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第二章 魔王様、小学校六年生をお過ごしになる
48 魔王様、勇者PTたちと花火大会をされる①
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しっかりとお昼の夏祭り風大盛焼きそばを食べた我らは、水分補給に茶をすすりながら、暫くの休憩時間を堪能した。
勇者は、あちらこちら擦り傷が出来ていたらしく、アキラの手厚い看護で傷の手当てをして貰っている。
「全く、お尻の穴が増えるかと思ったぞ」
「ははは! そうなったら大変だったな」
「アキラ様は新たなる扉を開きそうになっていたのではありませんこと?」
「股間を集中攻撃したんじゃ、ジンジンしておるじゃろ? ん? ん?」
武闘家の言葉に顔を赤くしながらモゾモゾするアキラ……。
新しい扉を開いてしまったのだろうか……南無。
「それにしても、葉月の動きはキレがあったなぁ……僕とユウが何とか動けるくらいの勢いだった」
「本当ですね。流石腐っても極道の娘ですか」
「え? 極道?」
「え? アキラ知らなったの?」
「え? 極道?」
「アキラ、落ち着きなさい。何事も落ち着きが肝心です」
呆然とするアキラに我たちが声を掛けると、顔面蒼白させてガクガクと震え始めた。
まぁ、一般的に考えればそうなるのも致し方ないだろう。
「ふふふ、所詮は子供の遊びでしてよ? そこまで震えなくても大丈夫ですわ」
「そ、そっか……」
「それにしても、激しい一撃を祐一郎お兄様から頂き、本当に身体が痺れましたわぁ……」
「本当にのう……やはり子種だけでも」
「やめてくださいお願いします」
我の即答に双子は頬を膨らませていたが、全くたまったものではない。
肉食系僧侶と、前世はハゲ髭モジャーな武闘家に種をどうやって植え付けろと言うのだ。
そもそも二人を前にして、我の逸物が反応するとは一切思えない。
「とにかく、午前中あれだけ激しく運動したんですから、お子様たちはお昼寝してください。アキラも良ければ昼寝していきますか?」
「そうしようかな?」
「僕とユウは寺の仕事があるから昼寝出来ないけどね」
「それもお勤めの一つですから仕方ないでしょう。今日はお墓を綺麗にしますか」
「そうしようか」
「では、小雪。貴方に後は任せます。お昼寝してから体力を回復させておかねば、夜の花火大会を楽しめませんよ」
「了解だ!」
こうして、我と魔法使いは作務衣に着替え、二人でお墓の周辺の掃除に向かった。
広い寺には坂道の途中に墓場がある。夏休みになると、大体一組か二組は寺にきては肝試しをしている奴がいるのが問題ではあるが。
――肝試しか。
寺生まれゆえか、墓場で肝試しといってもピンとこない。
霊的なものが見えるかと言うと、感じる程度で見えることはない。
そもそも、生きている人間の方が怖いと言う結論ゆえに、肝試しで怖いと思ったことは今のところ一度もないのが悲しい所だ。
「前に、墓に侵入した一般人が居ましてね」
「うん」
「肝試しをしていた若人でしたが、恐怖のあまり墓石を壊しましてね」
「それは酷い話だね」
「弁償させましたし警察にも届けると言う事態が起きたことがあるのですよ」
「寺あるあるなのそれ?」
そんな会話をしながらのお墓掃除。
ちなみに、近くに木々には藁人形が突き刺さっていることもあり、この時代に藁人形を使う古典的な呪いをしている人間がいることに、時代のギャップを感じたものだ。
だが、今の時代だからこそ、古典的な藁人形を使う呪いや、十円玉を使ったオカルト的な事をするのも、人間の心理としてはおかしくはないのかも知れない。
言い方を変えるなら、古き良き物事を大事にしているともとれる。
まぁ、ポジティブ思考で考えればだが。
「あ、藁人形突き刺さってる」
「ああいう事をされると困りますねぇ、処理するこちら側の気持ちを多少なりと汲み取って頂かないと迷惑です」
