召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

うどん五段

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第四章 生まれ変わるジュノリス大国とジュノリス王!

102 今後のジュノリス大国を発展させる【モノ】を話し合う事になったが……。

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「なっ! 何を」
「アクイ ハ セイサイ!!」
「ヒイ!!」
「ニノッチ、程ほどにしろよ」


 そう言って頭を隠して尻を突き出したワイズ侯爵の尻をバチバチと叩くニノッチに、俺達は一瞬だけ遠い目をしたのは言うまでもないのだが――。
 最後にパアアン!! と叩き終わるとニノッチは大人しくなった。


「アクイハ サッタ」
「そうか。ワイズ侯爵大丈夫ですか」
「くう……尻が……尻がっ!」
「ニノッチ、回復魔法掛けてあげなさい。アレはちょっと哀れだわ」
「シカタナイナー」


 そう言うと回復魔法を掛けて尻の痛みと腫れた頬を治したニノッチにランディールとメルディールも驚いていたが、ワイズ侯爵が一番驚いていた。


「俺に悪意を向けるとうちの従魔が黙ってませんよ」
「す、すまない……」
「俺でも中々止めれませんので」
「でも、私達が商売で成り上がったからこそのストレリチアですよ。その名くらいは聞いた事があるのでは?」
「実にお恥ずかしい……。ストレリチアの話は良く聞いております。ミスアーナには無くてはならない店だと。それをあのような言い方をして申し訳ありません」
「反省したのなら良いのです」


 そう笑顔で話したカナエに苦笑いしつつ、ドアがガチャリと開きジュノリス王が苦笑いしながら出て来た。
 どうやら尻叩きの音はしっかり聞かれていたようだ。


「ワイズ侯爵はまた後程。アツシとカナエは入ってきなさい」
「「はい」」
「で、では後ほど……」


 そう言って別れ陛下の執務室に入ると、現宰相であるフィリップさんが立っていて俺達に頭を下げた。
 そして笑顔で「いい尻叩きの音が木霊していましたよ」と笑われ、俺達も苦笑いする。


「アツシもノスタルミア王国の事業などで忙しいだろうが、時間を作ってくれて感謝する」
「いえ、ノスタルミア王国での話し合いや作業は、結婚式が終わってからで良いと言う事でしたので」
「そうか。結婚式の練習は恙なく終わったと連絡は来ている。それで、腐る程あるカカオだが、やはりミルクの輸入は必須のようだな」
「そうですね、暑い地域では乳牛が育たないと聞いていますので、ラスカール王国からミルクを沢山輸入する必要があります。冷蔵の方もシッカリと出来ているようですので、工場では俺が用意した冷蔵庫に入れれば時間が止まるので腐る事は無いですよ」
「では工場を作るのはアツシの力が必須になるか」
「そうですね」
「だが、一応暑さに強い乳をよく出す魔物もいるのだ。それらを捕まえて畜産をすると言う方法もある」
「暑さに強い乳をよく出す魔物ですか。肉には転用できるんですか? 乳を出す魔獣の肉は不味いと聞いていますが」
「一般市民には卸すだろうな。王族は食べないだろうが」
「なるほど」


 どうやら畜産も出来るらしい。
 それならば畜産の施設を作ったことがあるので何とかなりそうだ。


「それなら、ダングル王国で畜産の施設を作ったことがあるので何とかなりそうです。それに乳を取る施設を作れば問題はないかと。ダングル王国のミルクを使ったモノと味比べをしても面白いと思います」
「そうだな。今は冒険者たちに頼んで魔獣を集めている所だ」
「オスの魔獣は太らせて肉にして卸す感じですかね」
「そうなるな。種はいるので全てを潰す気はないが」
「問題は砂糖も相当使うと言う点ですね」
「そうだな、売る相手はラスカール王国とダングル王国と決めているのだ。ノスタルミア王国ではストレリチアの菓子に勝つ者は無いと言われているからな。ただ庶民用に出すのもアリだと思っている」
「砂糖を使ったり輸送費もかかるので庶民に手が出るか分かりませんが…」
「工夫するしかあるまい。それよりジュノリス大国では冷たい食べ物が好まれる。そっちの方は何かないか?」
「ありますが、そっちもミルクあっての品ですね」
「むう……乳を出す魔物を畜産する事が先決か」
「並行してこういうものを売り出す事になりそうです」


 そう言ってネットスーパーからバニラアイスのカップ入りとスプーンを取り出すと、ジュノリス王と宰相のフィリップさん、そしてランディールとメルディールに手渡し食べて貰うととても驚かれた。


