考えに同意した。
流石、純粋培養液で育ったかのようなアキラだ。
そもそも昔、命がけで勇者を守り切った男。口先だけの男でない事は明らかであった。
「異世界に行きたい、異世界を作りたい。その理由が沢山の女性と関係を持ちたいとか、女性を沢山不幸にするものなら、俺は一切同意することは出来ないし、理解も無理だ」
「参謀様って、純愛志向なんですね~。でも僕知ってますよ? 参謀様って魔王様や魔法使い様ほどじゃないけど女の子達からモテますよね? 告白されてますよね? そんな女の子たちの勇気ある告白を、参謀様は受け取ることが無いんですよね? そっちの方が女の子に対して失礼なんじゃないですか?」
どや顔で言い切ったハガネだったが、そんな挑発に乗るアキラではなかった。
「確かに告白はあるよ? でも、あの子たちが見ているのはオレの一部だけを切り取った部分的なものであって、オレ全ての事ではない。ましてや、相手の事を上辺だけで見るような相手とは、長く付き合う事は不可能だと思ってる」
「えー? でも体の相性ってヤッテみないと分からないってこともあるじゃないですか。折角の機会を無駄にする方が」
「身体の相性を知るのにはそれなりの経緯が必要だよな? もしそれで、相手が身も心も傷つくことがあれば、オレは自分を許す事は出来ない。なぁハガネ、お前が一番重要視していることは、女性を大事にする事なのか? それとも、女性を苦しめることが前提の事なのか? 何かあれば男の体には負担も何もかからないかも知れない。けれど、女の子は違うんだぞ? お前は命を軽く見るような男なのか?」
そこまでアキラに言われ、初めてハガネは考え始めた。
ヤレれば何でもいい。
ヤレれば後は知った事ではない。
そんな考えを全面否定されたハガネは、初めてヤッた後の事の重大さにも気が付いたようだ。
性教育もまともに受けていないハガネの心を動かすだけのアキラの言葉に、我も含め深く同意しつつ、やはりアキラと言う人間は――優しく思いやりある男なのだと再確認できた。
けれど――。
「避妊すれば、問題解決しないですかね?」
「避妊も100%ではないんだぞ」
「なんか、俺のロマン全部ぶち壊してますよね?」
「それが現実だし、そもそも一夫多妻は日本には無いよ」
正にそうである。
この異世界にある日本において、一夫多妻は認められる婚姻ではなく、その上、男女の付き合いにて複数人と付き合っている場合、それは【浮気】とされ、尚且つ結婚していて他所に女性を作る場合は、慰謝料だ離婚だのなんだのと問題が山積みになるのが普通である。
それこそ、大正時代やその前であれば、お妾さんなどと言われ婚姻を結ばないにしても他所に女性を置くことはあったが――今の時代、その様な事は不可能に近い。
「……やっぱり現実世界はクソだ」
アレだけ親身にアキラが話したのに、ハガネは結局そこに行きつく。
アキラも少しだけ残念そうではあるが、それ以上を語る気はないようだ。
すると、勇者がアキラの隣に立ち、ハガネに対して侮蔑の色を滲ませて口を開いた。
「そもそもの問題として……お前にそれだけの価値のある男だと言えるのか?」
「は?」
「私の個人的な意見を言わせてもらえば、お前の考えや思考は、タダの繁殖期のサルだぞ」
勇者の言葉に、ハガネは驚いた表情で固まった。
我らの前に輝く表情で立ち尽くす彼は、一言で表すなら……面倒くさい。正にそれに尽きる。
「そもそも、異世界ってなんだ?」
RPG等のゲームは嗜むアキラでも、異世界と言う言葉にはピンとこなかったらしい。
故に、その後はハガネの独壇場であった。
あらゆる異世界の知識を貯めこんでいたであろうハガネの脳内フォルダが火を噴いたのである。が、我たちはそれらを聞き流しつつ、アキラを除き三人で目を合わせ溜息を吐いた。
意気揚々と語るハガネだったが、彼は見落としていることがある。
長い付き合いだからこそ理解できる――アキラの心の清らかさだ。
「つまり……ハガネの言う異世界ってのは、美女を何人も手に入れたりして、強い力を持って、更にリアルラックが最高で、ええっと……チート?みたいな力を持って世界を救ったりってのは分かった」
「解って頂けましたか!!!」
