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第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!
第23話 カズマを取り巻く環境は大きく広く
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――マリリンside――
休息の三日の間、我は付きっ切りでカズマの傍に居た。
その間もカズマは新たなる雇用改革の為に、冒険者を引退した者たちに対し、力仕事が主になる老人たちの終の棲家で働けるかの面接内容及び、業務内容を細かく書き示し、研修期間で出来ない者は別途違う方向での雇用ということで試行錯誤していた。
真剣に取り組むカズマに我の乙女心は急上昇どころか限界突破しそうであった。
本来ならば、稼げなくなったり動けなくなった人間と言うのは、捨てられて当たり前。
物乞いして何とか生き延びても、路上で死ぬものも多くいたのだ。
それが、劇的に改善されていく様は、こうやってカズマが生み出しているのだと目の前にして理解すると……。
「うちの夫はやはり国王になるべきでは?」
と、真剣に思うようになっていった。
しかし、カズマは国王になるつもりは毛頭なかったし、実際に我に告げられても首を横に振って、巨大で岩よりも硬い我の手を握りしめた。
「僕は国王になんてなりたくないよ。僕はマリリンの傍で生きていたい。君の隣に居られることが何よりも幸せなのに、国王なんて無理だよ。君を一番に大事に出来なくなるじゃないか」
最早ノックアウトであった。
我は「ンン!!」と堪えながらも鼻血が吹き出しそうになって大変であった。
そんな様子を見ていたジャックとマイケルもまた、男運というか男性から見向きもされず20年生きてきた妹に、これほどまでに愛を囁いてくれるカズマに涙を流し、我の幸せを神に感謝した。
さて、カズマが取り組んだ内容には、レディー・マッスルに関する商売もある。
錬金術アイテムを出来るだけ安価に民衆にも買える値段で売れるものは売り、貴族には品質の差を付けて高く売りつける方法で商売が上手くいき、今ではムギーラ王国の国民の健康度は随分と上がったと言えるだろう。
また、他国からの買い付けも多く、他国からの仕入れ業者専用の窓口を作り、別途料金にて大量販売することにより利益を得ていた。
また、小さな治療院も作り、仕事のない治療師及び、引退した冒険者で治療スキルがあるものが就職することで、軽い怪我ならば安く治療することが可能になった。
また、孤児院にいる子供達にも魔法判定を行い、各スキルに応じて将来なりたい職業に向けての訓練も怠らない。
治療魔法が使える子供たちの半数は、治療院での生活を望んだことも大きかった。
しかし、こうなると子供たちを攫って売りに出そうとする輩も出てくる。
その為の自警団及び警察官の連携は凄まじく、あらゆるスキルを用いて悪徳業者及び、犯罪者には厳しい処罰がされる事が決まっていた。
生活弱者とも言われる老人、子供を守り、雇用を生み出し、苦しんでいる女性を守り、ムギーラ王国は他国からも信用が高く、理想郷と呼ばれるのに時間は掛からなかったが、その貢献がレディー・マッスルのリーダー及び、その婿によるものだと広がると、彼らがムギーラ王国に居てくれる限り、国は安泰だと安心する住民が増えていった。
◆◆◆
「この様に、雇用に関しては今居る人材でも十分足りると言う事です。適合しなかった人材に関しては法を犯さぬ限り警察官及び自警団で務めることが可能になり、国全体が安定すると思います」
「素晴らしい判断だ。このまま陛下に進言し許可を貰おう」
「有難うございます。また、暫くお休みを頂きマリリンとの夫婦の時間を作りたいのですが宜しいでしょうか。そろそろ社交場も開きますのでマリリンに相応しいドレスを今から作りたいと思っているのです」
「ン……うむ」
こと、宰相は実の娘であるマリリンを追放してしまったことが何よりの痛手であったようで、この事は既に他国にも伝わっており、マギラーニ宰相にとっては苦い事でもあったようだ。
「出来れば二週間ほどマリリンと過ごす時間を欲しく思います。最近忙しくマリリンと愛し合う時間が少なかったので」
「そ……そうか。夫婦の時間と言うのは大事だな」
「ええ、とても大事ですね」
「時にカズマ殿は第二夫人を持つ事は、」
「あり得ませんね。私はマリリンだけに一途ですので」
「そうか……」