「スマホだの最先端なものが増える中、こういう古典に戻るっていうやり方、僕、嫌いじゃないな」
「まぁ、そこは私もですよ。やはり丑三つ時に白い服装で頭に蝋燭二本付けてやっていらっしゃるんでしょうか?」
「それは一度やっている人に聞いてみたいね」
突き刺さった藁人形は子供の力では中々とることはできない。
後で父親に頼んで処理してもらうとして、広い墓の掃除だ。
父や祖父の時代は、墓石にスプレーで悪戯をする輩もいたそうだが、今も稀にそういう墓石を見つけることがある。
こういう事をされると、寺としても色々困るのだが……他の霊園ではどうしているのか気になるところだ。
夏場は、墓場には色々なそういう珍客と言うのは訪れる。
こちらに迷惑さえかけなければ目を瞑ってやれると言うのに……夏だからこそ開放的になるのだろうか。普通に墓参りに来て欲しいのが寺の本音なのだがな。
「そう言えば、今年は僕たちも小学校最後だし、ちょっと趣向を凝らしたような肝試しもしてみたいものだね」
「ふむ」
「提灯に蝋燭たててさ。薄暗い田舎道を歩いてさ」
「ふむ」
「目的地についたら終了みたいな」
「それ、オル・ディールの街道でやってませんでした?」
「やってたわ。楽しくないわ」
「モンスターでないだけマシですね。いや、この世界でもモンスターはでますが」
「変態と言う名のモンスターがね」
「オル・ディールの魔物は殺しても誰も文句は言いませんが、この異世界のモンスターは殺すとニュースになりますからね。最近は過剰防衛でも問題になります」
「過剰防衛って大事だと思うけどね。命掛かってんだからさ。この異世界ってその辺り微妙に可笑しいよね。人の命を大事にって言いつつ、大事にしないの」
「この異世界は歪みで出来ていますよね」
そんな会話をしながら一通り墓場を綺麗にすると、水分補給をするべく、藁人形の突き刺さった木の下で座り込んで茶を飲む我と魔法使い。
歪みで出来たこの異世界だからこそ、最新の物を使いながら、古典的な呪いも存在するのだろうと語り合った。
「そう言えば、夏休みは六年生全員学校で肝試しあるじゃん」
「ありましたね。来月の学校での肝試し楽しみですね」
「学校の怪談ってさ」
「ええ」
「王城で聞く怪談と似てるんだよね」
「どこの世界でも、そういう共通的なものがあるのは良い事です」
「王城の七つの怪談、みたいな」
「七つで済む当たり少ないですね」
そんな会話をしながら涼んだ後、我と魔法使いは寺に戻った。
既にお昼寝で熟睡している面子を起こさぬように家に入り、両親に藁人形が突き刺さっていた事を報告したりと、まだまだやる事は多い。
その後、細々とした寺の仕事を終わらせてから、両親が用意してくれた花火のチェックを入れる。
爆竹、煙玉、ねずみ花火、ロケット花火に線香花火、ロマンあふれる打ち上げ花火。
大きな花火セットも沢山置かれていた。
「花火用の蝋燭いるね」
「ええ、寺にある蝋燭を一本貰いましょうか」
「火の番は任せたよ」
「花火用の水も用意しましょう」
なんだかんだと、我も魔法使いも花火大会を楽しみにしている。
チェックが終わると我は夕飯を用意するべく台所へ向かい、冷蔵庫と備蓄庫にある野菜などの確認を行い、今日はゴーヤチャンプルにサラダ、冷や麦と言うチョイスで行くことにした。
無論、冷や麦用の汁は手作りだ。
少し濃いめの汁はこの時期ならではのお楽しみでもある。
「さてさて、勇者たちが起きてくる前にやっつけますか」
こうして、自作の割烹着を着込むと料理に取り掛かり、汁が出来るころには勇者たちも起きたのだろう、楽しそうな声が聞こえてくる。
そろそろ、勇者の「お腹空いたー」と言う報告が来る頃合いだろう。
麺を湯がき、冷水で締め始めた時だった。
「魔王! お腹が空いたぞ!」
「では配膳をお手伝いなさい。もうすぐ出来上がります」
「了解だ!」
