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第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?
第45話 幸せなひと時から、波乱の幕開けに?
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馬車は毎日きた。
毎日きたが門は開けなかった。
――その結果が、中身の入っていない馬車が来ると言う事に、レディー・マッスルの面々が気づいた。
そこで……。
「毎日待たせるのも可哀そうですね。今日は入れて差し上げましょう」
「そうだな。中身がいればだが!」
と、なったのである。
これで中身がいなければ苦情もので、金輪際レディー・マッスルは伯爵令嬢の領地の討伐には行かないという方針だ。
その事も含め、うちの執事に行かせると馬車は走って逃げていったという。
「ハーゲイさん、結果はどうでしたか?」
頭の光輝く名前に相応しいハーゲイと言う家の執事に聞くと、中身はいらっしゃらなかったという事だった。
これなら安心して令嬢の家に苦情が出せる。
そこで、今後そちらの領の討伐に、「我がレディー・マッスルは冒険者を一切出さない方針を固めた事」と「度重なる嫌がらせしか出来ない事も含め、王家にご報告する」という旨を記載した手紙を伯爵家に送った。
途端慌てたのは伯爵家だ。
当主が慌てて謝罪にきたが門を開ける事も無く、「金輪際そちらとは縁を切るそうです」と執事に言われ、伯爵は帰っていったという。
今頃屋敷では揉めているだろう。
「あの伯爵令嬢のいた地域は強いモンスターが多い地域だった。そこにレディー・マッスルではない冒険者を投入しても、値段は5倍程跳ね上がり、とてもじゃないが伯爵家としてお金の維持は出来ないだろうな」
「でも、元はそれで出来ていたんだろうからいいんじゃないかな?」
「それもそうだが、冒険者はプライドが高い者たちも多い。一度離れた、離された相手にもう一度となると、そのプライドを納得させるだけの金額が必要になる」
「なるほど」
「よって、伯爵家が存亡出来るかは分からなくなったという事だ」
いい笑顔で言ってのけたマリリンに、「それは大変だね」と告げると豪快に笑い、「我が夫を怒らせるのが悪い」と僕のいた世界の紅茶を飲む。
紅茶は度々実家に戻って頼んでは持ってきているもので、ムギーラ王にも献上している品だ。
「う~ん……実にいい香りにいい味だ。他人の不幸を笑うつもりはないが、我が夫に嫌がらせをしてきた令嬢の家が消えると思うと一段と美味く感じるな!」
「ははは」
「令嬢も喧嘩を売る相手を間違えたものだな!」
「そうかも知れないね」
レディー・マッスルを敵に回すとは思いもしなかったのだろうか。
だとしたら随分と浅慮な令嬢だ。
周りが全く見えていないのだろう。
「所で、ダリュシアーン様より今日は相談があったそうだな」
「ああ、マリリンも聞いていたんだったね。一夫一妻について今日は話し合ったよ」
「やはりこの国に一夫一妻制が浸透するのは難しそうだな」
「長い事一夫多妻が当たり前だったからね。まずは王族から一夫一妻制を導入するらしい」
「子が出来ない場合もあるだろう?」
「そこは不妊治療用の薬があるだろう?」
「確かに」
「だから大した問題ではないらしいよ」
そう、今日ムギーラ王とダリュシアーンと話し合った内容は、まさに一夫一妻制についての話題だった。
僕がマリリンしか妻を持たないと頑なに言っていた事もあり、事情を説明すると「覚悟があるからこそ一人に絞ると言うのは素晴らしい」という事になったのだ。
無論、ムギーラ王も亡くなった妃に対してそう思っていたらしく、次の妃を持たなかったのも、亡くなった王妃を愛しすぎていたからというなんともロマンチックなものだった。
