上 下
5 / 66
第一章 異世界人現る!!

第5話 ヒモにしたいマリリンと、ヒモになりたくないカズマの攻防戦

しおりを挟む
 そして僕とマリリンは、一応最後となる、魔物素材の換金へと移行した。
 この際に僕が指示を出した事は幾つかある。
 まず、ドラゴン系の素材を換金しない事。絶対にとんでもない金額になるのが分かっているからだ。次に精霊系や妖精系に関するアイテムも禁止した。
 僕が求める魔物系のアイテムは、マリリンのような異世界最強冒険者が倒せるような魔物ではなく、低ランクの冒険者でも倒して異世界で換金しているようなアイテムに限定したのだ。


「低ランク冒険者が倒すような魔物か……そう言った弱い魔物は我を見ると瞬時に逃げてしまうから、アイテムボックスに素材が入っているかどうか……」
「それもそうか……。もし仮に、僕が異世界に行ったとき倒すことが可能な魔物の素材が良かったんだけれど、中々手に入れることは難しそうだな。そもそも僕は異世界の通貨を持っていないから装備を整えるのも難しいか」
「何を言うんだカズマ! 君の装備品から生活用品から衣食住の全てを我のポケットマネーと権力で何とでも揃えることは簡単な事なのに!」
「僕は絶対に屈しないぞ……僕を意地でもヒモにしたがるマリリンには屈しないからな!」


 異世界でも日本でも独り立ちしたい僕と、異世界と日本の両方でヒモにしたいマリリンとの間で火花が散っているが、両者にとって譲れない線引きと言う物があるのだ。
 結局、低レベルの冒険者が生活するために稼ぐ魔物関連のアイテムをマリリンは持っておらず、機会があれば換金してみようと言う事で落ち着いた。

 こうなると、今度は僕の世界のアイテムが、マリリンの住む異世界で換金した場合、金額がどう変化するのかという問題になる。
 僕なりに母のおススメ作品である異世界系の本は読み漁っていた事もあり、大体の目星は付いていた。
 消耗品から日用品、スパイスから酒類……。
 そもそも、異世界とこちらとの嗜好品なんかの価値が違う事を、一週間の間にカズマは観察しきっていた。


「僕がマリリンに頼んで異世界で換金を頼みたいアイテムは、幾つかあるんだ」
「カズマが我を頼ってくれるとは……。もう死んでもいい……」
「いや、死なれたら困るから聞いて欲しい。僕の好奇心が満たされないままになるじゃないか」
「その知的な学者的考えが大好物です!」
「ありがとう。さて、マリリンの反応を観察するに、異世界では綺麗な砂糖や塩といった物が余り見ることが出来ないんじゃないかな? あるにはあっても一般的に異世界中に広がっているというモノでもなさそうだ」
「その通りだな!」
「そして、嗜好品としては珈琲や紅茶といったものに関して、異世界最高峰であるマリリンは驚いていた……。つまり、こちらで一般的にどこにでも売られている珈琲や紅茶と言うのは贅沢品に違いないと推測する」
「ご名答!!」


 無論それだけではない。
 チョコレートや飴といった甘いものも異世界では中々手に入らない物なのだろう。マリリンは家にいる際、よく飴玉を母から貰っては喜んでいた。
 しかし、休職中のカズマ僕で買えるものなど知れている。ここは家族の助けを求めるしかないだろうと判断した。
 それに、偏った異世界小説知識では、何が一番高そうなのか想像がつかなかったのだ……。
 そこで――斎藤家の家族会議を開く事にした。


「マリリンに持って行って換金してもらうアイテムを選抜する相談をしたいと思います。お金の出資も求めます」
「こちらのアイテムが異世界で幾らになるのか調べるのは楽しそうだな。父さんも協力しよう」
「お母さんも協力するわ~!」
「ちなみに、マリリンが異世界から持ち込んでいたオリハルコンは、1つ30億となりまして、家の大広間にて30億が鎮座しています。そのお金の管理方法などのご相談もお願いします」


 夕食も終わり、両親とマリリンとで珈琲タイムを過ごしている時に相談すると、父はお気に入りだといって大事にし続けてきたコーヒーカップを床に落として割り、母は「オリハルコン……流石レア素材ね」と滅多に見せない真剣な表情をしていた。


「お金の管理は、お母さんと二人で話し合って決めよう」
「ありがとう父さん」
「それで、マリちゃんに異世界で換金して貰うアイテムね?」
「僕の持ちうる知識では、何が高そうなのか把握しきれなくて」
「そうねぇ……単純にドンと稼ぐなら車かしら? けど、それだとこちらの世界でも色々と不便が生じるから、車以外の物がいいわよね……? となると……」


 そう口にすると母はノートを取り出し、一心不乱に思いつく限りの異世界で通用しそうなアイテムを書きだし始めた。
 ちょいちょい父も口をはさみつつ、ザッと書き上げたものを読ませてもらうと、やはり砂糖や塩と言った調味料は無論のこと、飲み物や食べ物に関する嗜好品、更にはキャンプ用品の下には防災グッズが冒険者にはオススメではないかと言うコメントも書いてある。
 しかし、両親が目指すのはオリハルコンと同等の値段価値を持つ商品だ。


「こうして文字に起こして調べてみると……オリハルコンの強さが計り知れないわね」
「そもそもの基準が違いますからねぇ……」
「安く多く仕入れて、異世界で高く売れるアイテムと言うのも、世界観が違えば変わりますし」
「かといって、技術の安売りは出来ないわ」
「そこですよねぇ」
「絶対にハズレないものは調味料や嗜好品……。女性を手玉にとるのなら化粧品にシャンプー系統は外せないけれど、どれもオリハルコンと比べると見劣りが激しいわね」
「そもそも、オリハルコンと同レベルの物って……こちらの世界にあるんですかね?」


 言われてみればそうである。
 車やバイクならば可能性はあるが、こちらで用意して持っていくにしても色々面倒な物ばかりだった。辛うじて可能性があるのは楽器だが、楽器も種類がとても多い。
 ピアノは鉄板商品だとは思うものの、オリハルコンと同レベルかと言われると難しい気もする。


「一撃必殺になりそうな商品って……中々思いつかないものね」
「あの……カメラって駄目かな?」


 白熱する両親を見つめていた僕は、前に女子がカメラを手に遊んでいた事を思い出し口にした。
 今のカメラの中には、シャッターを切れば直ぐに現像して出てくるものもある。
 両親は乗り気ではなかったが、カメラと言う物を理解できていないマリリンはソワソワし始めた。
 だが僕の狙いに、一応間違いは無かったのだ。
 何故ならば――。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

処理中です...