こうして、晩御飯をアキラも一緒に食べることになり、その後の片づけは母がしてくれることになったのでお礼を言うと、我たちは寺にある広い駐車場へと向かう。
風の向きも大丈夫そうだ。
「では、お楽しみの花火大会をスタートしましょうか」
勇者は、あちらこちら擦り傷が出来ていたらしく、アキラの手厚い看護で傷の手当てをして貰っている。
「全く、お尻の穴が増えるかと思ったぞ」
「ははは! そうなったら大変だったな」
「アキラ様は新たなる扉を開きそうになっていたのではありませんこと?」
「股間を集中攻撃したんじゃ、ジンジンしておるじゃろ? ん? ん?」
武闘家の言葉に顔を赤くしながらモゾモゾするアキラ……。
新しい扉を開いてしまったのだろうか……南無。
「それにしても、葉月の動きはキレがあったなぁ……僕とユウが何とか動けるくらいの勢いだった」
「本当ですね。流石腐っても極道の娘ですか」
「え? 極道?」
「え? アキラ知らなったの?」
「え? 極道?」
「アキラ、落ち着きなさい。何事も落ち着きが肝心です」
呆然とするアキラに我たちが声を掛けると、顔面蒼白させてガクガクと震え始めた。
まぁ、一般的に考えればそうなるのも致し方ないだろう。
「ふふふ、所詮は子供の遊びでしてよ? そこまで震えなくても大丈夫ですわ」
「そ、そっか……」
「それにしても、激しい一撃を祐一郎お兄様から頂き、本当に身体が痺れましたわぁ……」
「本当にのう……やはり子種だけでも」
「やめてくださいお願いします」
我の即答に双子は頬を膨らませていたが、全くたまったものではない。
肉食系僧侶と、前世はハゲ髭モジャーな武闘家に種をどうやって植え付けろと言うのだ。
そもそも二人を前にして、我の逸物が反応するとは一切思えない。
「とにかく、午前中あれだけ激しく運動したんですから、お子様たちはお昼寝してください。アキラも良ければ昼寝していきますか?」
「そうしようかな?」
「僕とユウは寺の仕事があるから昼寝出来ないけどね」
「それもお勤めの一つですから仕方ないでしょう。今日はお墓を綺麗にしますか」
「そうしようか」
「では、小雪。貴方に後は任せます。お昼寝してから体力を回復させておかねば、夜の花火大会を楽しめませんよ」
「了解だ!」
こうして、我と魔法使いは作務衣に着替え、二人でお墓の周辺の掃除に向かった。
広い寺には坂道の途中に墓場がある。夏休みになると、大体一組か二組は寺にきては肝試しをしている奴がいるのが問題ではあるが。
――肝試しか。
寺生まれゆえか、墓場で肝試しといってもピンとこない。
霊的なものが見えるかと言うと、感じる程度で見えることはない。
そもそも、生きている人間の方が怖いと言う結論ゆえに、肝試しで怖いと思ったことは今のところ一度もないのが悲しい所だ。
「前に、墓に侵入した一般人が居ましてね」
「うん」
「肝試しをしていた若人でしたが、恐怖のあまり墓石を壊しましてね」
「それは酷い話だね」
「弁償させましたし警察にも届けると言う事態が起きたことがあるのですよ」
「寺あるあるなのそれ?」
そんな会話をしながらのお墓掃除。
ちなみに、近くに木々には藁人形が突き刺さっていることもあり、この時代に藁人形を使う古典的な呪いをしている人間がいることに、時代のギャップを感じたものだ。
だが、今の時代だからこそ、古典的な藁人形を使う呪いや、十円玉を使ったオカルト的な事をするのも、人間の心理としてはおかしくはないのかも知れない。
言い方を変えるなら、古き良き物事を大事にしているともとれる。
まぁ、ポジティブ思考で考えればだが。
「あ、藁人形突き刺さってる」
「ああいう事をされると困りますねぇ、処理するこちら側の気持ちを多少なりと汲み取って頂かないと迷惑です」
「スマホだの最先端なものが増える中、こういう古典に戻るっていうやり方、僕、嫌いじゃないな」
「まぁ、そこは私もですよ。やはり丑三つ時に白い服装で頭に蝋燭二本付けてやっていらっしゃるんでしょうか?」
「それは一度やっている人に聞いてみたいね」
