妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

うどん五段

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第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!

第34話 狙われるのも慣れてくると、なんとかなるもので

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 その日の夜、マギラーニ宰相から王位継承権第一位だったナラシュランがダリュシアーンの補佐に回る事を聞き、僕は小さく溜息を吐いた。
 十中八九こっちの命を狙ってくるだろうと言う溜息だが、それはマギラーニ宰相も一緒だった。


「恐らくだが……」
「狙ってくるでしょうねぇ」
「なんだ、我の拳がまた赤く染まるのか?」
「恐らく」
「ははは! 我が夫は人気者だな! この前は馬車に細工をされて我が抱えて飛び降りて事なきを得た!」
「そうだね、まさか屋根を突き破って空を飛ぶとは思わなかったよ」
「降りた先がちゃんと屋根の上だったから大丈夫だっただろう?」


 ――その後、屋根が重さに耐えきれず地面に着地したが。
 マリリンの体重に耐えきれる作りの馬車を作っているのに、細工をした人は大変だっただろう。
 そもそも、マリリンを含めジャックもマイケルも重量級だ。
 馬も無論四頭で走らねば泡を吹くレベルである。
 最近は四頭でもきつくなってきたので六頭に増やそうかと言ってるくらいだ。

 マリリンを含めた三人の筋肉量が本当に凄い。
 僕も鍛えてはいるが、彼らと並ぶともやしである。


「その前は王城で毒針を」
「刺されそうになったところをマリリンの腕が伸びて毒針が折れたんだよね」
「我もカズマも錬金術師の作った【あらゆる毒を無効化する腕輪】をつけているが、やはり心配だからな! 我はある程度の毒ならば体から湯気がでて消える!」


 その内人体発火しそうな気がする。
 いや、似たようなことは一度あったが。
 火柱が上がったことはあったが。


「僕はマリリンにあまり無茶をして欲しくないよ」
「所詮王族と言えど持っている武器はミスリル程度……。その上の武器は持っていないのは我の目で既に把握済み。更に言えばドラゴンの爪も通さぬ我の柔肌を傷つける事が出来る筈もなく、我が夫カズマを守れるのは唯一無二の妻である我だけ!」


 頼もしい。実に頼もしいが心配だ、特に相手が。
 後は決して柔肌ではない。ガッチガチだ。


「僕は素敵で大事な妻に守られるのは嬉しいけれど、君が苦しむ姿だけは見たくないからな?」
「カズマっ!」
「唯一無二の妻なんだろう?」
「う、うんっ!」
「僕にも大事にされて愛されてくれ……」
「ウ……ウホッ!」


 思わず真っ赤になりながらいう最後の言葉がソレってないだろう?
 だがそこがマリリンらしいところなのだ。
 カズマは気持ち萎えつつ、だがそこが可愛いと思ってしまっている自分が如何に毒されているのかを確認しつつマリリンの手を取った。


「僕が君を愛していることは理解してくれ」
「わ、解っている!」
「そうか。でも自分の身体を軽視した言葉を言い放ったマリリンには、夜はお仕置きが必要かな?」
「ウホッ!!」
「ん――ごほん!!」
「すみませんマギラーニ宰相」
「すみませんお父様」


 流石に夫婦仲の良さを見せすぎたようだ。
 マギラーニ宰相は顔色を真っ青にして咳き込んでいた。
 自分の娘が「ウホ!」と口にして興奮していたら、そりゃ貴族たるや嫌だろうし、親としても嫌だろう。


「明日からナシュラン様はお見えになるそうだ。気を引き締めて是非仕事を成し遂げてくれ」
「畏まりました。次にするべき書類は作成しております」


 こうして書類を確認するとマギラーニ宰相は驚きつつ感嘆の声を上げて帰っていった。
 次にすべき仕事はそう難しくない事なのだが、この異世界では珍しい事らしい。
 其れの説明もしっかり書いているのだが、やはり珍しい内容だったようだ。


「次にするべきカズマの仕事とはどんなものかは聞いたが、本当に出来る事なのか?」
「ええ、俺のいた世界ではもうなくなってしまったやり方らしいけど、この世界では必要な事だと思っているよ」


 書類に図案も用意していた為アイテムボックスに入れ込み問題はないだろう。
 後はダリュシアーンと話し合いながら決めていけばいい。
 ムギーラ王国は名前の通り麦の産地だ。
 沢山の麦が収穫できるのに、全てが手作業と言うのが全くもって理想的ではない。
 その辺りを改革するための草案だ。
 農地改革にはまだまだ手を付け始めたばかり……これからもっと必要になるだろう。


「何回も改良を重ねれば、魔導具師たちが一斉に作り始めるかもしれないのもある。そうなれば更に時間は短縮できてやるべきことも出来るようになっていく。寧ろ国お抱えの魔導具師が作れば、輸出品としてムギーラ王国の名があがる。大きな仕事になる可能性もあるんだ」
「素晴らしいぞカズマ!!」
「ありがとうマリリン!! その草案を通す為にも邪魔な輩には消えて貰いたいけどね」
「なら屠ろう。我がこの拳で」
「期待してるよ」


 マリリンの足は馬より早い。
 その足から逃げられる人間は、まずいないだろう。
 ジャンプ力ならば城の3階にまで軽々と飛べるだけの筋力もある。
 何という安心感。なんという化物力。そこが魅力的だ。それこそマリリンだ。


「僕は最高に幸せな夫だな……」
「何だ行き成り、当たり前の事だろう?」
「ああ、その当たり前が嬉しいんだ」
「ンン……ウホッ!」
「ふふ、マリリンは可愛いな!」


 そう言ってお互い抱きしめ合う時間。
 無論潰されないかは毎回不安だが、今の所潰されて死んでないのでかなりマリリンが力をセーブしてくれているのだろう。
 こういう気づかいが出来る所も、またマリリンの良さだった。
 世界でたった一人の唯一無二の存在、マリリン。
 だからこそ愛したい、だからこそ守られたい、だからこそ守りたい。


「僕もマリリンに狂ってるなぁ」
「我はとっくに狂っているぞ!」
「そうだったね!」


 クスクス笑う僕を抱きしめたマリリンの腕の中で、明日の仕事がどうなるのか期待半分不安半分……無論マリリンが殺さないかと言う不安だが、そんな気持ちを胸に残りの時間を過ごしたのは彼女には内緒にしておこうと思う。
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