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21 ポマー兄弟とやんわり質問を避けていくトーマ。
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古いログハウスが珍しいのか、ポマー兄弟はあっちこっち見ながら小さく「犬小屋か?」と口にしている辺り、ああ、貴族なんだなーと遠い目をしたくなる。
「そう言えばトーマは婿入りしたんだったな。元の名は何と言う」
「トーマ・シュバルですが」
「シュバル?」
「トトリーマ・シュバルと、マリミア・シュバル考古学者と同じ苗字なのだな。あの二人は凄いぞ。なにせ考古学と歴史学を数百年は進めたと言って過言ではない、考古学者とれきし学者ならば『奇跡の二人』と呼ぶほどのお方だ。同じ学者であった息子夫婦が亡くなってからは一線を退いたが、それでも余りある知識を使って更に古代文明の謎の解明に尽力した。何度も城のお抱え学者にならないかと国王陛下直々に書状を出したが、どうしても手が離せない事情があるとの事で辞退なさった」
「そうなのですね」
「陛下も当時はとても悔しがられていたそうだが、老いを理由に一線から遠ざかる等」
「そう言っていたのですか? 亡くなる前日までマリミア婆ちゃんは斧で薪割りしていたし、トトリーマ爺ちゃんは亡くなる前日までウォッカ飲んでましたよ」
「……爺ちゃん、婆ちゃんとは?」
「俺、二人の孫ですから」
「「……」」
そもそも、【シュバル】と言う名字こそ陛下から賜った名字だと聞いている。
俺が結婚して婿入りする際に消えた名字ではあるが……。
「……孫?」
「孫ですね」
「うそやん? まじでー? じゃあ、兄ちゃんを『神童とは呼べない』って言ってたのってぇ~」
「それは知りませんが」
「二人が徹底的に教え込んだ更に上のキミがいたからってことぉ~?」
モリシュの気の抜けた声での質問にモリミアは立ち上がるとキッと俺を睨みつけて来た。
「なるほどね! なるほどな! なるほど!? トトリーマ様に神童と呼べぬと言われてどれだけ俺が落ち込んだと思う!!」
「はぁ」
「そりゃそうだろう! ご自分達の孫に徹底して教え込んでいたのならそりゃ俺等神童を名乗るのも烏滸がましい!!」
「あの、えっと」
「その孫がこんなボロボロの犬小屋で生活している等!!」
「ここは祖父母と暮らした家ですが」
「聖地だな……」
「切り替えはやっ」
思わずマリシアが突っ込みを入れる程の切り替えの早さ。
何だかんだと祖父母は有名人だったようですね。
「まぁ紅茶でも飲んで落ち着いて下さいよ。安い茶葉ですみませんが。祖父母の好きだった味です」
「あ~貰う~」
「頂こう!!」
この二人、祖父母が好きだったって言えば何でもいいんじゃないでしょうか。
思わずそんな疑惑が頭に出来て来る……。
「「うまい」」
「ありがとう御座います」
「しかし良かったのか? 陛下から賜った名を返上してしまって」
「賜ったのは祖父母です。祖父母は俺が結婚する時は自由にして良いとの事でしたので」
「なるほどな。君も相当な変わり者のようだ」
「そうかも知れません」
「この聖地にはどんなものがある。彼らの遺産は沢山あるだろう?」
「整理して俺の箱庭にありますよ。でも他の人が入るのは好きではないので、言えば持ってきますよ」
「そう言えば箱庭師だったな」
「ええ」
「俺と一緒ぉ~」
「扉を作るなら玄関にどうぞ。俺は家に居ない事の方が多いですから」
「人形のメンテナンスをしているんだったな。何故だ」
「後からスキルが生えましたが、人形を作れる訳ではないので」
「そうなのか」
「ええ、職安の方でも国に提出するまでもないと判断されました」
「なら本当に限られた力しか使えないのだな」
「そうなります」
そう言って難を乗り越えつつ紅茶を飲んでいると、マリシアをジッと見つめるモリミアに心臓がドキドキする。
「時にマリシアと言ったか?」
「なんだい?」
