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第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?

第47話 僕たちを題材にした本は貴族社会をも動かしていく

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 意外な事に、ダメリシアが行った書籍の話は瞬く間に広がり、娯楽に飢えていた貴族女性を中心に本が爆発的に売れて、僕とマリリンの話はある種の聖書扱いされるようになっていく。
 兄、ジャックさんが『ミセス・マッチョス』の面々と蜜に連絡を取り合っていることもあり、城での内容は伏せられているが、それはもう僕とマリリンの仲の良さが事細かに記載された二次創作は、今では『貴族女性の嗜み』と言われるようになってる。

 また、一夫多妻ではなく、一夫一妻制を重んじる僕とマリリンの言葉に出来ない程の愛の深さには共感が多いらしく、貴族女性を中心に「一人の男性にそこまで愛を乞われてみたい」「一人の男性に骨の髄まで愛されてみたい」というのが続出。

 結果『妻がいるのに、婚約者がいるのに二股をかける男は最低である』というのが浸透するのに、そう時間は掛らなかったようだ。

 今まで、貴族女性であれば婚約者が学校で羽目を外して二股三股していようと我慢するしかなかったが、証拠を集めて「女性側から婚約破棄」が流行り始めた。
 これに慌てたのが男性側である。


「結婚は親同士が決めた婚約者と、恋愛は心と体の相性のいい好みの女性と」というのが当たり前だった男性陣は、既婚者であっても『離縁』もしくは『女性側から婚約破棄』が当たり前になりつつあり、大いに慌てたのである。

 無論、離縁や婚約破棄をするのだから、それ相応の調べは必要で、精神的苦痛を味わうが、男性側にドーンと突き付ける婚約破棄は何よりもストレス発散にもなると話題になる程でもあった。

 だが、男性よりも更に慌てたのは浮気相手をしていた女性たちである。
 特に第二婦人の立場はとても危うく、第一婦人が離縁すれば遊んで暮らしているだけの自分に屋敷を回していくだけの力を行き成り求められるようになるのである。

 そんな手腕があれば第二婦人になっている筈が無いのだが、結果として第二婦人との関係もギスギスし、男性陣は如何に親の決めた相手が自分に、領に、そして家の為に必要な事だったのか、嫌程理解するようになったらしい。

 これで男性側が心を入れ替えて、婚約者、第一婦人を大事にすれば問題は一切ない。
 が――世の中そう上手くはいかないのである。
 いや、上手くいくはずがなかった……と、言うべきだろうか?


「御聞きしました? あの家の旦那様、愛人囲っておきながら第一婦人を……」
「聞きましたわ。『お前には帰る家も無いのだから奴隷のように今まで通り働け』だったかしら?」
「離縁しても帰る家がない女性たちが駆け込む、【駆け込みシェルター】なる物がカズマ様によって作られましたわよね?」
「ええ、子を連れて逃げる事も可能ですって」
「わたくしの知り合いの女性が、夫の度重なる浮気が嫌いなって子を連れてその【駆け込みシェルター】に逃げましたのよ」
「「「「まぁ!!」」」」
「その伯爵家も終わりですわね」
「今まで通りのやり方で貴族が通用するとでも思っているのかしら? 古い頭を持っていらっしゃるのね」
「嫌だわ」
「時代錯誤でしてよ?」


 ――と、本日参加した夜会では、女性陣の言葉に男性陣が縮こまってしまっている。
 女性が別の男性に恋をすれば「阿婆擦れ」と罵る癖に、男性陣が別の女性と懇意にすることは当たり前だと浸透していたことによる、女性陣の今まで圧迫されていた怒りが爆発した形だ。
 早い話が、女性による反撃が始まったのだ。


「きっかけは我々を題材にした小説かも知れんが、こうなると滑稽だな」
「今まで男性陣が好き勝手してきたからこその怒りの爆発でしょう」
「実に浅はかだな! 女性とは男性の所有物ではない!」
「まさしくそうですが……。もっとレディである妻を大事にしないと……同じ男として情けない上に恥ずかしい限りですよ」


 そう僕たちが会話しているのを女性たち、男性たちは聞いている。
 男性たちは僕を睨み、女性たちは感動した目でこちらを見ているが、この差が本当に違いすぎて男性陣を嘲笑いたくなる。
 すると――。


「余裕の表情ですな? カズマ殿」


 そう声を掛けてきたのは、マギラーニ宰相だった。


「余裕……とは何のことでしょう?」
「これだけ男性陣の敵意を向けられても……と言う事ですよ」
「ああ、ご自分の撒いた種をこちらに責任転換しかできない屑共の視線ですか?」
「はははっ!」
「同じ男性とは思いたくもありませんねぇ……。自分の妻さえも大事にできない男なんて屑同然でしょう? 捨てられて当然ですよ」
「手厳しい。だがその通りでもある」
「親同士が決めた許嫁……と言うのは、僕のいた国にでもありましたが、お互いに分かり合えるようにと色々手をかえ品をかえ、一つの夫婦に変わっていったものですよ。それなのにこちらの国の男性陣はそれすらしなかったんですかね?」


 そう言うと男性陣は苦虫を噛むようにして目線を逸らし、言いたいことを言えない状態の様だ。


「全くもって、我が国の困ったところですな。頭のいい男性なら、親の決めた許嫁と如何に良い関係を築けるか奮闘するでしょうに」
「マギラーニ宰相もそう思いますか?」
「ええ、無論です」


 流石にマギラーニ宰相までが僕の味方をしだすと、貴族男性たちは最早諦めた様子で近くから去っていく。
 ザマァないなと思いながらも、マギラーニ宰相はマリリンに向き合った。
 すると――。
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