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第一章 異世界人現る!!
第12話 マリリンからの愛の告白!?
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「カズマよ……我は帰ってきた!!」
「お帰りマリリン!」
自室で異世界に向かった際に役に立ちそうな交渉術や駆け引き、そして言葉遣いなどを本で読み漁っていた所に、襖が吹っ飛び現れし世紀末覇者……ではなく、マリリン。
読唇術の本も読み漁っており、ここ最近は取得に余念が無い。
「マリちゃん帰ってきたのね!!」
「お帰りマリちゃん!」
「義父様! 義母様! ただいまであります!!」
「お腹空いたでしょう? ご飯食べてく?」
「いただきます!!」
こうして、久々に帰ってきたマリリンと一緒に食卓を囲むことになった。
家にマリリンがいると両親はとても喜ぶ。
実際彼女が異世界に戻っている間は「怪我をしていないだろうか」や「病気をしていないか」等と毎日心配していたのだ。
認めたくないけれど……僕も心配していた。
アレだけ素直なマリリンだと、周りからいい様に使われているのではないだろうか? とか、騙されて影で泣いていないだろうか……など、僕らしくもない。
それでも、笑顔のマリリンが帰ってきてくれたことでホッとしたのも事実で。
「マリちゃんが使っている食器とお箸。カズマが選んだのよ」
「なんと!?」
「何時までも客用じゃダメじゃないかっていってね」
「――カズマ!! ありがとう!!」
「どういたしまして」
素っ気なく返したものの、マリリンはこの上なく嬉しそうで、必死に選んだ甲斐があったと思った。
確かにマリリンに薔薇のような美しさは無い。寧ろ、棘のあるような花は彼女には似合わない。
かといって素朴な花は似合わない。
まるで太陽のような彼女へ大輪のヒマワリの食器を選んだ。
子供っぽくもなく、けれど、純粋に元気で優しい花を。
何時ものように風呂に入り、家族揃ってからマリリンからの異世界での報告を聞くことにした。
どうやら異世界では砂糖も塩もかなりの金額になり、金貨が溢れかえる状態になったらしい。特に美容に関しては城から使いが来るほどにマリリンのギルドは注目の的だそうだ。
「調味料に関しては、ある程度の大量購入は可能だ。シャンプーやトリートメントもある程度は可能だろうな」
「幸いマリちゃんがオリハルコンを換金してくれたお金で大量に調味料を持って行って貰ったし」
「では、これからも必要なだけオリハルコンでもなんでもこちらで換金しよう! そのお金があれば、我のいる世界でも粗悪な調味料ではなく、せめてギルドがある国の住民が幸せになってくれるかもしれない!」
「いや、それは待った方がいい」
盛り上がる両親とマリリンを止めたのは僕だった。
「確かに、ある一定の大量購入は可能。けれど、それを一般にまで広げるには、普通の会社員の我が家では悪目立ちすぎる。どこで何が漏れるか解らない」
「それは……そうね」
「だから、商品に価値をつけるんだ。一般市民が食べたいのならマリリンの要るギルドにレストランを作り、そこで食べて貰えばいい。月に一度の贅沢と思えば、多少なりと行けるだろう? それでも調味料が欲しい貴族や商家、王族には値段を吹っ掛けて無理のない範囲で売ればいい。無論……今後も付き合いたい人間によるけどね?」
これも処世術の一つだ。
おいそれとマリリンに手を出せないように、そして【レディー・マッスル】が如何に素晴らしいギルドだと知らしめる為の、今の地位を盤石にする為のものだった。
「確かに希少価値をつけるのは大事だが……」
「化粧品だってなんだって、一般家庭が大量購入を何度も繰り返すのは不自然だ。だからこその希少価値を異世界につけて売る。そして、その販売を手掛けるのは【レディー・マッスル】と言うギルドのみ。そうすることで、他の国々もマリリンをもっと大事にするだろう?」
「カズマ……」
「人間どこでしがらみがあるか解らないんだ。要らないしがらみならば、ここで切ってしまえばいい。良い縁ならば、手に入れればいい。それだけの話だろう?」
そう言って茶を啜る僕に家族は「なるほど」と口にし、マリリンも少し悩んだ後、口を開いた。
「ならば、それらの責任者はカズマと言う事にしても?」
「それでマリリンが満足するのなら構わないよ。ただ、僕のような者が、悪知恵働く異世界人相手にどこまで戦えるかは分からないけどね」
「それなら、秘書として兄の友人であるマイケルをつけよう。二人でタッグを組めばいい」
「ああ、あちらの世界の住人が間に入ってくれるなら助かるかな……。販売戦略を色々話し合いたい相手も欲しかったしね」
