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第一章 魔王様、少年期をお過ごしになる
22 魔王様、食への貪欲さをレベルアップさせられる
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あの瞬間までは、平和だった。
あの時、小雪の事をもっと見ておけば良かったのだ。
だが、後悔しても仕方ない。
子供の興味、子供の無知とは本当に恐ろしいものだと、この場にいた全員が思ったであろう。
落葉に火を着け焼き芋が出来上がるのを待つ間、小雪は暇を持て余したのか母屋に戻ってしまった。
まぁ確かに火が燃えているだけの中をジッとしていると言うのも三歳には物足りぬだろう。
オル・ディールであれば魔法を使って料理や、魔法を使って火力を上げたりと言う事も出来るのだろうが、この世界の不便さを我は結構気に入っている。
確かに魔法で時間を短縮出来るのは良い事ではある。
だが、今ではそれは味気ないとさえ思うのだ。
「ホクホクの焼き芋は美味いからのう」
「お爺ちゃんは焼き芋好きなの?」
「昔は良く曾爺さんが作ってくれたもんだ」
その言葉に兄を思い出す。
我も兄の様に子に残せるものが出来ればよいと思っていると、小雪が何かを両手に抱えて走ってくるではないか。
「お兄ちゃ~~ん! コレ入れる~~!!」
我が確認しようと振り返った瞬間、小雪は昨日貰った物を焚き火へと落として行った。
「小雪!!」
「ん?」
「今入れたのは栗ですか!?」
「うん!」
その言葉に祖父は小雪を抱き上げ、我は三人にこの場を離れるように叫んだ!
近年知らない者が多いようだが……焚き火に切れ目を入れていない栗を入れる事はつまり………。
パパン!
パパパパパ――ン!!
「「きゃあああ!!」」
「うわぁあ!!」
あぁ、やはりそうなるか。
勢い良く弾ける発砲音のような音。そう、焚き火に大きく切れ目を入れていない栗を入れれば爆発する事を知らぬ者が多いらしい……。
小雪は驚き泣き叫び、爆発音が止むまで近付くことができなかったが、暫くすると音も無くなり我が近寄り確認する。
どうやら栗は全て爆発したようだ。
「この様に、近年余り知られて無いようですが、焚き火に大きな切れ目を入れずに栗を入れると爆発いたします。皆さんもご注意くださいませ」
「もう爆発した後だけどな!」
「いや――見事に爆発したわね!」
「うわぁあああん!!」
「小雪ちゃん落ち着いて~大丈夫よ~?」
「良い思い出が出来たのう!」
祖父よ、確かに印象的ではあるが良い思い出とは言わないと思うが?
仕方なく更に落葉を入れ込み火にかけること一時間弱。
そろそろ頃合だろうと枝でアルミホイルに包まれた芋を取り出すと、中は美味しそうに湯気を上げ焼き芋の完成だ。
「美味しそう~~!!」
「コレ絶対美味い奴だ!」
「最初は是非そのまま食べてみて下さい、その後は……コレです」
そう言って台所から持ってきたバターを見せると――。
「ヤバイ! 脂肪フラグだわ!」
「絶対美味しいよソレは!!」
「ユウはオレを太らせてどうするつもりだ!」
「どうもしません、美味しいものを美味しく頂くのです。美味しいものを美味しく頂かねば料理に失礼です」
この言葉に皆が同意すると、火傷に注意しながらアルミホイルを外し新聞紙に包んで焼き芋を口にする。
「うま!!」
「美味しい!!」
「焼き芋には私は牛乳派です」
更にお茶と牛乳も用意して出すと、どうやら全員が食べ比べたところ牛乳が美味しいという事になったようだ。
更にアツアツの焼き芋にバターと言う贅沢……シンプルだが確実に美味しい。
やはり魔法でパパッと作るより、こうして時間を掛けて食べる食事は美味いな。
サラマンダーで火力を調整も良いのだろうが、植物を使った料理は我にとって何よりの贅沢のように感じられて仕方ないのだ。
「小雪、美味しいですか?」
「おいしい!! おにいちゃんがつくるのはなんでもおいしい! だからすごい!!」
「褒めても美味しい料理しか出ませんよ?」
小雪の素直な感想に頭を撫でると、聖女も一緒に小雪を撫でた。
その様子を写真に収める祖父、将来我と聖女が結婚した時にプレゼントしたいと言って、良い値段のするカメラを購入したらしい。
「アキラ」
「おう」
「アンタも料理習いなさいよ」
「オレ食べる専門」
「あ――アタシにも料理作ってくれる彼氏欲しいわ――旦那でも良いわ――!!」
自棄酒ならぬ自棄芋をするミユに聖女が苦笑いをしている。
そんなミユに幸あらんことを魔王として願っておこう。
「焼き芋も美味いが、ワシは大学芋に目がなくてのう」
「今度お作りしましょうか?」
「うむ、頼んだぞ」
「ユウの爺ちゃんズリィ!!」