「冷たい上に甘い!」
「これはわが国では飛ぶように売れるぞ!!」
「それはアイスクリームと言う奴ですね。カカオを使わない物もありますし、果物の果汁を絞ったアイスキャンディーと言うのもあります」
「「「「ほおお……」」」」
「この二つを作るには冷凍の魔石必要です。冷凍の魔石で水を凍らせて氷を作り、氷を薄く削ったモノに果汁をかけて食べたりもしてました。」
「うむ、冷凍の魔石は他の国では余り使わないそうなので我が国がドンドン買おうと思う」
「それが宜しいかと」
「このアイスと、先ほど言ったアイスキャンディーは今日の会議で出せそうか?」
「ええ、メルディール達に各自のスプーンを用意して頂ければ、既にチョコのお菓子やクッキーにブラウニーといったお菓子は渡しておりますので」
「アイスやアイスキャンディーも今渡すから、メルディール頼める?」
「畏まりました」


 こうしてカナエがカップ入りのアイスクリームを多めに60個。
 アイスキャンディーもフルーツ系で60個出すと、メンディールの空間収納にいれていた。
 また、陛下からの要望で市民街に銭湯を作って欲しいとの事で、それも請け負う事になった。
 無論商業ギルドには行かねばならないだろうと思っていると、場所は既に確保してくれているらしい。
 商業ギルドにて陛下からの依頼で来たと言えば案内して貰えるそうだ。
 城下町は塀を囲うようにぐるっとある為、東西南北の中央に広く場所を取ってくれたそうだ。
 結婚式前に是非して欲しいと言う依頼で、明日にでも作りに行く事にした。

 問題は貧困街の方で、そちらに工場を作りたくとも貧困層が家を作って住んでいるらしく、彼らを一つの場所に纏めることが出来ないだろうかと言われた。
 集合住宅なら作れる事を伝えると、家族持ちなら3LDK、独り身なら1DKで作る事になった。勿論お風呂とトイレは別々で付いている。
 こちらも東西南北に広くあるらしく、家族持ちならば一か所で100家族程。
 独り身ならば500人はいるらしい。
 その内訳を聞かせて貰うと、500人の内、捨てられた老人や子供が殆どで大人は僅かしかいないらしい。


「それなら、ラスカール王国が国をあげて作ったと言う【老人たちの終の棲家】と【孤児院】を作ったらどうですか?」
「なるほど、国をあげての事業にして彼らを束ねると言うのもありなのか」
「建物なら直ぐに用意できますので、後は老人たちの世話をする者、子供たちの世話をする者がいれば問題はないかと」
「それならばすぐに用立てる事は可能だ。貧困層の中にも給料を貰えるなら働く者もいるだろう。」
「後はその内【ジュノリス大国版のストレリチア村】を作りたいと思っているので、移住して頑張りたい家族には好待遇で仕事も与えて自分たちで稼げるようにしますよ」
「おお、そこまで考えていてくれたのか。それは有難い」
「でも、ボルドーナ商会のボルドさんがいうにはとても治安が悪いと聞いているわ」
「裏組織や闇組織と言った部類も貧困層近くにあるのは確かだ。後は奴隷市場だな」
「「それで……」」
「雀たちに王太子が作る村があるらしく、そこに貧困層から人員を募集する予定だと流して置こう。後は国の事業として孤児院と老人たちの終の棲家を作る予定だとも」
「お願いします」


 と話し合った所で会議の時間となり、メルディールがメイドたちにお皿とスプーンを陛下たちの分も併せて用意するように伝え、慌ただしくなった。
 陛下と共に皆で会議室まで向かうと既に会議室には古狸たちが沢山いて、俺とカナエが入って来ると値踏みしているようだったが、後で一掃しても良いかも知れない。
 新しい風は入れないとな。


「では会議を始める」


 そうジュノリス王が口にした途端、俺を値踏みしていた一人の貴族が手を挙げた。


「どうした、ナジュール殿」
「この度の王太子殿下とその妃殿下となる方に一つ言いたい。妃はもう少し多い方が良いのではないのか?」


 やはり俺に取り入ろうとする馬鹿はいるのか……。
 そう思っているとあちらこちらからその声は上がった。
 ワイズ侯爵は必死に止めているが、先ほどの尻叩きが余程痛かったのだろう。
 貴族たちの声は大きく、これはうちのニノッチが――そう思っていると。



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