そしてダリュシアーンも、長年自分を支えてくれた一度は婚約破棄された令嬢を深く愛していることもあり、「王族こそ模範となって一夫一妻制を導入すべきです」と言い張り、今後王族の結婚とは、かなりお互いの相性なども吟味されることになりそうだ。
「ムギーラ王の前に使われていた離宮は取り壊しが決まったらしいよ」
「女を集めて競わせつつ自分に靡かせる等、そんな国も男も亡べばいい」
「僕の世界でもそういう時代があったからなぁ……。あれは本当にダメだと思うよ」
「いつの時代も、国のトップこそが模範とならないといけないのだがなぁ」
「金銭感覚もね。庶民に向けるべきだよ」
そう会話しながら紅茶を飲み、久々の休みをマリリンと過ごす。
マリリンは僕の世界から持ってきた普段着を着ており、メイドたちは興味津々だ。
手洗いしても問題ない生地の普段着の為、問題はないが……スタイリッシュでいて、尚且つマリリンの良さを引き出している服装選びは流石母さんだと思った。
「今日もうちの奥さんは可愛くて見ていて眼福だよ」
「ンン!! お義母様にお礼を言わねばな!」
「大変です旦那様! 奥様!!」
――と、優雅に過ごしていた昼下がり。
家令が駆け込んできて何事かと思っていると執事も駆けつけてきた。
「ダメージョ伯爵の令嬢、ダメリシア様とダメージョ伯爵が来ておられまして」
「それで?」
「責任を取って妻にしろと」
「お帰り頂こう」
「会うまで帰らないと仰ってますが」
「一方的な面会、そして一方的な申し出は受けないようにしている」
「畏まりました」
「1時間経っても動かないなら警備兵を連れてくるように。もしくは……」
そう言ってちらりとマリリンを見ると――額に青筋を作りつつ。
「我がレディー・マッスルの力持ち自慢を連れてきて、馬車ごと運んでやろう」
「だそうだよ」
「か、畏まりました」
「ですが、一度お話しないのなら自害すると仰ってまして」
「は~~……最悪」
「死んで貰ったらどうだ?」
いい笑顔で言ってのけるマリリンに苦笑いしつつ、俺は二人に指示を出す。
「どうしましょうか?」
「門の前で話をする。屋敷には通すな」
「畏まりました」
――どうやら、波乱の幕開けの様だ。
毎日きたが門は開けなかった。
――その結果が、中身の入っていない馬車が来ると言う事に、レディー・マッスルの面々が気づいた。
そこで……。
「毎日待たせるのも可哀そうですね。今日は入れて差し上げましょう」
「そうだな。中身がいればだが!」
と、なったのである。
これで中身がいなければ苦情もので、金輪際レディー・マッスルは伯爵令嬢の領地の討伐には行かないという方針だ。
その事も含め、うちの執事に行かせると馬車は走って逃げていったという。
「ハーゲイさん、結果はどうでしたか?」
頭の光輝く名前に相応しいハーゲイと言う家の執事に聞くと、中身はいらっしゃらなかったという事だった。
これなら安心して令嬢の家に苦情が出せる。
そこで、今後そちらの領の討伐に、「我がレディー・マッスルは冒険者を一切出さない方針を固めた事」と「度重なる嫌がらせしか出来ない事も含め、王家にご報告する」という旨を記載した手紙を伯爵家に送った。
途端慌てたのは伯爵家だ。
当主が慌てて謝罪にきたが門を開ける事も無く、「金輪際そちらとは縁を切るそうです」と執事に言われ、伯爵は帰っていったという。
今頃屋敷では揉めているだろう。
「あの伯爵令嬢のいた地域は強いモンスターが多い地域だった。そこにレディー・マッスルではない冒険者を投入しても、値段は5倍程跳ね上がり、とてもじゃないが伯爵家としてお金の維持は出来ないだろうな」
「でも、元はそれで出来ていたんだろうからいいんじゃないかな?」
「それもそうだが、冒険者はプライドが高い者たちも多い。一度離れた、離された相手にもう一度となると、そのプライドを納得させるだけの金額が必要になる」
「なるほど」
「よって、伯爵家が存亡出来るかは分からなくなったという事だ」
