妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

うどん五段

文字の大きさ
上 下
22 / 73
第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!

第23話 カズマを取り巻く環境は大きく広く

しおりを挟む
 ――マリリンside――


 休息の三日の間、我は付きっ切りでカズマの傍に居た。
 その間もカズマは新たなる雇用改革の為に、冒険者を引退した者たちに対し、力仕事が主になる老人たちの終の棲家で働けるかの面接内容及び、業務内容を細かく書き示し、研修期間で出来ない者は別途違う方向での雇用ということで試行錯誤していた。
 真剣に取り組むカズマに我の乙女心は急上昇どころか限界突破しそうであった。

 本来ならば、稼げなくなったり動けなくなった人間と言うのは、捨てられて当たり前。
 物乞いして何とか生き延びても、路上で死ぬものも多くいたのだ。
 それが、劇的に改善されていく様は、こうやってカズマが生み出しているのだと目の前にして理解すると……。


「うちの夫はやはり国王になるべきでは?」


 と、真剣に思うようになっていった。
 しかし、カズマは国王になるつもりは毛頭なかったし、実際に我に告げられても首を横に振って、巨大で岩よりも硬い我の手を握りしめた。


「僕は国王になんてなりたくないよ。僕はマリリンの傍で生きていたい。君の隣に居られることが何よりも幸せなのに、国王なんて無理だよ。君を一番に大事に出来なくなるじゃないか」


 最早ノックアウトであった。
 我は「ンン!!」と堪えながらも鼻血が吹き出しそうになって大変であった。
 そんな様子を見ていたジャックとマイケルもまた、男運というか男性から見向きもされず20年生きてきた妹に、これほどまでに愛を囁いてくれるカズマに涙を流し、我の幸せを神に感謝した。


 さて、カズマが取り組んだ内容には、レディー・マッスルに関する商売もある。
 錬金術アイテムを出来るだけ安価に民衆にも買える値段で売れるものは売り、貴族には品質の差を付けて高く売りつける方法で商売が上手くいき、今ではムギーラ王国の国民の健康度は随分と上がったと言えるだろう。

 また、他国からの買い付けも多く、他国からの仕入れ業者専用の窓口を作り、別途料金にて大量販売することにより利益を得ていた。
 また、小さな治療院も作り、仕事のない治療師及び、引退した冒険者で治療スキルがあるものが就職することで、軽い怪我ならば安く治療することが可能になった。

 また、孤児院にいる子供達にも魔法判定を行い、各スキルに応じて将来なりたい職業に向けての訓練も怠らない。
 治療魔法が使える子供たちの半数は、治療院での生活を望んだことも大きかった。

 しかし、こうなると子供たちを攫って売りに出そうとする輩も出てくる。
 その為の自警団及び警察官の連携は凄まじく、あらゆるスキルを用いて悪徳業者及び、犯罪者には厳しい処罰がされる事が決まっていた。

 生活弱者とも言われる老人、子供を守り、雇用を生み出し、苦しんでいる女性を守り、ムギーラ王国は他国からも信用が高く、理想郷と呼ばれるのに時間は掛からなかったが、その貢献がレディー・マッスルのリーダー及び、その婿によるものだと広がると、彼らがムギーラ王国に居てくれる限り、国は安泰だと安心する住民が増えていった。


 ◆◆◆


「この様に、雇用に関しては今居る人材でも十分足りると言う事です。適合しなかった人材に関しては法を犯さぬ限り警察官及び自警団で務めることが可能になり、国全体が安定すると思います」
「素晴らしい判断だ。このまま陛下に進言し許可を貰おう」
「有難うございます。また、暫くお休みを頂きマリリンとの夫婦の時間を作りたいのですが宜しいでしょうか。そろそろ社交場も開きますのでマリリンに相応しいドレスを今から作りたいと思っているのです」
「ン……うむ」


 こと、宰相は実の娘であるマリリンを追放してしまったことが何よりの痛手であったようで、この事は既に他国にも伝わっており、マギラーニ宰相にとっては苦い事でもあったようだ。


「出来れば二週間ほどマリリンと過ごす時間を欲しく思います。最近忙しくマリリンと愛し合う時間が少なかったので」
「そ……そうか。夫婦の時間と言うのは大事だな」
「ええ、とても大事ですね」
「時にカズマ殿は第二夫人を持つ事は、」
「あり得ませんね。私はマリリンだけに一途ですので」
「そうか……」


 マギラーニ宰相はカズマに第二夫人を娶らせることで、カズマに宰相の職に就いてもらいたく思っていたようだが、それすらもマリリンへの愛で却下されてしまう。


「暫くマリリンと他国に向かいますが、二週間もすれば帰宅できると思いますので」
「夫婦水入らずでか」
「ええ! 二日ほどはコチラで過ごすでしょうが、やっと愛する妻との時間を持てると思うと人生に張りが出来ますね!」


