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第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?
第46話 『ミセス・マッチョス』の出す本で信者が増える
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渋々僕とマリリンが向かうと、馬車から颯爽と降りてきたのは伯爵ではなく、ダメリシアだった。手には分厚い本をいくつか持っているが、ご令嬢とはいえ筋肉質だなとつい思ってしまう。
「嗚呼……お二人とも。愚かなるわたくしを許してくださいませ!!」
「「へ?」」
思わず僕とマリリンがそう口にすると、涙を流しながら柵越しに本を見せてきた。
その本は――『ミセス・マッチョス』が書いた僕とマリリンの二次創作小説。
最近本を出版したと連絡を聞いていたが、まさか……ダメリシアが本を読んでいるとは思っていなかった。
「あなた方が如何に尊く、それでいて燃えるような恋愛をし、そしてあらゆる困難を超えて結婚したのか知りましたわ……。たかだか冒険者……そう思っていたわたくしが恥ずかしい!!
この聖書にはこうかいてありましたの!! 『カズマの国は規律厳しく、妻は一生に一度だけ、愛した女性にのみ己を捧げるのだ』と……。お父様に聞いたら、今カズマ様のお言葉を聞いてダリュシアーン様は一夫一妻制を王家に課そうとしていると。
それは正に、カズマ様がマリリン様を一途に愛し、人生を捧げた事と同義!」
「え――っと」
ダメリシアは涙を流しながら本を抱きしめ「なんてわたくしは浅ましい事を考えていたのかしら!!」と叫んだ。
すると――。
「そうだな! カズマは一夫一妻制と言う規律の厳しい国で生まれ育った! 浮気をすれば仕事を失い、子供以外と妻以外の女性を愛そうとすれば、親兄弟から針の筵にあい、友人たちはいなくなる……。そんな全てを受け入れ、カズマは我を生涯唯一の妻にしたのだ!! その一途な愛はとても重い。受け入れる側とて並大抵のことでは無いのだ!!」
「そうですわよね! 嗚呼、分かりますわ……本当に、どう謝罪すればいいか分からず。そして今までの自分の行い全てを悔いてますわ。わたくしは本当に、本当にダリュシアーン様の足枷な事しかしていなかったのだと勉強しましたの、そして反省も致しましたの!」
「そうか! 実に素晴らしい事だ!!」
「真実の愛を前に、わたくしはなんて愚か者だったのでしょう! この聖書を今後もあらゆる地方、あらゆる大陸に広める事を使命とし、わたくしは結婚を諦めましたわ!!」
れ、令嬢が結婚を諦める!?
それは並大抵のことではない筈だが、悪評が広まってしまった以上、結婚が難しいのかも知れない。
それならば、仕事に打ち込んだ方がまだ……と言う奴だろうか?
「わたくし、『ミセス・マッチョス』の方々と提携して各所に本屋を作ることにしましたの。印刷も致しますわ。そこでこの聖書を並べるのです。そして世界の人々に、如何に英雄とその夫が深い愛、オリハルコンでも切れぬ赤い糸で結ばれているのか、そして死をも恐れぬカズマ様の一途な愛を伝えねばと思ったのです!!」
「な、なるほど!」
「馬車だけ送り付けていた理由を聞いてもいいかね?」
「普通に連絡を取っていては、NOを突き付けられるだけだと理解してましたの。それで、何時なんどきでも連絡が来てもいい様に、無人の馬車を毎日通わせましたわ」
「嫌がらせかと思ってたけど……本来の目的はこっちの本だったんだね」
「その通りですわ!!」
そう語るダメリシアに僕が大きく溜息を吐いて「納得したよ……」と口にすると、彼女は嬉しそうに微笑み、馬車からダメージョ伯爵が出てきて深々と頭を下げた。
そして、最初こそダメリシアが自分とマリリンを恨んでいた事を聞いたが、「敵を知る為には敵の情報が欲しいですわ」と『ミセス・マッチョス』達が出した二次創作を読んで人生が一変したらしく、反対に感謝された。
今ダメージョ伯爵家は彼女達と連絡を密に取り合い、次なる本の制作などを話し合っているのだとか。
正に敵を知ろうとしたらハマった、沼った、という奴だと理解した。
「娘の曇った眼を、そして腐っていた心さえも聖女のようにしてしまう……。あなた方の愛とは本当に素晴らしいですな! 一人の親として、大変感謝しております」
「いえ、そんな。僕は心の底から彼女を、妻を愛し敬っているだけです」
「嗚呼、本当にその心根が素晴らしい。一夫一妻制を重んじるカズマ様でなければ、我が娘をと思いましたが……とても無理な話なのは理解しております。実にマリリン様は良き夫、よき旦那様と巡り合いましたね」
「うむ! 我の夫は素晴らしい! どこを切り取っても、どこを捻り取っても我への愛が詰まっている!!」
「はははは! 物理的に切り取られて捻じり取られそうですな!」
本当にやり兼ねないので勘弁願いたい。
とは言え、本気でキレたマリリンならするだろうが、何時もの調子のマリリンならそんな非道な事はしないと理解している。
だからこそ、怒らせられない妻でもあるのだが。
「娘は布教と言う道を選びました……。どうか、今後我がダメージョ伯爵家とも、仲良くしていただけたらと……」
「ふむ、確かに布教してくれる相手がいると、彼女たちも書き甲斐があるだろう! ダメリシア次第だが」
「よろしくお願いしますわ!!」
「心得た!!」
と、勝手に進めていくマリリン……。
その勢いが素敵で無敵で好きだ……。
そして、尻ぬぐいが必要な時は僕が頑張ろう。
――こうして、ダリュシアーンの元婚約者で問題児であったダメリシアは『ミセス・マッチョス』の書いた僕とマリリンの小説で目が覚め……たのか、洗脳されたのかは不明だが、いい方向に進んだようだ。
これからも幸多からん事を祈りたい……茨の道でも。そう思った午後の事だった。
「嗚呼……お二人とも。愚かなるわたくしを許してくださいませ!!」
「「へ?」」
思わず僕とマリリンがそう口にすると、涙を流しながら柵越しに本を見せてきた。
その本は――『ミセス・マッチョス』が書いた僕とマリリンの二次創作小説。
最近本を出版したと連絡を聞いていたが、まさか……ダメリシアが本を読んでいるとは思っていなかった。
「あなた方が如何に尊く、それでいて燃えるような恋愛をし、そしてあらゆる困難を超えて結婚したのか知りましたわ……。たかだか冒険者……そう思っていたわたくしが恥ずかしい!!
