妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

うどん五段

文字の大きさ
上 下
53 / 73
第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?

第54話 許せない言葉と、レディー・マッスルの信条

しおりを挟む
 ――ジャックside――


 ――とんでもない事になった。
 二つのギルドの合併により世界第一のギルドの座は【ドゲン・モナカ】に奪われた。
 仕事もドンドン吸い取られているのは解る。
 直ぐに合併は崩れるだろうと思っていたが……そうはならなかった。
 何故なら、思った以上に副ギルドマスターであるティティリーが切れ者だったのだ。
 うちと一緒で、目立つ人材をリーダーに添え、実権はティティリーが握ると言うものだった。

 だとしたら、こちらも対策を練らねばならない。
 あちらはSランク冒険者が一組しかいない。
 それも、モコリーヌだけだ。
 数で言えばこちらの方が勝っている。
 Aランク冒険者の数も勝っているが、下の層の冒険者は【ドゲン・モナカ】の方が多かった。
 ティティリー曰く、今から育てていくのだと言っていた。

 無論うちも育てている最中だが、何かと時間が掛かる。
 貴族に対する最低限の礼儀作法も教えたり、文字を教えたりもしなくてはならないからだ。
 確かに冒険者に文字や数字を教えるのはとても大事だが、その分仕事量がガッツリ減る。
 減るが補填はしていた。
 それが後々戻ってくると信じて。

 だが、そのやり方が間違っているとティティリーは言ったのだ。


「所詮は使い捨ての冒険者に、学業なんて必要ないでしょう?」


 その言葉は、我がレディー・マッスルは容認出来なかった。
 もし冒険者として生活していけなかった場合、読み書きや数字の計算、そして礼儀作法があればどこででも第二の人生を歩む事が出来る。
 そこまでサポートしてこその、我がギルドだと胸を張って言えるのだ。
 使い捨てにはしない。
 絶対に。

 その言葉はティティリーには「慈善事業ね? 冒険者じゃないわ」と言われたが、「うちにはうちのやり方がある」と口にすると不穏な空気は流れたが、ティティリーは「だから世界一位の座を奪われるのよ」と馬鹿にしたように言ってきたのだ。


「冒険者を使い捨ての駒のような言い方をするギルドを容認することは出来ない」
「あら、世界第二位が寝言をほざいてるの?」
「くっ」
「せめて第一位を奪い返してから言ったら?」


 そう捨て台詞を吐いて去っていった……。
 怒りでどうにかなりそうだったが、世界第二位だから怒っているのではない。
 冒険者をモノのように扱うアイツらが気に入らなかった!!
 特にマリリンはその手のタイプがとにかく嫌いだ。
【ギルドの仲間は冒険者でなくなってしまっても見捨てない。】それが、レディー・マッスルの最もたる信条でもあった。


「クソ! マリリンが守ってきたモノが壊れていく……」
「それも、【以前の第一位】の時よりも早いかも知れないな」


 以前の第一位ギルドの時も酷かった。
 冒険者でなくなった者たちはギルドから投げ出され、体を破損していようとも打ち捨てられた……。
 それがまた、繰り返されようとしている。
 何としても元の第一位に戻る必要があった。


「もう打ち捨てられて死んでいく仲間を見るのはコリゴリだっ!」
「落ち着けジャック、マリリンの前でそんな姿晒すなよ」
「しかしマイケル!!」
「ああ、解っている。その為に彼女たちの助けを乞うんだろう?」


 ――彼女たち、【ミセス・マッチョス】達に助けを!


 彼女たちとて拠点がある。
 その拠点を移って貰おうというのだから大きな交渉になるだろう。
 だが、それをしないとまた冒険者のイメージも、職種も、尊厳も何もかもが壊れてしまうのだ。
 我々が守ってきたものは大きい。

 その為に、Sランクに駆け上がってきた。
 その為に、まずは守れる者たちから守ってきた。
 手から零れ落ちる他の命は、カズマ様が拾ってくださったっ!!


「【ドゲン・モナカ】との全面戦争だな」
「いや、どっちかと言うと、ティティリーとの一騎打ちに近いだろう」


 最低の駒に成り下がったティティリーと、どう戦っていくか。
 冒険者とは如何にあるべきか。
 横暴な冒険者等では、民の心は掴めない。
 強さだけでは、守れないものもあるのだと――。


「マリリンッ」


 マリリンがSランク冒険者を目指したあの日を思い出す。
 打ち捨てられて死んだ女冒険者……。
 小さい妹を生かす為に身を削り命を削っていた少女……。
 雨の中打ち捨てられた彼女は、体中ボロボロだった。

 ――初めてできた、マリリンの友人でもあった。

 あの時、マリリンは誓ったのだ。
「今君臨している世界第一位のギルドを引きずり下ろす」と。
 その為に頑張ってきた。
 小さな妹は今、レディー・マッスルで受付嬢をしている。
 マリリンは見捨てたりはしなかった。


「マイケル! 気合を入れるぞ!!!」
「おう!!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!」」


 一気に覇気を出しながら雄叫びを上げ、大きく息を吐くと手と手を取り合い頷き合ったその時だった。


「一体どうしたんだ兄さん達」
「凄い咆哮と覇気でしたね」
「お帰りマリリンにカズマ!」
「少々気合を入れていてな!」


 取り敢えず今は異世界からハネムーンを終えて帰ってきた二人を出迎えよう。
 だが、ゆっくりする時間も……最早残されてはいない。
 刻一刻と崩壊は進んでいる。急がねば手遅れになる。
 そして丁度その時。


「案内ご苦労さん」
「マリリンにカズマ!!」
「嗚呼推し最高っ!!」
「ミセス・マッチョスの皆さん」
「ははは! 丁度良かったな! 今ハネムーンから帰ってきたところさ!」
「よしよし、全員揃ったな! 直ぐ話し合いをしたいが……」
「分かった。この恰好のままでもいいか?」
「ああ。全員椅子に腰かけてくれ。実は大変な事になろうとしている」


 一連のティティリーとの騒動を語る事になった俺は、怒りを出来るだけ沈め、的確に、一元一句間違えないようにティティリーとのやり取りを伝えた。
 無論【ミセス・マッチョス】の面々は怒りの形相だったが、マリリンは不思議と落ち着いていて顎を撫でていた。
 そして――こう切り出したのだ。

しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...