「でもさ、俺、何人もの女の子の人生を狂わせるような異世界って、正直最低だと思うし憧れもしないな」
純粋かつ清らかな心を持つアキラにとって、美女を何人も手に入れるハーレムのような異世界は毛嫌いする部類だったのだ。
否定されたハガネの方はと言うと、アキラが何故否定するのかが理解できないらしい。
「え? 男なら誰もが夢を見る世界じゃないですか? 可愛い女の子に囲まれてイチャラブですよ?」
「ん――俺はそういうのはいらないかな。大事な女性は一人でいい」
「またまたご謙遜を」
「俺は、守りたい女性は一人で充分だし、大切にしたい女性も一人で充分。命を賭ける女性も、一人だけでいいんだ。確かにハガネのように沢山の女性を大事にしたいって言う奴もいると思うけど、俺はそこまで器用じゃないからな」
そう言って苦笑いするアキラに、勇者は頬を染め、魔法使いは深く頷き、我はアキラの考えに同意した。
流石、純粋培養液で育ったかのようなアキラだ。
そもそも昔、命がけで勇者を守り切った男。口先だけの男でない事は明らかであった。
「異世界に行きたい、異世界を作りたい。その理由が沢山の女性と関係を持ちたいとか、女性を沢山不幸にするものなら、俺は一切同意することは出来ないし、理解も無理だ」
「参謀様って、純愛志向なんですね~。でも僕知ってますよ? 参謀様って魔王様や魔法使い様ほどじゃないけど女の子達からモテますよね? 告白されてますよね? そんな女の子たちの勇気ある告白を、参謀様は受け取ることが無いんですよね? そっちの方が女の子に対して失礼なんじゃないですか?」
どや顔で言い切ったハガネだったが、そんな挑発に乗るアキラではなかった。
「確かに告白はあるよ? でも、あの子たちが見ているのはオレの一部だけを切り取った部分的なものであって、オレ全ての事ではない。ましてや、相手の事を上辺だけで見るような相手とは、長く付き合う事は不可能だと思ってる」
「えー? でも体の相性ってヤッテみないと分からないってこともあるじゃないですか。折角の機会を無駄にする方が」
「身体の相性を知るのにはそれなりの経緯が必要だよな? もしそれで、相手が身も心も傷つくことがあれば、オレは自分を許す事は出来ない。なぁハガネ、お前が一番重要視していることは、女性を大事にする事なのか? それとも、女性を苦しめることが前提の事なのか? 何かあれば男の体には負担も何もかからないかも知れない。けれど、女の子は違うんだぞ? お前は命を軽く見るような男なのか?」
そこまでアキラに言われ、初めてハガネは考え始めた。
ヤレれば何でもいい。
ヤレれば後は知った事ではない。
そんな考えを全面否定されたハガネは、初めてヤッた後の事の重大さにも気が付いたようだ。
性教育もまともに受けていないハガネの心を動かすだけのアキラの言葉に、我も含め深く同意しつつ、やはりアキラと言う人間は――優しく思いやりある男なのだと再確認できた。
けれど――。
「避妊すれば、問題解決しないですかね?」
「避妊も100%ではないんだぞ」
「なんか、俺のロマン全部ぶち壊してますよね?」
「それが現実だし、そもそも一夫多妻は日本には無いよ」
正にそうである。
この異世界にある日本において、一夫多妻は認められる婚姻ではなく、その上、男女の付き合いにて複数人と付き合っている場合、それは【浮気】とされ、尚且つ結婚していて他所に女性を作る場合は、慰謝料だ離婚だのなんだのと問題が山積みになるのが普通である。
それこそ、大正時代やその前であれば、お妾さんなどと言われ婚姻を結ばないにしても他所に女性を置くことはあったが――今の時代、その様な事は不可能に近い。
「……やっぱり現実世界はクソだ」
アレだけ親身にアキラが話したのに、ハガネは結局そこに行きつく。
アキラも少しだけ残念そうではあるが、それ以上を語る気はないようだ。
すると、勇者がアキラの隣に立ち、ハガネに対して侮蔑の色を滲ませて口を開いた。
「そもそもの問題として……お前にそれだけの価値のある男だと言えるのか?」
「は?」
「私の個人的な意見を言わせてもらえば、お前の考えや思考は、タダの繁殖期のサルだぞ」
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