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第四章 生まれ変わるジュノリス大国とジュノリス王!

118 プレゼンテーションは、美味しい料理と共に。

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「ただ、余り他の人には見られたくないので……」
「むう」
「ラスカール王国にある水野達に貸していた拠点を使おう。あそこは今無人だ」
「それもそうね。陛下とメンデルに一時的に扉を通させて差し上げて」
「分かった」


 こうして俺とカナエ、そしてメンデルと陛下による、お魚パーティーが始まる事になる。
 急いでラスカール王国に向かった俺とカナエは早速ネットスーパーで刺身盛り合わせや魚を購入し、カナエは焼き魚と煮魚を作り始め、俺は刺身を購入しては一緒に購入した趣のある皿に盛りつけていく。
 舟盛りなんかもテーブルが派手になるからいいかもしれないが今日は色々食べて欲しいし4人だけなのでやめておいた。
 刺身醤油を用意し、ワサビはこの世界ではきついかも知れないが一応用意した。
 小皿も用意して箸は俺とカナエ用で陛下たちにはいつもと同じフォークとナイフとスプーンにした。

 ついでなので、この拠点を日本の旅館風に変更し、雰囲気を出した。
 外観も変わっているだろうから一度外に出てみると、なんとも優美な日本の旅館だ。
 テーブルはドレスが邪魔だろうから椅子に座って食べる用の、ちょっとモダンなのにした。
 モダン家具と言えばいいだろうか。
 日本の旅館でもモダン家具の似合う旅館があるように、そんな風にしたのだ。

 刺し身の盛り合わせは空間収納に入れ、カナエが焼き終わった焼き魚も盛り付けて空間収納へと入れていく。
 俺はついでにパックご飯を購入しミニ海鮮丼を作るべく、ウニやイクラも入れた日本ではよく見られる海鮮丼を用意する。


「アツシさん盛り付けうまいのね」
「見た目って重要じゃないか?」
「まぁそうだけど」
「カナエのカレイの煮付けもうまそうだ」
「白米が進むわよね」
「今すぐご飯を炊けないからレンジでチンするご飯を用意して盛り付けておくよ」
「食べなかったら私たちが食べればいいものね」


 そう言ってチンしたご飯を綺麗に盛り付けて空間収納に入れ、魚なら赤だしだろうと赤だしを購入してお湯で溶かして飲めるようにする。
 煮付けが出来るとお皿に四人分用意し空間収納に入れていく。
 そして用意が終わると連絡用の魔道具を使い陛下とメンデルに用意が出来た事を伝えると「直ぐに向かう」と言う連絡だった為、俺とカナエでテーブルの上に飾り立てつつ小さな丼ものも用意してカトラリーを用意すると陛下とメルデルが入ってきた。


「いらっしゃいませ。こちらが異世界での魚料理の一部となります」
「「おおおおお」」
「本当に生魚があるのう」
「食べられる……のですか?」
「新鮮なら食べられます。取り敢えず座って食べてみましょう」


 こうして陛下とメルデルが座り、俺達も座ると「なんと鼻をくすぐる匂いか」と煮付けを見つめる陛下とメンデル。


「煮付けは先ほど出来たばかりですが、魚には骨があるのはご存じですよね?」
「うむ、気を付けて食べよう」
「はい!」


 こうして陛下とメンデルに魚をとってあげつつ、先ずは生の刺身に挑戦するようだ。
 その際、ワサビを付けるかどうか聞いたら、「辛い物は得意では無い」と言う事だったので二人共刺身醤油で食べることにしたようだ。


「「む!?」」


 一口生魚を口に入れれば二人は目を見開き驚いている。
 そう、我らも島国出身。
 刺身って美味いよな!
 俺もカナエもお箸で器用に食べると久々の刺身に「美味しい――!!」と舌鼓をうつ。


「ほお……生は初めて食べたがこれは美味いのう」
「この謎の黒いタレ? ですかね、これが魚の美味しさを更に引き出していて」
「そちらは刺身用に作られた『刺身醤油』と言われるものですね。私たちの住んでいた国では当たり前にあった調味料です」
「「ほう……」」
「赤だしも美味し――!!」
「久々だな、この赤だし!」
「むう、この赤だしと言うのはスープか」
「頂いてみましょう」


 こうして二人が赤だしを飲むと「ほおお……」とこちらも驚いていて、「あとからくるこの何とも言えぬ美味さはなんだろうか」と語り合っている。


「それは旨味ですね」
「「ウマミ」」
「私たちのいた世界では味覚とは甘味、酸味、塩味、苦味の4味が古くから伝わっていましたが、私達の国は4味以外に旨味と言うものをとても大事にしていたんです」
「奥が深い」
「海鮮丼にはこの刺身醤油をかけて食べてみてください。豪快にスプーンで食べてみて下さい。そういう食べ物ですので」
「お城や貴族の家で食べる料理のような難しいマナーはありませんよ」


