【中学突入!】転生魔王は寺に生まれる

うどん五段

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第二章 魔王様、小学校六年生をお過ごしになる

46 魔王様、勇者たちとのウォーターガン戦争を始められる①

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 ――翌朝。
 朝のお勤めを終わらせ、簡単な朝食を作り終えるころ、勇者と武闘家、僧侶が起きてきた。
 今日の夜には武闘家と僧侶はお迎えの車が来るようだが、それまでは沢山遊ぶつもりらしい。
 今日は一般的な朝食。雑穀ご飯に米味噌で作った海苔とネギの簡単な味噌汁、付け合わせの漬物は昨日の夜から漬け込んだもので、良い塩加減だ。更に鮭を焼いてそこに大根おろしを添えている。


「おお! 凄いなお兄ちゃん! 私の大根おろしは犬だ!」
「まぁ! 可愛らしいですわ!」
「ワシのは犬の尻じゃな……」
「今日は料理本に載っていた、ウェルシュ・コーギーを大根おろしで表現してみました。お気に召しましたか?」
「「かわいい――!!」」
「尻か~……」


 そうは言いつつも味は美味しいのだろう。
 シッカリと朝食を取った三人は各々部屋に戻るや否や、スクール水着の上にTシャツを着てやってきた。
 勇者に至ってはゴーグルを頭に装備している所を見ると、全力で遊びつくすつもりなのだろう。子供らしくて良いものだな。


「何かの本で読みましたわ。世の男性はスクール水着が大好きなんですってね」
「そうなのか?」
「スクール水着のどこが良いのかのう? ワシとしてはもっと露出の高い水着の方がグッとくるが……」
「幼さとエロさが合わさって最高なのですって。魔王様、どう思われます?」


 洗物をしていた我の許までやってきて何を話すかと思えば……僧侶の頭の中は意外とピンクピンクしているのやもしれんな。


「好きでもない女性の水着姿何て、ただのマネキンですよ」
「マ……マネキンっ!?」
「魔王は手ごわいのう……」
「ええ、ええ。わたくしたちの、あられもない姿を見たとしても股間に響かないなんて」
「もっと乳も尻も大きくならねば振り向いてもらえぬやもしれんな」
「お屋敷に帰ったらお母様たちにご相談しましょう」
「うむ」
「サラッと私の人生が傾きそうな相談はお止めなさい」


 そう言って後ろを振り返ると、見事にペッタンコ――な体の三人が立っている。
 うむ、ペッタンコなのだ。
 何処がとは言わなくても分かるだろう?
 聖女にもこんな時期があったのだろうが、聖女の体は四年生を超えたあたりからイイ感じに膨らんできたのを我は覚えている。
 この三人も小学校四年生、五年生になれば凹凸くらいは出てくるのやもしれないが、結局はマネキンなのだ。


「魔王、そろそろ家事終わる?」
「ええ、洗い物は済ませました」


 そんな三人の上から話しかけてきたのは魔法使い。
 魔法使いは我が洗い物をしている間に、部屋の掃除やお風呂掃除といった手伝いをしてくれているため、何かと助かっている。勇者にも家事を覚えさせようとしたが、勇者が覚えたのは寺の周辺を箒で掃く位だった。まぁ、それも場所が広いだけあって助かってはいる。


「昼は焼きそばを作ります。お祭り気分を味わえるような味付けにしますからお楽しみに」
「いいね! 魔王の作るお祭り風シリーズって美味しいから大好きだよ!」
「そう言っていただけると嬉しいですね。作り甲斐があります」


 魔法使いとは学校でも家でも長く過ごすため、一番打ち解けているやもしれない。
 エプロンを脱ぎ、作務衣を整えると玄関からアキラの声が聞こえてきた。どうやらアキラも本日のイベント参加のために早めに来たようだ。
 アキラの許に駆け寄っていく三人、そして聞こえてくるのはアキラの叫び声だ。


「ちょ! 小雪! その恰好はやばいって!!」
「何を言う! 今日はウォーターガンで撃ち合うのだろう? ずぶ濡れ対応に水着装備だぞ!」
「だからって水着の上にTシャツ一枚はダメだって! それはイケナイお兄さんたちが見たら大変だから!! 大変だから!!」
「あらあらまぁまぁ! お姉様ご覧になって?」
「ふはははは! キノコニョッキか!」
「きゃああああああ!!!」


 乙女のような悲鳴をあげるアキラ……。
 そして、アキラは『イケナイお兄さん』だったのかと魔法使いと頷きあった。


「何というか、ご愁傷様……なのかな?」
「アキラにとってはご褒美かも知れませんよ?」
「見てご褒美、見られてご褒美か……変態だね」
「どちらも幸せそうで何よりですね」