いい笑顔で言ってのけたマリリンに、「それは大変だね」と告げると豪快に笑い、「我が夫を怒らせるのが悪い」と僕のいた世界の紅茶を飲む。
紅茶は度々実家に戻って頼んでは持ってきているもので、ムギーラ王にも献上している品だ。
「う~ん……実にいい香りにいい味だ。他人の不幸を笑うつもりはないが、我が夫に嫌がらせをしてきた令嬢の家が消えると思うと一段と美味く感じるな!」
「ははは」
「令嬢も喧嘩を売る相手を間違えたものだな!」
「そうかも知れないね」
レディー・マッスルを敵に回すとは思いもしなかったのだろうか。
だとしたら随分と浅慮な令嬢だ。
周りが全く見えていないのだろう。
「所で、ダリュシアーン様より今日は相談があったそうだな」
「ああ、マリリンも聞いていたんだったね。一夫一妻について今日は話し合ったよ」
「やはりこの国に一夫一妻制が浸透するのは難しそうだな」
「長い事一夫多妻が当たり前だったからね。まずは王族から一夫一妻制を導入するらしい」
「子が出来ない場合もあるだろう?」
「そこは不妊治療用の薬があるだろう?」
「確かに」
「だから大した問題ではないらしいよ」
そう、今日ムギーラ王とダリュシアーンと話し合った内容は、まさに一夫一妻制についての話題だった。
僕がマリリンしか妻を持たないと頑なに言っていた事もあり、事情を説明すると「覚悟があるからこそ一人に絞ると言うのは素晴らしい」という事になったのだ。
無論、ムギーラ王も亡くなった妃に対してそう思っていたらしく、次の妃を持たなかったのも、亡くなった王妃を愛しすぎていたからというなんともロマンチックなものだった。
そしてダリュシアーンも、長年自分を支えてくれた一度は婚約破棄された令嬢を深く愛していることもあり、「王族こそ模範となって一夫一妻制を導入すべきです」と言い張り、今後王族の結婚とは、かなりお互いの相性なども吟味されることになりそうだ。
「ムギーラ王の前に使われていた離宮は取り壊しが決まったらしいよ」
「女を集めて競わせつつ自分に靡かせる等、そんな国も男も亡べばいい」
「僕の世界でもそういう時代があったからなぁ……。あれは本当にダメだと思うよ」
「いつの時代も、国のトップこそが模範とならないといけないのだがなぁ」
「金銭感覚もね。庶民に向けるべきだよ」
そう会話しながら紅茶を飲み、久々の休みをマリリンと過ごす。
マリリンは僕の世界から持ってきた普段着を着ており、メイドたちは興味津々だ。
手洗いしても問題ない生地の普段着の為、問題はないが……スタイリッシュでいて、尚且つマリリンの良さを引き出している服装選びは流石母さんだと思った。
「今日もうちの奥さんは可愛くて見ていて眼福だよ」
「ンン!! お義母様にお礼を言わねばな!」
「大変です旦那様! 奥様!!」
――と、優雅に過ごしていた昼下がり。
家令が駆け込んできて何事かと思っていると執事も駆けつけてきた。
「ダメージョ伯爵の令嬢、ダメリシア様とダメージョ伯爵が来ておられまして」
「それで?」
「責任を取って妻にしろと」
「お帰り頂こう」
「会うまで帰らないと仰ってますが」
「一方的な面会、そして一方的な申し出は受けないようにしている」
「畏まりました」
「1時間経っても動かないなら警備兵を連れてくるように。もしくは……」
そう言ってちらりとマリリンを見ると――額に青筋を作りつつ。
「我がレディー・マッスルの力持ち自慢を連れてきて、馬車ごと運んでやろう」
「だそうだよ」
「か、畏まりました」
「ですが、一度お話しないのなら自害すると仰ってまして」
「は~~……最悪」
「死んで貰ったらどうだ?」
いい笑顔で言ってのけるマリリンに苦笑いしつつ、俺は二人に指示を出す。
「どうしましょうか?」
「門の前で話をする。屋敷には通すな」
「畏まりました」
――どうやら、波乱の幕開けの様だ。
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