マギラーニ宰相はカズマに第二夫人を娶らせることで、カズマに宰相の職に就いてもらいたく思っていたようだが、それすらもマリリンへの愛で却下されてしまう。
「暫くマリリンと他国に向かいますが、二週間もすれば帰宅できると思いますので」
「夫婦水入らずでか」
「ええ! 二日ほどはコチラで過ごすでしょうが、やっと愛する妻との時間を持てると思うと人生に張りが出来ますね!」
心の底から嬉しそうに語るカズマに、マギラーニ宰相は溜息を吐いた。
あの娘のどこが本当に気に入ったのか、解らないのだ。
カズマの好みが一般とかけ離れていると言うのが妥当だろうが、実の娘であるマリリンは見た目以外を除けば、心根の優しい娘であったと記憶している。
きっとカズマは心根の優しいマリリンの内面に恋をしたのだろうと勝手に思い至った。
「……この様な事を言うのは親として失格だろうが、君には第二夫人を貰い、我が公爵家を継いでほしいと思っているよ」
「お断りいたします」
「即答だな」
「マリリン以外の女性など、その辺のカボチャと同じですよ。それでは早く愛しい妻に会いたいので失礼致します」
そう言うとカズマは挨拶をしてから部屋を出て行った。
運命的な出会いをしたカズマとマリリンを離すことは難しい……。何か策を考えなくてはとは思うものの、マギラーニ宰相は決定しかねていた……。
◆◆◆
そして、僕がレディー・マッスルに帰宅し、マギラーニ宰相が言っていた「第二夫人」の話をマリリンとジャック、マイケルの前ですると、ギルドの会議室の窓とドアが威圧で吹き飛んだ。
無論、中にあった調度品等見るも無残である。
「カズマに……第二夫人だと……?」
「一体親父は何を考えているのだ!!!」
「カズマとマリリンの相思相愛を知っていればその様な戯言言うはずがない!!」
三人は今にも国を滅ぼさんとしかねない程に怒り狂っていたが、僕は一人紅茶を飲みつつ静かに息を吐いた。
三人の威圧、覇気はここ半年で慣れてしまったのである。
「宰相の地位を継いでほしいと言うのが狙いでしょう。ですが、僕の方からお断りを入れています。これ以上大事な妻との時間を別のカボチャの為に使うなんて勿体ない」
「別のカボチャとは?」
「マリリン以外の僕に群がる女性ですよ。マリリン程の美しい女性を前にすれば、他の女性などカボチャやカブ、キャベツのようなものです」
溜息を吐きながら口にする僕に、マリリンは頬をボッと染めた。
「そ……そうか? 他の娘達とて若ければ美しい者も」
「マリリン以外の女性の見た目だの若さだの、微塵も興味がありません」
「カズマッ」
「それよりそろそろ社交の季節です。一度元の世界に戻り、またマリリンに美しいドレスをプレゼントせねばなりませんね」
既にこの世界では誰もが作ることが出来ないまでのドレスや宝石を持っているマリリンだったが、更に僕はマリリンの為に用意すると言っているのだ。
ジャックとマイケルは「素晴らしき夫婦愛だ」と感涙し、マリリンは顔から炎を吹き出しながら照れていた。
僕が二拠点生活を始めてからというもの、マリリンは角刈りであった髪を伸ばし始め、今ではオシャレなショートヘアーくらいには長くなっていた。
顔は世紀末覇者だが、女性らしい部分も多く出てきたのだ。
無論、筋肉はあの頃より更についてしまったが。
「それに、在庫確認表を見る限り、そろそろ追加で持ってきた方が良さそうなものも多いですし、一度元の世界に戻ろうと思います。マリリンも一緒に付いて来てくれるかい?」
「勿論だとも! たまにはお義父様とお義母様と冒険の話をしてユックリ過ごしたいものだ!」
「じゃあ、明日には二人で向こうの世界にいこう。それまでに今日やるべきことを終わらせて、何度かこちらとあちらを行ったり来たりしながら過ごそうか」
「それもいいな! それとカズマが前々から欲しがっていた温泉も近々こちらでオープンが待っているぞ!」
「楽しみだよ!!!」
新たなるレディー・マッスルの財源となる温泉旅館。
そして、庶民向けの温泉も近々買い取ったムギーラ王国の巨大な山の近くに出来るとなると、楽しみもひとしおだ。
「一緒に新婚旅行にいこうねマリリン」
「もう……これで何度目の新婚旅行だ?」
「そう言って照れてるマリリンは今すぐ食べてしまいたいほど魅力的だよ」
とろけるような僕の声にマリリンは耐えきれず鼻血が出た。
ジャックとマイケルは二人を生暖かく見守り、そのうち温泉宿で二人が一つになった際にマリリンが妊娠すれば、「子宝の湯」として売り出せそうだと考えてしまった。
「じゃあ僕は在庫確認書を鞄に入れて……明日は二人で里帰りしようね」