そんな話題で盛り上がりながら食べる焼き芋は美味しい。
丁度良い頃合の残った焼き芋は家族の胃袋へと消えていった。やはり十一月の芋が美味しくなる頃にもう一度作ろうと決意する。
しかし出来れば自分で掘り立ての芋も使ってみたい……食への道がドンドン欲まみれになっていってしまうな。
「料理を始めると、使う食材についても勉強してみたくなるのですよね……」
「祐ちゃん凝り性だものね」
「どうするの?」
「ええ、高校は農業高校に進もうかと思ってしまいます」
「宗教のほうじゃなく?」
「そちらは大学に進めばよいので」
確かに早めに進むこともできるが、祖父母から高校までは好きな道を進めと言われているのだ。
両親もそれには納得していて、今まで進路を考える事はあまり無かった。
精進料理の説明をするにしても、農業高校出身と言うだけで話に重みが出るというべきか、一歩先に行ける様な気がするのだ。
オル・ディールでは飢餓に苦しむ人間達を沢山見てきたがゆえに、強く思うのだろう。
この異世界では飢える事が無さ過ぎるように思える。
「冷暖自知……じゃな」(れいだんじち)
祖父は我の頭を撫でながら嬉しそうに口にする。
「何事も自ら触れて体験しなくては、本質は解らぬということじゃ」
「なるほど」
「っていうか、私達だってまだ高校の事なんて考えてないのに、やっぱ祐一郎君は違うわね」
「うんうん、まずは中学生か~ってくらいしか無かったもの」
「それより、オレとユウってまだ小学校一年生だよな? なんでお前そこまで考えられんの?」
リアルな質問に我が考え込むと、一つの考えが浮かんだ。
それはやはり――我らしい考えだ。
「そうですね、好きなものには貪欲なんです」
「「「なるほど」」」
それで理解されてしまうあたり苦笑いしかでないが、前世の記憶もあってこその我なのだ。
好きなこと、目標をたてれば貪欲で何が悪い。
理想と現実が違っても、それはそれで楽しいことなのだ。
「さて、後片付けをしなくてはなりませんね」
「焚き火暖かかったな」
「本当、いい贅沢させて貰ったわ」
「祐ちゃんありがとう!」
こうして後片付けを皆でしてから母屋に入り、ゆっくりとした時間を過ごした我たち。
夜は我の作った野菜沢山のスープカレーだったが、大鍋が直ぐに空になるほど好評だった。
アキラはやはり食欲が凄い、我よりも凄かった。
コレこそ身長が伸びる差か……我も食事をもう少し増やさねばならんな。
そんな事を考えつつ一日が過ぎていった。
あの時、小雪の事をもっと見ておけば良かったのだ。
だが、後悔しても仕方ない。
子供の興味、子供の無知とは本当に恐ろしいものだと、この場にいた全員が思ったであろう。
落葉に火を着け焼き芋が出来上がるのを待つ間、小雪は暇を持て余したのか母屋に戻ってしまった。
まぁ確かに火が燃えているだけの中をジッとしていると言うのも三歳には物足りぬだろう。
オル・ディールであれば魔法を使って料理や、魔法を使って火力を上げたりと言う事も出来るのだろうが、この世界の不便さを我は結構気に入っている。
確かに魔法で時間を短縮出来るのは良い事ではある。
だが、今ではそれは味気ないとさえ思うのだ。
「ホクホクの焼き芋は美味いからのう」
「お爺ちゃんは焼き芋好きなの?」
「昔は良く曾爺さんが作ってくれたもんだ」
その言葉に兄を思い出す。
我も兄の様に子に残せるものが出来ればよいと思っていると、小雪が何かを両手に抱えて走ってくるではないか。
「お兄ちゃ~~ん! コレ入れる~~!!」
我が確認しようと振り返った瞬間、小雪は昨日貰った物を焚き火へと落として行った。
「小雪!!」
「ん?」
「今入れたのは栗ですか!?」
「うん!」
その言葉に祖父は小雪を抱き上げ、我は三人にこの場を離れるように叫んだ!
近年知らない者が多いようだが……焚き火に切れ目を入れていない栗を入れる事はつまり………。
パパン!
パパパパパ――ン!!
「「きゃあああ!!」」
「うわぁあ!!」
あぁ、やはりそうなるか。
勢い良く弾ける発砲音のような音。そう、焚き火に大きく切れ目を入れていない栗を入れれば爆発する事を知らぬ者が多いらしい……。
小雪は驚き泣き叫び、爆発音が止むまで近付くことができなかったが、暫くすると音も無くなり我が近寄り確認する。
どうやら栗は全て爆発したようだ。
「この様に、近年余り知られて無いようですが、焚き火に大きな切れ目を入れずに栗を入れると爆発いたします。皆さんもご注意くださいませ」
「もう爆発した後だけどな!」
「いや――見事に爆発したわね!」
「うわぁあああん!!」
「小雪ちゃん落ち着いて~大丈夫よ~?」
「良い思い出が出来たのう!」
祖父よ、確かに印象的ではあるが良い思い出とは言わないと思うが?