「君は普通の人形師の作った人形とは違うようだが」
「どう違うのさ」
「いや、うーん……こんなに人形とは感情豊かなモノだっただろうか?」
「私の身体は古代人形と同じでね。トーマの御先祖様が身体は綺麗だけど壊れてた私を保護してくれていたのさ。でも性格をトーマが入れようとして失敗したんだよね?」
「う……そうですね」
「失敗……なんてするぅ?」
「だから人形師の資格が取れないんですよ。魂を入れるまでは出来たんですが、自分の入れたいと言う魂を入れることが出来ないんです」
「それはまた……致命傷だな」
「ええ、致命傷なんです」
「しかも古代人形か。肌に触れても」
「女性の肌に早々触るんじゃないよ!」
「も、申し訳ない!」
マリシアの喝にモリミアが小さくなっている。
すると弟のモリシュが笑いながら「兄貴ってぇ~この手の女性に弱いよねぇ」と口にしていたので、単純なる好みの差だと理解した。
「別に弱い訳では……」
「それで、我が家にはどのようなご用件で」
「ああ、そうだった。来月に控えたボルゾンナ遺跡の調査に君も同行して欲しい」
「ボルゾンナ遺跡ですか」
「古代文字も何もない遺跡だが、それ故に謎が多い。ハルバルディス王家も力を入れている。解明していない遺跡が開けば、他の遺跡の事も分かるのではないかと言う事だ」
「他の遺跡と言うと、ハルバルディス城の地下にあると言う脳だけの人形の事ですか?」
「ああ、あれを動かせれば素晴らしいだけの富が動くと言われている。世界平和に一歩近づくと言うことだな!」
「俺はそうは思いませんが」
「何故だ」
「今の我々の技術では動かないでしょう」
「むう、実はそうなのだ。アルマティやイルマティを使ってもウンともスンとも言わないらしい」
「安易にアルマティやイルマティを使っている時点で、ブチギレ案件でしょうが」
「ん?」
「いえ。良く国がアルマティやイルマティを受け入れたなと思いまして」
あの二つの効果をシッカリと知っていれば、絶対に国は頷かない代物だろうに……言葉巧みに誘導されて輸入がされたか何かでしょう。
そう思っていると、モリミアもやはり詳しいアルマティやイルマティの事を知らなかったようで、「人形にもっと言う事を聞かせるための道具だと聞いている」とだけ言っていた当たり、西の国への不満と不安が募る。
「違うのか?」
「アルマティやイルマティは、人間でいう所の麻薬と一緒ですよ」
「な!?」
「それを言葉巧みに西から言われたのでしょうが、西の大陸ではそれらを付けた人形兵士が沢山いるそうです。よって戦争が収まらない」
「それは……確かに眉唾な話だと思って聞いていたが事実なのか?」
「ええ。西の使者は何と言っていました?」
「革命が起きるだろうと」
「革命はおきるでしょうね? 人を、人形を殺しても何とも思わない人形が生まれるんですから」
「その情報は何処から?」
「今は言えません。ですが、もし西の大陸とこちらの大陸がアルマティとイルマティを輸入してまでとあるのなら――こちらも考えがあるというだけです」
「まだ輸入の段階には行っていない筈だ。この領を収めるローダン侯爵が危険性を見つけて異議申し立てをしている。人形大臣が許さないと言っている以上これ以上陛下も西も強く言えないようだ」
流石ローダン侯爵家。
恐らく矛盾に気が付いたのでしょうね。
言葉巧みに言っていてもどこかに穴が出来る。
だからこそ、そこの穴を突いたのだろう。
そして西もそれについて言い訳がましい事を口にしたとしたら、ローダン侯爵家が異議を唱えるのは当たり前の事だ。
その異議を申し立てた途端使節団は帰って行ったらしく、試作品のアルマティとイルマティが残されたと言う訳らしい。
一応国が管理しているが、どう扱っていいのか分からず放置状態なのだとか。
「西は本当にくだらない事をする」
「「トーマ?」」
「取り敢えずボルゾンナ遺跡の事は理解しました。来月の何時からです?」
「あ、ああ。来月1日からだが」
