妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

うどん五段

文字の大きさ
上 下
14 / 73
第一章 異世界人現る!!

第14話 低姿勢で冒険者の妻を支える夫として

しおりを挟む
【レディー・マッスル】の面々が集まっている大広間にて、マリリンは腕を振り上げ――。


「皆の者! 我は帰ってきたぞ!!!」


 この言葉にギルドは震えんばかりの雄叫びに満ち溢れた。
 そして彼女と一緒にジャックとマイケルと並ぶ僕を見て、一部は驚愕し、一部は目を見張った。


「そして、この我の夫であるカズマだ!」
「こうして皆様に会うのは初めてですね。僕の名はカズマ。皆さんの口にしている食事に関する砂糖や塩と言った調味料及び、シャンプーなどをマリリンに手渡した者……と言えば、皆さんにも伝わりやすいかと思います」


 笑顔口にした言葉に女性陣からも男性陣からも感嘆の声が上がり、尚且つ感謝の言葉が次々に溢れた。
 それもそうだろう。
 このギルドが今までに増して注目されているのは、僕のいた世界からもたらした物による恩恵がとても高いのだから。


「この度、妻と共に僕の故郷に向かい、ギルドで不足してきていた調味料や美容に関する物の追加も大量に持ってきています。是非【レディー・マッスル】の皆さまに使って頂きたく」
「それは有難い。そろそろ在庫が切れ始めていたからな」
「僕のような若輩者が、皆さまが憧れるギルドマスターの夫では不安も大きいでしょうが、出来うる限りギルドの皆さまの為に働き、そして何より、誠心誠意、妻であるマリリリンの為に尽くしていく所存です。どうか皆さま、宜しくお願い致します」


 笑顔で、それでいて低姿勢。
 冒険者としてはマイナスだろうが、英雄の妻を支える夫という立場で言えば合格点だろう。
 一斉に鳴り響いた拍手がその答えだろうと理解すると、その日の内にマイケルさんと話し合って商品の販売に関する内容を纏め、更に明日城に着ていく服を用意され、既製品を何とかマリリンの持つドレスに合わせた形に変えて貰った。

 無論、服を扱う彼らですらマリリンの持つドレスに驚き、何処で手に入れたのかを聞いてきたが、それら全てに関してマリリンは「夫からのプレゼントだ」で通した。
 怒涛の一日だったが、此れもすべて自分の為であり、マリリンの為だ。


 さぁ、明日は城へ向かう事が決まっている。
 少しだけ暴れても問題はないだろう。


 翌朝、着替えを済ませ、マリリンの用意が終わるのを待っていた。
 暫くすると、肉体美を美しく魅せる僕の世界ならではのドレスに身を包み、この世界では余りにも希少価値が高いとされる宝石をさりげなく、それでいて存在感も放ちながら彼女自身を美しく飾り、更に言えば美しく化粧を施した彼女に、ギルド面子は言葉もなく動くことすら出来ない。


「とてもお似合いです。流石は僕の妻ですね」
「はははは! これら全てをプレゼントしてくれた夫には感謝してもしきれんよ!」
「戦う貴女も素敵ですが、美しく着飾った貴女を見たいのも夫の心理ですよ。その為に必要な物でしたら喜んでご用意いたしましょう」
「全く、照れるではないか!」
「ではそんな愛しい妻に一言良いでしょうか?」
「む?」
「……今日の貴女も、他の女性が霞むほどに美しい」


 そう言って僕は自分よりも大きなマリリンの手を取り、軽くキスを落とすと周囲からは黄色い悲鳴が上がった。


「それでは、エスコートさせて頂いても?」
「う……うむ!!」
「お手をどうぞ」


 ――このやり取りを見ていたジャックとマイケルは驚愕しながらも歩き出した。
 ギルドが保有している豪華な馬車に乗り込むと戦場となる城へと走りだす。


 マイケルさんから聞いた、この国の現状。
 一言で言えば、【レディー・マッスル】のギルドがあるからこそ、他国から攻め込まれることなく何とか成り立っている。

 言い換えれば、ギルドが別の国に移動してしまえばこの国は直ぐにでも植民地になっても可笑しくは無いのだ。
 それを理解が出来ないのか、それとも見て見ぬふりをしているのか、女王陛下とマリリンの元婚約者である王配と言うのは余りにも愚かすぎだろう。