 心の底から嬉しそうに語るカズマに、マギラーニ宰相は溜息を吐いた。
 あの娘のどこが本当に気に入ったのか、解らないのだ。
 カズマの好みが一般とかけ離れていると言うのが妥当だろうが、実の娘であるマリリンは見た目以外を除けば、心根の優しい娘であったと記憶している。
 きっとカズマは心根の優しいマリリンの内面に恋をしたのだろうと勝手に思い至った。


「……この様な事を言うのは親として失格だろうが、君には第二夫人を貰い、我が公爵家を継いでほしいと思っているよ」
「お断りいたします」
「即答だな」
「マリリン以外の女性など、その辺のカボチャと同じですよ。それでは早く愛しい妻に会いたいので失礼致します」


 そう言うとカズマは挨拶をしてから部屋を出て行った。
 運命的な出会いをしたカズマとマリリンを離すことは難しい……。何か策を考えなくてはとは思うものの、マギラーニ宰相は決定しかねていた……。


 ◆◆◆


 そして、僕がレディー・マッスルに帰宅し、マギラーニ宰相が言っていた「第二夫人」の話をマリリンとジャック、マイケルの前ですると、ギルドの会議室の窓とドアが威圧で吹き飛んだ。
 無論、中にあった調度品等見るも無残である。


「カズマに……第二夫人だと……?」
「一体親父は何を考えているのだ!!!」
「カズマとマリリンの相思相愛を知っていればその様な戯言言うはずがない!!」


 三人は今にも国を滅ぼさんとしかねない程に怒り狂っていたが、僕は一人紅茶を飲みつつ静かに息を吐いた。
 三人の威圧、覇気はここ半年で慣れてしまったのである。


「宰相の地位を継いでほしいと言うのが狙いでしょう。ですが、僕の方からお断りを入れています。これ以上大事な妻との時間を別のカボチャの為に使うなんて勿体ない」
「別のカボチャとは?」
「マリリン以外の僕に群がる女性ですよ。マリリン程の美しい女性を前にすれば、他の女性などカボチャやカブ、キャベツのようなものです」


 溜息を吐きながら口にする僕に、マリリンは頬をボッと染めた。


「そ……そうか? 他の娘達とて若ければ美しい者も」
「マリリン以外の女性の見た目だの若さだの、微塵も興味がありません」
「カズマッ」
「それよりそろそろ社交の季節です。一度元の世界に戻り、またマリリンに美しいドレスをプレゼントせねばなりませんね」


 既にこの世界では誰もが作ることが出来ないまでのドレスや宝石を持っているマリリンだったが、更に僕はマリリンの為に用意すると言っているのだ。
 ジャックとマイケルは「素晴らしき夫婦愛だ」と感涙し、マリリンは顔から炎を吹き出しながら照れていた。

 僕が二拠点生活を始めてからというもの、マリリンは角刈りであった髪を伸ばし始め、今ではオシャレなショートヘアーくらいには長くなっていた。
 顔は世紀末覇者だが、女性らしい部分も多く出てきたのだ。
 無論、筋肉はあの頃より更についてしまったが。


「それに、在庫確認表を見る限り、そろそろ追加で持ってきた方が良さそうなものも多いですし、一度元の世界に戻ろうと思います。マリリンも一緒に付いて来てくれるかい?」
「勿論だとも! たまにはお義父様とお義母様と冒険の話をしてユックリ過ごしたいものだ!」
「じゃあ、明日には二人で向こうの世界にいこう。それまでに今日やるべきことを終わらせて、何度かこちらとあちらを行ったり来たりしながら過ごそうか」
「それもいいな! それとカズマが前々から欲しがっていた温泉も近々こちらでオープンが待っているぞ!」
「楽しみだよ!!!」


 新たなるレディー・マッスルの財源となる温泉旅館。
 そして、庶民向けの温泉も近々買い取ったムギーラ王国の巨大な山の近くに出来るとなると、楽しみもひとしおだ。


「一緒に新婚旅行にいこうねマリリン」
「もう……これで何度目の新婚旅行だ?」
「そう言って照れてるマリリンは今すぐ食べてしまいたいほど魅力的だよ」


 とろけるような僕の声にマリリンは耐えきれず鼻血が出た。
 ジャックとマイケルは二人を生暖かく見守り、そのうち温泉宿で二人が一つになった際にマリリンが妊娠すれば、「子宝の湯」として売り出せそうだと考えてしまった。


「じゃあ僕は在庫確認書を鞄に入れて……明日は二人で里帰りしようね」
「ああ、勿論だとも!!」


 こうして、マギラーニ宰相の夢、野望をことごとく潰しながら二人はイチャラブのまま、僕の実家に里帰りするのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ

鏑木 うりこ
恋愛
 毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。  圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!  なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??  「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。 *ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。 *ご照覧いただけたら幸いです。 *深く考えないでいただけるともっと幸いです。 *作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。 *あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。  マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)  2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)  恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!

処理中です...