「カズマを……っ! 我の夫と……言う事にしても?」
……思いがけない、いや、ある程度覚悟はしていた言葉にマリリンを見つめると、彼女の瞳は不安で揺れているのが分かった。
「……僕の事が好き、意外での理由を聞きたい」
「……それも……そうだな」
何時ものマリリンに似つかわしくない表情だったが、事情を聴かねば納得できない。
情報とは時に武器になるからだ。
苦しい内容であれば、辛い内容であれば、僕にも何かが出来るかもしれない。そう思い僕はマリリンの言葉に耳を傾けた。
◇
簡単に言うならば、マリリン兄妹は、元は公爵家の人間だった。
だが、マリリンの婚約者はマリリンを捨て、今はとある国……マリリンのギルドがある国の王配についている事。
そして、国からの依頼で危険な仕事や汚い仕事をしても、金の支払いが一切ない事。
更に言えば、彼氏のできぬマリリンを城に呼び出して、まるで公開処刑の様なマリリンへ対する、嫌がらせ行為。
これだけでギルティな訳だが――。
余りにも表情が抜け落ちた僕にマリリンは目を見開き息を呑んだ。
「取り敢えず、調べてきて欲しかった依頼に関しては完璧だよマリリン。本当にありがとう」
「……あ、ああ。役に立てて良かったよ」
「これだけの金額があった場合、そっちで生活する分には苦労はしなさそうだし、出来る事ならお金を預ける場所があったり、僕もマリリンのように異世界に行ったら空間魔法が使えたらいいんだけどね」
「なら、今度一緒に異世界にいってみるかい?」
「そうだね。この際、僕も腹を決めて【マリリンの夫】として異世界で振る舞ってみようと思う」
思わぬ言葉だったのだろう。と言うか、頼んでおきながら驚く方が傷つくんだけど、とは思ったが、僕はマリリンの柔らかい髪を撫でて微笑んだ。
「僕も手に入れられるスキルって興味があるからね。マリリンを助けられるスキルが貰えればいいけれど、何も貰えなかったら悲しいな」
「大丈夫だ。あちらの世界では必ず何かしらのスキルを手に入れることが出来る筈だからな」
「出来れば血を見ないようなスキルが欲しいと切に願うよ」
こうして、今度の大型連休に異世界に一度行ってみることにした。
その際には幾つかの足りなくなってきていると言う調味料系や美容関係の物も持っていこう。
後は……マリリンの兄であるジャックさんと、今後お世話になるであろうマイケルさんへの贈り物も用意しないといけないなと思いながら、スッカリ冷たくなったお茶を喉に流し込んだ。
「お帰りマリリン!」
自室で異世界に向かった際に役に立ちそうな交渉術や駆け引き、そして言葉遣いなどを本で読み漁っていた所に、襖が吹っ飛び現れし世紀末覇者……ではなく、マリリン。
読唇術の本も読み漁っており、ここ最近は取得に余念が無い。
「マリちゃん帰ってきたのね!!」
「お帰りマリちゃん!」
「義父様! 義母様! ただいまであります!!」
「お腹空いたでしょう? ご飯食べてく?」
「いただきます!!」
こうして、久々に帰ってきたマリリンと一緒に食卓を囲むことになった。
家にマリリンがいると両親はとても喜ぶ。
実際彼女が異世界に戻っている間は「怪我をしていないだろうか」や「病気をしていないか」等と毎日心配していたのだ。
認めたくないけれど……僕も心配していた。
アレだけ素直なマリリンだと、周りからいい様に使われているのではないだろうか? とか、騙されて影で泣いていないだろうか……など、僕らしくもない。
それでも、笑顔のマリリンが帰ってきてくれたことでホッとしたのも事実で。
「マリちゃんが使っている食器とお箸。カズマが選んだのよ」
「なんと!?」
「何時までも客用じゃダメじゃないかっていってね」
「――カズマ!! ありがとう!!」
「どういたしまして」
素っ気なく返したものの、マリリンはこの上なく嬉しそうで、必死に選んだ甲斐があったと思った。
確かにマリリンに薔薇のような美しさは無い。寧ろ、棘のあるような花は彼女には似合わない。
かといって素朴な花は似合わない。
まるで太陽のような彼女へ大輪のヒマワリの食器を選んだ。
子供っぽくもなく、けれど、純粋に元気で優しい花を。
何時ものように風呂に入り、家族揃ってからマリリンからの異世界での報告を聞くことにした。
どうやら異世界では砂糖も塩もかなりの金額になり、金貨が溢れかえる状態になったらしい。特に美容に関しては城から使いが来るほどにマリリンのギルドは注目の的だそうだ。
「調味料に関しては、ある程度の大量購入は可能だ。シャンプーやトリートメントもある程度は可能だろうな」
「幸いマリちゃんがオリハルコンを換金してくれたお金で大量に調味料を持って行って貰ったし」
