妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

うどん五段

文字の大きさ
上 下
11 / 73
第一章 異世界人現る!!

第11話  怒涛の仕事を終え、愛しのカズマの元へ戻ろうとしたのに

しおりを挟む
 ――マリリンside――


 その後も我は気持ちを奮い立たせ、カズマの家族から頼まれていた化粧品を含む主婦や女性に嬉しいアイテム等の換金を行い、それらを取得した日本語でノートに記録した。

 それらの全てが高額なもので、特に我が使用していた化粧品やシャンプーやトリートメントに至っては、とんでもない金額が付き、如何に異世界で……いや、我の義実家となる家族から如何に大事にされているのかを改めて知った兄、ジャックは泣き崩れた。

 換金はしていないが、我が異世界から持ってきた服装には、兄とマイケルは興味津々に見つめていた。
 なんと、お義母様はネットの力をフルに使い、我の体系にあう女性用の美しい服装から靴から買い与え、更に言えば、普段着や普段靴も女性らしい服装の物を用意してくれていたのだ。

 それら全てはこの世界では斬新であり、スタイリッシュであり、とても美しく、尚且つこちらの世界で作ろうとしても絶対に作ることのできない生地であり、おしゃれ着に関しては、女王陛下が欲しても手に入れることは不可能だろう。


「マリリン……お前は嫁ぎ先でこんなにも良くして貰って……本当に幸せ者だな」
「ああ……あんなクズ男と結婚しなくて良かったと思っている」
「だが、このドレスで公爵家に戻ればご両親は驚くんじゃないか?」
「そうだな、そんな時が来れば会いに行ってやらなくもない」


 そう言って金平糖を口に運んだ我は至福の笑みを浮かべ、暫くするとカズマの事を思い浮かべた。
 恋する世紀末覇者……ではなく、恋する乙女の表情でウットリとした。


「カズマ様がこちらにお越しになった際には、我々も丁重にお迎えせねばな」
「ああ、それにこれだけの物を此方の世界にもたらしてくれると言うのならば、それなりに契約も必要となるだろう」
「ああ、そうだそうだ。義母様と義父様から、個人的に渡されているものがあるんだ。我がギルドマスターだと話をしていたんだがね。こちらの世界に戻った際、質の悪い調味料で我が体調を崩しては大変だと言われてな!」


 そう言うと、複数の段ボールが空間魔法からドンドンと床に降ってくると、そこには先ほど恐ろしい値段の付いた砂糖や塩、そして胡椒等の調味料が大量に入っていた。
 これぞ、カズマ両親が使ったネットを使っての箱買いである。
 運んだのは無論、我だが。


「義実家はお前の体の事をここまで気を使ってくださるのか!!」
「これだけあれば、ある程度のギルド面子たちにも美味しい料理が口に入るだろう? 士気の向上にも素晴らしいとは思わんかね?」
「「マリリン……なんて良い子」」


 オリハルコン1つの値段を少し使わせて貰い、義両親が我の士気向上の為にも購入して下さった。
 直ぐに料理長及び副料理長が呼ばれ、目にした品質最高級の調味料に腰を抜かし、その日の夕飯から質の悪い調味料は使われなくなるのは言うまでも無い訳だが。

 無論、それだけではない。
 女性風呂と男性風呂には、使用方法を書いた異世界の石鹸が用意され、シャンプーとコンディショナーが備え付けられ、脱衣所には我が使っているものよりは質は落ちるが、化粧水や乳液が用意され、男性陣の元には清涼感溢れる化粧品が置かれるようになった。

 そして、それらがギルドの外に話のタネとして広がり始める頃、我は溜まっていた仕事を終え、異世界へ戻ろうとしていたのだが――。



「なに? 至急王城へ来いと?」


 いざ、愛しのカズマの許へ!!! と息巻いていた我に、会いたくもない女王の使いがやってきたのだ。
 その王城には――王配として元婚約者がいるのだが、それをネタに依頼料の支払いをずっと行っていないのだ。
 タダでさえギルド面子が命がけで行う依頼でも金を支払わないその城へ向かう事はイライラするというのに、いま、まさにカズマに会いに行こうとしていた我は怒りに狂いそうだった。
 だが、考えてみれば我は忙しい身だ。
 何時もギルドにマリリンがいるとは限らない訳で。


