妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

うどん五段

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第一章 異世界人現る!!

第1話 僕は異世界への扉を見ない事にした

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 見知らぬ天井。
 見知らぬベッド。
 そこに横たわる、覇王の様なオーラを纏った素晴らしきに肉体美。
 裸の僕。僕は昨夜の事を思い出すと血の気がサッと引いた。
 女性らしい胸は皆無、最早大胸筋にある小さな胸……そんな覇王と僕は――。


「これで貴様は我のものだ……フフフ……フハハハハハハ!!!」
「せ……世紀末覇者!!」


 ――この日僕は、現実の厳しさを知った。



 ★★



 日本生まれの日本育ち、何処にでも普通にいるサラリーマンだった。
 だった、と言うのは……仕事がブラック過ぎて最近会社を辞めたから。
 両親も田舎暮らしがしたいといい出し、住み慣れた家を離れ、親がかねてより切望していた自然あふれる田舎での生活が始まった。
 母の祖父母……つまり、僕にとっては曾おばあちゃん達が住んでいた田舎へと引っ越してきたのは数カ月前。
 バスは辛うじて数時間に一度通るような田舎……。
 トイレなんて今では珍しいボットントイレだった。

 それ以上に、元々が旅館だったと言う事もあり部屋数が凄い。
 軽く数えても10LDKはあるが、これで半分壊したというのだから恐ろしい元旅館。
 庭も凄いけど、いつ野生動物が部屋に突っ込んできても可笑しくない、そんな……言い方を替えれば野性的な家に移り住んだ。
 利便性はもちろん最悪で、ちょっと最寄りのスーパーまで行こうものなら、車で片道30分は掛かる。次に就職するなら在宅勤務を希望するが、それが無かったら苦労するところだ。

 そして、旅館の隣に建っている頑丈な木々で出来た納屋は二階建てになっていて、もう何十年と人が入っていないのが分かる。
 仕事を辞めて休養期間に充てている間、僕はこの大きな家と納屋の掃除をコツコツ進めていた。


 ――そんなある日、納屋の二階で見つけてしまったのだ。
 そう……【異世界への扉】を。


 初見で異世界への扉だって分かるってすごくね? って思うだろうけど、巨大な鏡の向こうは僕が映っている訳でもなく、如何にも異世界転生とかそっち系の小説に出てきたりするような光景が広がっていた。
 街を歩く冒険者の様な人たちに、活気のある街の風景。

 胸躍るよね。
 でも、それ以上に困惑するよね。
 この鏡を潜ったら一方通行とかない? 大丈夫?
 鏡の前で暫く考えたのち、僕は――見なかったことにした。

 異世界への憧れはある。
 憧れはあっても、現実的ではない。
 チートの俺ツエーとか、余裕綽々で敵を倒していく自分が……うん、想像できない。
 寧ろ血を見るのが無理。
 ノーグロテスク、ノータッチ。これ大事ね。
 こうして僕の異世界への道は、自らの力で回避した筈だった。


 ――まさか、【異世界への扉】……いや、鏡が向こうにもあるとは思いもせずに。

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