突き刺さった藁人形は子供の力では中々とることはできない。
後で父親に頼んで処理してもらうとして、広い墓の掃除だ。
父や祖父の時代は、墓石にスプレーで悪戯をする輩もいたそうだが、今も稀にそういう墓石を見つけることがある。
こういう事をされると、寺としても色々困るのだが……他の霊園ではどうしているのか気になるところだ。
夏場は、墓場には色々なそういう珍客と言うのは訪れる。
こちらに迷惑さえかけなければ目を瞑ってやれると言うのに……夏だからこそ開放的になるのだろうか。普通に墓参りに来て欲しいのが寺の本音なのだがな。
「そう言えば、今年は僕たちも小学校最後だし、ちょっと趣向を凝らしたような肝試しもしてみたいものだね」
「ふむ」
「提灯に蝋燭たててさ。薄暗い田舎道を歩いてさ」
「ふむ」
「目的地についたら終了みたいな」
「それ、オル・ディールの街道でやってませんでした?」
「やってたわ。楽しくないわ」
「モンスターでないだけマシですね。いや、この世界でもモンスターはでますが」
「変態と言う名のモンスターがね」
「オル・ディールの魔物は殺しても誰も文句は言いませんが、この異世界のモンスターは殺すとニュースになりますからね。最近は過剰防衛でも問題になります」
「過剰防衛って大事だと思うけどね。命掛かってんだからさ。この異世界ってその辺り微妙に可笑しいよね。人の命を大事にって言いつつ、大事にしないの」
「この異世界は歪みで出来ていますよね」
そんな会話をしながら一通り墓場を綺麗にすると、水分補給をするべく、藁人形の突き刺さった木の下で座り込んで茶を飲む我と魔法使い。
歪みで出来たこの異世界だからこそ、最新の物を使いながら、古典的な呪いも存在するのだろうと語り合った。
「そう言えば、夏休みは六年生全員学校で肝試しあるじゃん」
「ありましたね。来月の学校での肝試し楽しみですね」
「学校の怪談ってさ」
「ええ」
「王城で聞く怪談と似てるんだよね」
「どこの世界でも、そういう共通的なものがあるのは良い事です」
「王城の七つの怪談、みたいな」
「七つで済む当たり少ないですね」
そんな会話をしながら涼んだ後、我と魔法使いは寺に戻った。
既にお昼寝で熟睡している面子を起こさぬように家に入り、両親に藁人形が突き刺さっていた事を報告したりと、まだまだやる事は多い。
その後、細々とした寺の仕事を終わらせてから、両親が用意してくれた花火のチェックを入れる。
爆竹、煙玉、ねずみ花火、ロケット花火に線香花火、ロマンあふれる打ち上げ花火。
大きな花火セットも沢山置かれていた。
「花火用の蝋燭いるね」
「ええ、寺にある蝋燭を一本貰いましょうか」
「火の番は任せたよ」
「花火用の水も用意しましょう」
なんだかんだと、我も魔法使いも花火大会を楽しみにしている。
チェックが終わると我は夕飯を用意するべく台所へ向かい、冷蔵庫と備蓄庫にある野菜などの確認を行い、今日はゴーヤチャンプルにサラダ、冷や麦と言うチョイスで行くことにした。
無論、冷や麦用の汁は手作りだ。
少し濃いめの汁はこの時期ならではのお楽しみでもある。
「さてさて、勇者たちが起きてくる前にやっつけますか」
こうして、自作の割烹着を着込むと料理に取り掛かり、汁が出来るころには勇者たちも起きたのだろう、楽しそうな声が聞こえてくる。
そろそろ、勇者の「お腹空いたー」と言う報告が来る頃合いだろう。
麺を湯がき、冷水で締め始めた時だった。
「魔王! お腹が空いたぞ!」
「では配膳をお手伝いなさい。もうすぐ出来上がります」
「了解だ!」
こうして、晩御飯をアキラも一緒に食べることになり、その後の片づけは母がしてくれることになったのでお礼を言うと、我たちは寺にある広い駐車場へと向かう。
風の向きも大丈夫そうだ。
「では、お楽しみの花火大会をスタートしましょうか」
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