「では、これからも必要なだけオリハルコンでもなんでもこちらで換金しよう! そのお金があれば、我のいる世界でも粗悪な調味料ではなく、せめてギルドがある国の住民が幸せになってくれるかもしれない!」
「いや、それは待った方がいい」
盛り上がる両親とマリリンを止めたのは僕だった。
「確かに、ある一定の大量購入は可能。けれど、それを一般にまで広げるには、普通の会社員の我が家では悪目立ちすぎる。どこで何が漏れるか解らない」
「それは……そうね」
「だから、商品に価値をつけるんだ。一般市民が食べたいのならマリリンの要るギルドにレストランを作り、そこで食べて貰えばいい。月に一度の贅沢と思えば、多少なりと行けるだろう? それでも調味料が欲しい貴族や商家、王族には値段を吹っ掛けて無理のない範囲で売ればいい。無論……今後も付き合いたい人間によるけどね?」
これも処世術の一つだ。
おいそれとマリリンに手を出せないように、そして【レディー・マッスル】が如何に素晴らしいギルドだと知らしめる為の、今の地位を盤石にする為のものだった。
「確かに希少価値をつけるのは大事だが……」
「化粧品だってなんだって、一般家庭が大量購入を何度も繰り返すのは不自然だ。だからこその希少価値を異世界につけて売る。そして、その販売を手掛けるのは【レディー・マッスル】と言うギルドのみ。そうすることで、他の国々もマリリンをもっと大事にするだろう?」
「カズマ……」
「人間どこでしがらみがあるか解らないんだ。要らないしがらみならば、ここで切ってしまえばいい。良い縁ならば、手に入れればいい。それだけの話だろう?」
そう言って茶を啜る僕に家族は「なるほど」と口にし、マリリンも少し悩んだ後、口を開いた。
「ならば、それらの責任者はカズマと言う事にしても?」
「それでマリリンが満足するのなら構わないよ。ただ、僕のような者が、悪知恵働く異世界人相手にどこまで戦えるかは分からないけどね」
「それなら、秘書として兄の友人であるマイケルをつけよう。二人でタッグを組めばいい」
「ああ、あちらの世界の住人が間に入ってくれるなら助かるかな……。販売戦略を色々話し合いたい相手も欲しかったしね」
「カズマを……っ! 我の夫と……言う事にしても?」
……思いがけない、いや、ある程度覚悟はしていた言葉にマリリンを見つめると、彼女の瞳は不安で揺れているのが分かった。
「……僕の事が好き、意外での理由を聞きたい」
「……それも……そうだな」
何時ものマリリンに似つかわしくない表情だったが、事情を聴かねば納得できない。
情報とは時に武器になるからだ。
苦しい内容であれば、辛い内容であれば、僕にも何かが出来るかもしれない。そう思い僕はマリリンの言葉に耳を傾けた。
◇
簡単に言うならば、マリリン兄妹は、元は公爵家の人間だった。
だが、マリリンの婚約者はマリリンを捨て、今はとある国……マリリンのギルドがある国の王配についている事。
そして、国からの依頼で危険な仕事や汚い仕事をしても、金の支払いが一切ない事。
更に言えば、彼氏のできぬマリリンを城に呼び出して、まるで公開処刑の様なマリリンへ対する、嫌がらせ行為。
これだけでギルティな訳だが――。
余りにも表情が抜け落ちた僕にマリリンは目を見開き息を呑んだ。
「取り敢えず、調べてきて欲しかった依頼に関しては完璧だよマリリン。本当にありがとう」
「……あ、ああ。役に立てて良かったよ」
「これだけの金額があった場合、そっちで生活する分には苦労はしなさそうだし、出来る事ならお金を預ける場所があったり、僕もマリリンのように異世界に行ったら空間魔法が使えたらいいんだけどね」
「なら、今度一緒に異世界にいってみるかい?」
「そうだね。この際、僕も腹を決めて【マリリンの夫】として異世界で振る舞ってみようと思う」
思わぬ言葉だったのだろう。と言うか、頼んでおきながら驚く方が傷つくんだけど、とは思ったが、僕はマリリンの柔らかい髪を撫でて微笑んだ。
「僕も手に入れられるスキルって興味があるからね。マリリンを助けられるスキルが貰えればいいけれど、何も貰えなかったら悲しいな」
「大丈夫だ。あちらの世界では必ず何かしらのスキルを手に入れることが出来る筈だからな」
「出来れば血を見ないようなスキルが欲しいと切に願うよ」
こうして、今度の大型連休に異世界に一度行ってみることにした。
その際には幾つかの足りなくなってきていると言う調味料系や美容関係の物も持っていこう。
後は……マリリンの兄であるジャックさんと、今後お世話になるであろうマイケルさんへの贈り物も用意しないといけないなと思いながら、スッカリ冷たくなったお茶を喉に流し込んだ。
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