「それまでに緊急の仕事は終わらせておきます。忙しくなりそうですからね」
「ははは! 忙しくなれば我々考古学者や歴史学者が忙しくなるだけだ」
そう言って笑うモリミアだったが、モリシュはどうやら違うようで――。
「まるで分り切った様に言うじゃぁん?」
「さて、どうでしょう?」
「んふふ~。おれぇ、キミみたいな何かを隠してる感じ、いいなーって思うよ?」
「どうでしょうねぇ」
「ほら、はぐらかす」
「もし仮に何かあったとしても、時がくれば分かる事ですよ」
「ふーん? サプライズってことぉ~? いいねぇ~」
「モリシュ、余りトーマを虐めるんじゃない。彼はまだ若いんだから」
「兄貴が此処に来るって言った時は何かの冗談かと思ったけどぉ~。これはこれで楽しくなりそうだから全然いいよぉ~」
「そうか、助かる」
「じゃあ玄関に箱庭の扉付けちゃうけどいいかなぁ?」
「玄関でしたらどうぞ、外に着けてくださいね」
「ふふふ、中に着けたかったなぁ」
「それは不法侵入ですよ」
「はいはい、仕方ないなぁ~」
こうしてモリシュは外に出ると扉に自分の箱庭の扉を付けたようで、これで行き来が楽になると嬉しそうに話していた。
「トーマと兄貴がいればぁ~。色々な事が進みそうな気がするよぉ~?」
「そうだと良いですね」
「うむ、そうありたいと思う。有意義な時間だった。アルマティやイルマティについての危険性の記述があればいいのだが」
「それは俺からローダン侯爵家に送りますよ。以前お世話をしたので」
「そうか、元人形大臣のモリアティのアレコレで口を出した学者がいると聞いたが、もしや君か」
「はて、どうでしょう」
「ふはは! 君は謎が多いな!」
そう言うと彼らは「では1日にボルゾンナ遺跡で」と言うと去って行ったが、マリシアは「西は相変わらずきな臭いね」と口にし、俺は俺で「ローダン侯爵家に通達する事が出来たので庭に行きます」と言うと、箱庭にある自室にて【アルマティとイルマティの危険性について】と纏めたノートを紙に記載し、それらを纏めてから遠隔魔道具にてローダン侯爵家に提出した。
さて、どうなるかはまだ未知数だけれど――読んで貰えれば御の字だろうな。
そう思いながら溜息を吐いた。
「そう言えばトーマは婿入りしたんだったな。元の名は何と言う」
「トーマ・シュバルですが」
「シュバル?」
「トトリーマ・シュバルと、マリミア・シュバル考古学者と同じ苗字なのだな。あの二人は凄いぞ。なにせ考古学と歴史学を数百年は進めたと言って過言ではない、考古学者とれきし学者ならば『奇跡の二人』と呼ぶほどのお方だ。同じ学者であった息子夫婦が亡くなってからは一線を退いたが、それでも余りある知識を使って更に古代文明の謎の解明に尽力した。何度も城のお抱え学者にならないかと国王陛下直々に書状を出したが、どうしても手が離せない事情があるとの事で辞退なさった」
「そうなのですね」
「陛下も当時はとても悔しがられていたそうだが、老いを理由に一線から遠ざかる等」
「そう言っていたのですか? 亡くなる前日までマリミア婆ちゃんは斧で薪割りしていたし、トトリーマ爺ちゃんは亡くなる前日までウォッカ飲んでましたよ」
「……爺ちゃん、婆ちゃんとは?」
「俺、二人の孫ですから」
「「……」」
そもそも、【シュバル】と言う名字こそ陛下から賜った名字だと聞いている。
俺が結婚して婿入りする際に消えた名字ではあるが……。
「……孫?」
「孫ですね」
「うそやん? まじでー? じゃあ、兄ちゃんを『神童とは呼べない』って言ってたのってぇ~」
「それは知りませんが」
「二人が徹底的に教え込んだ更に上のキミがいたからってことぉ~?」
モリシュの気の抜けた声での質問にモリミアは立ち上がるとキッと俺を睨みつけて来た。
「なるほどね! なるほどな! なるほど!? トトリーマ様に神童と呼べぬと言われてどれだけ俺が落ち込んだと思う!!」
「はぁ」
「そりゃそうだろう! ご自分達の孫に徹底して教え込んでいたのならそりゃ俺等神童を名乗るのも烏滸がましい!!」