この聖書にはこうかいてありましたの!! 『カズマの国は規律厳しく、妻は一生に一度だけ、愛した女性にのみ己を捧げるのだ』と……。お父様に聞いたら、今カズマ様のお言葉を聞いてダリュシアーン様は一夫一妻制を王家に課そうとしていると。
それは正に、カズマ様がマリリン様を一途に愛し、人生を捧げた事と同義!」
「え――っと」
ダメリシアは涙を流しながら本を抱きしめ「なんてわたくしは浅ましい事を考えていたのかしら!!」と叫んだ。
すると――。
「そうだな! カズマは一夫一妻制と言う規律の厳しい国で生まれ育った! 浮気をすれば仕事を失い、子供以外と妻以外の女性を愛そうとすれば、親兄弟から針の筵にあい、友人たちはいなくなる……。そんな全てを受け入れ、カズマは我を生涯唯一の妻にしたのだ!! その一途な愛はとても重い。受け入れる側とて並大抵のことでは無いのだ!!」
「そうですわよね! 嗚呼、分かりますわ……本当に、どう謝罪すればいいか分からず。そして今までの自分の行い全てを悔いてますわ。わたくしは本当に、本当にダリュシアーン様の足枷な事しかしていなかったのだと勉強しましたの、そして反省も致しましたの!」
「そうか! 実に素晴らしい事だ!!」
「真実の愛を前に、わたくしはなんて愚か者だったのでしょう! この聖書を今後もあらゆる地方、あらゆる大陸に広める事を使命とし、わたくしは結婚を諦めましたわ!!」
れ、令嬢が結婚を諦める!?
それは並大抵のことではない筈だが、悪評が広まってしまった以上、結婚が難しいのかも知れない。
それならば、仕事に打ち込んだ方がまだ……と言う奴だろうか?
「わたくし、『ミセス・マッチョス』の方々と提携して各所に本屋を作ることにしましたの。印刷も致しますわ。そこでこの聖書を並べるのです。そして世界の人々に、如何に英雄とその夫が深い愛、オリハルコンでも切れぬ赤い糸で結ばれているのか、そして死をも恐れぬカズマ様の一途な愛を伝えねばと思ったのです!!」
「な、なるほど!」
「馬車だけ送り付けていた理由を聞いてもいいかね?」
「普通に連絡を取っていては、NOを突き付けられるだけだと理解してましたの。それで、何時なんどきでも連絡が来てもいい様に、無人の馬車を毎日通わせましたわ」
「嫌がらせかと思ってたけど……本来の目的はこっちの本だったんだね」
「その通りですわ!!」
そう語るダメリシアに僕が大きく溜息を吐いて「納得したよ……」と口にすると、彼女は嬉しそうに微笑み、馬車からダメージョ伯爵が出てきて深々と頭を下げた。
そして、最初こそダメリシアが自分とマリリンを恨んでいた事を聞いたが、「敵を知る為には敵の情報が欲しいですわ」と『ミセス・マッチョス』達が出した二次創作を読んで人生が一変したらしく、反対に感謝された。
今ダメージョ伯爵家は彼女達と連絡を密に取り合い、次なる本の制作などを話し合っているのだとか。
正に敵を知ろうとしたらハマった、沼った、という奴だと理解した。
「娘の曇った眼を、そして腐っていた心さえも聖女のようにしてしまう……。あなた方の愛とは本当に素晴らしいですな! 一人の親として、大変感謝しております」
「いえ、そんな。僕は心の底から彼女を、妻を愛し敬っているだけです」
「嗚呼、本当にその心根が素晴らしい。一夫一妻制を重んじるカズマ様でなければ、我が娘をと思いましたが……とても無理な話なのは理解しております。実にマリリン様は良き夫、よき旦那様と巡り合いましたね」
「うむ! 我の夫は素晴らしい! どこを切り取っても、どこを捻り取っても我への愛が詰まっている!!」
「はははは! 物理的に切り取られて捻じり取られそうですな!」
本当にやり兼ねないので勘弁願いたい。
とは言え、本気でキレたマリリンならするだろうが、何時もの調子のマリリンならそんな非道な事はしないと理解している。
だからこそ、怒らせられない妻でもあるのだが。
「娘は布教と言う道を選びました……。どうか、今後我がダメージョ伯爵家とも、仲良くしていただけたらと……」
「ふむ、確かに布教してくれる相手がいると、彼女たちも書き甲斐があるだろう! ダメリシア次第だが」
「よろしくお願いしますわ!!」
「心得た!!」
と、勝手に進めていくマリリン……。
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そして、尻ぬぐいが必要な時は僕が頑張ろう。
――こうして、ダリュシアーンの元婚約者で問題児であったダメリシアは『ミセス・マッチョス』の書いた僕とマリリンの小説で目が覚め……たのか、洗脳されたのかは不明だが、いい方向に進んだようだ。
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