 そう言うと俺とカナエは海鮮丼を美味しく食べる。
 それを見て二人も醤油をかけて恐る恐る口に入れると「むう!!」と声を上げ、「下の穀物はなんなのだ!?」と驚かれたので「私たちの世界のお米ですね」と答えた。


「お米は色々な料理にも使えますし、お米から作られる調味料もあります。 お米美味しいですよね? 日本っていうのが俺達の住んでた国名ですが、やはり日本人の主食にはお米なんですよね」
「美味しいわよね~」
「これは我が国では作る事は可能か?」
「まぁ、可能だと思いますが収穫には時間が掛かりますよ? 俺的にはお米には春だけでなく夏や秋の気候も必要だと思いますし…」
「お米作りなら私が少し教えられますよ。苗を植えるのも収穫するのもその後も大変なんです。専用のコンバイン――、魔導具の一種ですがそういう物があれば大分違うんですが…」
「ですのでお米も暫くはストレリチアから購入して下さい」
「むう……ならお米もストレリチアから購入するか……」
「お米の炊き方はうちの従業員たちに教え込んで派遣しますので」
「炊き方? 調理の仕方か? よく分からぬが教えてくれるのは有難い」
「専用の魔導具か、それがないなら土鍋で炊くことになるのですが、土鍋で炊いたお米は更に美味しいですからねぇ」
「「土鍋で炊いたお米」」


 そう言いながら陛下は作りたての焼き魚にも醤油をかけて食べ、大根と一緒に食べると更に美味しい事に気づいたようで目をキラキラしつつ、メルデルは煮魚を食べて「うまい……っ!!」と噛みしめているようで、陛下も慌てた様子で煮魚を食べると「蕩けてしまうのう……」とご満悦だ。


「と、この様な料理の作り方が掛かれた本をお売りする事も可能です」
「うむ!! カナエ殿、これは是非とも欲しいぞ!!」
「これは一大産業となりますよ!? さすが『食の開拓者』ですね!!」
「ははは、そうなると獲れたて新鮮な魚が食べられるように漁村にはこういう店が沢山あった方が良いですが」
「うむ、店は用意せねばならないな。問題は調理出来る人間の少なさじゃが」
「刺身ならそう難しいものではないですし、まずはそこからスタートして、うちの従業員が覚えたら調理スキルを持つ人たちに教えていくことは可能ですよ。無論期間を決めて人材を派遣させて貰うので料金は頂くことになりそうですが」
「そうじゃのう……そこは初期投資として致し方あるまい。お米と刺身醤油もストレリチアから購入と言うことになりそうじゃし、まとめて世話になる」
「「ありがとう御座います」」
「他にはどういうものが魚では作れる?」
「魚の身をミンチにして成型して蒸した物をかまぼこと呼んでいましたし、ミンチにしたものを肉団子の代わり丸めて使ったり、腸詰め肉のように使ったりもしました」
「ほうほう」
「魚醤という調味料や干物という魚を開いて干した物もありました」
「色々あるのだな。先程お米と食べた海鮮丼に入っていた、艶々した小さくて赤くて丸い物は?」
「卵ですね。魚卵です、イクラと呼んでいます。海鮮丼に一緒に入っていたオレンジ色の味の濃厚な物はウニと呼んでおり魚卵ではありません、内蔵の一種です。黒くトゲトゲした殻に包まれて海底にいる生き物です。殻を割るとオレンジ色の部分が出てきます。」
「「ほおおおおおおおおお……」」
「実は、ストレリチア村ではこれらの料理は当たり前に食べられているんですよ」
「なんと!?」
「こんなに美味しい物が!?」
「釣りが出来ますからね。いち早く食べております」
「むぐぐぐ……ジッとしておられんぞ! 直ぐにでも釣り場とウニを取れるように中に潜れるようにするのと……ボートじゃな! それがないといかぬな!」
「冷えた身体を温める銭湯も欲しいです!!」


 全てを食べ終えた陛下とメンデルに日本酒をそっと出して飲ませながら二人は盛り上がり、「では明日朝から作業を頼むぞ!」と言うと「大変美味であった!!」と言って二人は帰って行った。
 ホッと安堵したが洗い物を手伝いゴミはゴミ箱に捨てて魔素にし、「プレゼンは成功かな」と苦笑いしつつミスアーナの家に戻った俺達だった。
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