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第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?

第38話 『ミセス・マッチョス』という冒険者達とキャットファイト? 土地無くならない?

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 ――妻は世紀末覇者のような見た目をしているが、心は誰よりも乙女だ。
 鍛えられし筋肉ではドラゴンの爪すら通さない。
 鍛えられし肺活量はドラゴブレスさえも消し去る。
 鍛えられしその力は、オリハルコンすら粉砕する。
 とっても素敵な体を持つが、何度でも言おう、心は誰よりも乙女だ。
 そして、こんなにもフリフリエプロンが似合わない女性も早々いないだろう。
 だが、それがいい。
 僕はある意味、妻と言うマリリンにぞっこんだった。


「マリちゃんのエプロン縫ってみたんだけど、とっても似合うでしょう?」
「うん、フリフリエプロンがこんなにも……ドキドキしちゃうよ」
「ンン……う、ウホ!! カズマもこの手のエプロンが好きなのだな!!」
「メイドさんたちの服装も良いけど、僕はマリリンの今のエプロン姿がいいな」


 鍛えられし肉体美を何とか可愛くしようと努力した後が垣間見えるその姿。
 いい、実にいい。
 アンバランスさが絶妙だ。
 やはり僕の妻はこうでなくては。
 僕は興奮しながら伝えると、マリリンは顔を真っ赤に染めて恥じらっている。
 それもまたいい。


「今日のお昼はマリちゃんが作ったの。お母さんドラゴンのお肉なんて初めて食べるけど楽しみだわ」
「お父さんの分もちゃんと残してある?」
「うむ、お義父様には夜お出ししようかと」
「それなら頂こうか」


 僕はあちらの世界で何度か食べているドラゴンステーキ。
 とはいえ、マリリンが作ったものは食べていないが、愛しい妻の手料理とあらば、例え炭であっても食べようと思う。
 生だけは勘弁して欲しいが。
 そんな事を思いつつ食卓に着くと、白米ご飯にポンドステーキよりやや大きめのドラゴンステーキ。
 備え付けの野菜は母が用意したらしい。
 既にある程度切ってあるドラゴンステーキを食べ始めると、母は興奮して「これがドラゴン……嗚呼、雄叫びが聞こえそうだわ」とウットリしている。
 その感想もどうなんだろうかと思ったが、意外とドラゴンの肉は柔らかいのだ。


「うん、僕は料理長が作る料理も美味しいと思うけど、愛しい妻の作った手料理を前にしては、料理長も形無しだな」
「そそそ、そうだろうか!!」
「愛情と言うスパイスが余りにも美味しすぎて」
「ウホッ!! あまり喜ばせないでくれ!」
「マリリンは可愛いなぁ。本当に僕は良いお嫁さんを貰ったよ」


 ドラゴンステーキは美味しいし、マリリンの手料理だし、最高の昼ごはんを食べる事が出来た。
 マリリンにしてみれば、我が家で食べる豚や牛、鳥と言った肉は珍しいらしいが、何より生魚……刺身には驚いていた。
 異世界では生魚を食べる習慣はないらしく、初めて刺身を食べた時は饒舌になって、どこぞの料理評論家にでもなったかのようだったのは懐かしい話だ。

 今度こちらの世界に長く来れるときは、魚のお造りが食べられるところに旅行にでも行こうかと思っている。
 無論、僕の運転で。


「なぁマリリン」
「ん?」
「異世界でのハネムーンが終わったら、こっちの世界でのハネムーンもしないか?」
「この異世界でのハネムーンか……興味深い!」
「ふふ、一緒に手を繋いでいろんな場所に行こう」
「うむ!!」


 こうして二人短くとも二泊三日は出来るだけの休みを取るべく頑張ることになるのだが、それはそれとしてお腹いっぱい食べた昼の後は少し眠くなる。
 だが、僕にはやるべきことがあった。
 前もって母に頼んでおいた温泉のパンフレットや特集の本。
 温泉だけが目玉では、余り人は来ないだろう。
 何かしらの売りは欲しいと思って購入して貰っていたのだ。


「温泉の性質が解ればいいんだけどなぁ」
「ああ、傷や神経痛にはかなり効くらしいぞ」
「冒険者用の温泉になりそうだな……」
「後は鉱山だが、山にはそれなりの薬の材料も生えているらしくてな。まさに鉱山だけで済ませるには惜しい山なのだ。治療用施設完備兼薬をある程度売れればいいと思っている」
「なるほど。治癒を目的とした温泉と言うのも魅力的な内容の一つだね。疲れも癒せるだろうし、治癒には時間も掛かるだろう。料金を少し安くしてでも体を治して貰いたいね」


 冒険者は体が資本。
 その体を傷めるというのは冒険者としての寿命が終わるのと同義だ。
 冒険者ならば何としても傷を治して復帰したいと思うのが普通だろうが、先立つものと言うのもある。
 その為、料金は出来るだけ安めに抑えたいと思った。


「温泉宿が出来次第だが、我の知り合いのSランク冒険者一行が使いたいと申し出ている。『ミセス・マッチョス』と言う冒険者一行なのだが、女盛りの女性だけのパーティでな。傷ついた体を癒したいという申し出だったんだ」
「なるほど。彼女たちもその――マリリンのような体をしてるのか?」
「我には負けるが、全員素晴らしい肉体美を持っている!」


 その言葉に、結構な人数の筋肉女子……? を想像して頭が痛くなった。
 僕にはちょっと荷が重い。


「マリリン、僕はその女性たちの相手をするのは荷が重いよ」
「あははははは! 安心しろ! 結婚祝いを言うだけであとは治療に専念するそうだ!」
「そ、そうか」


 立花さんみたいに「あなたは筋肉女子が好きなのね」でお断りするのはこちらの世界では簡単だが、あちらの世界ではそうはいかない。
 寧ろ「筋肉女子が好きならば、マリリンでОKなら我々も行けるだろう!」と堂々と言ってくる女性もいる。
 いける、いけないじゃない。
 反応する、しないかだ。
 何処とは言わないが。
 幸い僕はマリリンにのみ反応するようなので、やはり何かが違うのだと思う。

 何よりマリリンは可愛い。
 反応が可愛い。
 恥じらう姿は何度でも見てみたい。
 世紀末覇者だが。

 これでマリリンの顔が美女だったら、僕は反応何てしなかっただろう。
 あのバランスさがいいんだ……。


「僕はマリリンだけが好みだからね?」
「知っているが!? まさか、我が嫉妬するとでも!?」
「先に言っておかないと命の保証がなさそうで……」
「おおカズマよ……。もしSランクの彼女たちがカズマを気に入る事があろうものならば、我が拳で屠ってやろう……」
「素敵すぎる……。でも平和的解決を望むよ。僕は血が苦手なんだ」
「ふはははは!! 無論! カズマの見ていない所でキャットファイトだ!!」


 キャットファイトなんて可愛いものではないだろう。
 下手をすれば鉱山が閉鎖になりそうだ……。


「山崩れだけは起こさないでくれ」
「我たちのいう平和的解決は、己の肉体を持って解決するのだ……。安心しろ。彼女たちは我を傷つけたことは一度もない」
「あ、マリリンはあるんだね」
「うむ。彼女たちには半年ほど治療にあたって貰おうと思う」
「わ、わぁ……」


 どうやら最初から治療目的の温泉になりそうだ。いや、それは元からだったが。
 治療魔法が使える人がいるといいんだが……そんな事を思いつつ、僕はハイライトの消えた目で輝く歯を見せるマリリンの笑顔を見つめていた……。
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