「ああ、勿論だとも!!」
こうして、マギラーニ宰相の夢、野望をことごとく潰しながら二人はイチャラブのまま、僕の実家に里帰りするのであった。
休息の三日の間、我は付きっ切りでカズマの傍に居た。
その間もカズマは新たなる雇用改革の為に、冒険者を引退した者たちに対し、力仕事が主になる老人たちの終の棲家で働けるかの面接内容及び、業務内容を細かく書き示し、研修期間で出来ない者は別途違う方向での雇用ということで試行錯誤していた。
真剣に取り組むカズマに我の乙女心は急上昇どころか限界突破しそうであった。
本来ならば、稼げなくなったり動けなくなった人間と言うのは、捨てられて当たり前。
物乞いして何とか生き延びても、路上で死ぬものも多くいたのだ。
それが、劇的に改善されていく様は、こうやってカズマが生み出しているのだと目の前にして理解すると……。
「うちの夫はやはり国王になるべきでは?」
と、真剣に思うようになっていった。
しかし、カズマは国王になるつもりは毛頭なかったし、実際に我に告げられても首を横に振って、巨大で岩よりも硬い我の手を握りしめた。
「僕は国王になんてなりたくないよ。僕はマリリンの傍で生きていたい。君の隣に居られることが何よりも幸せなのに、国王なんて無理だよ。君を一番に大事に出来なくなるじゃないか」
最早ノックアウトであった。
我は「ンン!!」と堪えながらも鼻血が吹き出しそうになって大変であった。
そんな様子を見ていたジャックとマイケルもまた、男運というか男性から見向きもされず20年生きてきた妹に、これほどまでに愛を囁いてくれるカズマに涙を流し、我の幸せを神に感謝した。
さて、カズマが取り組んだ内容には、レディー・マッスルに関する商売もある。
錬金術アイテムを出来るだけ安価に民衆にも買える値段で売れるものは売り、貴族には品質の差を付けて高く売りつける方法で商売が上手くいき、今ではムギーラ王国の国民の健康度は随分と上がったと言えるだろう。
また、他国からの買い付けも多く、他国からの仕入れ業者専用の窓口を作り、別途料金にて大量販売することにより利益を得ていた。
また、小さな治療院も作り、仕事のない治療師及び、引退した冒険者で治療スキルがあるものが就職することで、軽い怪我ならば安く治療することが可能になった。
また、孤児院にいる子供達にも魔法判定を行い、各スキルに応じて将来なりたい職業に向けての訓練も怠らない。
治療魔法が使える子供たちの半数は、治療院での生活を望んだことも大きかった。
しかし、こうなると子供たちを攫って売りに出そうとする輩も出てくる。
その為の自警団及び警察官の連携は凄まじく、あらゆるスキルを用いて悪徳業者及び、犯罪者には厳しい処罰がされる事が決まっていた。
生活弱者とも言われる老人、子供を守り、雇用を生み出し、苦しんでいる女性を守り、ムギーラ王国は他国からも信用が高く、理想郷と呼ばれるのに時間は掛からなかったが、その貢献がレディー・マッスルのリーダー及び、その婿によるものだと広がると、彼らがムギーラ王国に居てくれる限り、国は安泰だと安心する住民が増えていった。
◆◆◆
「この様に、雇用に関しては今居る人材でも十分足りると言う事です。適合しなかった人材に関しては法を犯さぬ限り警察官及び自警団で務めることが可能になり、国全体が安定すると思います」
「素晴らしい判断だ。このまま陛下に進言し許可を貰おう」
「有難うございます。また、暫くお休みを頂きマリリンとの夫婦の時間を作りたいのですが宜しいでしょうか。そろそろ社交場も開きますのでマリリンに相応しいドレスを今から作りたいと思っているのです」
「ン……うむ」
こと、宰相は実の娘であるマリリンを追放してしまったことが何よりの痛手であったようで、この事は既に他国にも伝わっており、マギラーニ宰相にとっては苦い事でもあったようだ。
「出来れば二週間ほどマリリンと過ごす時間を欲しく思います。最近忙しくマリリンと愛し合う時間が少なかったので」
「そ……そうか。夫婦の時間と言うのは大事だな」
「ええ、とても大事ですね」
「時にカズマ殿は第二夫人を持つ事は、」
「あり得ませんね。私はマリリンだけに一途ですので」
「そうか……」
マギラーニ宰相はカズマに第二夫人を娶らせることで、カズマに宰相の職に就いてもらいたく思っていたようだが、それすらもマリリンへの愛で却下されてしまう。
「暫くマリリンと他国に向かいますが、二週間もすれば帰宅できると思いますので」
「夫婦水入らずでか」