 そんな会話をしながら玄関に行くと、股間に手を当てて蹲っているアキラの顔は真っ赤なトマトの様だ。
 何とも情けない恰好である。


「あれー? アキラってば、どうしちゃったの~?」
「ちょ、恵いいところに!! 三人引きはがして!!」
「アキラは股間のキノコがニョッキしたらしいぞ!」
「それは大変ですね。取り合えず三人は倉庫から私たちのウォーターガンを水場に持ってきておいてください。アキラは動けそうなら椅子に腰かけて収まるのを待ちましょう」
「ユウが優しい……泣けてくる」
「恥ずかしさでね」


 我の指示で水着っこ三人娘は隣にある納屋へと走っていき、アキラは股間を抑えつつ内股で椅子に腰かけ、真っ赤な顔を鎮めるために、うちわを手渡した。
 アキラ曰く、朝から強烈なものを見たし強烈な経験をしたと語る。


「まぁ、小雪の水着姿は可愛いよね。あれで来年か再来年には凹凸ができ始めるかと思うと、僕もドキドキするよ」
「おい、やめろよそう言う言い方!」
「想像する方が悪くない?」
「年頃の男子とは過敏なんですよ。ちょっとした女性らしい動きにドキッとするとか、濡れた姿にドキッとするとか、うなじにドキッとするとか、色々な女性の仕草にドキドキするのが男性と言う生き物だと思いますよ。男性の本能です、抑えきれませんよね」
「冷静に分析するなよ……」
「冷静に見るのはタダですよ。手を出せば犯罪ですが」


 この異世界には、『YES・ロリータ、NO・タッチ』と言う言葉がある。
 つまり、見るのはOKなのだ。
 お触りはNGなのだ。
 しかし近年、男性が無暗に女性、それも年齢問わずに、じっと見るのはご法度になりつつあるらしい。
 見ることもNGになった場合、溜まった性欲はどこに発散されるのか心配である。


「アキラのその様子が一般的なのか、僕たちが一般的じゃないのか、心配になってくるね」
「それはありますね」
「いや、どう考えてもお前たち達観しすぎだろ? 今度性教育が男女別れてあるのに、お前ら二人だけ全然ニヤニヤもしなかったしな」
「あれ、周りの男子がちょっと気持ち悪かったね」
「世間一般的には、女性の体に興味が出始める年齢なのは間違いない事でしょう。そこでシッカリと性教育があるのなら、将来的に困らないので心配ないのでは?」
「中途半端な性教育は害悪だけどね」
「お前ら達観しすぎだって」


 そんな事を語っていればアキラも頭も股間も冷めたらしく、背中をトントンと叩いて立ち上がった。
 収まったようで何よりだ。


「でも正直、来週ある性教育の授業は、ちょこっとだけ楽しみでもあるよね」
「女子と男子で生物的に見ても色々違いますからね」
「そうだね、女子は生理とかあるから」
「あぁ……」
「だから何でそこまで達観してんの?」


 最早アキラは呆れ半分諦め半分と言った様子で苦笑いしている。
 オル・ディールの世界では女性は初潮を迎えた時点で成人とみなされ、結婚することが出来たし、男性も精通したら成人とみなされていた節がある。
 故に、あの世界では性教育と言うのは早めになされ、早く結婚し子を産み育てると言うのが人間社会のルール的な部分はあった。
 寧ろ、女性で16歳まで結婚していなかった場合、行き遅れとさえ言われていた世界だ。
 それらを考えると、この異世界とは、随分と緩い世界なのかもしれない。


「お兄ちゃんー! 用意できてるよ~!!」
「ああ、すみません。少々話し込んでおりました。直ぐ向かいますよ」


 そんな事をツラツラと思っていると勇者がウォーターガンを手に玄関まで駆け寄ってきた。
 うむ、見事に平らである。
 コレを見てアキラが何故あんなにも狼狽えて股間のキノコが大きくなったのかは謎であるが、そこは触れてはいけないナニカがあるのだろう。


「アキラ」
「ん?」
「ぶちかましますか?」
「――ああ! 一緒に沢山濡れようぜ!!」
「「言い方」」


 天然アキラの発言に我と魔法使いが思わず突っ込んでしまったが、そこは清らかアキラが不思議そうな顔をしながら首を傾げていた。
 ……我と魔法使いは、汚い大人なのかもしれないな。

 そんな事を思いながら玄関から出た瞬間、三人揃ってウォーターガンを喰らった。


「1ポイントゲットー!」
「やりましたわー!」
「ずぶ濡れ祭りじゃー!」


 そう言って飛びはねる三人平たい娘に我たちは目を向けると――。


「……やってくれましたね」
「さぁ……僕たちも本気で戦おうか」
「負けられないなっ!」


 玄関に置かれていたウォーターガンを手に取り、反撃を開始するのだった。
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