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第一章 異世界人現る!!
第8話 マリリンの猛烈な愛の抱擁を避けつつ応援する!
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――マリリンside――
――翌日の日曜。
我はカズマの両親から受け取ったこちらの世界の一般的な調味料及び嗜好品、そして美容関連の物をアイテムボックスに入れ込み、こちらに来た時と同じ格好で納屋の二階へと向かった。
無論、カズマも両親も我を見送る為にやってきた。
「出来るだけ早く戻ってくる予定ではあるが、あちらの世界で溜まっている仕事もあるかも知れない……。だから、絶対に一週間後には戻ってくる予定だ。何が何でも!!」
そう息巻く我だったが、カズマは首を横に振り我に歩み寄った。
「確かに早く戻ってきて報告を聞きたい気持ちはある。でも、我は世界屈指の冒険者であり、ギルド【レディー・マッスル】のリーダーだろう? 仕事を疎かにするんじゃない」
「カズマ……」
「それに、仕事をしている女性って格好いいって思うしな。だから、頑張って仕事を終わらせて、またこっちに帰ってくるといい。約束してくれるよな?」
愛しいカズマにお願いされてしまえば頷くしかない。
ましてや働く女性は格好いいとさえ言われてしまっては、漲るパワーをそのままに一気に仕事を終わらせるどころか、各国から来ているであろう魔物討伐も瞬時に終わらせられるほどに我の心は滾った。
そう、我は帰ってくるのだ……愛しい夫の許へ!!
「それと、コレ……俺からの応援を込めて」
「これは?」
「異世界に行ってから見てみるといい。昨日マリリンの為に買ってきたプレゼントだよ」
兄のジャックとその友人マイケル以外で、初めて男性からプレゼントを貰った我は、両手にスッポリ入ったピンクの可愛らしい袋で丁寧に包装されているプレゼントを見つめ激しくバイブレーションである。
「カッ カズマ――!!!」
雄叫びと同時に我は筋肉隆々の腕を広げカズマを抱きしめようと襲い掛かった!!
しかし、今日この時の為にあらゆる我の行動を予測し、どう生き延びるかをシュミレーションしまくっていたカズマは、すんでのところで骨を粉砕するであろう抱擁から逃げきった!!
舞い散る埃と風圧で飛ばされる納屋の荷物、それがマリリンの抱擁の強さを表していた。
「ぬぐぅ……我の抱擁を避けるとは……」
「マリリン、君にしか頼めない事なんだ。良い知らせを待ってるよ」
優しい笑顔で我に手を振ったカズマに我は強く頷いた。
実に素直である。
名残惜しかったものの、我は騎士のように挨拶をすると鏡の中へと入っていった。
◆◆◆◆
実際こうして異世界へ繋がっていることを理解すると両親は少し興奮していたが、僕はこれからの人生設計を考え直すべきだなと冷静に考えていた。
そもそも、異世界人はマリリンのように素直な人間ばかりではないだろう。
あちらの世界がどんな状況にあるのかも掴めてはいない。
「色々慎重に……足元をすくわれない様に行動しないと不利になるな」
小さく呟いた言葉は両親には聞こえなかったようだが、その日から僕は交渉術や経済学等の参考書を購入し、出来うる限りの自分に出来る知識的な防御を固めることにしたのだった。
――翌日の日曜。
我はカズマの両親から受け取ったこちらの世界の一般的な調味料及び嗜好品、そして美容関連の物をアイテムボックスに入れ込み、こちらに来た時と同じ格好で納屋の二階へと向かった。
無論、カズマも両親も我を見送る為にやってきた。
「出来るだけ早く戻ってくる予定ではあるが、あちらの世界で溜まっている仕事もあるかも知れない……。だから、絶対に一週間後には戻ってくる予定だ。何が何でも!!」
そう息巻く我だったが、カズマは首を横に振り我に歩み寄った。
「確かに早く戻ってきて報告を聞きたい気持ちはある。でも、我は世界屈指の冒険者であり、ギルド【レディー・マッスル】のリーダーだろう? 仕事を疎かにするんじゃない」
「カズマ……」
「それに、仕事をしている女性って格好いいって思うしな。だから、頑張って仕事を終わらせて、またこっちに帰ってくるといい。約束してくれるよな?」
愛しいカズマにお願いされてしまえば頷くしかない。
ましてや働く女性は格好いいとさえ言われてしまっては、漲るパワーをそのままに一気に仕事を終わらせるどころか、各国から来ているであろう魔物討伐も瞬時に終わらせられるほどに我の心は滾った。
そう、我は帰ってくるのだ……愛しい夫の許へ!!
「それと、コレ……俺からの応援を込めて」
「これは?」
「異世界に行ってから見てみるといい。昨日マリリンの為に買ってきたプレゼントだよ」
兄のジャックとその友人マイケル以外で、初めて男性からプレゼントを貰った我は、両手にスッポリ入ったピンクの可愛らしい袋で丁寧に包装されているプレゼントを見つめ激しくバイブレーションである。
「カッ カズマ――!!!」
雄叫びと同時に我は筋肉隆々の腕を広げカズマを抱きしめようと襲い掛かった!!
しかし、今日この時の為にあらゆる我の行動を予測し、どう生き延びるかをシュミレーションしまくっていたカズマは、すんでのところで骨を粉砕するであろう抱擁から逃げきった!!
舞い散る埃と風圧で飛ばされる納屋の荷物、それがマリリンの抱擁の強さを表していた。
「ぬぐぅ……我の抱擁を避けるとは……」
「マリリン、君にしか頼めない事なんだ。良い知らせを待ってるよ」
優しい笑顔で我に手を振ったカズマに我は強く頷いた。
実に素直である。
名残惜しかったものの、我は騎士のように挨拶をすると鏡の中へと入っていった。
◆◆◆◆
実際こうして異世界へ繋がっていることを理解すると両親は少し興奮していたが、僕はこれからの人生設計を考え直すべきだなと冷静に考えていた。
そもそも、異世界人はマリリンのように素直な人間ばかりではないだろう。
あちらの世界がどんな状況にあるのかも掴めてはいない。
「色々慎重に……足元をすくわれない様に行動しないと不利になるな」
小さく呟いた言葉は両親には聞こえなかったようだが、その日から僕は交渉術や経済学等の参考書を購入し、出来うる限りの自分に出来る知識的な防御を固めることにしたのだった。
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