「ええ! 二日ほどはコチラで過ごすでしょうが、やっと愛する妻との時間を持てると思うと人生に張りが出来ますね!」
心の底から嬉しそうに語るカズマに、マギラーニ宰相は溜息を吐いた。
あの娘のどこが本当に気に入ったのか、解らないのだ。
カズマの好みが一般とかけ離れていると言うのが妥当だろうが、実の娘であるマリリンは見た目以外を除けば、心根の優しい娘であったと記憶している。
きっとカズマは心根の優しいマリリンの内面に恋をしたのだろうと勝手に思い至った。
「……この様な事を言うのは親として失格だろうが、君には第二夫人を貰い、我が公爵家を継いでほしいと思っているよ」
「お断りいたします」
「即答だな」
「マリリン以外の女性など、その辺のカボチャと同じですよ。それでは早く愛しい妻に会いたいので失礼致します」
そう言うとカズマは挨拶をしてから部屋を出て行った。
運命的な出会いをしたカズマとマリリンを離すことは難しい……。何か策を考えなくてはとは思うものの、マギラーニ宰相は決定しかねていた……。
◆◆◆
そして、僕がレディー・マッスルに帰宅し、マギラーニ宰相が言っていた「第二夫人」の話をマリリンとジャック、マイケルの前ですると、ギルドの会議室の窓とドアが威圧で吹き飛んだ。
無論、中にあった調度品等見るも無残である。
「カズマに……第二夫人だと……?」
「一体親父は何を考えているのだ!!!」
「カズマとマリリンの相思相愛を知っていればその様な戯言言うはずがない!!」
三人は今にも国を滅ぼさんとしかねない程に怒り狂っていたが、僕は一人紅茶を飲みつつ静かに息を吐いた。
三人の威圧、覇気はここ半年で慣れてしまったのである。
「宰相の地位を継いでほしいと言うのが狙いでしょう。ですが、僕の方からお断りを入れています。これ以上大事な妻との時間を別のカボチャの為に使うなんて勿体ない」
「別のカボチャとは?」
「マリリン以外の僕に群がる女性ですよ。マリリン程の美しい女性を前にすれば、他の女性などカボチャやカブ、キャベツのようなものです」
溜息を吐きながら口にする僕に、マリリンは頬をボッと染めた。
「そ……そうか? 他の娘達とて若ければ美しい者も」
「マリリン以外の女性の見た目だの若さだの、微塵も興味がありません」
「カズマッ」
「それよりそろそろ社交の季節です。一度元の世界に戻り、またマリリンに美しいドレスをプレゼントせねばなりませんね」
既にこの世界では誰もが作ることが出来ないまでのドレスや宝石を持っているマリリンだったが、更に僕はマリリンの為に用意すると言っているのだ。
ジャックとマイケルは「素晴らしき夫婦愛だ」と感涙し、マリリンは顔から炎を吹き出しながら照れていた。
僕が二拠点生活を始めてからというもの、マリリンは角刈りであった髪を伸ばし始め、今ではオシャレなショートヘアーくらいには長くなっていた。
顔は世紀末覇者だが、女性らしい部分も多く出てきたのだ。
無論、筋肉はあの頃より更についてしまったが。
「それに、在庫確認表を見る限り、そろそろ追加で持ってきた方が良さそうなものも多いですし、一度元の世界に戻ろうと思います。マリリンも一緒に付いて来てくれるかい?」
「勿論だとも! たまにはお義父様とお義母様と冒険の話をしてユックリ過ごしたいものだ!」
「じゃあ、明日には二人で向こうの世界にいこう。それまでに今日やるべきことを終わらせて、何度かこちらとあちらを行ったり来たりしながら過ごそうか」
「それもいいな! それとカズマが前々から欲しがっていた温泉も近々こちらでオープンが待っているぞ!」
「楽しみだよ!!!」
新たなるレディー・マッスルの財源となる温泉旅館。
そして、庶民向けの温泉も近々買い取ったムギーラ王国の巨大な山の近くに出来るとなると、楽しみもひとしおだ。
「一緒に新婚旅行にいこうねマリリン」
「もう……これで何度目の新婚旅行だ?」
「そう言って照れてるマリリンは今すぐ食べてしまいたいほど魅力的だよ」
とろけるような僕の声にマリリンは耐えきれず鼻血が出た。
ジャックとマイケルは二人を生暖かく見守り、そのうち温泉宿で二人が一つになった際にマリリンが妊娠すれば、「子宝の湯」として売り出せそうだと考えてしまった。
「じゃあ僕は在庫確認書を鞄に入れて……明日は二人で里帰りしようね」
「ああ、勿論だとも!!」
こうして、マギラーニ宰相の夢、野望をことごとく潰しながら二人はイチャラブのまま、僕の実家に里帰りするのであった。
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