「使者には俺が相手をしよう。マリリンは今留守にしていると。戻ってきた暁にはご連絡すると言ってくる。マリリンは寝る間も惜しんで仕事をしたんだ……カズマ様の許へ迎え」
「兄さん……」
「なぁに、何か言われれば、マリリンは愛しい夫とラブラブの旅行に出かけていると言ってくるさ」
「頼む!」


 我と兄が強い握手をすると、城の使者に見つからぬよう自室へと戻り、我はカズマの待つ異世界への鏡へと入っていった。
 それを見届けた兄とマイケルは我の部屋に厳重な封印魔法を掛け、王宮魔導士ですら封印を解くことが出来ないレベルのモノを掛けたのだ。
 封印を解くことができるのは――我と兄達のみ。
 我を見守ってきた兄とマイケルは、我の今後の幸せを真っ先に守ったのである。
 ――二人とも、感謝する!!


 ◆◆◆


 使者は、高級な応接室で待っていた。
 高飛車で気位の高いあの城の者に相応しい、世界屈指のギルドに対し威圧的な態度の使者に対し、ジャックとマイケルが部屋に入ると、使者は眉を寄せ「ギルドマスター殿は?」と開口一番に口にした。


「申し訳ございません。マリリンは現在不在でして」
「ああ、今度はどんな魔物相手に拳を振るっていらっしゃるのかな? まぁ、世界中から依頼が舞い込んでくるギルドですからね。しかし困りましたな……陛下のご命令で来たのですが」
「どのようなご用件でしょう」
「最近ギルドマスター様はお忙しいのか、全く城にお越しにならないので、ご心配なさっているのですよ。恋の一つも成就できないお姿を見て悲しんでいらっしゃいます」


 ――どの口が言うか。
 そう俺は思ったが、あくまで笑顔で対応する。


「それは、ご心配頂き有難うございます」
「それで、御用はそれだけでしょうか?」
「いえいえ、最近こちらのギルドの男性も女性も美しくなったと評判でね。美しさとはやはり女王陛下にこそ必要な事……。その秘密とでも申しましょうか? 買えるものであれば手に入れてこいと言われましてね」
「なるほど、なるほど」
「実は、お売りすることは出来ないのですよ。お作りすることも今は無理でして」


 ニッコリと笑顔で使者に伝えると、使者は顔を真っ赤にして言葉を出そうと踏ん張っているようだった。何とも面白い光景だ。


「では、一体どこで手に入れたのかは」
「その情報に対し、そちらはどれ程の金銭を支払いできるんですかね? 今までのたまりにたまったツケもまだ支払ってもらっていませんので、お話ししたくても、とてもとても」
「――では! ギルドマスターがお戻りになったら直ぐに城に来るようにお伝えください!!」
「戻ってくるのは、暫く掛かるかもしれません」
「なんだって!?」
「申し訳ありません。妹のマリリンは現在、夫とラブラブ旅行中でして。何時帰ってくるとも聞いていないのですよ」


 俺の言葉に使者は驚きの表情をそのままに固まった。
 それもそうだろう。
 マリリンに彼氏どころか、夫が出来たと言えば驚きもするだろう。


「ですので、ちゃんとした日時と言うものが分からず……申し訳ありません」
「ですが喜ばしい事ですよね。世界屈指のギルドマスターであり、世界最強で唯一英雄の称号を持つ冒険者であるマリリンに、やっと心から互いに愛し合える男性が出来たのですから! 旅行から帰ってきて暫くすれば、全世界にこの事を通達する予定だったのですが。本当に今からどれ程のお祝いの品が届くのか楽しみです」
「――失礼する!!」


 お祝いの言葉もない。
 使者は逃げるように応接室を出ていき、二人は鼻を鳴らして美味しくもないこの世界の紅茶を飲んだ。
 さて、マリリンの元婚約者である彼は、この話を聞いてどう動くだろうか。

 願わくば、カズマ様が素晴らしい交渉術を持っていて、マリリンをサポートしてくれるだけの男性であることを切に願うばかりである。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...