 さて、まずは集まっている貴族がどう動くか。
 有名な商人も呼ばれていると言うし、相手次第ではあるが、交渉次第でギルドは更に潤う事になるし、マリリンの名も更に盤石なものになる。

 この国の貴族たちが集まり、その場で毎回行われてきたマリリンへの嫌がらせ。
 それも、今回で終わりにする。
 切れる縁ならばサッサと切ってしまうのが早いし、何より早朝マイケルさんの素晴らしい書面と一緒に、各国にマリリンの結婚は通達済みだ。

 無論――今から向かう場所にも通達は行っている。
「知らぬ、存ぜぬ」は通用しないのだ。

 城に到着すると、大きな門が開き馬車は城の中へと入っていく。
 此処まで来る途中の街中も観ていたが、街中の状況と城の煌びやかさが、余りにもアンバランスに感じる。
 国民からの血税で国のトップが好き勝手している……と言う典型的な姿と言えば解りやすいだろうか。


「随分とこの国のトップは愚かなようですね」


 笑顔で口にした僕にマリリンは驚き、ジャックとマイケルは強く頷いた。


「さて、城の中は敵陣と思っていいでしょうが……マリリンは幸せそうに微笑んで僕の隣に立っているだけで構いませんからね? 他は僕とマイケルさんとでやり合います」
「本当に大丈夫なのか……?」
「僕は、勝ち戦しかしませんよ」


 そう笑顔で言うと馬車は止まり、城への入り口へ到着したようだ。
 先にジャックさんとマイケルさんが降り、次に僕が降りるとエスコートするようにマリリンに手を伸ばした。
 無論、現れたマリリンに城の者たちは驚きを隠せないでいたが、マリリンは幸せそうにカズマの隣に立ち、彼女の歩幅に合わせて会場へと歩いていく。

 ――この異世界には存在しない極上のシルクドレスに身を包んだマリリンは美しく、短い髪であったとしても、その両耳には美しい宝石のついたイヤリング。
 そして、その宝石に合わせたネックレスは光り輝いていた。
 靴に関しても厳選したマリリンの足に合う光沢ある美しい物を履いており、会場に入るなり視線が一斉に集まり会場はざわついた。

 貴族たちが近寄らないのは、今までマリリンにしてきた仕打ちの性か、それとも何かしらの派閥があるのか……。それでも、一部の貴族はマリリンの許へやってきては、ドレスは何処で手に入れられたのか、その宝石は何処で? 等と、マリリン自身を褒めることは一切無く、単純にマリリンが着ている全てが羨ましくてたまらないだけのようだ。
 だが、そんな質問に対してマリリンが口にする言葉はただ一つ。


「これらのドレスも靴も化粧も宝石も、全て夫からのプレゼントですよ」
「夫……ですか?」
「あら、まだ女王陛下から通達がきていないのかしら? 早朝に各国の王家に私の結婚の報告を致しましたのに」


 幸せそうにカズマの細い腕に手を通すマリリンに、貴族の女性たちは顔を引き攣らせていた。
 無論、中には猛者もいて「わたくしにもマリリンさんが着ていらっしゃるようなドレスや宝石を紹介して頂けません?」と聞いてくる輩もいたが――。


「申し訳ありません。私は愛しい妻を美しくして差し上げたくて用意したので、他の女性を美しくする事は妻に失礼ですから出来ません。やはり夫ならば、愛しい妻を更に美しくするために頑張るものでしょうし、あなた様の旦那様はそんな事もして下さらない甲斐性なしなのですか? ……お可哀そうに」

 悲しそうに。
 憐れむように。

 そんな瞳で見られた女性達はカズマ達から去っていった。
 得てしまった悪意を知ることが出来るスキルの所為で、相手の言葉が如何に巧妙な悪意と欲が含まれているのか感じ取れるようになってしまっているようだ。
 商売するには最高のスキルだな~と思っていると、盛大なラッパの音が鳴り、女王陛下と王配が登場したようだ。

 今現在、誰よりも最先端のドレスを身にまとい。
 今現在、誰よりも優れて希少価値の高い宝石を身に着け。
 今現在、誰よりも美しさに気を使っているであろうこの国のピエロ。
 そして、そのピエロの隣で張り付いた笑顔で立っている王配。

 ――さて、どう料理をしてくれようか。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...