仕方なく更に落葉を入れ込み火にかけること一時間弱。
そろそろ頃合だろうと枝でアルミホイルに包まれた芋を取り出すと、中は美味しそうに湯気を上げ焼き芋の完成だ。
「美味しそう~~!!」
「コレ絶対美味い奴だ!」
「最初は是非そのまま食べてみて下さい、その後は……コレです」
そう言って台所から持ってきたバターを見せると――。
「ヤバイ! 脂肪フラグだわ!」
「絶対美味しいよソレは!!」
「ユウはオレを太らせてどうするつもりだ!」
「どうもしません、美味しいものを美味しく頂くのです。美味しいものを美味しく頂かねば料理に失礼です」
この言葉に皆が同意すると、火傷に注意しながらアルミホイルを外し新聞紙に包んで焼き芋を口にする。
「うま!!」
「美味しい!!」
「焼き芋には私は牛乳派です」
更にお茶と牛乳も用意して出すと、どうやら全員が食べ比べたところ牛乳が美味しいという事になったようだ。
更にアツアツの焼き芋にバターと言う贅沢……シンプルだが確実に美味しい。
やはり魔法でパパッと作るより、こうして時間を掛けて食べる食事は美味いな。
サラマンダーで火力を調整も良いのだろうが、植物を使った料理は我にとって何よりの贅沢のように感じられて仕方ないのだ。
「小雪、美味しいですか?」
「おいしい!! おにいちゃんがつくるのはなんでもおいしい! だからすごい!!」
「褒めても美味しい料理しか出ませんよ?」
小雪の素直な感想に頭を撫でると、聖女も一緒に小雪を撫でた。
その様子を写真に収める祖父、将来我と聖女が結婚した時にプレゼントしたいと言って、良い値段のするカメラを購入したらしい。
「アキラ」
「おう」
「アンタも料理習いなさいよ」
「オレ食べる専門」
「あ――アタシにも料理作ってくれる彼氏欲しいわ――旦那でも良いわ――!!」
自棄酒ならぬ自棄芋をするミユに聖女が苦笑いをしている。
そんなミユに幸あらんことを魔王として願っておこう。
「焼き芋も美味いが、ワシは大学芋に目がなくてのう」
「今度お作りしましょうか?」
「うむ、頼んだぞ」
「ユウの爺ちゃんズリィ!!」
そんな話題で盛り上がりながら食べる焼き芋は美味しい。
丁度良い頃合の残った焼き芋は家族の胃袋へと消えていった。やはり十一月の芋が美味しくなる頃にもう一度作ろうと決意する。
しかし出来れば自分で掘り立ての芋も使ってみたい……食への道がドンドン欲まみれになっていってしまうな。
「料理を始めると、使う食材についても勉強してみたくなるのですよね……」
「祐ちゃん凝り性だものね」
「どうするの?」
「ええ、高校は農業高校に進もうかと思ってしまいます」
「宗教のほうじゃなく?」
「そちらは大学に進めばよいので」
確かに早めに進むこともできるが、祖父母から高校までは好きな道を進めと言われているのだ。
両親もそれには納得していて、今まで進路を考える事はあまり無かった。
精進料理の説明をするにしても、農業高校出身と言うだけで話に重みが出るというべきか、一歩先に行ける様な気がするのだ。
オル・ディールでは飢餓に苦しむ人間達を沢山見てきたがゆえに、強く思うのだろう。
この異世界では飢える事が無さ過ぎるように思える。
「冷暖自知……じゃな」(れいだんじち)
祖父は我の頭を撫でながら嬉しそうに口にする。
「何事も自ら触れて体験しなくては、本質は解らぬということじゃ」
「なるほど」
「っていうか、私達だってまだ高校の事なんて考えてないのに、やっぱ祐一郎君は違うわね」
「うんうん、まずは中学生か~ってくらいしか無かったもの」
「それより、オレとユウってまだ小学校一年生だよな? なんでお前そこまで考えられんの?」
リアルな質問に我が考え込むと、一つの考えが浮かんだ。
それはやはり――我らしい考えだ。
「そうですね、好きなものには貪欲なんです」
「「「なるほど」」」
それで理解されてしまうあたり苦笑いしかでないが、前世の記憶もあってこその我なのだ。
好きなこと、目標をたてれば貪欲で何が悪い。
理想と現実が違っても、それはそれで楽しいことなのだ。
「さて、後片付けをしなくてはなりませんね」
「焚き火暖かかったな」
「本当、いい贅沢させて貰ったわ」
「祐ちゃんありがとう!」
こうして後片付けを皆でしてから母屋に入り、ゆっくりとした時間を過ごした我たち。
夜は我の作った野菜沢山のスープカレーだったが、大鍋が直ぐに空になるほど好評だった。
アキラはやはり食欲が凄い、我よりも凄かった。
コレこそ身長が伸びる差か……我も食事をもう少し増やさねばならんな。
そんな事を考えつつ一日が過ぎていった。
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