「あの、えっと」
「その孫がこんなボロボロの犬小屋で生活している等!!」
「ここは祖父母と暮らした家ですが」
「聖地だな……」
「切り替えはやっ」
思わずマリシアが突っ込みを入れる程の切り替えの早さ。
何だかんだと祖父母は有名人だったようですね。
「まぁ紅茶でも飲んで落ち着いて下さいよ。安い茶葉ですみませんが。祖父母の好きだった味です」
「あ~貰う~」
「頂こう!!」
この二人、祖父母が好きだったって言えば何でもいいんじゃないでしょうか。
思わずそんな疑惑が頭に出来て来る……。
「「うまい」」
「ありがとう御座います」
「しかし良かったのか? 陛下から賜った名を返上してしまって」
「賜ったのは祖父母です。祖父母は俺が結婚する時は自由にして良いとの事でしたので」
「なるほどな。君も相当な変わり者のようだ」
「そうかも知れません」
「この聖地にはどんなものがある。彼らの遺産は沢山あるだろう?」
「整理して俺の箱庭にありますよ。でも他の人が入るのは好きではないので、言えば持ってきますよ」
「そう言えば箱庭師だったな」
「ええ」
「俺と一緒ぉ~」
「扉を作るなら玄関にどうぞ。俺は家に居ない事の方が多いですから」
「人形のメンテナンスをしているんだったな。何故だ」
「後からスキルが生えましたが、人形を作れる訳ではないので」
「そうなのか」
「ええ、職安の方でも国に提出するまでもないと判断されました」
「なら本当に限られた力しか使えないのだな」
「そうなります」
そう言って難を乗り越えつつ紅茶を飲んでいると、マリシアをジッと見つめるモリミアに心臓がドキドキする。
「時にマリシアと言ったか?」
「なんだい?」
「君は普通の人形師の作った人形とは違うようだが」
「どう違うのさ」
「いや、うーん……こんなに人形とは感情豊かなモノだっただろうか?」
「私の身体は古代人形と同じでね。トーマの御先祖様が身体は綺麗だけど壊れてた私を保護してくれていたのさ。でも性格をトーマが入れようとして失敗したんだよね?」
「う……そうですね」
「失敗……なんてするぅ?」
「だから人形師の資格が取れないんですよ。魂を入れるまでは出来たんですが、自分の入れたいと言う魂を入れることが出来ないんです」
「それはまた……致命傷だな」
「ええ、致命傷なんです」
「しかも古代人形か。肌に触れても」
「女性の肌に早々触るんじゃないよ!」
「も、申し訳ない!」
マリシアの喝にモリミアが小さくなっている。
すると弟のモリシュが笑いながら「兄貴ってぇ~この手の女性に弱いよねぇ」と口にしていたので、単純なる好みの差だと理解した。
「別に弱い訳では……」
「それで、我が家にはどのようなご用件で」
「ああ、そうだった。来月に控えたボルゾンナ遺跡の調査に君も同行して欲しい」
「ボルゾンナ遺跡ですか」
「古代文字も何もない遺跡だが、それ故に謎が多い。ハルバルディス王家も力を入れている。解明していない遺跡が開けば、他の遺跡の事も分かるのではないかと言う事だ」
「他の遺跡と言うと、ハルバルディス城の地下にあると言う脳だけの人形の事ですか?」
「ああ、あれを動かせれば素晴らしいだけの富が動くと言われている。世界平和に一歩近づくと言うことだな!」
「俺はそうは思いませんが」
「何故だ」
「今の我々の技術では動かないでしょう」
「むう、実はそうなのだ。アルマティやイルマティを使ってもウンともスンとも言わないらしい」
「安易にアルマティやイルマティを使っている時点で、ブチギレ案件でしょうが」
「ん?」
「いえ。良く国がアルマティやイルマティを受け入れたなと思いまして」
あの二つの効果をシッカリと知っていれば、絶対に国は頷かない代物だろうに……言葉巧みに誘導されて輸入がされたか何かでしょう。
そう思っていると、モリミアもやはり詳しいアルマティやイルマティの事を知らなかったようで、「人形にもっと言う事を聞かせるための道具だと聞いている」とだけ言っていた当たり、西の国への不満と不安が募る。
「違うのか?」
「アルマティやイルマティは、人間でいう所の麻薬と一緒ですよ」
「な!?」
「それを言葉巧みに西から言われたのでしょうが、西の大陸ではそれらを付けた人形兵士が沢山いるそうです。よって戦争が収まらない」
「それは……確かに眉唾な話だと思って聞いていたが事実なのか?」
「ええ。西の使者は何と言っていました?」
「革命が起きるだろうと」
「革命はおきるでしょうね? 人を、人形を殺しても何とも思わない人形が生まれるんですから」
「その情報は何処から?」
「今は言えません。ですが、もし西の大陸とこちらの大陸がアルマティとイルマティを輸入してまでとあるのなら――こちらも考えがあるというだけです」
「まだ輸入の段階には行っていない筈だ。この領を収めるローダン侯爵が危険性を見つけて異議申し立てをしている。人形大臣が許さないと言っている以上これ以上陛下も西も強く言えないようだ」
流石ローダン侯爵家。
恐らく矛盾に気が付いたのでしょうね。
言葉巧みに言っていてもどこかに穴が出来る。
だからこそ、そこの穴を突いたのだろう。
そして西もそれについて言い訳がましい事を口にしたとしたら、ローダン侯爵家が異議を唱えるのは当たり前の事だ。
その異議を申し立てた途端使節団は帰って行ったらしく、試作品のアルマティとイルマティが残されたと言う訳らしい。
一応国が管理しているが、どう扱っていいのか分からず放置状態なのだとか。
「西は本当にくだらない事をする」
「「トーマ?」」
「取り敢えずボルゾンナ遺跡の事は理解しました。来月の何時からです?」
「あ、ああ。来月1日からだが」
「それまでに緊急の仕事は終わらせておきます。忙しくなりそうですからね」
「ははは! 忙しくなれば我々考古学者や歴史学者が忙しくなるだけだ」
そう言って笑うモリミアだったが、モリシュはどうやら違うようで――。
「まるで分り切った様に言うじゃぁん?」
「さて、どうでしょう?」
「んふふ~。おれぇ、キミみたいな何かを隠してる感じ、いいなーって思うよ?」
「どうでしょうねぇ」
「ほら、はぐらかす」
「もし仮に何かあったとしても、時がくれば分かる事ですよ」
「ふーん? サプライズってことぉ~? いいねぇ~」
「モリシュ、余りトーマを虐めるんじゃない。彼はまだ若いんだから」
「兄貴が此処に来るって言った時は何かの冗談かと思ったけどぉ~。これはこれで楽しくなりそうだから全然いいよぉ~」
「そうか、助かる」
「じゃあ玄関に箱庭の扉付けちゃうけどいいかなぁ?」
「玄関でしたらどうぞ、外に着けてくださいね」
「ふふふ、中に着けたかったなぁ」
「それは不法侵入ですよ」
「はいはい、仕方ないなぁ~」
こうしてモリシュは外に出ると扉に自分の箱庭の扉を付けたようで、これで行き来が楽になると嬉しそうに話していた。
「トーマと兄貴がいればぁ~。色々な事が進みそうな気がするよぉ~?」
「そうだと良いですね」
「うむ、そうありたいと思う。有意義な時間だった。アルマティやイルマティについての危険性の記述があればいいのだが」
「それは俺からローダン侯爵家に送りますよ。以前お世話をしたので」
「そうか、元人形大臣のモリアティのアレコレで口を出した学者がいると聞いたが、もしや君か」
「はて、どうでしょう」
「ふはは! 君は謎が多いな!」
そう言うと彼らは「では1日にボルゾンナ遺跡で」と言うと去って行ったが、マリシアは「西は相変わらずきな臭いね」と口にし、俺は俺で「ローダン侯爵家に通達する事が出来たので庭に行きます」と言うと、箱庭にある自室にて【アルマティとイルマティの危険性について】と纏めたノートを紙に記載し、それらを纏めてから遠隔魔道具にてローダン侯爵家に提出した。
さて、どうなるかはまだ未知数だけれど――読んで貰えれば御の字だろうな。
そう思いながら溜息を吐いた。
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